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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、誕生日会に参加する
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174 クマさん、グランさんに報告する

 少し早めにグランさんのお屋敷に戻ってくると、メーシュンさんが出迎えてくれる。


「お帰りなさいませ。でも、お早くありませんか?」

「ちょっとトラブルがあってね」


 メーシュンさんがわたしの方をジッと見つめる。

 わたしが原因じゃないよ。

 気付かれた原因では、あったかもしれないけど。


「サルバード家のランドルって、ムカつくバカに出会ってね。それで、早めに戻ってきたの」


 本当はもう少し見回りたかったけど、今日は仕方ない。

 わたしのことをジッと見ていたメーシュンさんの顔から笑みが消える。


「ランドル様ですか。なにもされませんでしたか?」

「ミサに暴言を吐いたぐらいかな」


 メーシュンさんはわたしの言葉に反応して、すぐにミサの方を見る。


「ミサーナ様、大丈夫でしたか?」

「ユナお姉ちゃんが守ってくれたから」

「そうですか。ユナさん、ミサーナ様を守ってくださってありがとうございます」


 頭を深く下げるメーシュンさん。


「サルバード家と仲が悪いの?」

「はい、ここ数年も悪かったのですが、最近ではさらに酷くなってます。特にランドル様のミサーナ様に対しての暴言は聞きます」

「抗議はしていないの?」

「しているようですが、あまり効果はないみたいです。前は息子には注意する。息子を叱った。でしたが、最近では子供同士の喧嘩に親が口をだすなと言われたそうです」


 虐めている側と虐められる側の考え方の相違だね。


「それじゃ、一応グランさんに報告をした方がいいかな?」

「はい、した方がよろしいかと思います。現状だと抗議しても効果はないと思いますが、グラン様なら何かしら対応をしてくれると思います」

「今、グランさんに会えるかな?」

「う~ん、ミサーナ様の件ですから、大丈夫だと思いますが。今はクリフ様と大事な話があるから、部屋には近寄らないように言われています」


 それじゃ、とりあえず行ってみて、ダメだったら後でいいかな。

 グランさんに会いに行くからミサたちには先に部屋に戻ってもらうことにする。


「わたしも行きます」

「わたしだけでいいよ。3人は久しぶりに会ったんだから、遊んでいるといいよ」


 3人を説得して、わたしはメーシュンさんと一緒にグランさんのところに向かう。


「こちらの部屋にお二人はいます」

「ありがとうね」


 わたしはドアをノックする。

 中から返事が聞こえたのでドアを開けて中に入る。


「失礼するね」

「ユナ?」


 クリフとグランさんが驚いたようにわたしを見る。

 2人はテーブルの上に資料みたいな物を並べて話し合っている。


「どうかしたのか?」

「ミサのことで報告しに来ただけだよ。あとでも良いかと思ったけど、早い方がいいかと思って」

「何かあったのか?」

「サルバード家のランドルってバカに会った」


 その一言で2人の表情が変わる。


「大丈夫だったか?」

「みんな、怪我1つないよ。罵倒されただけ」


 それだけでも、子供には辛いはず。


「またか」


 グランさんは忌々しそうに呟く。


「軽く話は聞いたけど、そんなに仲が悪いの?」

「悪い。最近は特に悪い。嫌がらせが始まったのは数年前じゃな。初めは些細なことだったから、誰がしているかさえも分からなかった。だから、気にも止めなかったんじゃが、最近では隠そうともせずに、嫌がらせをし始めてな。ミサに対する嫌がらせも、その1つだ。わしがそのことについて抗議しても、怪我をしたわけじゃない。子供同士の喧嘩に親が口を出すことない。と言い出す有り様じゃ」


 グランさんは悔しそうに言う。

 言葉の暴力は心に傷を付けるってことを知らないのかな。

 人によっては立ち直れない場合もあるし、自殺するものだっている。

 

「話を聞く限りだと、グランさんも嫌がらせを受けているの?」


 話が長くなりそうなので、クマボックスから三人分の飲み物を出す。

 二人は素直に出された飲み物を飲んでくれる。


「商業ギルドのギルマスが、サルバード家の息が掛かった者に代わった」

「抗議は?」

「したが、証拠を出せと言われた」

「でも、どうしてギルマスがサルバード家の息が掛かっているってわかったの?」

「それは、商人がサルバード家寄りが多いからだ」


 黙って聞いていたクリフが口を挟む。


「品物もサルバード家が治める地区に優先的に納められる。そうなると必然的にサルバード地区で品物を買わないといけなくなる」

「そうなると、わしの地区の税収は減ることになる」

「商業ギルドに抗議は?」

「商人がどこに商品を売るかは商人の自由だと言われた」

「住人は少し離れたお店で購入するはめになるが、購入ができないわけじゃない」

「困っているのはファーレングラム地区にある商売をしている者たちだな。中にはサルバート地区に引っ越す者もいる」

「ギルマスの力ってそんなにあるんだ」

「力って言うよりは買収だろうな。こっちの店に卸せば、高く買うみたいな」

「商人にしてみれば、少しでも高く買ってくれる場所に卸すからな」

「売りたくない相手に売らせないって最低だね」


 わたしのその言葉にクリフが予想外の反応をする。


「ユナ、おまえ。俺にしたことを覚えていないのか?」


 呆れ顔で言われる。

 クリフになにかしたっけ? 記憶に無いんだけど。

 わたしはクリフの言葉の意味が解らず首を傾げる。


「こいつ。本気で忘れていやがるよ。おまえさん、ミレーヌに頼んで俺に卵を売らせなかったことを忘れたのか?」


 わたしはクマさんパペットをポンと叩く。

 ああ、そんなこともあったね。

 確か、クリフが孤児院の補助金を打ち切ったと思って、そんなことをしたっけ。

 うん、思い出したよ。そんな昔のこと、未だに覚えているってクリフは心が狭いね。

 そもそも、クリフがしっかりしていれば、あんなことは起きなかったんだから、わたしのせいじゃないよ。

 でも、クリフが言いたいことは分かった。ギルマスと友好的になれば、いろいろと融通が利くってことか。


「ユナが俺にしたことと同じことだ。もっともこっちの方が規模が大きくて質が悪いがな」

「さらに、この街の有力者たちもサルバード家に寄り始めて、わしが治める地区は品不足になりつつある。それで、クリフに相談していた」

「グラン爺さんも早く、俺に相談をしてくれればいいのに」


 話し合いって、そのことだったんだね。


「すまん。おまえさんには迷惑をかけたくなかったからな」

「それが、今の状況になったんだろう」

「まさか、ここまで、本格的に潰しに掛かってくるとは思わなかった」


 若いクリフに頭を下げるグランさん。


「潰すって、貴族が潰れるの?」

「そりゃ、収入が無くなれば、貴族だって潰れるよ。国王から領土を没収され、他の者に譲り渡される」

「それが、サルバード家になるのは濃厚だな。税収などの報告書だけを見れば優秀な領主だからな」


 確かに税収が増えているなら、書類上はサルバード家は優秀になるわけだ。

 書類にはどんな悪事をして税収を増やしたなんて書いていないのだから。


「とにかく、その対策の話でグラン爺さんと俺は話し合っていたんだ。当面は俺の街から物資を送るが、商業ギルドを押さえられているのが痛いな」

「だから、今回のパーティーは大商人や富豪を呼ぶから絶対に成功させないとならん。このままの状態で息子に受け継がせるわけにはいかない」

「少しでもこちらに引き込んで対抗しないといけないからな」

「こちらの陣営が多いと知れば、ギルマスも黙っていられんはずじゃ」


 パーティーにはそんな理由もあったんだね。

 どうやらミサとランドルの関係は子供同士の喧嘩以上の争いがあるみたいだ。

 ランドルにしてみれば領土を奪い取る相手ってことか。さらにあの口振りからすると勝った気でいる。ミサをメイドにしてやるって!ミサが路頭に迷ったらわたしが面倒を見る。あんな、バカには渡さないよ。

 一番良いのは、グランさんがサルバード家との戦いに勝てればいいんだけど。今は劣勢みたいだ。

 でも、今後はクリフも力を貸すようだから大丈夫かな?


 わたしにできることがあれば手伝うけど。貴族同士の争いではわたしの出番はない。

 せめて、戦いがあれば手伝うんだけど。内政の戦いだとわたしの役目はない。

 今のわたしにできることはミサたちを守ることぐらいかな。

 話も終わり、席を外そうとしたら、廊下が騒がしくなり、ノックもせずにドアが開くとメーシュンさんが駆け込んできた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 好きな女を苛めると メイドにしてやるってそういうことだよね
[良い点] 大人の対応しているユナ。 とても15歳とは思えない中の人の対応力ですな。 自分のしたことの棚上げは実に15歳らしいですが。 [気になる点] >ドアをノック >クマさんパペットをポンと叩く…
[気になる点] この時期の少年だと気になる女の子の気を引くため嫌がらせするとかじゃないのかね? そんで一向に靡かないから嫌がらせがグレードアップしてる?
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