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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アイテムコンテストとギルドの発展

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新イベントと渡り鳥の方針会議

 トビが砂漠に戻ってきたのは、俺達がTBでのログインを再開した二日後のことだった。
 その間、俺達は特に目的を決めずに思い思いに過ごしていた。

 俺とユーミルは農地開拓に関する下調べ。
 リィズはアイテム製作に向けた材料の仕入れとお勉強。
 セレーネさんは普段通りに鍛冶、といった具合だ。

「――で、何故にユーミル殿は倒れているのでござるか?」
「あいつの手元に転がった瓶を見て、察してくれると嬉しい」
「…………?」

 ギルドホームの一室の床にうつ伏せになったユーミルの周囲には、ポーション用の瓶の残骸が転がっている。
 そしてそれを無視して、マイペースにテーブルですり鉢を使って薬草を混ぜ合わせるリィズ。

「分かんないか。ユーミルが急に、回復薬ってどんな味がするのだ? とか言い出してな」
「あ、ああー。その言葉で何となく察しがついたでござるよ。つまり飲んだ、と?」
「正解。普通のポーションは美味しかったらしいぞ」

 気を良くして次々と飲んだ結果、この有り様である。
 俺とリィズが調薬しているのを見ているだけだったので、暇してたのは理解出来るんだけどな……。

「さ、最初は……」
「あ、起きたでござる」
「最初のポーションは栄養ドリンクのような味だったのだ。だが、この解毒薬……うっ……」
「吐くなよ? ゲームで吐けるのかは知らないけど、絶対に吐くなよ!」
「だ、大丈夫だ」

 背中をさすり、砂漠では貴重な水をユーミルに与える。
 これで喉の苦みを押し流してしまえ。
 ラクダに酔うわ、薬に酔うわでなんなんだよ本当に。

「こんなのが大会優勝者とは、誰も思わないでござろうな……」
「全く酷い醜態だよ……」
「阿呆ですね。疑いようもなく」
「何だと――うぷっ」
「叫ぶな。それ以前に、落ち着くまで無理に喋ろうとするな」

 解毒薬はキツ目の漢方薬のような苦さと匂いだったそうだ。
 ちなみに回復薬の類は、飲んでも体にかけても効果は変わらない。
 有志が既に検証済みなので、単にこれはユーミルの好奇心によるものだ。

「しかし、随分と大量に材料を買い込んだでござるなぁ」

 トビは長距離移動で疲れたのか、どかっと椅子に腰を降ろすとテーブルの上の薬草類に目をやった。
 薬草類と同じくそこには調合用の道具も所狭しと満載されている。
 この部屋も鍛冶場とはまた違う作業場の一種である。調薬室、とでも呼べばいいのだろうか?
 混合だけでなく粉砕、乾燥、加熱まで様々な加工が可能だ。

「まあ今の所、所持金には余裕があるからな。取り敢えずは作ってみて経験を積まないと」
「取引掲示板に流れている材料から作るだけでも、NPCのショップで買うよりは安いですし。まだ始めたばかりなので、効果の上乗せは今一つですが」
「へえ、なるほど。では、こっちの紫色をした見慣れない液体の瓶は何でござるか? ポーションではないような……」
「それは毒薬」

 毒薬と聞いて伸ばし掛けた手をトビが引っ込めた。
 基本的にポーションは澄んだ青色か緑色が多いのだが、こちらの毒薬は濁った紫色である。

「うお……ユーミル殿、こっちは間違っても飲まないように気を付けるでござるよ」
「……さすがの私も、そんな見るからに危険な物は口にせん」

 少し持ち直したのか、やや荒い呼吸をしながらユーミルが答える。
 毒になっても状態異常そのものは『リカバー』で治せるが、飲んだ場合に喉の状態がどうなるかは想像したくもないな。

 ちなみにだが、リィズは毒薬の精製の方が得意のようだ。
 どちらかというと回復薬の方に苦戦気味である。
 俺は回復薬の方が得意なので、完全に分担するのも有りだが……。
 リィズがこれから上達する可能性もあるので、どうするかはもう少し様子見したい。

「んじゃ、トビも帰ってきたところで一旦全員で集まるかぁ。トビ、セレーネさんを呼んできてくれ。鍛冶場に居ると思うから」
「承知仕った。して、ハインド殿達は?」
「私達はここを片付けてから行きます」

 その質問に対しては、集中して薬を混ぜていたリィズが顔を上げて俺の代わりに答えた。
 そんなリィズの手元にあるすり鉢の中身は、澱んだ紫色――って、また毒薬かよ。
 毒薬よりも回復薬の方が嬉しいんだけどなぁ……。
 道理で手袋とマスクをしっかり装備していると思った。

「ユーミルさんは……はぁ。この通りですし。お願いします、トビさん」
「うぅ……」

 というわけで、これから集まって簡単なギルドの方針会議だ。
 ユーミルの口直しも兼ねて何か軽食を用意するとしようか。
 満腹度もやや減り気味だし、丁度いいタイミングだろう。



「フハハハハハ! ふっかーつ!」
「はいはい。んじゃさっさと進行してくれや、ギルマス」
「んー……ハインド、任せた」
「丸投げかよ……」

 今日のメニューは市場で売っていた果物と生クリームをパンに挟んだフルーツサンド。
 果物の爽やかな味と香りで口の中がリフレッシュだ。
 それを食べたユーミルがたちまち元気になり、会議の進行役を俺に押し付けてくる。
 場所はギルドホームの談話室、全員がリラックスした様子でハーブティを飲みつつの会話だ。

「じゃあ仕方ないので俺が。えーっと……今日になって、早くも次の新イベントが発表された訳ですが」
「アイテムコンテストですね? ここはセッちゃんの腕の見せ所かと」
「あ、うん。何かしらの武器か防具は出してみようと思っているけど……みんなはどうするの?」

 この情報は公式ページの告知によるものである。
 ガチガチの戦闘系イベントの次は、バランスを取って生産メインのプレイヤーが活躍できるアイテムコンテストが行われるという運びとなったようだ。
 コンテストは部門毎に分けられ、まず一番に目を惹くのは性能を重視した武器、防具部門。
 他には装着時の見た目を重視した衣装部門、アイテムに関しても回復系、妨害系、一時的に能力を上げる物や一風変わった便利アイテムなど、上げ切るのが大変なほど細かく部門が分けられている。

「ウチのギルドはハッキリ言って雑食系――で良いんだよな、ギルマス?」
「うむ。どのイベントにも、得手不得手は考えずに積極的に参加していくぞ!」
「そんな感じなんで。今回はセレーネさんの鍛冶のサポートをメインとして、他のメンバーも好きな物をそれぞれ何かしら出品する――という感じで行こうと思うんだけど、どうだろう?」

 俺とユーミルからの提案に、トビとリィズも頷いてくれた。
 今回、料理部門が無いのが非常に残念だが……その内開催されることを期待しておこう。

「で、暫くは生産メインの活動になるかな。主にユーミルが担当する農地開拓に関しては人手が要るから、手が空いている場合は積極的に手伝ってくれると助かる」
「でも最優先は、セレーネ殿の鍛冶のために材料収集でござるな?」
「そうなる。折角だから、みんなで未踏破エリアも探ってみないと」
「うん、ありがとうね。何か見つかるといいんだけど……」

 またレアメタルが見つかるかもしれないし、可能なら宝石類なんかも得られればセレーネさんも大分やり易くなるだろう。
 彼女の腕は確かなので、材料選びで結果が大きく変わると思うのだ。

「じゃあ、そんな感じで。反対意見もないみたいだし、トビ・リィズ・セレーネさんは出品するアイテムの案でも練っていてくれ」
「むん? ということは、ハインド殿とユーミル殿はどこかに行かれるので?」
「ああ……ちょっと、砂漠の新たな住人のお出迎えにな」
「そういうことだ!」

 俺達の言葉に、トビが頭の上に更なる疑問符を浮かべる。
 詳しく説明する為に俺は再度口を開いた。
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