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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、ミスリルナイフを作る

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128 クマさん、アンズを出迎える

修正 111話のアンズの店の手伝いの人数を8人から6人に減らしました。
 王都から戻ってきて数日間、のんびりと過ごしている。
 冒険者ギルドに冷やかしに行ったり。フィナとシュリ、ノアを連れてくまゆるたちと散歩したり、ハチミツの木にいる熊に会いに行ったりして、異世界を満喫している。
 今日は朝から1人でベッドの上でゴロゴロしている。だらけているとも言う。
 なにもすることがない。なにもしたくない。
 たまに、こうやって空いた時間ができると、ネットやゲームが恋しくなるときがある。
 この世界も楽しいけど、娯楽が少ないのが難点だ。
 今度、孤児院の子供たちでも集めて、レトロゲームでも作って遊ぼうかな。
 オセロ、将棋、チェス、スゴロク、トランプと他にも色んなゲームがある。
 そんなことを考えていると、お腹の虫が鳴く。 
 さすがに、朝食も食べずに、起きてからベッドの上でゴロゴロしているだけでもお腹が空く。なので、『くまさんの憩いの店』に行くことにする。
 クマハウスを出て、憩いの店に向かって歩いていると、前方から見知った人物がやってくる。

「なんだ、出かけるのか」

 クリフが1人で歩いている。
 この世界の貴族って1人で行動するよね。ノアもよく抜け出して1人で街を出歩いているし。国王も一人でわたしに家に来たこともあったし。まあ、国王の場合は例外なんだろうけど。
 安全なのか、危機管理がないのか。たぶん、前者なんだと思う。
 門で犯罪者の確認も行なっているし、警備兵も見回っているのも見かける。それだけ、街の中は安全ってことなのかな。
 他の異世界物だと、貴族やご令嬢には護衛が必ず付く。特にご令嬢には美男子の護衛が付き物だ。
 でも、貴族のご令嬢なのに、ノアにはそんな美男子の護衛はいないね。
 まあ、普通に考えたら年頃の女の子に、美男子の護衛なんて付けたら変な噂が流れて、婚約とか問題がでそうだし。
 これが現実とファンタジーの違いかな。
 ノアもファンタジーの世界に生まれていたらイケメンに囲まれた生活を送っていたのかな?

「お腹が空いたから、店に行くところだけど。クリフは?」
「俺はおまえさんの家に行くところだ」
「わたしの家?」
「話したいことがあってな。そうだな、俺も腹が減っているし。俺も一緒に付いていってもいいか?」
「別にいいけど」

 断ることじゃないので了承する。クリフと一緒にクマハウスから徒歩、数分の位置にある『くまさんの憩いの店』に行く。
 店の中に入るが反応が薄い。これが王都なら、騒いだり、眺められたり、あっちこっちから『クマ』と言う言葉が聞こえてくるんだけど、この店の中だと聞こえてこない。
 これも、クマの着ぐるみの服を着ている子供たちのおかげかな。

 店の中に入ったわたしとクリフはカウンターに向かう。
 クマの着ぐるみを着た女の子が対応してくれる。
 えーと、どれにしようかな。どれも美味しそうだ。
 悩んだ結果、モリンさんの新作のパンとフライドポテトと果汁を頼む。
 クリフは一言『同じものを頼む』で済ませる。
 基本、わたしは正面からお客様として入るときは代金を払っている。だから、今回もお金を出そうとしたら、クリフが横から2人分の代金を出してくれる。

「いいの?」
「気にするな」

 わたしたちは注文した商品を受け取ると、あいている席に座る。

「それで、わたしに用ってなに?」

 フライドポテトを食べながら対面に座るクリフに尋ねる。

「用事って言うか、報告だな。トンネルの整備が数日後には終了する」
「やっと、完成するんだ」

 モリンさんの新作のパンを食べながら返事をする。
 領主様、自らわざわざ、トンネルの完成の報告に来てくれたんだ。

「使用するだけなら、お前さんが作った状態でもいいが、馬車も通るからな。光も灯さないといけないし、馬の休憩所、他にもいろいろ細かい作業があったからな」

 クリフは説明しながらフライドポテトを食べる。
 まあ、トンネルのことは専門家に任せることにする。
 素人のわたしが口を挟むようなことじゃない。わたしとしては安全に魚介類の流通ができるようになれば問題はない。

「それじゃ、こっちからもミリーラの町に行けるようになるんだ」
「まあ、すでに小麦粉などの必要品は運んでいたが、これで正式に一般が通れるようになる。そうなればこの前渡した契約書通り、通行料の一部がおまえさんのギルドカードに振り込まれる。もし、その辺の詳しい話が聞きたかったらミレーヌに聞いてくれ」

 だいぶ前にクリフとミレーヌさんがわたしの家にやって来て、契約書を持ってきた。
 面倒だったから、詳しくは読んでいないけど、通行料がギルドカードに振り込まれることやら、わたしが通る場合は無料になるとか、それは一緒に通る者にも適応されるとか書かれていた記憶がある。

「宿屋とかは建てたの?」
「二軒ほど建てたと聞いている。それで足りるかどうかは、様子見だな。そこの辺はミリーラの町長や商業ギルドがなんとかするだろう。人手が足らなくなったら連絡をするようには言ってあるし、大丈夫だろ」

 たしかに、どうなるかはトンネルを開放させてみないと分からない。
 商売をする者、海を見に行く者、仕事をする者、遊びに行く者、どのくらいの人が行き来するか分からない。

 でも、トンネルが完成するってことはアンズが近いうちに来るってことかな?
 そう考えるとタイミングが良かった。
 ティルミナさんにアンズのことを頼んであるとはいえ、2人は知らない同士だ。それを考えるとわたしがここにいるのはタイミングがいい。

「それにしても、ここの店の食べ物は美味しいな」

 クリフが食事の感想を言う。
 貴族様から合格点が貰えれば十分な評価だろう。
 もっとも、モリンさんに内緒で国王に食べさせているんだけどね。
 そんな王族や貴族が認めたパンだ。不味いわけがない。
 この新作のパンも美味しい。店に出す前にいろんなパンを試食したけど、どれも美味しかった。
 モリンさんは、わたしの(にわ)か知識のパン作りの話を聞いて、モリンさんの今までの知識と経験を生かして、新しいパンを作りだしている。
 たぶん、この王国一、美味しいパン屋だと思う。
 今更だけど、引き抜きとかされないよね。
 今度、引き抜きがされないようにお給金について話し合った方がいいかな。

「それじゃ、俺は仕事が残っているから戻る。なにか聞きたいことがあれば屋敷まで来てくれ」

 クリフはノアにお土産なのか、パンを注文して帰って行った。


 クリフからトンネルの話を聞いた数日後、トンネルが完成したことが正式に発表になった。
 ほとんどの者はトンネルのことは知っていたため、驚きは少なかった。
 まあ、木の伐採、道の整備、魔物退治、ミリーラの町とトンネルの情報はいろんなところから、すでに広まっている。
 ただ、商人たちが我先と出発して行ったのが目立ったぐらいだ。


 そして、トンネル完成から計算すると、本日辺りにミリーラの町からクリモニアに到着する予定になる。アンズがいつ来るかの日取りは聞いていないが、様子を見に門に向かう。
 門に近づくと、いつもよりも騒がしい。
 確認するために門に向かうと、周辺からミリーラの町って単語が聞こえてくる。
 どうやら、ミリーラの町から人が到着したらしい。
 門に辿り着くと、多くの馬車が次々と入ってくるところだった。
 馬車に乗っていた商人風の男は門兵にいろいろと聞いている。
 馬車はどこに止めたらいいのか?
 商業ギルドはどこにあるのか?
 宿屋は何処がオススメなのか?
 その質問に丁寧に答える門兵。

 他の馬車からも、中に入ることを許可された人たちが降りてくる。乗り合い馬車だったのか、降りる人が多い。その中にデーガさんの遺伝子が入っているとは思えない女性がいた。
 間違いなくアンズだ。
 まさか、初日に来てくれると思わなかった。
 アンズは馬車から降りると周りを見渡している。
 田舎から出てきた、おのぼりさんみたいだ。
 そんなアンズに気づかれないように、驚かせようと近づく。
 クマの靴は足音がしない。足音で気づかれることがない。

「ユナさん!」

 だが、簡単に見つかってしまった。
 足音で気づかれなくても姿でばれるアンバランスなクマ装備。
 まあ、初めから着ぐるみの格好で気付かれないで、近寄れるとは思っていなかったけど。

「アンズ、いらっしゃい」
「迎えに来てくれたんですか?」
「一応ね。今日辺りにミリーラから来る予定になっていたから、一応確認のために来たんだけど、いるとは思わなかったよ」
「それが、商業ギルドが優先的にわたしたちを乗せてくれたんです」
「そうなの?」
「優先的に乗せる代わりに、ユナさんのところでしっかり働いて来いって言われました。だから、わたし頑張りますから、よろしくお願いしますね」

 アンズは嬉しそうに笑顔をわたしに向ける。
 可愛いね。その笑顔は男の人に向けてあげた方がいいよ、と心の中で呟く。
 そうすれば早く婿が見付かるよ。
 今まで、アンズに彼氏が出来なかった理由ってデーガさんが側にいたせいじゃないかな。
 結婚相手を見つけてくれって頼まれたけど、デーガさんがいなければ、意外と早く見つかるかも。

「それにしても、大きな街ですね。迷子になりそうです」

 街を見渡すアンズ。
 確かにミリーラの町と比べると大きいし、人も多い。
 そして、先ほどから、アンズの後ろにいる女性たちがアンズとわたしを交互にみている。
 見覚えがある女性たちだ。たしか、盗賊たちに捕まっていた女性たちだ。
 その女性の1人がアンズの服を掴む。

「アンズちゃん。わたしたちのこと忘れてない?」
「うん、わたしたちのこと、クマちゃんに紹介してくれない?」

 その言葉に他の女性たちも頷いている。

「ああ、ごめんなさい。ユナさん、こちらのみんなが先日言っていた、店を手伝ってくれる皆さんです」

 その数は6人。
 年齢は20歳から25歳ぐらいだ。
 これも、エレローラさんみたいな年齢疑惑がなければだ。

「ユナちゃんって呼んでいいかな? でも、これからお世話になるから、ユナさんがいいかな?」
「好きなように呼んでいいよ」

 さっきのクマちゃんだけは絶対に止めて欲しいけど。
 呼んだら、オーナー権限で絶対に阻止するけど。
 クマのお嬢ちゃんは許せるけど、くまちゃんはなぜか、心の中で否定している。それだけは呼ばしてはいけないと。

「それじゃ、ユナちゃんって呼ばせてもらうね。それで本当にわたしたち来ちゃったけど、本当に良かったの? 迷惑じゃない?」
「仕事って魚を捌いて、料理を作ればいいの?」

 年上の二人が尋ねてくる。

「だけってわけじゃないけど、メインはそうだね。他にも仕事はあるから割り振りはさせてもらうけど」
「孤児院の仕事だっけ」
「うん、50人ぐらいいるんだけど。今、2人で面倒を見ているから、その補佐をしてあげてほしいと思っているよ」
「そんなにいるの?」
「まあ、その話は後でするよ。とりあえず、みんな馬車の移動で疲れたでしょう。休める場所に案内するから行こうか」
「ユナさん。その前に、安い宿屋を紹介してくれませんか?」
「宿屋?」
「早めに宿屋を確保しておかないと、他の人たちに取られちゃうから。とりあえず、今日は宿屋に泊まって、明日にでも、全員が住める場所を探そうと思っているんだけど」
「お店に住めればいいんだけど。ユナちゃん、お店に空いている部屋ってある? あれば格安で提供して欲しいんだけど」

 アンズの後ろにいる女性が尋ねてくる。

「あるけど。とりあえず、みんなが住むところは用意してあるから、安心していいよ」
「そうなの? 嬉しいけど、高いと払えないよ」
「それは大丈夫。無料だから」
「無料って」
「従業員寮って言うのかな? わたしのところで働いてくれるなら、衣食住は提供するよ」

 その、わたしの言葉で口が塞がらない女性たち。

「とりあえず、行こう。みんなも疲れているでしょう。それに、こんな場所で話していても、他の人に迷惑がかかるし」

 わたしの言葉にみんな頷いてくれる。
やっと、アンズが来た!
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