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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、エルフの里に行く

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214 クマさん、腕輪を取り戻す

「では、旦那様によろしくお伝え下さい」

 お茶をごちそうになったわたしたちはお礼を言って、お店を後にする。
 温かいお茶を頂いて、体も温まった。
 クマの格好はいろいろと聞かれたが、雨具だよ。と、適当に誤魔化したりした。
 外に出ると雨に小降りになり始めていた。
 それほど長居はしてなかったけど、これは、雨がやまれると逆にマズイ?
 雨が止んで、船場に人が来たら、くまゆるたちの水上歩行が出来なくなる。
 サーニャさんもそれに気付いたのか、急いで船場に向かう。
 まだ、人も居なく、急いでくまゆるたちを召喚して、川の上に飛び出す。
 二度目ということもあって、サーニャさんが慌てた様子はない。
 相変わらず、川の流れは速いがくまゆるたちは走り抜けて行く。
 無事に川を渡りきったときには雨は止んでいた。
 もう少し、長居をしていたら危なかったね。

「ユナちゃん、このまま、お店に行きましょう。昼までには時間はあるけど、早いほうがいいでしょう」

 たしかに、少しでも早い方がいいだろう。
 少しでも遅れて、いちゃもんを付けられたら面倒だし。
 わたしたちはルイミンが待つ宿屋には戻らずに、このままドグルードさんの店に向かうことにした。
 お店に到着すると、馬車が停まっている。
 見覚えがある。たしか、昨日来たときに停まっていた馬車だ。
 もしかして、昨日の性格が悪そうな人物がいるのかな。
 あまり、御近づきにはなりたくない人種だった。
 だからと言って、お店の中に入らないわけにはいかない。
 わたしとサーニャさんがお店の中に入ると、昨日と同様に青年が掃除をしていた。

「昨日の! お話は旦那様から伺っています。もしかして、絵を持って来て下さったんですか!?」

 青年はわたしたちを見るなり、嬉しそうにする。

「ええ、持ってきたわ。だから、ドグルードさんに会いたいけど、いいかしら?」

 サーニャさんがドグルードさんとの面会を申し出る。

「はい、今、絵を購入予定のレトベール様もいらっしゃっています」

 レトベールって商人が来ているってことは、目の前に停まっている馬車がそうってことだよね。それじゃ、昨日、偉そうにしていたあの男がレトベールって商人なの?
 性格が悪そうだったけど、大丈夫かな。
 青年は奥のドアをノックしてドアを開ける。

「早く、あの腕輪を旦那様にお渡ししろ」
「ですから、お昼までお待ち下さい。お約束はお昼のはずです」
「この雨の中、どうやって運んでくるんだ。船も動いていないんだぞ」
「冒険者に頼みましたので」
「いくら、冒険者でもあの川を渡れるわけがないだろう」

 部屋の中から言い争っている声が聞こえる。

「旦那様!」

 店番をしている青年がドグルードさんを呼ぶと、部屋の中にいる人たちは青年に気付く。

「どうかしましたか?」
「昨日の方が、いらっしゃいました。絵を持って来てくださったそうです」
「本当ですか!?」

 わたしたちは部屋の中に入る。
 部屋の中にはドグルードさん、昨日見た男性、そして、立派な髭を生やした老人がいた。
 むむむ、相関図が分からない。
 予想外の老人の出現に首を傾げる。

「なんなんだ。このエルフとクマは」
「先ほど言っていた冒険者です。サーニャさん、絵を持って来て下さったとは本当ですか?」
「ええ、ちゃんと受け取って来たわよ」

 サーニャさんがわたしの方を見る。絵を持っているのはわたしだ。
 わたしはクマボックスから絵が入った木箱を3人の前のテーブルに出す。ドグルードさんは箱を開けて、中身を確認する。

「間違いありません。ありがとうございます」
「嘘だ」

 信じられないようで、絵を確認している。

「偽物では」
「この通り、作者本人の名前もあります」
「うぅ……」

 男は偽物呼ばわりしたが、ドグルードさんの指摘によって、口を閉じる。

「これで、腕輪の件はよろしいですか?」
「それは……」
「ドグルード、別件でその腕輪を譲ってもらうわけにはいかないか?」

 老人が口を開く。

「旦那様、そんなことを頼まなくても」
「ロディス、ドグルードはちゃんと約束を守った。今日の昼までに絵を渡すと、それを守ったのだ。そのことについては終わりじゃ」

 老人が男を(たしな)める。

「ですが……」
「商人は契約と信頼が大事だ。ドグルードは契約通りに本日の昼までに絵をわたしに渡した。それで契約は成立した。それを腕輪が欲しいからと言って契約を反故にするわけにはいかない。反故にすれば信用が落ちる。だから、この絵に関することで腕輪を欲しがるのは契約違反じゃ」
「はい、申し訳ありません」

 男性は老人に頭を下げて椅子に座る。

「どうじゃ、お金なら払う。お主が腕輪を手に入れたときの倍の金額を出そう」
「ちょっと待って貰えるかしら、その腕輪はわたしが引き取ることになっているわ」
「なんだ、お前さんは」

 男が声をかけてきたサーニャさんを睨みつける。
 まあ、わたしたちが絵を持ってこなければ腕輪が手に入ったのだから、良い印象はないだろう。

「わたしはその腕輪の持ち主の姉です。今回はドグルードさんにお願いをして引き取りに来ました」

 もちろん、サーニャさんは腕輪を譲る気は無いので口を挟む。

「妹さんの腕輪かい」
「はい、出来の悪い妹ですが、腕輪を他人にお渡しすることはできません」

 老人は顎髭を触りながら少し考え込む。

「お金を払うと言ってもダメなんだろう」
「はい、お譲りするわけにはいきません」
「貴様、この方を誰だと思っている。大商人のレトベール様だぞ」

 この老人がレトベールだったんだね。
 初めはこの威張っている男がレトベールだと思ったけど、違ったみたいだ。

「ロディスさん、この方は王都の冒険者ギルドのギルドマスターのサーニャさんです」
「王都のギルドマスターだと!?」

 サーニャさんはドグルードさんの言葉を証明するようにギルドカードを見せる。
 ギルドカードを確認した男はサーニャさんの正体を知り、口を閉じる。
 やっぱり、王都のギルドマスターの肩書きは凄いんだね。

「今回は諦めるしか無いみたいじゃな」

 老人の言葉にドグルードさんとサーニャさんは安堵の表情を浮かべる。
 どうやら、無事に腕輪を引き取ることが出来そうだ。

「旦那様、よろしいのですか!?」
「王都のギルドマスターと争っても、なにも利益は生まない」
「ありがとう、助かるわ。でも、どうして、そんなに腕輪を欲しがるの?」
「持っていると風の加護を得ることが出来るのじゃろう」
「そうだけど。血縁者じゃないと受けられる加護は少ないわよ」

 そうなの?

「調べさせたから知っておる。でも、少なからず加護は受けることは出来るのじゃろう」
「ええ」
「孫娘に持たせてあげたかったんじゃ。わしみたいな商人をしていると、知らないところで恨まれている可能性もある。だから、少しでも護身用になればと思ったんじゃが」
「ごめんなさいね。こればかりは譲ることが出来ないの」
「もうよい。妹には手放さないように言っておきなさい。わしのように欲しがる者もいる」
「ええ、ちゃんと伝えておくわ」

 男と違ってお爺さんは優しい人みたいだ。
 ただ、自分のルールに厳しい人かもしれない。

「それで、ドグルード、例の件はどうなっておる」
「申し訳ありません。わたしの方でも無理でした」

 わたしたちがいるのにレトベールさんは別の話を始め出す。
 腕輪も返してもらっていないし、出て行くわけにもいかないので、この場に残ることになる。

「あらゆる方向から、頼みあげましたが、誰も手放そうとはしませんでした」
「お主の伝手でも駄目だったか」
「つかえない奴だ」

 男がバカにするように言う。

「そう言うな。お主でも駄目じゃったんじゃろう」 
「そうですが」

 なにか別に欲しいものがあったらしい。

「全員が国王様より、譲り受けた物。誰一人、売ろうとはしませんでした」
「作者の方は見つからなかったのか? 作者が分かればその者に描いてもらうことができるやもしれない」

 どうやら、絵みたいだ。
 今回の絵といい、本当に絵が好きなお爺さんなんだね。

「それがクマとしか分からず。知っていそうな者も話そうとしませんでした」

 今、なんとおっしゃいました?
 作者名がクマと言わなかった?

「そんなことは知っておる。絵本に書いてあったのを確認済みだ。その作者を捜すのがお主の仕事だろう」

 男は叫ぶ。

「ロディス、お主は黙っておれ」
「申し訳ありません」
「わしの伝でも分からなかったが、ドグルード、お主でも駄目だったか」
「申し訳ありません」
「謝ることじゃない。でも、あのクマの絵本を孫娘のために、どうにか手に入れたかったんじゃが」

 ここまで言われればわたしだって分かる。
 クマの絵本って、あの絵本のことだよね。

「ユナちゃん、クマの絵本って」

 サーニャさんが肘で突っつきながら耳打ちをしてくる。
 分かっているよ。
 お爺さんが探しているクマの絵本って、間違いなく、わたしが描いたクマの絵本だ。

「一度、王都に行ったときに知人に見せてもらったが、素晴らしい絵本だった。頼み込んだが譲ってはくれなかった。作者のことも、国王様に口止めをされているらしいからな」
「はい、自分の方でも同じです」

 ちゃんと、国王様は口止めはしてくれているんだ。
 しかも、ちゃんと、みんな、黙ってくれている。

「だが、作者名がクマって」

 お爺さんの視線がわたしに向く。

「そうですよね。クマって」

 ドグルードさんがわたしを見る。

「クマなんて変な名前を付けおって」

 男がわたしを見る。
 最後にサーニャさんがわたしを見る。
 この場にいる全員の視線がわたしに集まる。

「えっと、なにかな?」
「お主は何者じゃ」
「冒険者だけど」
「お主に尋ねるが、クマの絵本について、なにか知らないか?」

 知らないと言うのは簡単だけど。どうしたら良いのかな。

「そんなに絵本が欲しいの?」
「王都にいる知り合いに一度、孫娘が絵本を見せてもらって、孫娘が凄く気にいったんじゃが、手に入らなくてな」

 お爺さんは本当に悲しげな顔をする。
 別に商売をするために欲しがっているわけじゃないんだよね。
 孫娘のために欲しがっているんだよね。
 腕輪も孫娘のためだったし、このお爺さんは悪い人には見えない。
 わたしは考えた結果、絵本を出してあげる。

「クマの絵本ってこれのこと?」

 わたしはクマボックスからクマの絵本を取り出す。
 お爺さんは表紙を見た瞬間、絵本に手を伸ばす。

「そうじゃ、これじゃ!」

 お爺さんは絵本を手に取ると叫ぶ。

「もしかして、この絵本はお主が描いたのか?」

 絵本とわたしを交互に見比べる。

「そうだけど」

 口止めはするつもりだから、正直に答える。

「すまないがこれを譲ってくれないか。お金なら払う」

 お金を払うと言っているけど、絵本で商売をするつもりがないなら、別にあげても良いと思っているけど、それじゃ、ダメだよね。

「いくらで買ってくれるの?」

 どのくらいのお金で買ってくれるか、興味本位で尋ねてみる。


うん、終わらなかった。
今回は次回で終わるとは言いませんw
次回、絵本の交渉です。

※ 申し訳ありません、年末になり、書籍の作業にも入ることになりました。投稿が3日おきが多くなると思います。たまに4日もあるかもしれません。
ご了承ください。
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