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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼女が「勇者」と呼ばれるまで

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条件その2・暫定最強武器の入手

「しかし、一度で使い捨てる武器の為となると、少々身が入らんでござるな……」
「そうか? 考え方次第だと思うけど。使い捨てって言い方も、決戦兵器! とか秘密兵器! とか言い方を変えるだけでアラ不思議」
「おお! 何だかやる気が湧いてきたでござるよ!」
「だろ? それに完全に無駄になる訳じゃないからな。イベントが終わったら取引掲示板で売却する予定だし、重戦士の攻撃型とかなら喜んで使ってくれるって」
「確かに。ユーミル殿が常用するのは厳しくとも、重戦士なら問題ない者も居るでござろうしなぁ」
「ほら、喋ってばかりいないで手を動かしてくれ。どの道、大量の鉄が必要なのは変わりないんだから」
「地味ーな作業でござるな……この作業感もMMORPGの醍醐味だいごみとはいえ」

 俺達はひたすらツルハシを振るっている。
 道具屋で店売りされている物で、価格は一本100G。
 使用可能回数はおおよそ三十回といったところ。
 採取ポイントはフィールドのあちこちにあるのだが、ヒースローの街の東にあるフィールドは山が多い。
 よって、鉱物系の採取にはうってつけの場所なのである。

 採取に関してはプレイヤー毎、一定時間で採取地点が復活するように設定されている。
 採れるアイテムの量・レアリティに多少のランダム性はあるが、ある程度は似た様な結果に収束するようになっている。
 大事なのは採取する回数だ。

 実は、今の時刻は登校前の早朝だったりする。
 登校前と帰宅直後に五~十分程度のログインをして採取。
 それと普段プレイする時間に採取する分を含めれば、結構な量を集めることが可能だ。
 鉱物はこの様な限られた入手ルートが主なせいもあって、取引掲示板では非常に品薄だ。
 金策に使うには良いのだが、素材として使いたい側にとっては少し苦しい状態。
 時間の経過に従って品薄状態は解消されるだろうが、現状ではこうやって自力で集める必要があるという訳だ。

「あ、終わった。そっちはどうだ?」
「もうちょっとでござるよ。今、採取ポイントの光が小さくなってきた所にて」
「じゃあ、俺は先に街に戻ってログアウトするわ」
「待って! わっち待って! 俺、寂しい!」
「何だよ……急に素に戻るなよ」
「せっかく採取時間が一致したんだから、少しだけ待ってくれよー」

 トビの言う通り、こうして朝に一緒に採取をしているのは単なる偶然だ。
 フレンド登録したプレイヤーがログインしてくると、今居る場所も含めてシステムから通知されるので、タイミングさえ合っていれば合流は容易なのである。
 ちなみにユーミルにもリィズにも、リアルに支障の出ない範囲で出来るだけ集めてもらうようには言ってあるが……どちらも朝は弱い。
 未祐は単にずぼらで寝坊しやすく、理世は日にもよるが低血圧気味だ。
 無理をしてまでゲームにログインする必要もないだろう。

「お前、やたらと一人にされるのを嫌がるよな……最初から一人だと気にしない癖に」
「小さい頃、みんなと遊んでたと思ったら何時いつの間にか一人になってたことってない? ちょっとトラウマなんだよね……一人で漕いだブランコ……迎えにこない母ちゃん……暗くなる公園……」
「あー、俺は無いかな。遊びに飽きた未祐にどっか連行されるか、理世が心配で一番最初に帰ってたから」
「根っからの置いていく側かよぉ! と、とにかくもう終わるから少し待ってよ!」
「仕方ねえなぁ……」

 トビがツルハシを振っている間、俺は近くの草むらの採取ポイントを適当に回った。
 お、薬草がある。
 薬草といえば、そろそろポーション作りなんかも気になってきた所である。
 イベントが終わったら、ホームを構えて本格的に始めてみたいもんだ。



 時間は進んで日曜日、午後九時のTB内。
 その夜、俺は四人分の大量の鉄をインベントリに持って『アルトロワの村』の鍛冶場に立っていた。

「だぁぁ、高炉が欲しい! 高炉が欲しいー! それで鋳型に流し込めたら楽なのに!」

 愚痴りながら足踏み式のフイゴを踏みまくる。
 村にある炉はかなり原始的な構造である、高さ1メートル前後の「レン炉」と呼ばれるもの。
 現在は第二工程なので、第一工程である酸化鉄の酸素の還元は既に済んでいる。
 炉の温度を上げる為にフイゴを使ってひたすら送風、送風、送風……。
 ちなみに素材には鉄以外にもメテオゴーレムから採れた『隕鉄』も含まれている。
 これを混ぜることで、普通の鉄装備よりも完成品の質は格段に向上! というのが、セレーネさんによる弁だ。
 そんな彼女は、俺と同じ様にフイゴを踏みながらも涼しい顔をしている。

「ほらほら、頑張れー。私だって木炭高炉とか水車動力のフイゴとか欲しいけど、無いものは仕方ないよ。もうちょっとだから、しっかりね」
「くそう! TBが中世風ならせめてシュトゥック炉じゃないのか! はぁ、はぁ……何でセレーネさんは息切れ一つしていないんですか!?」 
「慣れてるからね。ハインド君は無駄な所に力が入り過ぎているんだよ――うん、オッケー。ここからはいよいよ、鍛造たんぞうに入るよ」

 低ランクの鍛冶の場合は炉の管理は一切必要なく、しかもある程度形が出来た武器や防具が冗談のようにボロッと炉から出現する。
 それを簡単に叩いて整えて完成となる訳なのだが、それはランクの低い装備に限った話である。
 それ以降はこの様に一気に工程が煩雑化。
 ゲームらしく優遇されているのは炉の温度が上がる時間の短縮と、それから一度に加工できる鉄の量くらいのものだ。
 特に後者は、現実と同じように日に最大十キロ程度では作れるものに制限が掛かり過ぎてしまう。
 今回の様な武器は特にそうなので、この仕様は個人的にありがたい。

「行くよー」
「はい!」

 向こう槌と呼ばれる大きめのハンマーの重量は現実で約3キロ……らしいのだが、ゲーム内でも実際に同じくらいの手応えを感じる。
 こんな所にまで凝らなくても良いのに……結構な回数を振る必要があるから、これはしんどい。
 武器は軽くする補正を掛けられるのに、こういう工具は駄目なんだもんな。

 向こう槌を熱された鉄塊に向けて振り降ろす。
 叩く度に、スラッグを含んだ火花が大きく飛び散る。
 熱気で顔が熱い……ハンマーで圧力を加えて不純物を取り除きながら、徐々に形を作っていく。
 俺が大雑把な部分の伸ばしを、セレーネさんが普通のハンマーや特殊な形状の物を使って細かな部分を整えていく。

「……」
「……」

 イメージの共有は出来ている。
 互いに無言で、息の合った動きで武器は完成に向かっていく。
 叩き、伸ばし、整える。
 ……やがて俺が手を止め、後はセレーネさんの動きを見守るのみとなって暫く。

「出来た!」

 セレーネさんが顔を上げる。
 会心の出来といった表情で、指で丸を作ってみせた。
 隣の作業場のプレイヤーも、興味津々といった様子でこちらを眺めている。

「おお……こうして実物――といってもゲームですけど。現実に近いVRで見ると、とても迫力がありますね」
「後は自然冷却して、研いだら完成かな。……誘ってくれてありがとうね、ハインド君。私にとっても、良い経験になったよ。そ、その……二人で一つの物を作るのって、楽しいね」
「俺も楽しかったです。ありがとうございました、セレーネさん。後は、あいつがコレを上手く扱えるかどうか……」
「私の趣味には合わないけど、これはこれでロマンの塊だよね」
「力こそパワーだ! 的な、ちょっと頭の悪い表現を使いたくなりますね」
「……確かに」

 それは人の身の丈よりも更に大きく、2メートルを超える巨大な剣。
 メテオゴーレムの隕鉄によって硬度も増した、文字通りの決戦兵器。
 ゲームでなければ、ユーミルの腕力では持ち上げることすら到底不可能な代物。
 こんな武器だが、アレンジ装備ではなく設計図が存在するタイプのものだ。
 『極上のメテオグレートソード+2』――それが今回の鍛冶で得た、武器の完成品の名前である。
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