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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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ロクサーヌ

 
 ベイルの町でやるべきすべての用事を済ませた。
 俺は今、自由だ。
 そして自由であると同時に空虚でもある。

 何をしてもよい代わりに、何かをしなければならないわけでもない。

 商人と別れたことで、俺のことを知る人間もいなくなってしまった。
 そう考えると、急に寂しくなってくる。

 この世界には俺のことを知る者は誰もいない。
 その中で、俺は一人ぼっち、生きていくのだ。

 不安だ。
 そこはかとなく不安になる。

 そういえば、一人いたか。
 奴隷商人。彼が待ってくれているはずだ。
 別に待っていてほしくもないが。

 情報収集もかねて、行ってみることにする。
 迷宮のことも聞かなければならない。

 俺は皮の鎧と皮の靴を持って、建物の陰に入った。
 皮の鎧を服の上から着け、皮の靴はリュックサックにしまう。
 腰には銅の剣とシミターを二本差しだ。まあ日本人だしな。侍スタイルだ。

 誰も見ていないことを確認して、渡された懸賞金の小袋も開けた。
 金貨が十六枚と銀貨が大量にある。

 懸賞金は十六万何千ナールということか。
 また銀貨が増えてしまった。
 五円玉十円玉を使い慣れた身には、百枚ごとに上がっていくこの世界の通貨は不便だ。

 村長がくれた礼金の方は金貨十五枚だった。
 価値は分からないが懸賞金とほぼ同額か。

 現在の持ち金は、金貨三十三枚と、銀貨、銅貨がたくさん。
 金貨だけをまとめて礼金の入っていた巾着袋にしまう。

 リュックサックを閉じ、背負った。
 市が開かれている通りに戻る。


 道は結構なにぎわいを見せていた。
 よく見ると、人間ではない種族も交ざっているようだ。

 ケモノミミの男性、しっぽのある子ども、耳の尖った女性もいる。
 エ、エルフだ、エルフ。
 あまりジロジロと見るわけにもいかないので、商品を見る振りをしながら、こっそり覗いた。


ジェリカ・ハートマ ♀ 37歳
剣士Lv46


 人間以外だと、男、女ではなく、♂♀になるようだ。
 顔はかなりの美人さん、胸も多分それなりにある。年齢は37歳ということだが、まだ二十代にしか見えない。

 と。店の人らしい商人がやってくる。
 捕まる前に逃げ出した。

 基本的には人間が多いようだが、他の種族も違和感なく馴染んでいる。
 さすがは異世界だ。

 市を冷やかしながら歩いた。
 相場を見てみたいが、値札が張られてないので分からない。
 客と商人の会話も、半分以上はブラヒム語ではないので聞き取れないし。
 見た目ニンジンのあの果物も売っていたが、値段は分からなかった。


 市を抜け、奴隷商の館へ向かう。

「ちょっといいか」
「あ、先ほどの」

 前と同じ、見習いらしい若い男が飛び出してきた。

「主人のアラン殿にお会いしたい」
「それでは、中に入って少々お待ちいただけますか」

 館の中に通され、入り口横の部屋に案内された。
 さっきとは異なる応対だ。
 売りに来たときとは違って客扱いということか。

 部屋には絨毯が敷かれ、壁に高そうな絵が飾られており、ソファーではないが高級そうなイスとテーブルが置かれている。
 いかにも上客のための待合室という風情だ。

「ミチオ様、お待ち申し上げておりました」

 奴隷商人はすぐにやって来た。
 まだイスにも座っていないのに。

「うむ」
「それでは、こちらへどうぞ」

 主人自ら案内する。
 もっとも、案内されたのはさっきと同じ部屋だった。

「先ほどは迷宮があると言っていたが、どこにあるのだ」

 奴隷商人から営業を受ける前に、聞きたいことは雑談として訊いてしまおう。

「この町の西側、森に入ってすぐのところでございます。おかけください」
「西というと、来た方向とはちょうど反対だな」

 太陽を背に進んできたので、ベイルの町には東から入ったはずだ。
 ソファーに腰かけると、使用人が俺と奴隷商人に飲み物を持ってきた。
 使用人というか、メイド?


ロクサーヌ ♀ 16歳
獣戦士Lv6


 白いエプロン部分と広がったロングスカートが特徴の紺のワンピースを着ている。
 メイド服だ。この世界にもメイドがいるらしい。

 顔は、

 ……。

 美人。
 ものすごい美人である。

 女優やアイドルでもなかなかここまではいないというくらいに美しい。
 いやすごい。この世界の美人は地球より上だ。

 華麗な唇に、魅惑的なとび色の瞳。髪はそれよりも濃い鮮やかな栗色だ。三角巾みたいな白い帽子をつけていた。

「どうぞ」

 その美人さんが俺の前に飲み物の入ったカップを置く。
 置くときに胸がたゆんと揺れたよ。
 すごすぎです。

「あ、ありがとうございます」

 素で答えちまった。

 この世界の衣服はゆったりとしただぶだぶのものが多いようだ。女性の胸の大きさは結構分かりにくい。
 このメイド服も、前かけのエプロン部分も相まって、かなりゆったりしている。

 しかし揺れた。
 確かに揺れた。
 俺の目が、胸元の揺れを観測した。
 あの揺れだと中身は相当のものだろう。

「迷宮は二日前に入り口が見つかったばかりなので、まだ殺すには時間がかかると思います」
「そうか」

 奴隷商人の話など耳に入っていない。
 いや、だって美人の上にあの胸ですよ。

 身長は俺と同じか少し低いくらい。多分百六十ちょっとか。
 服からの露出はほとんどないが、手や顔を見るに、決して太ってはいないだろう。
 それなのにあの揺れなのか。

 ♀と出たからにはロクサーヌは人間以外の種族なのだろう。
 耳は、帽子と髪の毛で見えない。

 ロクサーヌが奴隷商人の前にもカップを置く。

「どうぞ、お飲みください」
「……悪いな」

 いまさらだが。

 奴隷商人に勧められてカップを手に取る。
 何かのハーブティーみたいなものだろう。
 俺はゆっくりと口につけた。

 ロクサーヌがお辞儀をして部屋を出て行く。

「お気に召していただけたようで」
「え゛ぁ」

 かろうじて、口の中のものを吐き出さずに抑えた。

「なによりのことでございました」
「……わ、悪くない飲み物だ」
「もちろん、彼女のことでございます」

 やっぱりそうか。

「彼女は?」
「今うちで持っている中でお客様にもっともお薦めの奴隷でございます」

 うん。
 まあそうなんだろう。
 奴隷商人が普通の使用人や見合い相手を薦めてくるはずはない。

 そうか。
 ロクサーヌは奴隷なのか。

「……そういえば、冒険者なら奴隷を買うとのことだが」

 話をごまかした。
 ロクサーヌを買えるのか?
 あんなに綺麗な女性を。

「そうですね。どこから説明いたしましょうか。ミチオ様もパーティーを組んだことはおありになるでしょう」
「ああ」

 ほんとはないが、当たり前のことのように言ってくるので、あることにする。
 あの美人のロクサーヌが買える?

 頭に血が上ってくるのを感じる。
 俺の顔は今赤くなっていないだろうか。
 いかん。落ち着け。

 奴隷だからといって、何も自由にできるとは限らない。

「パーティーを組めば、より効率よく狩りを行うことができます。ミチオ様のようにソロやコンビの冒険者のかたもおられますが、六人全員をそろえた方が有利です」
「そうだな」

 パーティーメンバーは六人までらしい。

 とはいえ、二十四時間一緒にいれば。
 少なくとも添い寝させるくらいのことはできるはずだ。
 ロクサーヌと添い寝……。

「しかし、六人をそろえることにも問題があります。迷宮は一攫千金が狙える場所です。その分配はどうなるでしょう。白金貨が出たら。あるいは、魔物が非常に高く売れるアイテムを残したら?」

 金貨の上に白金貨というのもあるのか。
 そんなものが出れば当然、ロクサーヌを買う。いや。
 どうなるのかというと、高価なアイテムが出たら独り占めしようとするやつが出てくるだろう。

「もめると?」
「価値のあるものであれば、犯罪に走る者も出てくるでしょう」
「なるほど」

 あの美しいロクサーヌが買える。

 いや、うざい。
 うざいが、頭の中はそれでいっぱいだ。

 あれほど綺麗な女性だったのだ。
 俺が今までに見たことがないほどの。
 その彼女を買う、俺のものにできると言われれば、心がざわめかないはずがない。

「もちろんパーティーメンバーはよほど信頼の置ける人物でなければなりません。あるいはミチオ様のように、師匠と弟子というほど明確な力量差があれば、問題を防げるかもしれません。しかし多くの場合、それでも起きてしまうのがパーティー内でのもめごとでございます」

 ロクサーヌのことは必死に頭の隅に追いやって考える。

 ゲームの中なら、パーティー内でもめごとが起こってもおおごとにはならない。
 ゲームキャラならば変なことはしないし、人間同士でプレイするネットゲームであってもシステム的にできることには限界がある。

 それが現実の中ならばどうか。
 どこまでいっても結局は他人であるパーティーメンバー。そのパーティーメンバーと顔をあわせて実際一緒に迷宮に入る現実。その中に、超高価なお宝が投げ込まれれば。

「例えば、迷宮の中で後ろから一突きということも?」
「ありえます」

 やっぱりあるのか。
 やっぱりロクサーヌを買うのか?

「そうか」
「そこで使われるのが、奴隷でございます。パーティーメンバーが奴隷ならば、迷宮で見つけたものはすべて主人のものになります」

 奴隷ならばもめることはない、と。
 奴隷のものは俺のもの、俺のものも俺のもの、のジャイアニズムか。
 ロクサーヌも俺のものにしたい。

「奴隷が後ろから刺すとか」
「それはございません。所有者が亡くなった場合、基本的に奴隷も殉死します」
「し……死ぬのか?」

 ロクサーヌが誰かに買われてそいつが死んだら、ロクサーヌも死ぬのか?

「まあ、たいていの場合は遺言を用意します。奴隷を誰かに相続させたり、よく働いてくれた奴隷の場合には遺言で解放することもございます」
「なるほど」

 俺が死んだらロクサーヌも解放してあげたい。

「しかし迷宮で殺されるような場合には遺言を用意しているひまがありません。従って、奴隷がそのような行為に及ぶ可能性はほとんど考えなくてよろしいかと存じます」
「殺せないなら、逃げるとか」
「そうですね。よほどひどいところなら、逃げることもありえますが。奴隷が逃げ出しても元のところよりよい生活を送れる可能性はかなり小さいでしょう。奴隷ならば、主人が食事や寝る場所を用意する義務もございます」

 俺もロクサーヌに食事と寝る場所を提供したい。
 特に寝るところを。

 いかん。
 さっきから頭の中がこればっかだ。

「しかし、一生遊べるほどのお宝があれば」
「逃亡奴隷は盗賊に落とされます。奴隷を殺せば罪になりますが、盗賊を殺せば持っているものを合法的に自分のものにできます。よほどの準備がなければ、こっぴどく買い叩かれるのが関の山でしょう」

 盗賊から親切にものを買い取るやつはいないということか。
 盗賊って、奴隷よりも下のような。
 ロクサーヌより下なのは間違いないが。

「それなら逃げる可能性も小さいか」
「はい。ですから、冒険者は奴隷を買われるかたが多いのでございます」
「分かった」

 よほど信頼できるものでないとパーティーが組めないというのは問題だ。
 俺は地球からやってきて一人きり。この世界の常識も知らないし、そこまでの仲間を見つけることは難しいだろう。

 ダンジョンにこもる以外に生活の糧を見つけられるのか。
 ロクサーヌを買わなければ、いつまでもソロプレイということになる。

 いや、ロクサーヌじゃなくてもいいが。
 でも美人だったよな。

「先ほどの彼女は獣戦士でございます。パーティメンバーとしてすぐにでもお役に立ちましょう」

 奴隷商人がロクサーヌを薦めてくる。

「獣戦士……」
「お分かりになられたでしょうか、彼女は狼人族でございます。獣戦士は狼人族のみが就けるジョブでございます」
「うむ」

 ロクサーヌは鑑定で♀だったからな。

「お客様は奴隷をお買いになられたことは」
「いや。ないな」
「彼女は当家で今お売りできる中でも一、二を争う美人でございます。聡明で性格もよく、お客様が初めて買われる奴隷にはぴったりかと存じます。しかも狼人族の獣戦士。狼人族というのがまた、お客様に彼女をお薦めできる理由でございます」

 奴隷商人がグイグイ押してくる。

 何かデメリットがあるはずだ。
 営業トークに流されてはいけない。

 いや。ロクサーヌは素晴らしい。
 非の打ちどころのあろうはずはない。あろうはずはないが。

「狼人族が薦められる理由とは」
「お客様は、エルフは長寿だという話を聞いたことがございますでしょうか」
「ああ」

 それはよくある。
 この世界でもやっぱりそうなのか。

「それは都市伝説でございます」
「え?」
「エルフも、人も、獣人も、知的生命の寿命はみな一緒でございます。それでもエルフが長寿だとされるのは、エルフの多くがみな若々しいからでございます」
「なるほど」

 町で見たエルフの女性は鑑定だと三十七歳だったのに二十歳そこそこに見えた。
 顔はロクサーヌの方が美人だ。彼女もかなりの美人ではあったが。
 胸はロクサーヌの方が大きい。

「人と他の種族とでは、老化するポイント、あるいは老化を見分けるポイントが違うのです。例えば二歳の犬と八歳の犬を見て、八歳の犬が老化しているとは人はあまり感じません」
「確かに」
「六十、七十ともなれば獣人も人の目から見て分かるほどに老化しますが、四十、五十ではまだ若々しいままです。狼人族の彼女は、人であるお客様から見て、いつまでも若く美しくあり続けるでしょう」
「そうなのか」

 ロクサーヌも若いままなのか。
 ロクサーヌは俺より一つ下だった。
 五十歳のロクサーヌから見て、五十一歳の俺は若々しく見えるのだろうか。

「それに、人以外の種族であることはお客様から見てもう一つメリットがございます」
「それは?」
「人は他種族の女性との間に子をもうけることができません」
「それは……」

 やりたい放題ってことですか。
 この世界に近藤武蔵さんがいるとも思えないし。
 ロクサーヌと……た、たまらんッ。

「もちろん、彼女は処女でございます」

 そうなのか。
 ロクサーヌが。

「処女の奴隷は価値が違うのか?」
「処女であれば病気の心配がございません。この町にも娼館がございますが、お客様が娼館に行くことはお勧めできません」

 ダメだしされちゃったよ。
 この世界にも性病があるのか。
 抗菌剤なんかは、もちろんないだろうしな。
 調査は諦めざるをえまい。

「了解した」
「それに、彼女は性奴隷となることを了承した奴隷でございます」
「なっ」

 ロクサーヌが性奴隷……。

「彼女の場合、所有者の夜伽の相手となることを明示的に了承しております」
「……ふむ」

 なんだそういうことか。
 ロクサーヌが亀の甲羅状になっている姿を想像してしまったではないか。
 それはそれでたまらん。

「もちろん実際のところ、若い女性であれば、どの奴隷であっても違いはございませんが」
「そうであろうな」

 この世界でも、若い女奴隷を買うなら目的は一つらしい。
 俺だけがおかしいというはなかった。

「しかし、お客様のようなかたの場合には意味が出てくるかと存じます」
「何故」
「お客様は奴隷に手を出すことに心理的な葛藤がおありでしょう」

 ロクサーヌに手を出す、ことには葛藤はないが、奴隷として考えると微妙だよな。
 金で無理矢理いうことを聞かせるというのは。

「まあ、そうだな」
「初めて奴隷を手にされるお若いかたというのはえてしてそうなのです。そして、奴隷の中にはそれを逆手に取るものもおります。思わせぶりな態度を示して、いつまでも体を許しません。初めから性奴隷であることを了承している彼女なら、そのようなことにはならないでしょう」
「なるほど」
「最後にもう一つ、彼女はブラヒム語を話すことができます」
「そういえば」

 どうぞと言われてありがとうございますと答えてしまった。日本人な俺。
 あの揺れを見て動揺した。
 あれはすごかった。是非また見たい。

「以上が、私がお客様に彼女をお薦めする理由でございます」

 奴隷商人の営業トークが終了した。
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