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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼女が「勇者」と呼ばれるまで

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足りない一歩

 いよいよイベント終了二日前に迫った火曜日、夜十時。
 全ての準備を終えた俺達は、満を持して『ホーマ平原』西部へと足を踏み入れた。

「おおう、でかい亀が沢山居るでござるな」
「逆にあれだけ居た他のプレイヤーは見えなくなったな。どうやら西エリアに入ったっぽい」

 全長二メートル~三メートルの巨大亀が平原をのしのしと歩いている。
 あちらから急に突進してくるような気配は感じられない。
 長閑のどかだなー……まぁ『星降りの丘』に比べたら何処どこだって天国に見えるけども。
 ついボーっとしていると、その辺で拾った棒で亀を突いていたユーミルが顔に火を吹かれた。

「何してんだよ……」
「けほっ、けほっ……でもハインド。1ダメージだぞ、この炎」
「そりゃあ、始めたてのプレイヤーでもクリアできるような難易度になってるんだろう。基本は素材を集めて、装備を整える為のイベントだって言ったろ」

 表示されている付近の『ビッグタートル』のレベルは全て10前後。
 レベル30のメテオゴーレムに比べたら、もう相手にならないモンスターだろう。

「それで、エルダータートル……でしたっけ? 出現条件は把握しているんですか?」
「掲示板には、ここらに居るビッグタートルを一定数倒すと出現すると情報があったでござるよ。おおよそ、30体ほどが目安だそうな」
「じゃあ、パーティの状態を維持したまま適当にバラけて倒していこう。一人ずつでも、今更このレベルの敵に苦戦することもないだろ。それでもダメージがかさんできたら、遠慮なく俺を呼んでくれ。回復アイテムが勿体ないからな」
「うむ。死ぬんじゃないぞ、ハインド」
「お前に言われたくないが……まあ、気を付けるよ」

 ユーミルの心配ももっともな話で、単独戦闘では俺が一番弱いからな。
 全員が散開したのを見計らい、俺は手近な『ビッグタートル』と向き合った。

 見た目通りの鈍重な攻撃をかわしながら、杖による打撃で敵にダメージを与えていく。
 甲羅は硬く、神官の貧相な物理攻撃力では殆どダメージを与えることが出来ない。
 しかし、タートルの硬い甲羅を避けて頭に杖をぶつけると、ダメージが一気に跳ね上がる。
 弱点は頭部か……予想通り。

 自分に『アタックアップ』と『マジックアップ』の補助魔法を掛けて、杖による打撃と光属性の低級攻撃魔法『シャイニング』を交互に放つ。
 ……うん。
 この二つしか攻撃手段が無いんだ、悲しい事に。
 杖の打撃が弱点に対してダメージ50程度、魔法が詠唱在りでダメージ200程度。
 トビの短刀による速い一撃が一発200程度であり、ユーミルに至っては1000を超えてくるのだからその差は歴然である。

「――!!」

 二種類の攻撃を五回ほど繰り返し、ようやく一体の『ビッグタートル』が四肢を投げだして倒れ込む。
 つくづく支援特化はパーティ前提の能力だ。
 ソロも視野に入れる場合は、光系攻撃魔法をどんどん覚えるバランス型か、前衛もこなせる攻撃型を選ぶのが正解なのだろう。
 俺が一体を倒す間に、ユーミル達が各五体ほどタートルを倒していることからもそれが分かる。
 ……。
 ――って良く見ると全員、戦い方が滅茶苦茶じゃねーか!

「ユーミル、ユーミル、こいつらの弱点頭だから! 一々甲羅を叩き割らなくても倒せる! トビ、TBでは尻尾を斬っても素材は増えない! リィズは何で毒状態にしてじっと眺めてるんだ、顔が怖いって! あー、もう!」

 一度全員を集め直し、頭を狙って攻撃を集中する様にお願いした。
 時間が無いって言ってるのに……。



 それから更に時間は進み、通算三体目となる『エルダータートル』戦もいよいよ大詰め。
 その名の通り『ビッグタートル』の約三倍――十メートルはある巨体だが、今は既に満身創痍だ。
 HPが減った時に出した、ひっくり返っての甲羅による高速スピンには非常に驚いた。
 が、所詮はレベル15……俺達のレベルからすると、HPが高いだけの的と化している。

「ユーミル! そろそろ準備を!」
「うむ! 今、装備を変更する!」

 ユーミルが『メテオグレートソード』を構えて歩き出す。
 ダメージに関係しているのは俺が掛けたバフの『アタックアップ』、ユーミルのデメリット付き自己バフである『捨て身』、リィズのデバフである『ガードダウン』の三つだ。
 これらは既に使用済みなので、後は頭を狙ってユーミルが大剣を振り下ろすのみ。

「トビ、影縫いを!」
「心得た!」

 トビが『エルダータートル』に向けて『影縫い』のスキルを発動。
 短時間だが、敵の動きを止めるスキルによって狙いをつけやすくなる。

「今だっ!」
「だああああああっ!」

 ユーミルがレベル30で取得した『ヘビースラッシュ』を発動し、加速した大剣がタートルの頭部に叩きつけられた。
 ダメージが表示される――クリティカルで『8893』と。
 ここまでで一番高いダメージだ。
 一度目、二度目は当たりが浅く、ダメージは3000程度までしか伸びなかった。
 『エルダータートル』が崩れ落ち、ダメージを見た前衛二人が慌てて俺に駆け寄ってくる。

「ど、どうでござるか!?」
「どうなんだ、ハインド!」
「待て待て。今、ランキングを確認してる」

 ランキングのレスポンスはかなり高いので、もうユーミルのダメージも反映されているだろう。
 ゆっくり歩いてくるリィズを目の端で捉えつつ、メニューを表示してイベントのページをめくっていく。
 ええと……。

イベントアタックランキング ※リアルタイム更新
1位:傭兵アルベルト(重戦士) 9745Pt
2位:ユーミル(騎士) 8893Pt
3位:( ゜Д゜)(重戦士) 8210Pt
4位:パンダ・ザ・グレート(重戦士) 8122Pt
5位:彼女がほしい(重戦士) 8098Pt
         ・
         ・
         ・

「2位だな」
「嘘だッ!!」
「いや、ほんとだって。あー、やっぱり周りは重戦士だらけかぁ……」
「どういうことでござる? ハインド殿」
「もしかして、薄々こうなると予想していたんですか?」
「まあな……実は、重戦士には捨て身よりも攻撃力が乗る自己バフがあるんだよ。その名もバーサーカーエッジ。攻撃力3倍、防御力が0になる特化型スキルだ」

 このランキングのダメージからいって、武器の攻撃力では勝っている。
 しかし、それでもスキルの差を埋めるには至らなかったか……この人達も必要なバフ・デバフは揃えているだろうしな。
 魔導士はどのゲームでも晩成型が多いし、弓術士と軽戦士は手数で稼ぐタイプ。
 神官は論外だし、騎士は総じてバランス型だ。
 最初から、このランキングは重戦士が有利になるようにできている。
 他の職は『討伐数ランキング』だとか、範囲魔法が有利な『総ダメージランキング』、『クリティカル回数』に『回復値ランキング』なんてユニークなものもあるので、そっちで頑張れということなのだろう。

「ぐやじぃぃぃぃ! 何とかならんのかハインドぉぉぉ!」
「そうだなぁ……」

 地団駄を踏みまくるユーミルを見つつ、俺はどうするか考えた。
 いや、実は詰めの一手はもう考えてある。
 ただ、出来れば使いたくなかった手段というだけで……必要なのは、自分が割を食う覚悟だけだ。
 ユーミルをなだめるトビと、呆れた様子で見ているだけのリィズを眺めてから、俺は嘆息と共に宣言した。

「……分かった。何とかしよう」

 その言葉に、ユーミルが嬉しそうに目を輝かせる。
 トビとリィズは驚いた様な顔で俺の方を見た。

「本当かハインド!」
「ああ。ただし、チャレンジするのは最終日の明日な。もう0時を回るし。それと、クラリスさんのクエストでゲットしたスキルポイントの書は俺が使うからな」
「うむ。そもそもあれはハインドが見つけてきたクエストだし、文句はないぞ。……何をするのかは知らんが、とにかく明日だな! 期待している!」
「ちょちょちょ、ハインド殿! 本当に大丈夫なのでござるか!? 安請け合いしたのでは――」
「大丈夫だって。ほらほら、もう遅いし街に戻ってログアウトするぞー」
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