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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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スクショ談義と北国との別れ

 酒場『カエルラ』に全員が揃うのは、かなり久しぶりのことである。
 先に渡り鳥のメンバーが揃ったところで、話すのはやはり予告のあったイベントについてだ。
 聞き役に回ることの多いセレーネさんが、珍しく最初に口を開いたのだが――

「もし鉱石の採掘ポイントが金塊用のポイントに置き換わったら、どうしよう……」

 ゴールドラッシュイベントについて、不安そうな様子で呟く。
 採掘ポイントが新たに設置されることも考えられるが……。
 鍛冶メインのセレーネさんにとっては、そうなると嬉しくない事態ということになる。

「あー、確かにそういう可能性もありますか。普通に考えると、不壊のツルハシの活躍機会なんですが」
「私たちの場合、資金はそれなりにあるからな! よっぽどじゃない限り、恩恵は今一つだ!」
「そうなったとすると、あまりありがたくないイベントということになるでござるな……あ、いやいや! まだ分からないでござるよ!? セレーネ殿!」
「そ、そうだよね」

 風邪から復帰したトビが、ネガティブな空気を振り払うように慌ててフォローを入れる。
 この件に関しては、念のためイベント前にある程度の鉱石を確保しておこうという話で終わり……。
 続いては、スクリーンショットコンテストに関して。

「スクリーンショットコンテスト……名前が長いな! 省略するぞ! このスクショコン、イベント開始以前に撮った物は提出可能なのだろうか?」
「恐らく問題ないだろう。そもそもユーミル、何か使えそうなスクショを持っていたっけ?」
「この前のグレース兄妹のスクショがあるぞ!」
「安直でござるな!? 被るでござるよ!」

 グレース兄妹というのは、二日前にユーミルが議事堂で撮って俺がトビに送り付けた例の写真の二人だ。
 兄がラルフ、妹がソフィアで、その美しい容姿からプレイヤー人気は抜群。
 故に、トビの言葉は間違っていない。

「まあ、被るだろうな……ユーミルは他人と被るの、嫌だろう?」
「確かに嫌だ。やはり、何か珍しい被写体を探しに行く必要が出てくるか」
「……しからば、現段階で使い物になりそうなスクショがないか見せ合わないでござるか? あ、もちろん無理にとは言わないでござるが」
「私は大丈夫だよ。リィズちゃんは?」
「見せて恥ずかしい物はありません。問題ないです」
「俺もいいぞ」
「私も構わん」

 そんな訳で、メニュー画面を開いて互いのスクショアルバムを見せ合うことに。
 まずは言い出しっぺのトビから、メニュー画面を開いてデータを展開する。

「ふむ、女性の現地人ばかりだな!」
「……まあ、いいんじゃないですか?」
「変に否定されていない分、逆にダメージが!? そ、そこは普通に馬鹿にしてくれていいのでござるよ? そういう反応をされると、なんだかいたたまれなく……」
「で、でも撮るのは上手だと思うよ? 女王様が全部カメラ目線なのが、気になるといえば気になるけど」
「あ、それでござるか……何故か、どんなに遠くから撮ってもそうなるのでござるよな。あの御方だけは」
「現地人はメニュー画面の存在を認識できないはずなんだけどな。どうやって察知しているのやら」

 ちなみにスクショの撮り方だが、メニュー画面を呼び出して機能を起動。
 それを使ってカメラのように撮影するというやり方だ。
 プレイヤーの目そのものがレンズ代わりになる訳ではない。
 トビのアルバムはそんな感じで、続いてはセレーネさんのアルバム。

「見せるけど、面白くはないよ? きっと」
「ふむ、どれ……武器! そして防具! セッちゃーん!」
「更に岩場! 山! ……無機物ばかりですね、セレーネさん。あ、でもこの辺のマイナー武器のスクショはいいですね。俺が見たことがないのもあるし、今度色々と解説してほしいです」
「あ、うん! 一緒に鍛冶をする時に話そうね! ……やった……!」
「ぬぬ、これは拙者たちの乗った大型蒸気魔力船。大砲もバッチリ撮ってあるでござるな。さすが!」
「それほど前ではないのに、この船も今となっては懐かしい感じがしますね」

 このアルトロワの村の鍛冶場なんて、特に懐かしいよなぁ……。
 確か俺が彼女を連れ出す時に、記念にと言って撮っていたな。
 みんなも持っている集合写真なんかはいいとして……次は俺だな。

「俺は農業区関連とか生産系が多いかな。一番最初に手を付けた、薬草用の砂地の経過観察とか……」
「おおっ! 今の立派な畑になるまでの記録が!」
「他にも、放牧地とかポプラの植林場なんかも……」
「段々と鮮やかに! 変化が分かって面白いけど、被写体がお堅いでござるなー。他に何か――おっ! 現地人のスクショもあるじゃ……って、何でみんな正面を向いてるのでござる? 自然体の写真は?」
「言ってることが通じるか分かんないけど、なるべくスクショのことを説明して許可をもらってから撮ってるんだよ。だから、みんなこっちを向いてるって訳だ」
「律儀! 別に、現地人なら勝手に撮っても盗撮にはならないのでござるから……」
「知ってるけど、自分が気持ち悪いからそうしてるだけだ。それにグレース兄妹の時みたいに勝手に撮る場合もあるから、スタンスとしては中途半端だしな。それよりほら、次行こうぜ、次」

 次はリィズなのだが……そのアルバムを見た瞬間に俺は顔を覆い、ユーミルは椅子を蹴って身を乗り出し、トビは小さな悲鳴を上げ、セレーネさんは顔を赤くした。
 中身の大部分はひたすら同じ人物を写し続けたもので……そういえば俺、頼まれてリィズには撮影許可を出しっぱなしにしていたな。
 その時にどんな会話を交わしたのかは、正直あまり憶えていない。
 ただ、早く次に行こうと急かしたことと、ユーミルとセレーネさんが「もう少し!」と粘って食い入るようにリィズのスクショを見ていたのは憶えている。
 ……最後はユーミルだ。
 気を取り直して、統一感のないスクショのサムネイルをみんなと一緒に眺める。

「凄いごちゃごちゃしてんな……こういうピンボケ写真は消去でいいんじゃ?」
「面倒でやってない!」
「被写体もフリーダムでござるなぁ。モンスターに動物、街の風景、他にも無意味に空や海を撮っていたり……これ、誰の足でござる? それから、このアップで撮る癖は一体……」
「近いほうが迫力が出るだろう?」
「分からないでもないけど、犬とか猫みたいな愛玩動物にまで迫力を求めるなよ。これなんて、鼻にピントを合わせてどうするんだ」
「馬鹿の一つ覚え……」
「あ? 何か言ったか? そこの小さいの」
「ま、まあまあ。でも、この量は凄いよ。これだけあれば、中には使えるスクリーンショットも眠ってるんじゃないのかな?」
「――先輩たち、何やら楽しそうなことをしてますねえ」

 のんびりと間延びした声に顔を上げると、シエスタちゃんがログインしてきたところだった。
 程なくしてサイネリアちゃんリコリスちゃんが。
 挨拶を交わし、近くのテーブルに順番に座っていく。
 最後にアルベルトとフィリアちゃんがログインし、防衛イベントのメンバーが集合した。

「お、これでみんな揃いましたね。こんばんは。アルベルトさんとフィリアちゃんは、俺たちのとこで装備の更新でいいんですよね?」
「ああ。このままサーラに同行させてもらう」
「了解です……では、ご店主。俺たちはこれで失礼します。今日まで長い間、大変お世話に――」

 酒場の店主……トニさんは、俺の言葉を手で遮って口元を緩ませた。
 ずっと無愛想な表情を顔に張り付けていた彼の意外な行動に、俺たちは目を見開いて驚く。
 そのまま何も言わずに十人全員に温かい包みを押し付けると、肩を叩いて酒場の出口に向けて軽く押し出す。
 何となく逆らえずに、俺たちは別れの言葉も言えずに酒場の外へと出てしまった。
 包みを開くと、中から湯気を放つ串カツが現れて……。

「最後まで串カツかよ、トニさん……うん、美味い。みんなも冷めない内に食べるといい」
「ハインド、包みから何か飛び出しているぞ」
「うん? ……何か書いてあるな」

 そこには小さな羊皮紙に一文『異界の勇者たちに感謝する』とだけ書かれていた。
 俺が読み上げた言葉を聞いて、みんなも相好を崩す。

「本当に不器用だな、あの店主は! ふふっ」
「そこがいい所なんじゃねえかな。彼のあの性格のおかげで、俺たちはのびのびとイベントを――おっ」

 話をしながら歩いていると、通りの向こうから最近会ったばかりの靴屋の親父さんが歩いて来るのが見えた。
 片手で酒瓶が入っているだろう袋を抱え、もう片方の手でこちらに軽く手を上げると、そのまま足を止めずにすれ違っていく。
 それを静かに見送ると、俺たちは土産の串カツを齧りながら城郭都市を後にした。
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