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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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ワンドの限界

 
 ターレの迷宮十三階層では今のところラブシュラブとしか戦っていない。

「十三階層にはラブシュラブしかいないのか?」

 ロクサーヌに訊いてみた。
 そんなことはないと思うが。

「えっと。数の少ないところに案内しているので」
「まあそうだよな」
「戦ったことのない魔物のにおいもします。十二階層の魔物だと思います」
「ターレの十二階層の情報はまだギルドには出ていませんでした」

 セリーも知らないらしい。
 入り口の探索者に聞けば分かるのだろうが、そこまで気にしてなかった。
 聞いておくべきだっただろうか。
 まあ別にいいか。

「コラーゲンコーラルのにおいもします」
「十階層か十一階層の魔物ですね」

 探索者ギルドに情報が載っていたのは九階層までだったか。
 九階層までには出てきていない魔物なのだろう。

「数は少ないか?」
「はい。一匹か二匹だと思います」
「じゃあそこへ連れてってくれ」
「かしこまりました」

 低階層の魔物とも一度戦っておくべきだろう。
 ラッシュ三発というラブシュラブの強さが、Lv13だからなのか、ラブシュラブだからなのかが分かる。

 しばらく進むと、コラーゲンコーラルLv13がいた。
 低階層の魔物でもきっちりとレベルは上がるようだ。

 待ち受けてラッシュを叩きつける。
 続いてもう一撃。
 コラーゲンコーラルLv13はラッシュ二発で倒れた。

 ラッシュ二発か。
 十一階層はラッシュ一発だから、順当なところだ。
 おそらくラッシュ一発とデュランダル一振りで倒せるのだろう。
 そうむちゃくちゃに強くなっているわけではない。

 ラブシュラブはラッシュ二発でも倒れなかった。
 十二階層から現れる魔物は低階層の魔物の一.五倍から二倍くらいの強さがあるということだろうか。
 それを確かめなければならない。

「十二階層の魔物のところへも一度頼めるか。魔法を使うから、数は多くてもいい」
「はい」

 ロクサーヌに頼んで、かいだことがないにおいの魔物のところへ連れて行ってもらう。


ピッグホッグ Lv13


 現れたのは、ラブシュラブが二匹と、ピッグホッグだ。
 十一階層まででは出てきたことがないから、十二階層の魔物だろう。
 子豚といっていい大きさのブタである。
 牙は生えているが、剛毛はない。

 メテオクラッシュを放った。
 ラブシュラブ二匹が倒れる。
 ピッグホッグは倒れない。
 メテオクラッシュは火属性魔法で決定か。

 ワンドを放り出し、デュランダルを抜いた。
 子豚に向かって駆け出す。
 遠距離攻撃が、あるかもしれないしないかもしれない。
 近接するまでには撃ってこなかった。

 ラッシュを叩き込む。
 一撃では倒れなかった。
 ピッグホッグの頭突きを冷静にかわし、再度ラッシュを放つ。

 今度はさすがの魔物も倒れた。
 ラッシュ二発か。

 安全策をとってラッシュのみで攻撃したから細かいところまでは分からないが、十二階層より上で初めて現れる魔物が低階層の魔物より強くなっていることは間違いがない。
 メテオクラッシュがラブシュラブの弱点の火属性魔法だとして倍の威力があると仮定すると、ピッグホッグにも半分のダメージを与えているはずだ。
 その残った半分がコラーゲンコーラルLv13と等しいラッシュ二発ということは、十二階層より上の魔物は低階層の魔物の倍くらいの強さということか。

 そう考えるとメテオクラッシュはラブシュラブLv13を屠れるぎりぎりの威力なのか。
 メテオクラッシュにラッシュ二発分のパワーはない。

「十二階層の魔物はピッグホッグのようだな」
「ご存知なのですか?」
「たまたまな。詳しくは知らない」
「ピッグホッグは土属性の魔物です。土属性に耐性があり、土属性魔法を使ってきます。水属性が弱点になります」

 セリーから説明を受ける。
 鑑定で名前が分かっただけなので、知っているわけではない。
 ちなみに残ったアイテムは豚バラ肉だ。
 夕食の食材が決定した。

 デュランダルを使って多少回復しているので、ハルバーの十一階層に飛ぶ。
 ミノを屠ってMPを回復した。
 何故ミノは牛バラ肉を残さないのか。
 肉屋でバラは売っていた。

 MPを回復させ落ち着いてから、考える。
 いや、別に牛バラ肉はどうでもいい。
 狩場をどこにするか。

 メテオクラッシュとデュランダルを駆使すれば十三階層でも戦えるだろう。
 一般論として、レベルアップのためにはより強い魔物と戦った方がいい。
 ただし、俺の場合は経験値スキルのことも考えなければいけない。
 常時デュランダルを出し、戦士のラッシュと錬金術師のメッキも使いたいとなれば、経験値スキルは犠牲にせざるをえない。

 メテオクラッシュを使いまくるのも好ましくない。
 誰かに見られる可能性がある。
 魔法使いが使えるファイヤーボールやウォーターストームなら、万が一見られたとしても魔法使いがパーティーにいると思うだけだろう。
 メテオクラッシュの場合はそのごまかしが利かない。

 総合的にいって、十一階層で戦った方が有利か。
 十三階層で狩をするにはまだ早い。
 十一階層を狩場とすべきだろう。
 板も集めたので、そのままハルバーの迷宮十一階層で狩を行った。

 探索を終え、買い物とアイテムの売却をしてから家に帰る。
 今日はラブシュラブの落とす板が手に入った。
 セリーに新しい装備品を作ってもらわなければならない。

 次に作ってもらうのは棍棒だ。
 セリーの技術が装備に追いついた。
 いや、逆に考えるべきか。
 鍛冶師になりたてのセリーが作れる程度の、下の階層で得られる安い素材から作られた武器しか装備していないということだ。

 十二階層の魔物からは強さが倍くらいになる。
 現状、十一階層の魔物を倒すのに魔法七発が必要だ。
 倍とすれば十四発。

 さすがに魔法十四発はやっていられない。
 糸でも吐かれたら即アウトだ。
 ラブシュラブは火魔法が弱点だから、火魔法を使えば半分ですむが。
 しかし他の魔物が混じってくれば、そうもいっていられなくなる。

 十二階層より上の魔物を倒すのは、結構大変なようだ。
 今はいいが十二階層に上がったらきつい。
 とりわけワンドは、強化する時期に来ているといえるだろう。

 魔法使いのいないパーティーではどうやっているのか。
 人数をそろえてたこ殴りというところだろうか。
 人数に余裕があって、僧侶や神官などの回復役がいれば、多少の長期戦でも戦えなくはないだろう。

 うちのパーティーでは俺が回復役というのがネックだ。
 戦闘終了後に回復する分にはまったく問題がない。
 問題は戦闘中の回復である。

 魔物を殲滅するのも、俺の魔法に頼っている。
 俺が戦闘中に回復を行えば、その分だけ殲滅が遅れることになる。
 だから、グリーンキャタピラーLv11との戦いのように、やるかやられるかの時間との勝負になってしまう。

 ロクサーヌかセリーを回復役にするか。
 デュランダルを出すときにも一応念のために僧侶をつけている。
 僧侶がはずせるようになれば少しは楽になるだろう。

 ただ前衛の数も十分ではないのに回復役を作ってもしょうがないか。
 基本的に人数が足りていないということはある。

「……ご主人様……ご主人様」

 考えごとをしていると、ロクサーヌから声がかかっていた。
 気づかなかったようだ。

「悪い。どうした」
「玄関にメモが入っていました。ルーク氏からです。ウサギのモンスターカードを落札したそうです」

 迷宮に入っている間に、仲買人のルークから使いが来たらしい。

「おお。ウサギか。ウサギのモンスターカードは詠唱遅延だったよな」
「はい。そうです」

 セリーに確認する。
 コボルトのモンスターカードがあれば詠唱中断になる。

 詠唱中断をセリーの武器につければ、戦略が広がるだろう。
 うまく詠唱をキャンセルできればグリーンキャタピラーLv11はもはや目ではなくなる。
 ラブシュラブの遠距離攻撃は防げないが。

 まあ遠距離攻撃まではしょうがない。
 接近してからのスキルや魔法は防げる。
 それだけでも上出来といえるだろう。


 翌朝、まずはクーラタルの十一階層に入った。
 せっかくチェインメイルに装備を強化したのだ。
 試してみるべきだろう。

 近接された直後に糸を吐かれた場合に倒すまでの間踏みこたえられるようになったかどうかは分からない。
 多少のリスクはしょうがない。
 安全が確認されるまで次の階層に進めないとなったら、探索はまったく進まなくなる。

 グリーンキャタピラーLv11もそうそう頻繁に糸を吐くことはないし、セリーがかかるとも限らないし、絶対に耐えられないと決まっているわけでもない。
 そのためにこそ強化したのだ。
 闇雲に仮定を重ねて怖がってばかりでもしょうがないだろう。

「最初はクーラタルの十一階層を試してみよう。チェインメイルでどれくらい戦えるようになったのかを見たい」
「えっと。それでは攻撃を受けてみます」

 セリーが告げてくる。
 なるほど。
 実際に攻撃を受けてみるのが手っ取り早いか。
 わざわざ糸に捕まるまで待つのは、余計な危険をしょい込むだけだろう。

 敵の攻撃を受けるのは嫌なものだ。
 一撃でやられることは、ないだろうとはいえ絶対確実ではないし、痛いものは痛い。
 俺なら尻込みする。
 セリーが合理的で助かった。

「悪いな。頼めるか」
「では、グリーンキャタピラーの数が少ないところを探します」
「数よりも、エスケープゴートのいないところを頼む。魔法を六発撃った後に攻撃を受けることになるから、エスケープゴートがいたら逃げられる」
「分かりました」

 ロクサーヌの案内で、グリーンキャタピラー二匹、ニートアント一匹と対峙する。
 ウォーターストーム四発でアリは屠った。
 さらに二発を加える。

 魔法六発を放つと、セリーが半歩前に出た。
 やや腰が引け気味だ。
 気持ちは分かるが、逃げ腰のところを攻撃されるのと糸に捕まって動けないところを攻撃されるのとでは、衝撃が異なるのではないだろうか。
 実際痛いのだし、逃げ腰なのはしょうがないか。

 グリーンキャタピラーが体当たりをかます。
 棍棒でいなさず、セリーがそのまま攻撃を受けた。
 すぐに七発めの魔法を放つ。
 グリーンキャタピラーを屠った。

「どうだった」

 手当てをしながら訊いてみる。

「そうですね。やはり攻撃に対する強度は確実に上がっています。ありがとうございます、もう大丈夫です。多分、魔法四発放つ時間くらいなら耐えられると思います」

 手当ては二回で終了した。
 接近した直後に糸に捕まっても、大丈夫そうか。
 確実なことはやられてみないと分からないが、試してみて駄目だったというわけにもいかない。
 グリーンキャタピラーLv11についての対策は、一応これでできたと判断していいだろう。

 クーラタルでは一度戦っただけで、ハルバーの十一階層に移動する。
 朝食までの間、探索を行った。
 十一階層ではもうほとんど危険がないことを確認したので安心だ。
 迷宮を出てから鏡を一枚届け、朝食を取る。

「防具を強化したので、次は武器を替えたい」
「武器ですか」
「ウサギのモンスターカードが手に入るからな。それに、現状問題はないが、十三階層のラブシュラブはかなり強い」

 ロクサーヌが焼いた兎の肉をほおばりながら会話した。

「ご主人様の魔法を使えば、一撃では」
「実をいうとあれは結構大変なんだ」
「なるほど。切り札ということですね」

 メテオクラッシュは現状二発撃てない。
 MP効率や誰かに見られる危険性を考慮すれば、通常使える魔法ではないと考えるべきだろう。
 まさに、ボス戦か魔物が大量に出てきた場合の切り札だ。

「確かに、十二階層から上の魔物は強くなるそうです。二十三階層から上の魔物はさらに強くなるそうです」

 セリーが教えてくれる。
 やっぱり十二階層より上で出てくる魔物は強いらしい。
 というか、二十三階層でまた一段上がるのか。
 まあ上に行けば強くなるのは当然か。

「とりあえず、俺のワンドの強化は必須だ。それと、魔法の威力を上昇させるモンスターカードって、何かあるか?」
「ヤギのモンスターカードです」
「ヤギか。それもルークに手配を頼んでみたい。後はセリーの棍棒だな」

 魔法攻撃力を上げる系統のモンスターカードは、仲買人のルークに積極的に頼んではいなかった。
 痛くもない腹を探られたくはない。
 痛くない腹というか、実際にはすねに傷を持っているわけだが。
 ここまでくればそうもいっていられない。

「私の棍棒ですか」
「詠唱中断はセリーの武器に融合するのがいいだろう。ロクサーヌなら回避できる可能性もある。詠唱中断をつけるのに棍棒ではもったいない」
「詠唱中断にするにはコボルトのモンスターカードも必要になりますが」
「まあセリーの武器にだけ詠唱遅延をつけてもしょうがないしな」

 俺にはいざとなればデュランダルがある。
 ロクサーヌはスキルや魔法を放たれても回避できる可能性がある。
 放たれて困るセリーの武器に詠唱中断をつけるべきだろう。
 ロクサーヌは前衛の要として魔物の正面に立つから、脇に回るセリーの方が詠唱中断を狙いやすい。

「それはそうですね。ありがとうございます。確かに詠唱中断なら棍棒につけるのはもったいないでしょう。ウォーハンマーかフレイルにつければ、売却するときにもいい値段になると思います」

 ウォーハンマーにフレイルか。
 両方とも、棍棒と同じ槌に分類される武器だろう。

「槌もいいが、槍というのはどうなんだろう」
「槍ですか?」

 セリーは槌と槍を使える。

「詠唱中断で敵の詠唱をキャンセルするなら、少しでも間合いの長い槍の方が有利なんじゃないか」
「なるほど。そうかもしれません」
「現状で魔物に囲まれることは多くないので、棍棒の振り回しはあまり使っていないしな」
「そうですね。ただ、ここのところはニートアントやエスケープゴートが混じることが多かったので、これからは分かりません」

 槍の方が好都合なのは他にも理由がある。
 まあいいや。
 これも言ってしまえ。

「パーティーメンバーはすぐにも増やす。パーティーメンバーが増えれば、振り回す機会はもっと減るだろう」

 メンバーが増えることは常々強調しておかなければならない。

「はい」
「パーティーメンバーを増やすには前衛の方が選択肢が多いはずだ。槍なら後ろから突く形も取れる。セリーには回復役をやってもらうという手もある。槍の方がいろいろと柔軟に応用が利くだろう」
「えっと。私は巫女にはなれませんでしたが」

 あー、そうか。
 セリーが巫女のジョブを持っていることは伝えてなかったんだっけ。

「まあ大丈夫だ。鍛冶師にもなれたのだし。心配するな」
「はい……。がんばります」
「回復役は前衛がやるという手もあります」

 無理やりな説得でセリーがうなずくと、ロクサーヌが発言した。

「そうなのか?」
「はい。僧侶や巫女は、必ずしも後衛のジョブというだけではありません。特に少人数で迷宮に入る場合には僧侶のジョブを取る人も多くいます」
「殴れて回復もできるからか」

 少人数なら前衛後衛できっちり分けることはあまり得策ではない。
 僧侶も巫女もときには前衛に立てると。

「先頭に立って戦いながら仲間の回復もこなす。迷宮に入ろうとする者が憧れる姿です」

 フランス革命で民衆を導く自由の女神という感じだろうか。
 ロクサーヌに似合いそうな気もする。

「まあ回復役については今後のことだ。今はまだ俺の回復で間に合っているしな。ただ、その可能性を狭めないためにもセリーの武器は槍がいいと思う」
「分かりました」

 いずれにしても、セリーの武器は槍の方がいいだろう。
 セリーの武器を槍に変えることで了承を得た。
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