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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、学園祭に行く

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279 クマさん、国王に叱られる

 殴り飛ばしたルトゥムは体が回転すると止まる。そして、ピクリとも動かない。
 わたしのいきなりの行動に上がっていた歓声が止まり、シーンと静まる。
 えっと、死んでいないよね。
 あっ、少し足が動いた。大丈夫みたいだ。
 わたしはルトゥムに近寄ると、水魔法で頭から水をかける。

「なんだ?」

 本当は気絶をしてもらっているのが一番だけど。国王の前で約束をしてもらわないといけない。

「なにが起きた?」

 ルトゥムはキョロキョロと周囲を確認したあと、わたしを見る。

「もしかして、お主、手加減していたな」

 もしかして、気付かれた?
 クマさんパペットの魔法道具を使って勝ったと知られて、試合が無効にされたら困る。だから、試合では手加減をして戦っていたのに。最後にバカなことを言うから力を込めて殴ってしまった。
 もう一回殴れば記憶が飛ぶかな?
 でも、殴り過ぎて、約束したことも忘れたら困る。

「ソ、ソンナコトナイヨ」

 とりあえず、誤魔化してみる。

「ふふ、あはは、手加減してあれか。エレローラ殿が自分の職を賭けてまで、試合をするわけだ。わたしに見る目が無かったってことだな」

 ルトゥムはこちらにやってくるエレローラさんに目を向ける。

「わたしも強いとは聞いていたけど。この目で見るのは初めてなのよね」

 そう言えば、エレローラさんはブラックバイパーなどを倒したことは知っているけど。目の前で戦っているところを見たのはシアとの試合のときだけなんだよね。そう考えると、よくわたしに任せようと思ったね。

「ますます、息子の嫁に欲しくなったぞ」
「遠慮します」

 そもそも、結婚相手はシアとノアが相手だったんでしょう。とは口には出すことは出来ない。言えば2人に擦り付けているようになってしまう。でも、わたしに婚約を申し込まれても困る。
 とりあえず、婚約の件は断って、わたしたちは国王のところに行く。

「2人とも良い試合だった。学生たちにも良い刺激になっただろう」
「いえ、恥ずかしいところをお見せしました」

 ルトゥムが国王に頭を深々と下げる。

「ルトゥム」
「はい」
「約束通り、お主の第三騎士団の隊長の任を解く。そして、新たな任を与える。学園の教師となり、騎士の育成に力を入れるように」
「国王陛下?」
「お主が言っていることは分かる。女性は力は弱い。昔なら、男性騎士が護衛に就くことで良かったかもしれない。でも、今は平和の時代だ。そんなに男性騎士だと、目くじらを立てずとも良いだろう。ティリアやフローラには女性騎士は必要だ。だから、お主が男性騎士同様に女性騎士を育ててくれ」
「国王陛下……」
「ただし、今回のように女性騎士に怪我を負わせようとしたり、辞めさせようとはさせるな」

 国王は気付いていたみたいだね。

「わかりました。国王陛下の仰せのままに」

 ルトゥムは素直に国王の命に従った。

「だが、学生の楽しみである騎士との試合をこのままにしておくわけにはいかない。今日は騎士としての任を全うするように」
「はい。では、わたしはこれで失礼します」

 ルトゥムはわたしを方を見るが、何も言わずに下がる。
 殴った顔が腫れているね。わたしは悪くないよ。それにシアとノアを不愉快な気持ちにさせたんだから、一発ぐらい殴っておかないとね。
 さて、わたしも離れようとすると国王に声をかけられる。

「わたしは城に戻ることにする。エレローラ、ユーナ。2人は付いてくるように」
「わたしも?」

 まだ、学園祭の最終日が始まったばかりだ。まだ、見回る時間はある。
 なのにどうして国王に付いて行かないといけないの?

「後ろを見てみろ」

 後ろを振り返ると、学生や見学者がこちらを見ているような気がする。

「国王陛下を見てますね」
「違うわ。お主を見ているんだ」

 そうなの?

「今の貴様を野放しにしたら、大変なことになるのは目に見えている。それに2人には言いたいことが山ほどある」

 なにか怒っていない?
 付いて行きたく無いんだけど。でも、後ろを見れば見学者や学生たちの目が怖い。
 でも、わたしにはフィナたちの面倒をみるって仕事がある。

「でも、わたしにはノアたちの面倒を」
「そうね。娘と一緒にいる時間は大切ね」

 わたしの言葉にエレローラさんも乗ってくる。いや、ここはエレローラさんが生け贄になって国王に付いて行くべきでしょう。

「エレローラさん、ノアたちはわたしが見ますから大丈夫ですよ」

 一歩下がり、国王にエレローラさんを差し出す。

「ユーナちゃん。ありがとう。でも、大丈夫よ。ノアたちのことはわたしに任せて、ユーナちゃんは国王陛下と一緒に」

 エレローラさんが二歩下がる。

「おまえら……」

 国王が擦り合いに呆れ顔になる。

「ふふ、それなら、わたしがノアたちを見てあげますよ」
「ティリア、様」

 周囲に人がいるので、とっさに言葉使いに気を付ける。
 今まで、黙って国王の側で話を聞いていたティリアが申し出てくれる。

「わたしが一緒にいてあげるから心配しないでいいよ。だから2人ともお父様に付いて行って」
「でも」

 余計なことを言わないでいいのに。

「言っとくが、おまえたちに拒否権はないぞ。なんなら、あの娘たちも連れて行ってもいいぞ」

 せっかくの学園祭だ。みんなにはまだ楽しんで欲しい。それにティリアがいれば安心かな。わたしはティリアにフィナたちのことを任せることにする。
 少し、離れた場所でフィナたちがわたしのことを心配そうに見ている。

「ちょっと、国王様と一緒にお城に行ってくるから。みんなはティリア様と一緒に学園祭を楽しんでいて」

 わたしはフィナたちからティリアに視線を移す。

「ティリア様、フィナたちのことをよろしくお願いします」
「ちゃんと、責任を持って面倒を見るから心配しないで」

 ティリアにみんなのことを頼むと、わたしとエレローラさんは国王にドナドナされていく。
 連れ去られていく子牛(クマ)の気分だ。
 わたしたちは国王と一緒に近くにあった馬車に乗り、椅子に座る。目の前の席には睨むように見ている国王がいる。

「はぁ~」

 国王がわたしとエレローラさんを見るとため息を吐く。馬車の中には国王、エレローラさん、わたしの3人が乗っている。前に乗ったグランさんの馬車よりも広く、ゆったりしている。
 馬車が動き出すと、国王が口を開く。

「おまえたちはいったい何をしているんだ! とくにエレローラ! 自分の立場を分かっているのか!」
「だって……」

 国王はエレローラさんに向かって怒鳴りつける。

「もし、ユナが負けていたらどうするつもりだったんだ!」
「そしたら、約束通りにクリフのところに帰ったけど」
「貴様はそれで良いだろうが、残された者のことを考えろ!」
「だって、娘の婚約を持ちかけられたから、つい」
「なら、早く婚約者を決めろ! 決めないから、こんなことが起きるんだ。誰かのせいで、クリモニアは海を得ることになった。そのおかげで莫大な利益をもたらす街になる。それを考えれば、これからも、おまえの娘と結婚を考える者も増えて来るぞ」

 それって、わたしがトンネルを作ったせいになるのかな?
 そのせいでシアとノアに婚約の話がたくさん来るってこと?
 それでなくても2人は可愛いから、婚約の話は多そうだ。

「それはクリフとわたしで、止めるから大丈夫。娘の幸せを守ることぐらいは出来るわ」
「なら、あんな賭けを引き受けなくても対処ぐらいできるだろう」

 再度、ため息を吐く国王。

「それと、ユナ。貴様もだ」
「わたし?」

 なんで、わたしまで怒られるの?
 わたしはヒロインを悪の手先から守った主人公だよね。誉められることはあっても、怒られることはしていないよね。クマの着ぐるみ無しで頑張ったんだよ。剣の試合は面白かったけど。

「あのように喧嘩を売るようなことをするな。危険だろう」
「だって、あのおっさんがムカついたから」
「おまえな……」
「だって、シアを自分の息子の嫁にするとか、さらにノアまで婚約をさせようとするし、女性騎士を目指している女の子を怪我をさせようとするし。だから、後悔はしていないよ」
「婚約についてはエレローラに任せておけば問題はない。両家が認めなければ結婚なんて出来ない。女性騎士については、問題はあるが、ルトゥムが言う通りに女が弱いのも事実だ。ただ、ルトゥムのやり方は良くないが、おまえが試合をすることはないだろう」

 だって、あのまま何もしなかったら、ストレスが爆発だよ。

「それと、もう少し、他人がお前を心配することを知った方がいいぞ」
「もしかして、国王がわたしのことを心配してくれたの?」
「したら、悪いのか?」

 冗談で聞いたら、本音の返答が返ってきた。
 そう真面目に言われると気恥ずかしいものがある。

「それにお前さんと一緒にいた子供たちも不安そうに見ていたぞ。あの者たちを心配させるな」

 試合中はフィナたちの表情は見ていなかった。心配をかけたなら、あとで謝らないといけない。

「ティリアも心配しているし、フローラを連れて行かなくて本当に良かったと思ったぞ」

 かなり、心配をかけたみたいだ。国王からしたら、わたしが強いことは知っているけど。実際にわたしが戦うところを見るのは初めてになるから、不安にさせたみたいだ。そう考えると、確かにフローラ様はいなくて良かったかもしれない。もしかすると、泣いたかもしれない。今度、暴れるときは周囲の者のことも気を付けることにしよう。

「だが、おまえさんには感謝をしている」
「…………?」
「女性が強いことを証明してくれたことだ。城の中でも騎士は男性と思う者も少なからずいる。これで少し緩和されるだろう」
「やっぱり、騎士は男性って言う考えが多いんだね」
「これでも、緩和されているが、代々騎士を輩出している貴族からは反対意見もでている」

 男性中心でやってきた社会に女性が入るのは難しいってことだね。

「でも、ルトゥムに学生の騎士の教育を任せて大丈夫なの?」

 女の子が虐められないか心配になるんだけど。

「一応、補佐役を付けて様子は見る。だが、ルトゥムが女性騎士擁護派に入れば、他の反対派もおとなしくなる。ルトゥムを切り捨てても、他で反感を買うだけだ。なら、見えるところで、取り込んだ方が良い。それにユナに負けはしたが、騎士としても実力はあり、貴族の立場上簡単には切り捨てることは出来ぬ」

 なら、良いんだけど。
 その辺りはわたしが口を出すことじゃないので、国王の言葉を信じることにする。

「それとエレローラには悪いが、ルトゥムの態度次第では騎士の任に戻すことも考えている」
「別にいいわよ」
「それは学園でのあいつ次第だから、先の話になるがな」

 それって、わたしの試合の意味が段々と薄れていくんだけど。
 まあ、エレローラさんが良いならいいけど。
 国王のお小言も終わり、馬車はお城の中に入り、馬車は止まる。

「えっと、それでわたしはどうしたらいいの?」
「言いたいことは言わせてもらった。フローラのところにでも行って、顔を出してやってくれ。出来ればいつもの格好でな」

 それって、クマの着ぐるみを着ろってこと?
 まあ、いいけど。

「それじゃ、わたしもフローラ様のところに」
「貴様にはまだ言いたいことがある。ユナを着替えさせたら、俺のところに来い!」
「そんな~」

 わたしに付いて来ようとしたエレローラさんは国王に却下される。

「誰のせいで、城に戻ってきたと思っている。おまえには仕事もそうだが、まだ言いたいことが山ほどある。さっさとユナを着替えさせたら戻って来い」

 国王が言いたいことだけ言うと、馬車から離れて行く。
 わたしはエレローラさんに空き部屋に連れて行かれる。

「ユナちゃん。あらためて、ありがとうね」

 わたしが制服を脱いでいると、エレローラさんが真面目な顔で頭を下げてお礼を言う。

「頭にきて、自分で首を突っ込んだだけですよ」
「でも、それは娘のためでしょう。ありがとうね」

 恥ずかしくなってくる。

「でも、ユナちゃん。ルトゥムにそうとう気に入られたようね」
「止めてもらえますか」

 思い出しただけでも寒気がしてくるよ。

「ルトゥムの息子と結婚すれば貴族よ」
「丁重にお断りします」
「なんなら、わたしの娘になるってどう? クリフも喜ぶわよ」

 わたしがクリフの娘?
 想像してみるが頭を抱えるクリフしか頭に思い浮かばない。
 うん、駄目だね。


国王のお小言でした。
やっと、学園祭の終わりが見えてきた。

書籍作業も落ち着いてきました。
あとは購入特典のSSを書かなければ。
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