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用務員さんは勇者じゃありませんので 作者:棚花尋平

第一章 雪山で、引きこもる。

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45-暴走①

 今日から三日連続の更新となります。
 一気に第一章の終結までいきますm(__)m
 流れが定まったので、感想も解放しますm(__)m
 蔵人は意地の悪い笑みを浮かべていた。
 喉からはくっくっと笑い声が漏れている。
 アカリに振られるハヤトの想像をしただけで、蔵人はニヤけてしまう。

 あの夜、キスの直前にアカリが耳元で囁いたのは、事実の審判の直後『月の女神の付き人(マルゥナ・ニュウム)』に出家するということだった。
 各国の使者たちの前でそんなことをいってしまえば、エルロドリアナ連合王国もそれを覆せない。
 アカリがそれを狙ったということは容易に予想できた。
 そしてそれを狙うのは何もアカリだけではないということも。
 ハヤトもそれを狙って、教会に行くのは想像できた。なんせ、クラスメート全員を背負おうとしている奴だ、必ずやる。
 そして使者たちの前で、アホ面を晒すのだ。
 そう思うだけで、顔面の筋肉が弛緩する。
 アカリがいうには、以前、蔵人自身が冗談のようにいった「出家でもしたらどうだ」という言葉に閃いて、考えだしたそうな。
 自分のアイディアだというだけで、蔵人はさらに愉快な気分になる。
「くっくっくっ、うひひひひひ」
 不気味に笑う蔵人を見た雪白は、やれやれといった様子で諦め顔をする。
 自分の相棒はたまに性格が悪くなる。
 病気みたいなものだと諦めるしかないのだ。
 どこからどうみても、今の蔵人は完全に陰湿な悪役にしか見えなかった。

 蔵人と雪白が今いるのは、ちょうど森の野営地の辺りだった。
 夕日はもう、落ちるかどうか、それくらいになっていた。
「――さあ、行くか」
 笑い終えた蔵人が雪白に声をかける。
 蔵人と雪白に夜の暗さはそれほど関係なかった。むしろ、人目につかないことは好都合だった。

 蔵人はアレルドゥリア山脈の白幻の居にある洞窟を捨て、旅に出ようとしていた。
 それを相談すると、雪白は意外と嫌がらなかった。
 怪物モンスターによって、森の生物が死に絶え、獲物がいないのだ。獲物のいない縄張りに意味などないということか。
 それとも、大棘地蜘蛛アトラバシクのいなくなった山に人が入り込んでくるのが予想でき、鬱陶しいとでも考えているのか。
 ともかく、蔵人の提案に雪白は快く乗ってきた。
 仮とはいえハンターである証拠のドッグタグとオーフィアからもらった身元証明がある。
 幻影の自律魔法で雪白を黒豹だと偽ることもできる。
 旅に出る条件、次の棲み家を探す条件は揃っていた。


 野営地を出発しようとすると突然、雪白が身構えて、闇の一点を睨みつける。
 唸り声を上げて牙を剥き、すでに後脚の力を溜めていた。

「……厄介な、魔獣」

 すぅと闇から抜け出すように、人影が現れる。
 黒い兎耳の、黒づくめの少女がそこにいた。
 両手に大振りのナイフを握っている。
「確か……ハヤトのパーティだったか。こんなところに何しに……なんて聞くまでもないか」
 蔵人は荷物をどさりと置いて、腰のククリ刀を抜き、盾をくくりつけたほうの手で雑記帳を引っ張り出す。
「……ハヤトの、ため…死んで」
 蔵人、雪白、黒兎系獣人の少女は闇の中で静かに、戦闘を――。

――ズガンっ

 闇を斬り裂いて落ちる朱雷が、蔵人と雪白に直撃した。


「――ハヤトのためよっ、死んでっ!」

 エリカが木々の隙間から降り立った。
 闇の中、エリカの履いたブーツの朱い静電気だけが、闇から浮き上がっていた。

 黒兎系獣人の少女はどこまでも冷たい視線を、雷の落ちた場所に向けていた。
 この男とて力はなくても、勇者だ。
 同じ勇者であるエリカの力は通じないはずだ。
 黒兎系獣人の少女はちらりとエリカを見る。
 エリカは軽い興奮状態にあるようで、顔が紅潮し、息も少し荒い。
 それも仕方ない。
 同じ世界の人間を殺そうというのだ。それに、自分と違って殺しに慣れてもいない。まともに動けているだけでも、上出来である。
 ハヤトには決して逆らわないエリカが、ハヤトのために独断で、それも自分を頼って戦うなんて考えられなかった。
 エリカとはそれほど親しいわけでもない、ハヤトを中心にしてつながっているだけなのだ。
 頼られた。
 そう考えて、黒兎系獣人の少女は自分がどうやらかすかに笑みを浮かべているらしいと気づく。


 あの日から四日経った日のことだ。
 アカリという少女を見つけてからハヤトはよく考え込んでいた。
 正確にいうなら、あの洞窟に見知らぬ男と入ってから、どこを見ているかわからないような目をするようになった。
 黒兎系獣人の少女はじっと影からハヤトを見つめていた。
 自分はハヤトに何をしてあげられるだろうかと考えながら。
「クー、ちょっといい?」
 そんなときに声をかけてきたのがエリカだった。
 クーというのはハヤトから最初にもらった、少女の名前である。
 クーはかすかに頷きながら、エリカについていく。

「これからいうことは決して、誰にも言わないで、ゼッタイよ?」
 エリカは真剣な目をしてクーにいった。
 クーはいつもハヤトにでれでれしているエリカしか知らなかった。
 真剣なエリカを少し意外に思いながら、クーはいつものようにコクンと頷いた。
「まあ、あなたなら大丈夫だと思うけど、ハヤトにも口止めされてるからホントにゼッタイいっちゃだめだからね」
 そういってエリカは、ある用務員の男とハヤトの関係を話しだした。

 エリカがなぜクーに話をもっていったか。
 カエデやフォンに相談すると、ハヤトが決めたことなのだから余計なことをするべきじゃないと言われたのだ。
 アリスは、そもそもどうにも信用できなかった。エリカは自分を召喚したアリスをアルバウムのスパイだと思い込んでいた。

「というわけなのよ。どうすればいいと思う?」
 そしてクーという少女なら、人の悪意を、裏を知り過ぎるほど、知っている。
 なんせ生まれた頃から暗殺組織にいたのだ。
 エリカは自分ではどうするべきか思いつかなかった。クーなら何かわかるかもしれないと相談したのだ。
「……殺す、べき」
 エリカは息をのむ。
「そ、それはちょっと……」
 クーの赤い瞳は微動だにしない。
「……彼が、ハヤトに、危害を与える……という、可能性。……彼を、利用して、ハヤトを…陥れようと……する奴。同じ勇者、とて、例外じゃ、ない。彼が生きている……それだけで、ハヤトの…邪魔」
「クーは、ハヤトが力を盗んだこと、どう思っているの?」
「……なにも」
「なにもって、盗んだこと責めたりしないの?」
「……クーを、救って…くれた、のは、ハヤト。その、男じゃ……ない」
 エリカは考え込む。
「……そうよ。わたしが騙された時、救ってくれたのハヤトであって、あの男じゃない」
「……クーが、やる。エリカは、やるべき、じゃ……ない」
 エリカはじっとクーを見つめた。
「……わたしもやる。ハヤトのためにできることはなんでもやる。わたしはあの時、そう決めたの」
 二人は頷き合った。


 ハヤトのためならどんな汚れ役でもする。
 そんな一種の陶酔が興奮を呼びこみ、緊張も相まって、エリカの罪悪感を紛らわせていた。

 朱雷の巻き起こした土埃がはれていく。

 突然闇の中で、土埃が飛び出す。

 エリカはとっさに盾を掲げた。
 盾が弾け飛びそうになる。
 耐えるんじゃない、そらすんだ、エリカの加護ならそっちのほうがいい。
 ハヤトの言葉をエリカは思いだす。
 必死に盾に受けた衝撃を横に逃がしながら、朱雷のブーツで地面を蹴る。

 土埃が飛びだした、土と氷を纏った雪白と、『神の加護(プロヴィデンス)』である『朱雷のブーツ(トワイライトブーツ)』を履いたエリカがすれ違う。
「このっ!」
 それでも逃がしきれなかった盾の衝撃でエリカの肩に鈍痛が走る。
 それでも盾は無傷だった。ドラゴンの骨は伊達ではない。
 エリカは振り返る。

 雪白は体勢を崩して背中を見せているエリカを睨みつけていた。
 雪白にとって、雷はある意味で仇である。
 親魔獣を討ったその日の光景を忘れたわけではなかった。
 雷を見るたびに、どこか哀しくなり、それを操っているものを見ると神経が逆立った。
 恨んでいるわけじゃない。 
 弱いから、死んだ。
 それだけだ。それが雪白の生きる世界だ。
 仇という意味ならアカリもマクシームもそうだ。
 だが、アカリは弱いからそんな気も起きなかった。
 マクシームは少し、違った。
 彼を見ただけで、総毛だった。
 だが、それでも憎いというのではなかった。
 自分を産んだ者に匹敵するくらい強いかもしれない。
 そう思ったら、押さえが効かなくなりそうになっただけだ。
 そしてあの時、今は敵わないと気づいて悔しかった、それだけだ。
 ――だが、雷は違う。
 あの音を耳にし、あの光を目にするだけで、苛立ちが募った。
 蔵人もそれに気づいた日からあまり雷は使わなくなったが、気をまわしすぎだ。相棒が雷を扱うのはまったく気にならないのだ。
 ただ、己の前に立ちはだかるものが、雷を向けてくるのが気にくわないだけだ。

 雪白はようやく振り返ったエリカを睨みつけた。

――グォンッ
 来い。

 挑発するように吠える雪白。
 エリカは怒気を露わにして『朱雷のブーツ(トワイライトブーツ)』で地面を蹴って、低空を高速で飛びかかってきた。


 朱雷の降った地点で、蔵人は立ち上がる。
「おお、すげえな、加護ってやつは」
 あれだけの落雷に傷ひとつない蔵人。
 やはり召喚者に対して加護は通用しないようだ。
 バチバチとした音のする方を見ると、すでに雪白とエリカがやりあっていた。
 蔵人はそれを見て、エリカは雪白に任せることにする。相性的には自分がやったほうがよかったのだろうが、雪白はどうも雷に執着しているようだ。好きにさせることにした。
 今は何より、自分の心配をしなければならない。

 目の前には闇が広がるだけだ。
 蔵人の目には闇しか映っていなかった。
 蔵人は試しに光精を放ってみる。
 一瞬だけ、闇がはれて木々が見えるが、すぐに光精は黒く塗りつぶされる。
 いたちごっこだな、そう考えて蔵人は光精魔法を諦める。
 そもそも夜だ。光精自体が少なく、存在を捉えづらかった。
 次は闇精で探ってみる。
 これも、反応はない。
 どうやら相手は、闇精使いのようだ。
 蔵人は見えないが、相手は見えているのだろう。
 雪白はそもそも闇を苦にしない。エリカは人体の発する電磁波でも感じているのかもしれない。そして闇に溶け込んだ気配のない暗殺者は、当然闇など苦にしないだろう。
「どうしてこうなるかね」
 暗殺者に狙われることを嘆いてみる。
 だが、原因は分かっている。
 自分自身の能力の所為なのだと。
 日本で上手くいかなかったことが、この世界にきて劇的によくなるわけがない。
 力はそのへんの兵士程度にはなれても、権謀術数のほうはどうにもならなかった。根本的にそういうことに向いていないのだなと蔵人は苦笑する。
 とはいっても、ここで死ぬわけにはいかない。
 なら、できることをするしかない。
 蔵人は雑記帳を片手で開いた。

 なんの脈絡もなく、蔵人の後ろ首に、大振りのナイフが突き立つ。
「……っ」
 刹那の間もなく反対側の首筋をナイフが掻き切る。

 そのどちらも蔵人に届いてはいなかった。
 だが蔵人の意識が、物理障壁の破壊を感じる。ガラスが割れるような感じだ。
 蔵人はククリ刀を下から振りあげる。
 暗殺者は、無言でそれを避けると、また闇に溶けて、消えた。

 蔵人は障壁を張り直す。
 その刹那、今度は後の太ももと脇に一撃を感じ、また物理障壁が破られる。
 衝撃を感じた方向に、力任せにククリ刀を振り回す。
 しかし、かすりもしない。

 蔵人は再び障壁を張る。
 そしてまた、二度の衝撃。
 蔵人がククリ刀を振るうが、かすりもしない。
 しばらくその繰り返しがつづいた。

 十回ほど繰り返したところで、闇からうっすらとクーが顔を出す。
「お前は……なんだ?」
 何度、物理障壁を破ろうとも、瞬時に立て直してくる。
 確実に、障壁を二枚、破壊しているのだ。
 ……二枚?
 クーは何かに気づく。
 そしてそれは、さらなる疑問につながる。
「さあな。教えて欲しかったら……別になにもないな。さすがに、な」
 小馬鹿にしたような視線にクーは一瞬だけムッとするも、すぐにそれは押し込める。
 ただ殺せばいいだけ。他の物は無用だ。
 そう、手数が足りないなら、増やせばいい。

 蔵人は背後からの膝裏、太もも、脇、首と四つ連なった攻撃の衝撃に前のめりに倒れそうになる。
 つぅと血が胸元に流れ込む。首筋に傷ができていた。
 攻撃はまったく察知できない。

 次第に、攻撃が増え、それとともに傷が増えていく。
 致命傷こそないものの、血は体中の傷から流れている。
 治療もおいつかないのだ。
 障壁を張り直している間に、次の攻撃がくる。
 鎧の隙間という隙間を、的確に狙われていた。

 クーは疑問だらけの敵をそれでも、斬りつづける。
 斬撃は通るものの、魔法毒が一切通じていなかった。
 クーの用いる魔法毒は武器に魔法陣、発動体を組んだ暗殺組織の秘匿技術であったものだ、効力は実際に確認している。
 信じがたいことだが、ターゲットは今、物理障壁を二枚展開している。
 命精魔法と自律魔法の両方だ。
 戦闘中にはそれだけでも信じがたいが、魔法毒が効かないところを見ると体質か、もしくは三枚目の障壁を張っているか、だ。
 クーはそれを確かめる。

 風を集めて、小さく丸めて、飛ばす。

 蔵人は不可視の衝撃を受け、意識内で魔法障壁が砕け散る音をきいた。
 おそらくは風を圧縮したものだ。
 より正確にいうならば、空気を圧縮したものをぶつける、エアハンマーではないかとアタリをつける。
 そう考えながらも、蔵人は即座に障壁を張り直す。

 そしてエアハンマーの連打。
 蔵人は案山子のように無防備にそれを喰らった。
 さすがに、障壁を抜けるものが数発あった。
 一、二発は盾で防いだが、それだけだ。
 たった数発、それだけで頭がもげたような衝撃や腹の中身をぶちまけそうになる衝撃に、蔵人はうめき声を上げる。

 クーは、何か珍獣を見るように、ターゲットを見つめた。
 命精魔法と自律魔法、それぞれの物理・魔法障壁を合計四枚張りつづけているのだ。
 命精魔法の障壁は魔力供給を続ける限り、障壁は修復される。障壁の限界距離は0、つまり体表を覆うようにしか展開できない。
 そして自律魔法の障壁はたとえ原典オリジンだとしても、ある一定ダメージを超えると破壊され、その都度、魔法陣や詠唱を必要とするはずなのだ。
 わからない。
 四枚の障壁は、器用や曲芸の一言で片づけられるが、自律魔法の瞬時修復は理解できなかった。
 しばらく考え、やや強引だが、そういう自律魔法が開発された、クーはそう思うことにした。
 いつまでも考えていたところでどうにかなるものではもない。
 それなら、それを突破する手段を考えるべきだ。

 ならば。
 クーは闇に溶け、気配を消し、感情を消す。
 標的はふらふらと立ち上がって、周囲を見まわしているが、察知された気配はなかった。
 クーは闇の中で、蔵人の背に回る。
 一瞬で四撃。
 首、心臓、脇、、瞬時に斬りつける。まったく同時に、同じ個所へ細く、細く圧縮した空気をぶつける。
 手ごたえは、あった。
 これで四枚、障壁は破った。
 蔵人が苦し紛れに横薙ぎの一撃を振るうが、クーはするりとかわし、さらに懐へ。
 そのまま蔵人を軸に回転しながら回り込むと、その勢いのままにナイフを突きいれる。
 場所はどこでもいい。
 肉を抉る感覚とぐぅといううめき声が重なる。
 そして、さらに二撃目。
 もう一本のナイフを今度は首に――。
「――ふぅ、ようやく捕まえた」
 クーが後ろ手に刺した、その腕が掴まれていた。
 蔵人はいつのまにかククリ刀を捨て、その手でクーを捕えた。
 だが、クーは無言でくるりと身体を捻り、蔵人が捕まえた腕をそのまま捻る。
「ぐがっ!」
 立ったまま、蔵人を捕えたようなものだ。
 蔵人は痛みに膝をつく。
 蔵人の肩と肘は完全に極められていた。
「……さよなら」
 障壁は、ない。
 クーのナイフが蔵人を抉る。

「お前がな」
 だが、ナイフは蔵人の首の皮一枚で、止まっていた。
 蔵人は極められたまま、しかし、もう片方の手で雑記帳を開いていた。

 ナイフを止めたのは、土の手、だ。
 そしてクーの視界が暗転する。クーは闇精の気配を感じた。
 だが、ただのめくらましだ、無視してかまわない。
「こんなものっ!」
 クーは風精に土の手の破壊を命じたその瞬間、無軌道な精霊の動きを感じながら、なぜか意識も飛ばされそうになった。


「ふぅ、ようやくか。…いづっ」
 力なく崩れ落ちたクーが、掴んでいた腕をへんな方向に捻ったのだ。
「……な、なにを、し、た」
 蔵人はクーの声に驚く。
「まだ意識があったのか」
 あとで復活して、不意打ちでもされてはたまらない。
 蔵人は質問に答えることなく、無防備な少女に向けて、おもむろに、殴りつける。巨人の手袋をはめたままで。
 ゴン、ゴン、ゴンと人が見るに耐えられないような光景のあと、ようやく一撃が少女の腹に突き刺さる。
 さらに横たわる少女の下から土の杭を、発動する。
 跳ね上がる少女の身体。何度かして、ようやく少女の足に杭が突き刺さる。
 全てが一連の作業のように、蔵人は淡々と行っていた。
 確実に、少女の戦闘力を奪っていく。
 そして、唱える。

「≪形なき(EЕсть)力に(форма)形が(для)あると(бесфнной)強弁し(власти)力なき(BВласть)形に(форвать)力を(без)持たせよ(власти)魔力の棘矢(クゥストラ)≫」

 それだけで、魔法が発動し、蔵人が手に持っていた媒体が矢を形成する。
 それを蔵人は躊躇いなく、クーの肺に突き刺さした。
「……あぐぅっ」
「なんとか魔力を残したようだが、その矢は複雑な形をしている、人を無駄に傷つけるようにな。いくら治療しても、すぐに俺が矢を捻る。無駄なことはしないで、黙ってろ」

――ぐるる
 いつのまにか、雪白が横にいた。
 エリカの首根っこを咥えて、ほぼ無傷の勝利であった。
 まるで捕えた虫を見せびらかしにきた猫のようである。

 そもそも雪白には本来効くはずの雷が効きづらくなっているのだから、エリカに勝ち目などなかった。
 簡単な話だ。
 雷に執着する雪白に、蔵人が精霊魔法で応用できる知識を教え込んだ。
 具体的な例となる、大棘地蜘蛛アトラバシクがいたせいか、雪白は苦もなく、それを習得した。
 現状の雪白は覚えている親魔獣の姿から、スケールは小さくとも親魔獣と同じことはできた。
 そこに蔵人が、氷を纏えるなら、一緒に土や石も纏ってしまえ、といっただけだ。
 そして纏った土を通して、地面に雷を流してしまえと。
 結果、雪白は氷を体毛近くに纏い、土を氷から少し離して蛇のように流動させて纏うことに成功した。
 雷が土の蛇に接触すると、土の蛇を通して電気は地面に流れるようになっていた。
 大棘地蜘蛛アトラバシクはその巨体と防御力を生かして、土を鎧のようにしていたが、雪白にそれはできなかった。
 魔獣にも親和力的な何かが関わっているのかもしれない。

 蔵人は雪白が連れてきたエリカにも同じような作業を施す。
 油断してやられる悪役になるわけにはいかない。
 油断しても、捩じ伏せられるヒーローでもないのだ。
 エリカの場合はすでに魔力が枯渇寸前のようで、『魔力解放(レイスダム)』は必要なかった。
 エリカの着ている革の鎧をひんむき、エリカの肺にはナイフを刺す。
「あぐぅっ」
 朦朧とした意識のエリカがうめき声を上げた。
 蔵人がそれを気にした様子はない。
 蔵人は雑記帳を見ながら、さらに唱え上げる。

幾多の(EEitur af)(mörgum)無数の(PPoison)(óteljandi)それは(Það er)命の(ekki)精を(ætlað)脅かす(að ógna)ものではない(lífsanda)その(SSjá)果てに(hvað er)あるのは(niðuðan er)終焉(EEnd)終幕(EEftirmáli)決して(Nneitun)彼を(non-að)死なせるに(fá hann)非ず(deyja)我が(Við)求むるのは(verðum að)彼の(spyrja er)永遠なる(ánauð)束縛(verða)である(eift hans)ゆえに(ég hafa)頼もう(spurt)千変する毒(エイシィブディグ)

 矢とナイフに力が流れる。
 蔵人はクーとエリカ、両方に毒を注入した。
 二人は唇を痙攣させ、横たわった地面には、二人の下半身からシミが広がっていった。
 二人ともまだわずかに魔力を残しているようである。命精はそのまま傷を修復するはずだと蔵人は見立てた。
 それでよかった。
 殺してはだめなのだ。


「やめろぉおおおおおおおっ!」
 隠す気もない莫大な力をまき散らしながら、ハヤトが飛び込んでくる。
 聖剣の機能をフルにつかい、強化魔法を全開でつかったのだろう。
 ひどく、呼吸が荒いようだ。
+注意+
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