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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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ジンギスカン


 今日の夕食はジンギスカン鍋である。

 独特の鍋はないが、ジンギスカン鍋だ。
 専用のタレもないが、ジンギスカン鍋だ。
 ボスを狩って得たヤギの肉だが、ジンギスカン鍋だ。

 鉄のプレートを二枚とこげてもいいような木の台を用意する。
 木の上に鉄のプレートを載せ、石を積んでさらにその上にもう一枚のプレートを重ねて、プレートの間には炭を置く。
 炭に火をつけ、上のプレートで肉と野菜を焼いた。

 どう見てもただの鉄板焼きです。
 本当にありがとうございました。

 いや。ジンギスカン鍋だ。
 せめてもと魚醤を使ったのでとろみなし回鍋肉ホイコーローみたいになってしまったが、ジンギスカン鍋だ。

 ジンギスカン鍋だと俺が言ったから、今日の料理はジンギスカン鍋。
 肉汁を使って野菜を味付けしたのだから、大体あってる。

「そろそろか」
「ありがとうございます、ご主人様」
「ありがとうございます」

 焼けたのを見計らって、取り分ける。
 肉を分けるのは主人である俺の仕事だ。
 ダディクール。
 というか、ロクサーヌもセリーも菜箸が使えない。

 ロクサーヌが作った煮込み料理、セリーが作ったスープ、買ってきたパンと一緒にいただく。
 味の方もなかなかよくできたといっていい。
 昨日の失敗を糧にしただけのことはある。

「おいしいです」

 この味がいいねとロクサーヌも言ったから、今日の料理はジンギスカン鍋。

 肉も野菜も美味い。
 食卓で肉を焼き、美人二人と会話を楽しみながら、ジンギスカン鍋に舌鼓を打った。
 戦地メイミョウで芸者に囲まれた牟田口中将並みの贅沢だ。

「セリーがなんで奴隷になったか、聞いてもいいか」
「えっと」
「いや、別に言いたくなければ言わなくていいが」

 会話のついでに訊いてみる。
 家に本があったことについてのロクサーヌの突っ込みも問題はないようだった。
 このくらいは大丈夫だろう。

「兄が迷宮で怪我をしたのです」
「怪我か」
「私の父にはあまり才覚がありません。我が家の収入は兄が頼りでした」

 セリーの祖父の代は羽振りがよかったらしいからな。
 没落させたセリーの父は、実際に才覚がなかったのかもしれないし、結果として没落させたために悪く思われている面があるのかもしれない。

「怪我くらいならば借金でもして薬を買えば」
「まあ怪我なら上位の傷薬を買えば治せるか」

 ロクサーヌの意見に同意する。

「そうですね。多分、私を売ったお金で薬を買ったと思います」
「借金では駄目なのか?」
「一度借金をすると、抜け出すのが難しくなります。少しの借金をしたばかりにどんどん苦しくなっていく家をたくさん見てきました。うちにはそうなってほしくなかったのです」

 そういうものなのか。
 一度はまったら抜け出せないというのはありそうではある。
 きっと金利も高いし、取り立ても厳しいのだろう。

「確かに、そういう家はありますね」
「一度お金を借りると、他のことでもすぐ借金に頼るようになったり、最初は小さな金額だったのに、そのうちに借りる金額も大きくなって返せなくなったりします。そうなれば最後は一家離散です。だから、そうなる前に私を奴隷として売ってくれるよう持ちかけたのです」
「自分から言い出したのか」
「はい」

 合理的というかなんというか。
 状況を考えれば、ベストでなくともベターではあったのかもしれないが。

「たいしたものだな」
「いえ。普通に考えればそれが最善です。鍛冶師や巫女への転職にも失敗してしまいましたし。それに、奴隷になればブラヒム語を習うことができます。奴隷を買えるような人はたいていブラヒム語を話しますから」
「ブラヒム語か」

 奴隷になることにもメリットはあるということか。
 この世界、ブラヒム語が話せればいろいろとつぶしは効くだろう。
 セリーの場合、ブラヒム語を習うために奴隷になったという可能性も否定はできない。

「弟も妹もまだ小さいですし、収入を支える兄を売るわけにもいきません。家族のためにも、私が売られることが一番よかったのです」

 さすがに父親を売るわけにはいかないのか。
 あるいは娘にすら才覚がないといわれる父だけに、高くは売れないのか。

「そうか。まあ今は俺たちも家族になったようなものだ。今後は俺たちのためにがんばってくれ」
「もちろんです。こちらこそよろしくお願いします」
「セリーもすばらしいご主人様に出会えてよかったですよ。なにしろ最高のご主人様ですから」
「はい」

 ロクサーヌの場合、天然でそう思っていそうなところが恐ろしい。
 もっと肉食え、肉。
 肉をロクサーヌに回してやる。

 ジンギスカン鍋はなかなか好評のようだ。
 減り具合を見れば分かる。
 三人でばかすか食い、用意した材料も残り少なくなっていた。

 締めに焼きそばがないのが残念だ。
 しまったな。用意すればよかった。
 この世界にもパスタっぽい麺類はある。
 あれを使えば、なんとかなるのではないだろうか。

 ただし、パスタと魚醤で焼きそばがうまくできるかどうかは分からない。
 いきなりでは失敗が怖い。
 今度付け合せ程度のものを軽く作ってみるべきだろう。

「ありがとうな。そういえば、探索者というのは奴隷の主人としていい条件なのか?」

 買うときに気になったことを訊いてみた。
 ロクサーヌはいい条件だと言っていたが、本当なんだろうか。

「えっと。言ってしまっていいのでしょうか」
「大丈夫ですよ。ご主人様ですから」

 ロクサーヌが援護してくれる。
 いいにくいことなんだろうか。
 そらそうか。
 主人に向かって、こんな主人がいいとはいいにくい。

「では。条件のいい奴隷の働き口というのには三パターンあるそうです」
「三つか」
「一つは、大金持ちに買われて、特別に気に入られたような場合です。上の地位につけてもらえれば、待遇も環境もよくなります。多くの奴隷がいるところでは一番奴隷にも相当な権力があります」

 多分、奴隷をたくさん使うところでは、奴隷の管理を奴隷にさせたりもしているのだろう。
 管理者の地位につけてもらえば、待遇も変わってくる。
 会社に入るなら中小企業より大企業というところだろうか。
 ちょっと違うか。

 二人しか奴隷がいないところの一番奴隷というのはどうなんだろう。

「あ、それは私も聞きました」
「ロクサーヌさんもですか」

 ロクサーヌもセリーも同じところにいたのだから、同じ話を聞いていても不思議ではない。

「上の地位は知りませんが、妾になることもあるそうです。大金持ちの妾になれば、何不自由なく暮らせると言われました」

 うん。
 ロクサーヌよ、それは自慢というものだ。

 妾になるには器量がよくなければいけない。
 あの奴隷商人はロクサーヌを妾として売り込むつもりもあったのだろう。
 だからそんな話をロクサーヌに聞かせたのだ。

「えっと。大金持ちに買ってもらって、特別に気に入られて、となるとかなりの幸運が必要そうだな」

 話を元に戻す。

「もちろんめったにあることではありません。ただ、望まずに奴隷の境涯に落とされた人の中には、大金持ちのお気に入りを夢見る人も多いみたいです」
「現実逃避か」

 たくさんいる奴隷の中から抜け出るには、実力も運も必要だろう。
 そんな幸運があれば奴隷にならなくて済んだくらいの。

「もう一つ条件がいいのは、つれあいを亡くした人が後添い代わりに奴隷を買う場合です」
「そんな話もあるのか」
「すでに子どもが大きくなっている場合、下手に再婚すれば相続でもめます。種族の違う奴隷を買えば、後継問題は発生しません。だから、子どもが勧めるのです。奴隷を買っておけば、最後の面倒も奴隷が見てくれます」
「介護要員か」

 この世界にもいろいろあるようだ。
 奴隷を買うくらいだから金はある。
 だから相続でもめるのだろう。

「本人が亡くなったときには遺言で奴隷身分から解放してくれることが多いようです。後添いに奴隷を買うような人は年もいっています。奴隷にしても、長い間酷使されるよりはいいでしょう」
「またずいぶんとぶっちゃけたな」
「そういうケースでは主人となる人も人生の成功者で、穏やかな人が多いそうです。後々面倒を見てもらうために待遇も悪くありません」

 介護してもらうときに虐待されても困るから、待遇はいいのだろう。
 待遇が悪いと寝たきりになってから復讐される。

 ボケたときに、奴隷が飯を食わしてくれないとかは言い出しそうだが。
 奴隷がお金を盗んだ、とか。
 奴隷の方が圧倒的に立場が弱いから、一方的に処罰されてしまうのではないだろうか。

 ただし、認知症を患った人が長生きできるような医療介護環境がこの世界にあるかどうかは疑わしい。
 現代日本と違って大家族だ。
 一つの家に暮らしていれば、分かることも多いだろう。
 普段は離れて暮らしている小姑がうるさく口出ししてくる、ということもあまりなさそうだ。

「そして三番目が、迷宮探索用として奴隷を買う場合です」
「結構落差があるような」
「それは仕方がありません。前の二つのケースなど、実際にはほとんどありませんから」
「それはそうなんだろうが」

 それにしても、という気はする。

「探索用の奴隷でも最初は他の奴隷と変わりません。ただし、探索用の奴隷は戦闘技術を磨いてどんどん強くなっていきます。強くなった戦闘奴隷は替えが利きませんから、待遇もよくなるし、ひどい扱いもなくなります」
「なるほど」

 農場や鉱山や家庭内で働かされる奴隷はいくら仕事を覚えたところでたかが知れている。
 主人よりも稼げるようになることはまずほとんどないだろう。

 対して、迷宮に入る奴隷にはレベルアップがある。
 主人を上回ることさえ、不可能ではない、かもしれない。
 実際にはパーティーを組まされるだろうが。

 そして、レベルが上がって強くなれば、待遇も上がる。
 強くなれば迷宮で死ににくくなるし、せっかく強くなった奴隷を使い捨てるのは効率が悪い。
 レベル一桁や十いくつの奴隷ならいくらでもいるだろうが、四十五十と上がっていけばそうはいかない。
 大きな顔もできるというものだ。

「ご主人様だから言ってしまいますが、強くなった奴隷は待遇が悪いと他の人に話を持ちかけて買い取ってもらうこともできるそうです」

 そんな裏技もあるのか。
 それでは待遇もよくせざるをえないだろう。

 と、ここで気づいた。

「えっと。つまり俺は今後二人をもっと大切にしないといけなくなるということでは」
「い、いいえ。これはご主人様だからお話したのであって、私は他の人に話を持ちかけるつもりはまったくありません」
「わ、私もありません」

 ロクサーヌもセリーもどんどんレベルが上がっていくだろう。
 そうなれば他の奴隷で代替することが難しくなる。
 今だって十分替えは利かないというのに。

「私はご主人様以外の人に買われるなど死んでも嫌です」
「わ、私もです」

 替えが利かなくなれば、力関係が変わる。
 力関係が変わり、立場も逆転するだろう。
 二人のレベルが四十五十と上がっていけば、まさに俺からお願いして一緒にいてもらう形になるかもしれない。

「私は今のままの待遇でもとても幸せです」
「私もです」

 馬鹿な。
 俺はこれからロクサーヌに頭が上がらないということなのか。
 今だってロクサーヌにはどれだけ感謝してもしたりないくらいなのに。
 今後どうなってしまうというのか。

「なんでしたら、もっと悪い待遇にしてもいいです」
「そうです」

 いや、そんなことはない。
 主人より優れた奴隷なぞ存在しない。
 やらせはせん、やらせはせん、やらせはせんぞぉ。

「うむ。では、二人の待遇について、ゼロベースで見直してみたい」
「はい、ご主人様」
「かしこまりました」
「厳しく査定するので、そのつもりでいるように」

 この際、待遇を見直すのがいいだろう。
 二人には俺が主人であると思い知ってもらわねばなるまい。

「えっと。まずは食事ですね。ご主人様と同じ食事をいただくというのは待遇がよすぎるかと思います」
「食事は駄目だな。食うものがなくては戦争はできない」

 それが合理的というものである。

「では別の場所で食べさせるとか」
「食事の間に情報収集ができないし、他の時間に食べるのは効率が悪い」
「ご主人様がテーブルについて、私たちは床の上でいただくとか」

 床の上って。
 それもどうなんだろう。

「別にそこまでしなくても」
「では服です。もっとぼろいものでもいいと思います」
「そうです。奴隷が着る服としては上等すぎます」
「服か。ロクサーヌもセリーも美人だからなあ」

 ため息をつく。

「あ、ありがとうございます。ご主人様」
「ありがとうございます」
「服は駄目だな。綺麗にしていてくれた方が嬉しいし。他の人に見せびらかすならともかく。俺の前でも多少着飾るくらいがちょうどいい」

 首を振った。

「ありがとうございます。食事と服が駄目だとすると」
「後は住環境ですね」

 そう、住環境。
 衣食住のうち、衣食は駄目だから残りは住環境ということになる。

 住環境には主人である俺の威厳がにじみ出ている。
 住環境こそ、俺が主人であると二人に認識させるにふさわしい。
 住環境こそ、主人としての俺の存在感を示せる場所だ。
 二人とも自らの立場を身にしみて実感するであろう。

「それだ」
「やはりご主人様と一緒のベッドで寝るというのは畏れ多いのでは」

 なん……だと……?

「……それは駄目だ」
「ご主人様と一緒にお風呂に入らせていただくのも、畏れ多いです」

 何故だ。

「それも……駄目だ」
「後、ご主人様が奴隷の身体を石鹸で洗ったりするのも畏れ多いです」

 まさか。
 俺の毎日の楽しみが。
 それを奪うというのか。

「……ぐっ……だ、駄目だ」
「えっと。他には」

 もうやめてロクサーヌ、俺のHPはゼロよ。

「えー。二人の待遇を見直した結果、以上のとおり決定したので、ここに通知したい」
「えっと。結局、今までと変わらないということでしょうか」
「そう、なるな。これからもよろしく頼む」
「よくしていただいていることが改めて分かったので、見直したのもよかったと思います」

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