20 クマさんの召喚獣はクマ、クマさんの家はクマハウス
だれか、ネーミングセンスください。
文章力も欲しいです。
空いている受付で依頼を受けてギルドを出る。
「ユナお姉ちゃん、何の依頼を受けたの」
「タイガーウルフの討伐」
「お姉ちゃん!」
「なに」
「タイガーウルフってウルフよりも大きくて、強いって聞いたよ。大丈夫なの」
心配そうにわたしのクマの服を掴んでくる。
「大丈夫じゃない?」
ウルフを大きくしただけのものだろうし。
不安そうにするフィナの頭を撫でて街を出る。
門には遅めの出発をする商人、冒険者が出発するために並んでいる。
わたしたちも並んでギルドカードを見せて街を出る。
門を通り抜けて、数分歩き、道から少し離れて周りに人がいない場所に移動する。
何人かの冒険者は遠くからわたしたちのことを眺めている。
気にせずに歩みを止める。
「お姉ちゃん?」
「乗り物出すから待って」
フィナに少し離れるように言って、両手についている白クマ、黒クマの腕を伸ばす。
魔力を流す。
クマの口が大きく開くと左右の口から白い物体と黒い物体が飛び出す。
その物体はモソモソと動き出す。
それはゆっくりと4本足で立ち上がる。
はい、召喚獣クマです。
白クマと黒クマがわたしの目の前にやってくる。
擦り寄ってくるので顔や顎を撫でてやる。
気持ちよさそうに目を細めてくる。
ふかふかして肌触りがいい。
わたしの頬に優しく触れてくる。
「お姉ちゃん!」
フィナは後ずさりする。
「大丈夫。わたしの召喚獣だから、安全だよ。ほら、フィナも触ってみて」
フィナは恐る恐る近づいてクマに触る。
クマが何もしてこないことが解るとフィナは笑顔になる。
「それじゃ、フィナはくまきゅうに乗って」
「くまきゅう?」
「白いクマがくまきゅう、黒いクマがくまゆるだから」
くまきゅうはフィナが乗りやすいように腰を下ろしてくれる。
「大丈夫だから」
フィナは恐る恐るくまきゅうに乗る。
フィナが乗るとくまきゅうがゆっくりと立ち上がる。
「うあああ」
「しっかり掴まっていれば大丈夫。まあ、くまきゅうの能力があるから自分から飛び降りない限り落ちないから大丈夫だから」
意外と目線が高くなって、慣れないと恐いかもしれない。
「たとえ、寝てても掴まってなくても落ちないから」
フィナを落ち着かせてわたしもくまゆるに乗る。
「始めはゆっくり行くから、慣れたら走るからね」
「う、うん」
クマに跨った二人はタイガーウルフがいる山に向けて走り出す。
それを見ていた近くの冒険者や商人、旅人が好奇の目で見ていたのは言うまでもない。
始めは人の目につかない所で召喚をしようと思っていたけど、毎回毎回、街から離れてから召喚するのも面倒かと思ったので、人の目を気にせずに召喚をすることにしたのだ。
二人を乗せたクマは徐々に速度を上げていく。
目指すのはゴブリンキングがいた山のさらに奥だ。
歩いたら6時間、このクマなら30分ほどで着く。
「あははははは」
フィナは楽しそうにしている。
時速は何km出ているか解らない。
クマにメーターは付いていないし。
車もバイクも乗ったこともないから、体感速度も分からない。
でも、かなり速度が出ているのはわかる。
スピードが出ているが風圧を受けることはない。
クマ全体を包むように力が発生しているので風圧を受けることは無い。
だから、寝ていても目的地まで着くことができる。
途中からさらに速度をあげ、ゴブリン討伐で情報を得た村には30分ほどで着く。
くまゆるたちを見て驚かせても迷惑になるから村を通らずに山に入っていく。
山に入ると流石に速度は落ちる。
ここからはのんびりと登っていく。
「たしか、この辺だったかな」
依頼書にはこの辺に出ると書かれていた。
山の途中に平地を見つけ、くまゆるから降りる。
「この辺りでいいかな」
周りの障害物や広さを確認する。
クマボックスからあるものを取り出して設置する。
「ユナお姉ちゃん!」
出てきた物に対してフィナが叫ぶ。
今日のフィナは叫んでばかりだね。
出てきたのは家、クマハウスである。
庭付き2階建てのクマハウスが二人の前にある。
外見の正面はずっしりとクマが4つ足で立っている姿になっている。
玄関は大きく開いたクマの口になっていて、二階はこぐまが乗っている外見になっている。
その家の隣には倉庫も付いている。
「とりあえず、中に入って休憩にしましょう」
「……うん」
くまゆるたちには庭で待っててもらう。
わたしたちはまるでクマに食われるように口の中へ入っていく。
クマハウスに入ると中は日本風の佇まいになっている。
「ああ、そこで靴脱いでね」
この世界の風習はわからないけど、一応伝える。
玄関で靴を脱ぐと次は居間になる。
一階は居間、台所、お風呂場、トイレ、ミニ倉庫になっている。
二階はわたしの部屋と客間がいくつか用意されている。
屋上はこぐまの頭の位置にあり、洗濯物でも干そうかと考えている。
「ああ、その辺でも座ってて」
ソファーもどきの椅子を指す。
「ユナお姉ちゃん」
「なに?」
「このおうちなに?」
部屋を見渡してから聞いてくる。
「わたしが魔法で作った家だよ」
魔法の実験でクマボックスが大きさも量も無限にはいるとわかったので、旅用に家を作ったのだ。
家は土魔法でクマをイメージして作る。そのほうが強度が丈夫になるため。
内装は好きなように土魔法で壁を作り、部屋割りを決めていく。
水が必要な部屋は水の魔石を購入して設置してある。
台所には冷蔵庫も置いてある。
光の魔石も各部屋に設置してあるから、夜でも明るくなる。
この家に足らないものは、テレビとパソコンぐらいだろう。
それがあれば引きこもれる家が完成する。
台所に行って冷えた果汁をフィナに渡す。
「ユナお姉ちゃんはどこかの貴族さまですか?」
「違うよ」
「それじゃ、お姫様ですか?」
「わたしみたいな姫がいるわけないじゃん。普通の冒険者だよ」
フィナは何か言いたそうだったが口を閉じた。
「それじゃ休憩をしたら、わたしはタイガーウルフを探しにいくね」
「わたしは?」
「フィナはくまきゅうと一緒にお母さんの薬草でも探してきていいよ。くまきゅうがいれば安全だから。もし、危ないと思ったら家に戻ってくれば結界が張ってあるから安全だからね」
「……」
「あと、となりの倉庫に魔物を置いておくから時間があったら解体をお願い」
「解体は後でいいの?」
「それはフィナ次第じゃない? 解体して売った金額の一割がフィナの儲けになるんだから。早く薬草を見つけて解体するのも、ずっとお母さんの薬草を探すのもフィナ次第」
「うん、わかった」
「それじゃ隣の倉庫に行こうか、説明するから」
倉庫には家からも外からも行けるようになっている。
倉庫の大きさは20畳ほどの大きさになる。
倉庫の中は水と作業台が設置されているだけであとは何も置いていない。
壁際にウルフと一角ウサギを10匹ほどクマボックスから取り出しておく。
「別に全部やらなくてもいいからね。解体が終わったら、こっちの部屋に仕舞っておいてくれる?」
隣の部屋は冷蔵倉庫になっている。
主に大量に冷やして置きたい物を入れるために作った場所だ。
クマボックスだと時間停止のため冷やすことはできない。
もっともクマハウスをクマボックスに入れれば時間は停止してしまうんだけどね。
「それじゃ、行ってくるから気をつけてね。何かあれば、くまきゅうに頼れば平気だから」