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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、砂漠に行く

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309 クマさん、スパイスを手に入れる

 翌日、ラサさんにプリンの作り方を、カリーナは一緒にプリンを作る約束をしたので、2人と一緒にキッチンにやってくる。
 本当は街の探索と行きたいところだけど、カレーのレシピのためにプリンを作る。
 問題のプリンの材料が気になったけど、なんでも大きな卵を産む鳥がいるらしい、話を聞いた感じ、ダチョウなのかな?
 それとも、わたしが知らない鳥でもいるのかな?
 まあ、この世界は異世界だし、どんな鳥がいても不思議じゃない。でも、大きな卵なら、孤児院のお土産に持っていってあげたら、見たことがないだろうし、子供たちの驚く顔が頭に浮かぶ。もし、手に入るようなら、買って行きたいね。
 それと牛もいるらしい。わたしがチーズを買っている牛とは種類は違うようだけど。湖の四分の一は農業と遊牧に使われている。でも、湖の水が減って作物も家畜も困っていると言う。
 作物も家畜も湖があるからと言って、こんな砂漠の真ん中で育つのかと思ったら、湖のおかげか、ピラミッドのおかげか、街の気温は湖を中心に下がっているらしい。だから、気温は街の外よりも街の中は低いらしい。わたしはクマさん装備のせいで、その辺りは気付かなかったけど、水の魔石はいろいろと効果をもたらしているみたいだ。
 これは絶対に水晶板を見つけて、水の魔石を交換して、湖を元に戻さないといけない。

「でも、本当にわたしに教えになってよろしいんですか? 王族の晩餐会で出されるような料理を」
「昨日も言ったけど、晩餐会のときは国王陛下に頼まれて作っただけだから、気にしないでいいよ。だから、今度はカリーナにも作ってあげて」

 いきなり家に国王がやって来たと思ったら、プリンを作れと言われ、フィナもモリンさんもカリンさんも手伝ってくれずに、1人で寂しく作った記憶が甦ってくる。
 でも、今日はそんなことはない。

「それじゃ、カリーナ。一緒に作ろうか」
「はい、がんばります!」

 胸のところで小さな手で握りこぶしを作って、元気に返事をする。

「それじゃ、この卵をこんな風に割ってみて」

 クマボックスから卵を出す。
 本当は大きな卵で作ってみたかったけど、今日は急なことだったので、手に入らなかった。大きな卵を見てみたかった。
 やっぱり、味が違うのかな?
 まあ、もし、大きな卵で作って美味しくなかったら、コケッコウを数羽持ってくればいいかな。湖が戻ればコケッコウも育てることもできるだろうし。
 そんなわけで、今日はいつもの卵でプリンを作ることになる。
 わたしは、卵をコンと軽くテーブルの端で叩くと、卵を割って中身を取り出す。

「ユナさん、上手です」
「ほら、カリーナもやってみて」

 わたしは卵をカリーナの小さな手に渡す。
 カリーナはわたしの真似をして、テーブルの端に怖がりながら、軽く叩く。

「もう少し、力を入れないと割れないよ」
「はい、わかりました」

 今度は強く叩いて、どうにか成功する。初めてで成功するなんて、カリーナには料理の素質があるかもしれない。
 そんなカリーナをラサさんは微笑ましそうに見ている。

「ラサ、笑っていないで、ラサも作るんでしょう」
「カリーナ様、笑っていたわけじゃありません」
「笑っていました」

 カリーナは頬を小さく膨らませる。
 ラサも微笑みながら一緒にプリンを作るのを手伝う。
 砂糖を入れた水を加熱してカラメルソースを作る。最後に小さなコップにカラメルソースを入れて、プリンの素を入れて蒸す。ラサさんは作業や火加減、材料などをメモっていく。

「あとは冷やして終わりだよ」
「いつ食べれますか?」
「夜には食べれるんじゃないかな?」
「楽しみです」
「ユナさん、ありがとうございます。でも、こんなに簡単に作れるのですね」
「料理なんて、そんなものだよ」

 ただ、材料の入手に問題があるけど。

 午後はカリーナとスパイスを買いに行く予定だ。ラサさんは仕事があるので一緒に行くことはできない。ちなみにお屋敷には数人の使用人がいる。でも、ラサさん以外は通いで、住み込みはラサさんだけらしい。だから、食事は一緒にしたみたいだ。

「本当にわたしが付いて行かなくても、大丈夫ですか?」
「お店ぐらい、わたしが知っているから大丈夫だよ。ラサは仕事があるでしょう」
「そうですが……」

 ラサさんは心配そうにする。でも、スパイスのレシピと分量の書いた紙はもらったから、お店の人に聞いて、買うだけだ。お店の場所が分かればわたしとしては問題はない。
 わたしはカリーナと一緒にスパイスが売っているお店に向かう。

 道を歩くわたしたち。
 チラチラ。

「くま?」「クマ?」「熊?」

 道を歩くわたしたち。
 チラチラ。

「くま?」「クマ?」「熊?」

 先程から一緒に歩くカリーナが周囲の視線を気にしている。
 すれ違う人たちがわたしたちを見ている。正確にはわたしを見ているから、カリーナが気にすることじゃないと思うけど。クマの着ぐるみ姿をしているわたしと一緒に歩くのは恥ずかしいみたいだ。

「えっと、ユナさん。今更ですが、いつもそのような格好をしているのですか?」
「そうだけど」

 どこに危険があるかわからないからね。
 クマ装備が無ければ、家に引きこもっていた貧弱娘だ。活発に動くフィナにも勝てる気がしない。
 長時間歩くこともできないかもしれない。

「もちろん、可愛いと思いますが、視線とか気になりませんか?」

 気になるに決まっているよ。でも、人生は諦めが肝心って言うし。視線は無視するようにしている。気にしちゃ負けだ。……とは言うものの、視線が気になるので、クマさんフードを少し下げる。

「もし、カリーナが気になるなら、少し離れるよ」

 ボッチは慣れているから、今さらだ。
 でも、フィナにそれをやられたら落ち込むかもしれない。「ユナお姉ちゃんと一緒にいると恥ずかしいから、離れますね」とか言われたら数日間家に閉じ籠る自信はある。
 もちろん、カリーナだから、落ち込まないわけじゃないけど、そこは付き合いの長さの差だ。

「大丈夫です。領主の娘ってことで見られることは慣れています」

 カリーナは少し顔を赤くして、わたしのクマさんパペットを掴む。
 でも、クマさんの格好をしたわたしと一緒に歩くことで視線を向けられることと、領主の娘として視線を向けられるとでは天と地の差があるような。
 でも、カリーナの気持ちは嬉しくもある。

「ユナさん、こっちです。行きましょう」

 カリーナはクマさんパペットを引っ張る。
 そして、カリーナの案内でスパイスが売っているお店にやってくる。

「カリーナも買いに来たりするの?」
「たまにラサの付き合いで買い物に来ます」

 カリーナと手を繋いだまま、お店に入る。その瞬間、いろいろなスパイスが混ざり合う香りが漂う。
 棚を見るといろいろな種類の調味料からスパイスが並んでいる。でも、売れ切れたのか、棚の半分はなにも置いていない。
 カリーナも空の棚が気になったのか見つめている。
 わたしたちが棚を見ていると、お店の亭主である30半ばの男性が近づいてくる。

「これはカリーナ様、……クマ!?」

 男性はカリーナに挨拶をして、次にわたしの方を見ると目を大きくして驚く。
 そんなにジロジロと見ないで欲しい。

「えっと、今日はどうしたのですか? ラサさんはいないのですか?」

 カリーナに質問しながら、わたしの方をチラチラと見ている。
 そんなに気になるなら、「どうして、そんな格好をしているのですか」って聞けばいいのに。もっとも、答えるつもりはないけど。

「今日はラサはいないです。今日はこのユナさんがスパイスが欲しいってことなので、付き添いです」

 男性が改めてわたしを見る。

「でも、前に来たときよりも商品が少ないみたいだけど、どうかしたのですか?」
「それは……?」

 男性は少し言いどもる。
 やっぱり、品数が少ないよね。これが通常の状態でないことはカリーナの言葉で証明された。

「いえ、それよりも、今日はなにをお買い求めですか?」

 男性は誤魔化すように商売の話に持っていく。
 会ったばかりのわたしが尋ねるわけにもいかないので、ラサさんからもらったレシピに書かれているスパイスの名前を言っていく。ハッキリ言って、名前が書かれてもわたしにはわからない。
 カレー粉とか書いてあれば分かるんだけど、書いているわけはないので、男性に尋ねる。

「えっと、それはこれだな。あと、これ」

 スパイスが入っている30cmほどの高さの瓶を指差す。

「それで、どのくらいいるんだ?」
「全部」
「…………」
「全部」
「お嬢ちゃん、お金は大丈夫なのかな? お嬢ちゃんがどこのお嬢様か分からないけど、スパイスはそれなりの値段はするんだよ」

 まあ、スパイスのところに値段が書いてあるから、それぐらいはわかる。

「お金ならありますから、大丈夫です」
「そうか。なら、助かる」
「助かる?」
「近いうちに、この街を出て行こうと思っていたからな」
「どういうことですか!」

 カリーナが叫ぶ。
 男性はカリーナを見て口を閉じるが、すでに遅い。目を左右に動かして、言いにくそうな表情をする。

「街を出て行くのですか?」
「申し訳ありません。カリーナ様も湖の水の減少、ピラミッドに魔物の増加、異変が起きていることはご存知だと思います。この街もいつ魔物に囲まれるかもしれません。遅くなれば、出て行くことができなくなるかもしれません。だから、妻と話し合った結果、早めに街を出ようかと考えています」

 だから、お店の商品の半分が無かったわけだ。

「待ってください。湖の水は戻ります。だから、もう少し待ってください。魔物もお父様がどうにかしてくださいます」
「カリーナ様……すみません」

 男性は申し訳なさそうに頭を下げる。

「同じ考えを持っている者は少なからずいます。魔物なら冒険者を雇えばどうにかなるかもしれませんが、湖の水の減少は誰にもどうにもなりません」

 ああ、水の魔石のことは知らされていないんだね。それじゃ、不安にもなる。バーリマさんも簡単には話すこともできないだろうし、難しいところだ。もし、大きな水の魔石があると知れば、盗む者もあらわれるかもしれない。早めに対処できれば、問題もなかったんだけど、いろいろと不幸が重なって、今の状況がある。

「長く住んだ土地です。わたしどもも離れたくはない気持ちもあります。でも、子供がいる親としては……」
「…………」

 男性の言葉にカリーナは下を向いてしまう。わたしはそんなのカリーナの頭に手を置く。

「でも、まだ、先の話なんですよね」
「ああ、準備をしているところだ」
「それなら、街を出て行く必要はないですよ。数日のうちに魔物もいなくなるし、湖の水も元も戻りますから。そうでしょう、カリーナ」

 わたしはカリーナに向かって微笑む。

「今、お父様が対処をしてくれています。わたしも頑張ります。だから、もう少し、待ってください」

 カリーナは深々と頭を下げてお願いをする。

「カリーナ様、頭を上げてください。数日で良いんですね」
「はい、もし、本当に駄目なときはお父様から、話があると思います」
「できれば、その前に出て行きたいですね」

 男性は笑いながら、カリーナに答える。
 まあ、領主から、街は駄目的な話がでれば、街は間違いなく混乱する。そうなれば、街を出て行くどころの騒ぎじゃなくなる。

「それじゃ、嬢ちゃん。少しサービスしておくから」

 わたしはスパイスを買うとお店を出る。
 カリーナは少し落ち込んでいるようだ。でも、街から出て行こうと考えるのは仕方ないことだ。湖の水が辺りの気温を下げてくれているらしいから、湖が無くなれば、気温が上がって住みづらくなる。

「カリーナ、大丈夫だよ」
「ユナさん……」

 最悪、水晶板が見つからなかったら、わたしが単独で迷宮をクリアして水の魔石を交換するって手もある。
 罠が面倒だけど、頑張ればどうにかなるかもしれない。
 でも、面倒だから、できるなら水晶板を手に入れたいところだ。

 カリーナを慰めながら、道を歩いていると、前から見知った人物が走ってくる。


クマの着ぐるみ着ていたユナは、気温について気付きませんでした。
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