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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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スキルスロット


 朝、セリーからアルコールの臭いは完全に消えていた。
 口の中をたっぷり舐め回したが、アルコール分は感じられない。
 伸ばした舌を隅々まで這わせても、不快な感じはない。
 分泌された湿り気を舌で絡め取り、あるいは吸い取っても、いつもどおりの清々しい味わいだった。

 積極的になった舌の動きと柔らかな感触を楽しむ。
 セリーが舌を差し入れ、俺の口の中を這い回った。
 ぎこちなさはまだあるが、自分から動いてくれている。
 こちらからも舌を絡めて念入りに応じた後、口を放した。

「おはよう、セリー。頭とか痛くないか」
「はい。問題ありません」

 酔いが残っているのかとも思ったが、そんなこともないようだ。
 二日酔いなどもないらしい。
 肝臓の処理能力が人よりも優れているのだろう。
 二日酔いどころか、昨夜酔っていたのかどうかも不明だが。

 ただし、昨夜のセリーは早く寝た。
 ベッドに入るなり瞬殺だった。
 ロクサーヌの生理が終わっていなかったらと考えると、そら恐ろしいものがある。


 早朝はいつもどおりクーラタルの迷宮に入る。
 帰ってくると、ミサンガを作らせてから朝食だ。

「人魚のモンスターカードって、何のスキルをつけられるんだ?」

 朝食を取りながら、セリーに訊いた。

「装備品に水属性をつけるカードになります。武器につけると水流剣のスキルが、防具につけると水防御のスキルがつきます」
「水属性か。武器は何でもいいのか?」
「槍でも杖でも大丈夫です」
「槍でもいいのか」

 槍につけても水流剣とはこれいかに。
 杖につけても水流剣と呼ぶがごとし。

「属性剣のスキルは詠唱が必要なので、防具につけることの方が多いようです」

 まさか、水防御クライムスキル(カタリスト)詠唱オラトリオなしでいけるらしい。
 パッシブスキルなのか。

「コボルトのモンスターカードと一緒に融合するとどうなる?」
「武器につけると水蝕剣、防具につけると水耐性のスキルがつきます。水蝕剣は水流剣より強力で、水耐性は水防御よりも水属性魔法に対する耐性が上がるとされています。えっと。人魚のモンスターカードを入手できたのですか?」
「昨日連絡が来たらしい」

 ロクサーヌの方を見て確認する。

「はい。二千五百ナールだと言っていました」
「モンスターカード融合は失敗することの方が多いので、安い装備品にコボルトのモンスターカードまで使うことはないと思います。水防御をつけられればニードルウッド対策になります。皮のミトンか革の鎧に融合してみるのがいいのではないでしょうか。成功したときに役立ちそうなのは革の鎧です。ただし、失敗したときには素材に戻ってしまいます。いつ私に革の加工ができるようになるかは分かりません。皮のミトンならば、失敗しても比較的早く作り直せるようになるでしょう」

 セリーがまくしたてた。
 やらされる方なので必死だ。
 失敗することは、多分あまりないと思うが。

「じゃあ皮のミトンに融合してもらうか」
「が、がんばります」

 俺が着けている革の鎧は買ったものじゃなくて全滅したパーティーが残していった品だから、空きのスキルスロットはついていない。
 防具屋で買った皮のミトンなら空きのスキルスロットがついている。
 売らなくてよかった。

 ニードルウッドは水魔法を使ってくるから、水防御が有効だ。
 クーラタル迷宮の八階層では役に立つだろう。
 他の階層では分からないが。

 最終的には、階層ごとに有効な装備が異なることになるのだろうか。
 それも大変だ。

「ちなみに、皮のミトンと革の鎧の両方に水防御のスキルをつけて二つ装着すれば、効果は二倍になるか?」
「装備品の効果が重複するかどうかは昔からいろいろ議論されています。はっきりとは分かっていませんが、重複しないという意見の方が多いようです。攻撃力上昇のスキルを複数の装備品につけても攻撃力が上昇しないことは昔の偉い学者さんが確かめています。ただし、他のスキルは重複すると主張する人もいます」

 片手剣に攻撃力五倍をつけて二刀流、とかは無理なようだ。
 まあそれで二十五倍になったら恐ろしい。


 朝食の後、商人ギルドに赴いた。
 入り口左側にある待合室に入る。
 カウンターの向こうにいる職員に防具商人のルークを呼んでもらった。

 俺とロクサーヌはイスに座って待つことにする。
 セリーは、置いてある冊子を懸命に読んでいた。

 待っている間に、待合室の壁の色が黒く変わって誰かが出てくる。
 他の利用客だ。
 待合室の壁はフィールドウォークが使えるらしい。
 今度からはここを使えばいいのか。

「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

 ルークがやってきた。
 案内されて会議室まで三人でついていく。

「連絡をもらった。人魚のモンスターカードが落札できたとか」
「はい。今回は競争相手がおらず、低い金額で落札できそうでしたので。相場よりかなり安くなっております。よろしかったでしょうか」
「大丈夫だ。これからも頼む」
「ありがとうございます。では、こちらになります」

 ルークがアイテムボックスの呪文を唱え、カードを取り出した。
 テーブルの上に置く。


モンスターカード 人魚


 間違いない。
 人魚のモンスターカードだ。

「確かに」
「えっと。落札者になりますので特別に商人ギルドのギルド神殿を利用できます。利用料は十ナールです。支払いはご確認の後で結構でございます。ご確認なさいますよね?」

 モンスターカードを受け取った俺に対しルークがいぶかしげに尋ねてきた。

「確認?」
「はい。モンスターカードが本物であることの確認です」

 あっと。そうか。
 俺は鑑定が使えるからこれが人魚のモンスターカードだと分かるが、普通の人はそうではないのか。
 モンスターカードを見てもただのカードでしかないし、ましてや種類などは分からない。
 それを確認させてくれるのだろう。

 確認すべきだろうか。
 ギルド神殿を見てみたいという好奇心はある。

 しかし、どうせ鑑定が使えるのだ。
 毎回チェックするのはめんどくさい。
 どこかで確認をパスするのなら、最初こそパスすべきだろう。
 最初は警戒もあるから、いきなり贋物を出してくることはないに違いない。

「いや。今回はよしとしておこう。最初の取引から贋物をつかませるようなやつはいまい。それに、ルークのことは信用している」

 恩着せがましく言ってみる。
 ご利益りやくがあるとも限らないが。
 ルークはありがたがってくれるのだろうか。

 ルークがこちらの見込みどおりの人物ではない可能性もある。
 何か悪さをしてくるかもしれない。
 それならば、わざと隙を見せることも役に立つだろう。

 他のところでインチキをされるより、贋物を用意された方がいい。
 モンスターカードの贋物なら確実に見破れる。
 ある種のおとり捜査だ。
 ギルド神殿は、またいつか見せてもらえばいいだろう。

「さようでございますか」

 ルークが無表情に告げる。

「落札価格は二千五百ナールだったな」
「はい」
「それと、次もまた安いモンスターカードが出たら頼みたい」
「かしこまりました。手数料として五百ナールを先払いしていただきます」
「……」

 しばらく待ったが、何の動きもなかった。
 三千ナールのところ、特別サービスで二千百ナール、にはなったりしないようだ。
 合計いくらだ、と聞いてもいいが、そこまで露骨なのもどうか。

 二千五百ナールは実際にルークが出品者に渡しているだろう。
 俺が二千百ナールしか出さなかったら赤字になってしまう。
 さすがにこの状況では三割引きは効かないらしい。


「仲買人を信用しすぎるのもどうかと思います」

 待合室の壁からベイルの迷宮に飛ぶと、早速セリーが忠告してきた。
 さすがは仲買人に対していい印象を持っていないだけのことはある。

「まあ最初だからな。いきなり贋物ということはないだろう。もしあの仲買人が悪徳なら、二回三回と回を重ねていけばそのうち贋物を押しつけようとしてくるに違いない。そのときを見計らって確認してやればいい。後は慰謝料なり賠償金なりでがっぽりだ」

 冗談だが。

「そんなにうまくタイミングが計れるものでしょうか」
「贋物を押しつけるときには、緊張して何がしかのサインが出るものだ」
「分かるのでしょうか」
「俺を誰だと思っている」

 いや。冗談だよ?

「すばらしいお考えです。深謀遠慮を理解せず差し出がましいことを申し上げました。申し訳ありません」

 セリーが頭を下げる。
 冗談だからね。

「俺たちのことを思っての忠告だということは理解している。問題ない」
「ありがとうございます」
「さすがはご主人様です」

 冗談だっつの。

「商人ギルドの待合室で落札の値段を見ましたが、昨日二千五百で間違いなく落札されています。人魚のモンスターカードの前回の落札価格は三千三百でした。相場より安いというのも確かのようです。あの仲買人は私の調べ程度ではなかなか尻尾をつかませません。それを見越しての策略、見事です」

 ホント冗談だから。
 ドン引きしないおまえらに俺がドン引きだよ。


 迷宮から帰ると、融合をしてもらう。
 セリーを食卓のイスに座らせ、装備品とカードを渡した。

「じゃあ、皮のミトンとモンスターカードな」
「は、はい。……あの、失敗したらごめんなさい」

 緊張しているらしい。

「まあ別に失敗しても怒らないから。気楽にやれ」
「ご主人様がこうおっしゃっているのですから大丈夫ですよ、セリー」

 失敗したらベッドでお仕置きだ。
 成功したらベッドでご褒美だ。
 つまり何の問題もない。

 意を決したセリーがスキル呪文を唱え、手元が光った。


防水の皮ミトン 腕装備
スキル 水防御


「おお。さすがだな。セリーは役に立つ。ありがとう」
「や、やりました」

 成功だ。
 スキルのついた装備品が、セリーの手に残っている。

 これで二回連続成功した。
 やはりスキルスロット理論は正しい。
 空きのスキルスロットにモンスターカードが融合できると考えてほぼ間違いないだろう。


 夕食後には、ミサンガを作ってもらう。

「ミサンガを作るのって朝夕一回ずつじゃないと駄目なのか」

 できたミサンガを受け取りながら訊いた。
 ミサンガの方はこれで七回連続空きのスキルスロットなしだ。
 まあ、店に並べてある装備品で空きのスキルスロットがついているものの割合を見ても、そんなに簡単でないことは分かる。
 セリーの成功率が特別に悪いということではないだろう。

 そろそろできてもいいころではないかとは思うのだが。
 いつまでも待つわけにはいかない。
 芋虫のモンスターカードが手に入ってからでは遅い。

 モンスターカード融合は二回連続で成功した。
 空きのスキルスロット理論はおそらく正しいだろう。
 つまり、ミサンガに融合する芋虫のモンスターカードが手に入る前に、空きのスキルスロットつきのミサンガを作ってもらわなければならない。
 簡単なのは、作る個数を増やすことだ。

「大ベテランになれば、ミサンガ程度なら何個でも作れてしまいます。だから駄目というわけではありません。ただし、鍛冶師になってから半年から一年は朝夕一個の修行を繰り返すそうです。無理に作ろうとすると、気持ち悪くなったりします」
「それって、作る前にできそうかどうか分からないか」
「経験を重ねていけば、分かるそうです」

 MP残量だけが問題なら、ある程度感覚で分かるはずだ。
 今のセリーは鍛冶師Lv14である。
 MPの保有量はなりたての鍛冶師Lv1の比ではないだろう。

 そもそも、昼にモンスターカード融合をしているのだから、すでに朝夕一個ずつではない。
 鍛冶師Lv1のときはモンスターカード融合が終わると苦しんでいたが、昼間はなんともなかった。

「セリーは、分からない?」
「そうですね。できそうな気もしますが。でも、最低半年は朝夕一個ずつが限界だと聞きました。できそうな気もしますが、グリーンキャタピラーもそんなに狩っていませんし。でも、できそうな気もしますが……」

 セリーが悩む。
 最低でも半年は修行が必要だと知っているので、自分の感覚に自信が持てないのだろう。
 頭でっかちの悪い癖だ。

「できそうな気がするなら大丈夫だ。まあもう一個いってみろ」

 アイテムボックスにミサンガを入れ、換わりに糸を取り出した。
 セリーに渡す。

「えっと。そうですね。分かりました」

 セリーは、少しためらっていたが、すぐにうなずいた。
 両手の上に糸を掲げると、目を閉じてスキル呪文を唱える。
 手元が光った。


ミサンガ アクセサリー
スキル 空き


「おお。やった」

 できている。
 作られたミサンガには空きのスキルスロットがついていた。

「できました。ありがとうございます」

 俺のやったは違う意味だけどな。
 ついに空きのスキルスロットがついたミサンガが完成した。
 これで勝つる。

「やったじゃないか」
「あの。まだもう何個か作れそうな気がします。半年は修行が必要だと聞いていたのですが」

 やば。

「えっと。急にたくさん作るのもよくないかもしれん。今日のところは二つにしておこう。モンスターカード融合もしたしな」
「そういえばモンスターカード融合もありました。初心者ではほとんどすることはないそうですが。あれは修行とは別なのでしょうか」

 セリーが首をかしげる。
 どんどんド壷に。

「ま、まあ、できたのだから、悩むことはないだろう」
「はい。でも、半年は朝夕一つずつが限界だと教えてくれた人は、私に嘘を教えたのでしょうか」
「どうだろうな。セリーがそれだけ優秀だということだろう」

 セリーに教えてくれた人、すまん。
 通常、半年で鍛冶師Lv14にまでなることはないだろうし。

「いえ。あの優秀ということは」
「大丈夫。セリーは優秀だ。このミサンガもあるしな」

 足に巻いたミサンガを指差した。

「え? どういう……」
「セリーには教えておいてもいいか。実のところ、俺にはその装備品でモンスターカード融合ができるかどうか、ある程度分かる」
「えっと。そうなのですか?」
「多分間違いない」

 モンスターカード融合を続けていけばいずれにしても分かることだし、このくらいは明かしても問題ないだろう。

「でもどうしてそんなことが」
「何故分かるのかは俺にも分からない。昼に防水の皮ミトンを作ってもらったとき確信した」
「そうなのですか」
「最初に作ったミサンガで身代わりのミサンガを作れる鍛冶師は成功するんだろう? このミサンガにスキルをつけるときを楽しみにしている」

 当惑したような表情のセリーに向かって、俺は力強くうなずいて見せた。
+注意+
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