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040 クラン対抗戦前

 


 6月。

 6月と言えばクラン対抗戦だ。

 カルラ曰く必勝態勢で臨む! だそうだが、課題はその都度変わるので対策が立てづらいと言う。

 昨年はクリュシュナス姉様率いる生徒会が2連覇を成し遂げ、今年は前人未到の3連覇がかかっているそうだ。


「とうとう明後日が予選初日よ。ボクたちは全員1回生で5人しか居ないけど上位に食い込むのよっ!」


 カルラ君は気合が入りまくっている。


「ねぇ、カルラぁ~、予選の前にパーっと前祝いしましょうよ」


「いいわね! よしっ、明日は外出許可を取ってレストラン・クックにでも行こう!」


「って、それ僕ん家じゃない!」


「ペロンが一緒なら予約無しで行けるんじゃない? それにオマケしてくれるわよね?」


 カルラ君はいつもながらチャッカリしてますね。


 そんなわけで翌日になりレストラン・クックの前までやってきました。

 ペロンは店員から『坊ちゃん』と呼ばれているようで、店員がそう呼ぶと恥ずかしいから止めるように言っていた。

 ペロンが居たので個室に通された俺たちは思い思いの料理を注文する。

 俺はこの王都で屋敷の料理人以外が作った料理で美味しいと思えるものを食べたことが無いのでペロンのお勧めであるサモーンの照り焼き香草風味という料理を選んだ。


「それ美味しそうね。クリストフちょっと分けてよ」


「いいよ」


 カルラは本当に貴族家の子女なのだろうか?

 言葉遣いといい、こういう所といい、カルラが貴族とは思えないのだが・・・


「うん、美味しいね。プリッツのは何?」


 確かに美味い。

 王都で外食して初めて美味いと思える料理を食べた。

 ペロンの父親がオーナーシェフと言っていたので、腕の良い料理人なんだと素直に称賛する。


 結局、カルラは皆から料理を少しずつ強奪し、そしてクララもそれに便乗していた。


「ねぇ、この後はブリュト商会に行こうよ。ボク行ったことがないんだよね」


「あ、いいね。僕も行きたい」


 プリッツもカルラの提案に乗ってきたので半ば強制的にブリュト商会行きが決まった。


「クリストフ、友達割りってあるよね?」


「物にもよるけど、それなりには考えてもいいよ」


 てか、君たちは王立魔法学校で唯一ブリュト商会のマジックアイテムを購入して使用する権利を得ているのだから今更だよね?


 カルラとクララはよく喋る。

 食事中、ズーッとどちらかが喋っていた。

 カルラが咀嚼している間はクララが、クララが咀嚼している間はカルラが交互に間断なく喋り続ける。


 こうして友達とゆっくりした時間を過ごすのはこの世界に来て初めてだな。

 良い感じにまったりできて良いね。


 最後にデザートを摂ると見計らったようにペロンの父親が入ってきた。


「息子が御世話になっているね。引っ込み思案な所があるので友達ができるか心配だったけど良かったよ。これからもペロンのことを宜しくお願いしますね」


 ペロンによく似た顔のコック帽を被ったダンディな親父さんだ。

 皆が自己紹介し、俺も最後に自己紹介をする。


「貴方がブリュトゼルス辺境伯様の。あの上白糖は大変良い物ですね。今までの砂糖に比べ甘さも強いし、それに安いですからね」


「ありがとうございます。これからも御贔屓にお願いします」


 上白糖は発売以来グングンと売り上げを伸ばしている商品だ。

 今までの砂糖が高過ぎた反動もあるのだろうが、ブリュト商会で簡単に作れるお菓子のレシピを無料で配っているのが功を奏して平民階級にも少しずつ浸透しているようだ。


 ペロンの親父さんは短く話を切り上げ仕事に戻っていった。

 爽やかな笑顔を残して・・・


「ペロンのお父さんてイケメンよね? ペロンもイケメンと言えばイケメンだけど、女性に対しての積極性が無いから今一よね」


「そ、そうかな・・・」


 カルラは偶に・・・いや、よく人のSPを削る発言をする。

 ペロンよ、強く生きような!

 俺はペロンの味方だからな!


 俺はペロンの肩をポンと叩き慰めの目を向けた。

 その後はレストラン・クックを後にして俺のブリュト商会に向かう。


 最近は開店当初の売り上げは無いが、安定して売り上げを伸ばしている俺のドル箱商会だ。


「いらっしゃいませ~。あ、クリストフ様!」


 ブリュト商会に入ると元気良くクララが出迎えてくれた。

 そういえば家の奴隷もクララだった。

 彼女は奴隷になる前は平民だったので家名がない。

 クララ・フォン・ヘカートと区別しようと家名で呼ぶと、プリッツ・フォン・ヘカートの双子の兄妹なので被る。

 ややこしい。


「友達を連れてきたので見せてやってほしい。それとフィーリアは居るかい?」


「はい、店長なら奥におりますので呼んできますね」


「あ、いいよ。自分で行くから。皆は店内を見ていってくれ。皆の相手を頼むよ」


「はい!」


 皆を店に残し俺は奥に消える。

 フィーリアは遅い昼食を摂っていたが、丁度食べ終わったところだった。

 挨拶もソコソコに気になっていることを聞く。


「例の物の売れ行きはどうだい?」


「はい、順調です。力のリングや守りのリングと抱き合わせで買っていかれる方も多いですね」


「そうか、それは良かった。月末には皆にボーナスを弾めそうだね」


「皆、喜んでおります。衣食住を無償で提供していただけ、更に給金とボーナスを与えていただけるのですから、他の奴隷が聞いたら叛乱を起こしますよ」


「・・・サラッと怖いこと言うなよ。でも奴隷たちが喜んで働いているのだったら良かったよ」


 因みに例の物というのは素早さのリングだ。

 力、守り、と来たので素早さを出してみたのだが、父上が200個を注文してきたのをはじめ、店頭販売も順調だと言う。


 素早さのリングは風属性の魔力を込めるのでロックに製作を任せているが、ロックは3種類の商品の生産をしているので結構な仕事量になってしまっているようなので少し考えなくてはいけないな。

 逆にジャモンは守りのリングしか製作していないのでまだ余裕があるようだし、3種類のマジックアイテムを作れるロックを羨ましがっているので次はジャモンに任せられるようなマジックアイテムを発売しようと思う。


「良い物はあったかな?」


 フィーリアとの簡単な打ち合わせの後、店頭で物色している4人のもとに戻る。

 カルラは守りのリングと素早さのリング、ペロンは素早さのリングとウォータリング、クララとプリッツはそれぞれ素早さのリングを選んでいた。


「障壁の腕輪はさすがに高いわね。今度父上にオネダリしておくわ」


「僕もさすがに20万Sは出せないよ。残念だけど諦めるよ」


「障壁の腕輪なら私とプリッツは持っているわよ。父上がいつも身に着けておくようにって相当無理したみたいね」


 クララとプリッツの家は騎士爵だったはずで20万Sもする障壁の腕輪を2つも購入できるとは思えないのだがなぁ。


「クララの家は金山があるからね。羨ましいわ」


 なるほどね、金のなる木ってやつだ。

 しかし騎士爵家に金山を与えるなんて考えられないけど・・・


「金山は母上が見つけたからまだしばらくは財政は安泰ね」


 そういうことか、クララたちの母親がねぇ・・・


 その後は軽く街中を散策して寮に帰ったのは夕方だ。

 ブリュト商会では何だかんだでカルラに値切り倒されてしまったが、まぁいいだろう。



 

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