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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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初めての薬


 ベイルの町を歩いた。

 夕方近くになって、市も終わりかけらしい。
 店じまいをしている露店も結構ある。

 ほどなくしてベイル亭に到着する。
 中に、旅亭Lv28の男がいた。

「よう、お帰り」

 どうもあまり高級旅館という雰囲気はない。

「鍵を」
「あいよ」

 三一一の鍵をよこす。

「夕食はもういいか」
「ああ。食堂の入り口でメニューを選んでくれ」
「夕食が済んだら、お湯を頼む」
「二十ナールだ」

 あれ?
 三割引きは?
 仕方ないので、リュックサックを下ろして銅貨二十枚を取り出した。

「ちなみに、これは薪にでもならんか」

 キャラクター再設定で三十パーセント値引を買取価格三十パーセント上昇につけ替え、リュックサックからブランチを取り出して男に見せる。

「それはブランチじゃないのか」
「そうだ」
「うちじゃあ火力が強すぎるな。それは鍛冶師なんかが使うものだ。鍛冶師は直接取引きするのを面倒がるから、ギルドにでも売るんだな」
「ふむ」

 ギルドに売るしかないらしい。

「ここの迷宮は一階層がブランチを残すニードルウッドらしいな」
「そうだな」
「で、二階層がグリーンキャタピラー、三階層がコボルトとか。ご愁傷様ってとこだな」

 迷宮ではニードルウッドしか見ていない。
 階層によって出てくる魔物が違うのだろう。

 ここの迷宮と言ったから、迷宮によって出てくる魔物は異なるようだ。
 口ぶりからして、いい魔物の組み合わせではないらしい。

「まあしょうがないさ」
「確かに、浅い階層はな。そういうところを見ると、あんた相当強そうだね」

 浅い階層はしょうがない。
 →深い階層に潜れる自信がある。
 →強い。
 ということか。

 話をごまかそう。

「行けるところまでは行くつもりだ。ところで、この町の冒険者ギルドはどこにある」
「四軒左だ」

 男が指差した。
 それらしい建物があっただろうか。

「ふむ。行ってきた方がいいか」
「買取だけならすぐ済むから行ってきなよ」
「分かった。ではこれを頼む」

 渡してもらった鍵を再び預け、ベイル亭を出た。


 四軒左と。
 冒険者ギルドの建物に入る。

 中は探索者ギルドよりも一回り大きかった。ちょっと大きな郵便局、といったところか。
 人が五、六人ほどいる。
 奥にカウンターがある構成は探索者ギルドと同じだ。

「買取を頼む」

 カウンターの前に立った。
 なんにせよ、一度ギルドでの買取を経験しておこう。

 奥にいるのは、お姉さんというには微妙な年齢のアラサーの村人だ。
 顔はそれなりか。
 ロクサーヌと比べなければ。

「こちらにお載せください」

 女性が大きなトレーを差し出した。

「これを」

 リュックサックからアイテムを出して載せる。
 ブランチは全部で三十三本だった。
 あとはリーフが三枚。

「冒険者ギルドには加入しておられませんよね」

 女性が確認してくる。

「加入してないが」
「リーフは毒消し丸の原材料です。冒険者ギルドに加入していれば、リーフを売却したときに同数の毒消し丸を半額で購入する権利が与えられます。毒消し丸は冒険者の必需品ですから」

 待て。
 毒消し丸があるということは、もちろん毒があるということだろう。毒がなければ毒消しは必要ない。
 その毒消し丸が冒険者の必需品ということは、冒険者は毒に冒される危険と常に隣りあわせということだ。
 ひょっとして、何も持たずにダンジョンに入ったのは無謀だったんじゃないだろうか。

「毒消し丸が買えるか」
「ギルドに加入していなければ、正価になりますが」
「いくらだ」
「百ナールです」
「ふむ」

 高いような高くはないような。

「リーフを食べることでも毒は消せます。リーフの買取価格は八十ナールとなっております」

 逆ザヤになるじゃないか。
 それをわざわざ教えてくれる冒険者ギルドのお姉さんは親切だ。

「分かった。リーフを買取に出すのはやめておこう」
「はい。では少々お待ちください」

 リーフをしまうと、女性はブランチの載ったトレーを持ってギルドの奥に引っ込んだ。

 手持ち無沙汰になったのでギルド内を見回す。
 左側の壁が突如として黒くなった。
 黒い壁ができて、中から人が出てくる。

 あれは、ダンジョンウォーク?

 迷宮内じゃなくても使えるのだろうか。

 壁から出てきたのは冒険者が二人。探索者はいない。

「ターヘラの町、片道の人はいませんか」

 出てきた冒険者が告げた。
 誰も反応しないのを見ると、なにやら唱え、また黒い壁を出して、その中に消えていく。

 ダンジョンウォークじゃなくて、フィールドウォークと唱えたような。
 違うスキルなのか。

 そういえば、迷宮入り口近くの木にも黒い壁が現れた。六人の人が出てきた壁だ。
 探索者にダンジョンウォークがあるように、冒険者にはフィールドウォークがあるのだろう。
 ダンジョンウォークで迷宮内を移動できるなら、フィールドウォークでは他の町と行き来することが可能なのではないだろうか。

 おそらく、あの二人はターヘラの町へ行ったのだ。

 ここには何のためにきたのだろうか。
 と思っていたら、また黒い壁が現れて、人が出てきた。
 今度は六人だ。さっきの冒険者の片割れもいる。
 六人はギルドの外に出て行く。

 うーん。
 何がしたかったのか、よく分からん。

「お待たせしました。こちらになります」

 頭をひねっていると、女性が戻ってきた。
 皿の上には銀貨が六枚と銅貨が何枚か載っている。銅貨を数えると四十三枚あった。
 六百四十三ナールか。

 ただの木の枝にしては悪くないような気もするが、高くはない。
 いずれにしても、一日に金貨一枚は夢のまた夢というところだろう。
 もっと長時間こもるか、ダンジョンの深い階層に行ければ、違うのかもしれないが。

 買取価格三十パーセント上昇をはずし、三十パーセント値引につけ替える。
 めんどくさい。

「毒消し丸以外に、ここで売っている薬があるか」
「消毒薬以外では、各種の傷薬、疲労回復薬、柔化薬、抗麻痺薬、万能薬などを扱っております」

 察するに、傷薬はHP回復、疲労回復薬はMPを回復する薬だろう。

「柔化薬と抗麻痺薬はいくらになる」
「柔化丸、抗麻痺丸がともに百ナールです」

 値段は毒消し薬と一緒か。

「うむ。では、柔化丸、抗麻痺丸を二つずつくれ」

 とりあえず、二つずつ買っておくことにする。
 どれだけ使うか分からない。大量に買い込むこともないだろう。

「かしこまりました」

 女性は一度席を立ち、すぐに戻ってきた。
 白い丸薬を二個と黄色い丸薬を二個、カウンターに置く。


柔化丸

抗麻痺丸


「うむ」
「白いのが柔化丸、黄色い方が抗麻痺丸になります」

 色で分けてあるのか。
 俺は鑑定が使えるから間違えることはない。

 銀貨四枚をカウンターに出す。

 抗麻痺丸は、名前のとおり体が麻痺したときの薬だろう。
 柔化丸はなんだ。
 身体が堅くなったときの薬。石化魔法でも存在するのだろうか。

 女性は、一、二、三、四と数えながら、銀貨を一枚自分の方に引き交互に丸薬を俺の方へと差し出した。
 せっかく用意したのに、三割引は使えないようだ。

 何も入っていない小袋に丸薬とリーフを入れ、リュックサックにしまう。

「ちなみに、冒険者ギルドに入るにはどうすればいい」
「冒険者になるのは比較的条件が単純です。探索者Lv50以上であること、探索者ギルドや他のギルドに加入していないことです。加入したいのであれば、係りのところへ案内しますが」
「いや。そういうわけではない」

 あわてて否定すると、リュックサックを背負い、冒険者ギルドを出た。

 冒険者は探索者の上級職、ジョブ獲得条件が探索者Lv50というところか。
 ギルドへの加入が条件に影響するかどうかは分からない。

 探索者ギルドと冒険者ギルドは仲が悪いと言っていた。
 それはそうだろう。
 探索者ギルドからすれば、冒険者は探索者を踏み台にしていることになる。
 よくいえば、探索者は冒険者の卵、見方を変えれば、探索者は冒険者になれなかった残りかすだ。

 俺自身がどこかのギルドに入ることは、慎重になった方がいい。


 宿屋に戻り、鍵を受け取った。
 すぐ横の食堂に入る。

 食堂の入り口におかれたテーブルに、食事が四つ置かれていた。

「夕食はこの中からお選びいただけます」

 Lv28の男とは別の、旅亭の女性が手を広げて案内する。
 彼女が食堂の担当だろうか。

 なるほどね。
 メニューではなくて、実物を選ばせるのか。
 メニューを読めない者がそれだけ多いのだろう。

 もっとも、テーブルにはなにやら一文字書いてある。
 どこかで見た、というか、現在手に持っている鍵に書いてあるのと同じ文字だ。

 鍵に書いてあるのは、多分部屋番号の三一一だろう。
 右上のこの料理が一ということになる。

「これを」
「かしこまりました。お飲み物は何にしましょうか」

 ガーン。
 一ですね、と復唱してくれるのを期待したが、スルーされた。
 思惑がはずれた。

「飲み物は何が」
「ビールか、ワインか、ハーブティー。スライム酒などは別料金となります」
「ハーブティーで」
「かしこまりました。あいている席に座ってお待ちください」

 日本にいるときに少しだけ酒を飲んだことはあるが、限界量が分からないので、ここで飲むのはやめておいた方がいいだろう。
 リュックサックには金貨三十三枚がある。

 席に着くと、料理はすぐにやってきた。
 パンと、カップに入ったスープ、野菜を煮込んだシチュー、肉を焼いたもの。
 量は結構ある。一日二食だからだろう。

 パンは柔らかくて、スープとシチューも美味い。
 肉は牛肉っぽく、こちらもまずまずだ。割とコショウが利いている。
 コショウなんて高いんじゃないのか、という気がするが、勝手な思い込みか。

 これなら日本でも金が取れる。
 結構レベル高い。
 少し高かったが、夕食つきにして正解だ。


 食事を堪能し、部屋に戻った。
 日が傾いている。
 木窓からこぼれる光で部屋の中が赤い。

 入ってすぐ、ドアがノックされた。

「どうぞ」
「失礼します。お湯を持ってきました」

 初めて見る男がたらいに入った湯を持ってくる。
 男は、たらいを床に置き、タオルをたらいにかけると、すぐに出て行った。
 チップはいらないらしい。

 服を脱いで、体をぬぐう。
 この世界にお風呂はないようだ。
 あっても、金持ち用の贅沢品なのだろう。

 このお湯だって二十ナールだから、安くはない気がする。
 しかし汗をかいたままというのも気持ちが悪い。

 体を拭いた後、はいていたトランクスを洗った。
 俺が持っている唯一の下着だ。
 この世界の下着がどんなものか知らないが、市が立っている今日、予備を買っておくべきではなかったろうか。
 しまった。

 石鹸や洗剤があるなら、それも買っておきたかった。
 お湯に付属でつけられていないところをみると、ないのかもしれないが。

 後は歯ブラシと歯磨き粉か。
 これもあるかどうかは分からん。

 あるのなら靴下も買いたい。

 次に買えるのは五日後か。
 不便だな。
 コンビニがほしい。


 買い物リストの次は、アイテムボックスについて考えよう。
 アイテムボックスと念じた。

 まずはシミターを入れてみる。やはり左右に何か入りそうだ。

 リュックサックを押しつけてみるが入らない。
 大きさ的に駄目なのかと思って巾着袋を入れてみるが、これも駄目だった。
 リュックサックや巾着袋はアイテムではないから駄目なのか。

 小袋からリーフを取り出し、シミターの左に入れる。
 二枚とも入った。
 柔化丸や抗麻痺丸は入らない。

 リーフが入ったスペースを右に移動させると、左のスペースに柔化丸が二つ入った。
 抗麻痺丸は入らなかったが、さらにその左のスペースには二つ入る。

 抗麻痺丸が入ったスペースの左は、一周してシミターの入ったスペースだ。
 抗麻痺丸と柔化丸、リーフを取り出す。

 硬貨は入らないだろうか。


銀貨


 おっと。鑑定できた。
 硬貨を鑑定するなんていうことは思いつかなかった。

 これで贋金をつかまされるおそれはなくなったわけか。
 いちいち鑑定するのも面倒だから分からないが。

 銀貨は四枚まで収納できた。
 隣のスペースにも四枚入る。

 銅貨は入らない。
 混ぜることはもちろん、単独でも入らないし、鑑定もできなかった。
 銅貨はアイテムではないようだ。

 金貨を取り出す。
 鑑定もできるし、四枚まで入る。
 金貨と銀貨を混ぜることはできないようだ。
 金貨が四枚か、銀貨が四枚。
 シミターを取り出すと、そこにも金貨が四枚入った。

 なるほど。四種類のものを、四つずつ。
 探索者Lv4だからだろう。
 探索者Lv1のときにはシミター一本でいっぱいになった。

 金貨と銀貨を取り出し、アイテムボックスに、リーフ二枚、柔化丸と抗麻痺丸を二個ずつ入れる。
 薬は、リュックサックに入れるよりも、いざというときのためにアイテムボックスに入れておいた方がいいだろう。


 続いて考えるのはジョブだ。

 詠唱省略は相当に有用なスキルだと考えていいだろう。
 詠唱省略を獲得するのに必要なボーナスポイントは3だ。
 ファーストジョブがLv4以上であれば、他のものを削らなくても詠唱省略をつけることができる。

 現在、探索者がLv4である。
 村人Lv6と替えるべきだろうか。

 探索者にするメリットは、村人をはずして効果の大きなジョブをつけることができることだ。
 アイテムボックスやダンジョンウォークのことを考えれば、探索者をはずすことは考えられない。

 村人にするメリットは、すでにレベルが高いことだ。
 村人Lv8まで育てれば、詠唱省略に加えてフォースジョブをつけることができる。
 セカンドジョブに必要なボーナスポイントが1、サードジョブに必要なボーナスポイントが2だったから、フォースジョブに必要なボーナスポイントは倍の4だ。
 あるいはLv6のままでも詠唱短縮で我慢すればフォースジョブをつけられる。

 村人の方が探索者よりも成長が早い可能性もある。
 ボーナスポイントが16ポイントあまれば、必要経験値十分の一か獲得経験値十倍をつけられる。
 成長の早いジョブをファーストジョブに置いておくことは長期的に結構な利点となるだろう。

 とはいえ、16ポイントは遠い。
 経験値が四分の一に分散されるおそれがあるので、フォースジョブもどれだけ有益かは分からない。

 ファーストジョブは探索者にしよう。
 ジョブ設定と念じた。


戦士 Lv1
効果 体力小上昇 HP微上昇
スキル ラッシュ


剣士 Lv1
効果 腕力小上昇 HP微上昇
スキル スラッシュ


商人 Lv1
効果 知力小上昇 精神微上昇
スキル カルク


薬草採取士 Lv1
効果 知力小上昇
スキル 生薬生成


 ジョブが一気に四つも増えている。
 何故こんなに。

 多分ありがちなのは、村人Lv5あたりがジョブの獲得条件になっていたことだろう。
 上昇効果が二つある戦士、剣士、商人あたりはくさい。

 薬草採取士は、単純に薬草を採取したからか。
 薬草ではないが、リーフを拾った。

 うーん。
 村人Lv10や村人Lv20で獲得できるジョブがあるかもしれない。
 このまま村人をつけた方がいいのだろうか。
 しかし、村人Lv99で獲得できるジョブなんかがあったら大変だ。先は長い。
 まあそのときはそのときだろう。

 ファーストジョブを探索者Lv4につけ替える。
 セカンドは英雄Lv3のままで、サードジョブを商人にした。
 スキルを試してみたいので。

 戦士のラッシュと剣士のスラッシュは、名前からいっても職業からいっても、攻撃時に使用するスキルだろう。
 商人の方はどうか。

 カルク、と念じてみるが、何も起こらない。何も変わらない。
 何かできるわけでもないようだ。
 二二四×三六五とか計算したかったのに。

 と思ったら、八一七六〇という数字が頭に浮かんできた。

 これが二二四×三六五の答えだろうか。
 カルクはパッシブスキルなのか。

 一日二百二十四ナールの三百六十五日で、かけることの六十年として。
 四九〇五六〇〇。
 金貨五百枚あれば、俺はおよそ死ぬまでこの宿屋に厄介になれる。
 あってるのかね。

 百×百は一〇〇〇〇。まあそうだ。
 百万×百万は一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇。
 ……うん、俺が悪かった。正解かどうか分からん。


 商人をはずして、薬草採取士をつける。

 使用するのはスキル生薬生成だ。
 使う対象はリーフ。

 日も暮れたのか暗くなってきているが、アイテムボックスからリーフを取り出す。

 リーフを一枚手に取って生薬生成と念じると……。
 毒消し丸が十個生成された。
+注意+
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