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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼女が「勇者」と呼ばれるまで

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条件その1・レベルキャップへの到達

 星降りの丘。
 そこは、夜になると満点の星空を眺めることが出来るロマンチックな場所。
 余りにも星が美しく明瞭で、まるで降ってくるように見えることからその名が付いた――なんてことはなく。
 実際に星が降ってくる、単にそんな危険地帯がそう呼ばれているだけの話だ。

「グガゲゴ!?」
「ユーミルぅぅぅぅ!」

 運悪く小型の隕石がユーミルの真横に落下し、大量の土砂をたっぷりと顔面に浴びたユーミルの体力は一瞬で0になった。
 急いで『リヴァイブ』を詠唱して復活させる。

「いやー、はっはっはっ。神官のハインド殿が居ると、こんな場所でも充分に戦えそうでござるなぁ」
「笑ってんじゃねえよトビ! ってか何だよその口調は!」
「ロールプレイという奴でござるよぉ。拙者、ゲーム内ではこの話し方で通す所存にて」
「直ぐにボロが出そうですけどね……何時までもつのやら」

 ユーミルが起き上がったので、『ヒーリング』を使って体力を回復しておく。
 戦う前からこんなんで大丈夫なのだろうか……? 不安だ。

「はぁ、はぁ……死ぬかと思った」
「「「いや、死んでたから」」」
「!?」

 隕石の落下地点には赤いマーカーが表示されるので、気を付けていればそうそう直撃することはない。
 が、ここでは常に隕石に気を付けながらモンスターと戦わなければならない。
 隕石の威力に関しては直撃で即死、余波でも先程の様に大ダメージが入るらしいので気を抜くと非常に危険だ。
 そこら中が穴だらけで、正に地獄絵図である。

「なぁ、トビ。前にここに来たって言ってたけど」
「然り。以前、拙者がここに来たのは偶然でござった……丁度この付近のフィールドのモンスターを狩り続け、気が付けば辺りは暗く……。夜になると隕石が降る危険な場所だと知らなかった拙者は、突如降ってきた隕石を膝に受け、あえなく……」
「死んだんだな。ちなみにデスペナルティってどんなもんだった? その言い方からして、その時はソロだったんだろ? ――と、危ねえな。下がって下がって」

 再び隕石が降ってくる。
 全員で当たらない位置に移動して、モンスターの出現を待つ。
 ちなみに他のプレイヤーの姿は何処にも見えない。
 情報が拡散しきっていないのが主な原因だろうが、安全策を取りたいプレイヤーにはどのみち不評だろうしな。

「デスペナルティは装備品の耐久値が現在値から半減、それと所持金も半減と、主に財布にダメージを与えるものになっているようでござったな。それに、数分間の能力値減少が加わる形にござる」
「おー、割と良心的な部類じゃないか。所持金は各町にある銀行に預けておけばいいしな」
「そうでござるな。他のゲームで見る経験値が減るタイプのものや、装備品がロストするものに比べれば……あ、PKは別でござるよ? あれは一定確率で装備が剝がされると聞いたことがある故に」
「まだPKに走ってるプレイヤー自体が少ないからなぁ。現段階ではそれほど心配する必要はないだろう。ただ、何にせよペナルティを受けない様に立ち回るのが大事ってことだな」
「うむ、頼んだぞハインド」

 当たり前の様に頼ってくるユーミルに、俺はかすかに眉をひそめた。
 結果的にそうなってしまうのは仕方ないが、最初から蘇生を当てにするのもどうなんだろう?

「お前はもうちょっと自分のプレイスタイルを工夫しようか? な?」
「断る!」
「即答するなよ! 一瞬でも考えるそぶりくらいは見せろ!」

 俺の苦言が全くの徒労に終わった、その時――。
 砕け散った隕石の中から、大小多数の光る宝石が現れる。

「来たぞ!」

 落下地点で煙を上げていた岩塊が、次々と浮き上がる。
 宝石を中心に再び隕石が集まって行き、それは徐々に人型へ。
 地面を殴りつけて立ち上がったそいつらの名は……。

「メテオゴーレムだ!」

 空から飛来したモンスターが、ゆっくりと地響きを立てて歩き出した。



 既に戦闘開始から十五分が経過している。
 メテオゴーレムはこちらから攻撃しない限り、一切の敵対行動をしてこない。
 その特性を利用して俺達は最もサイズが小さく、更にはレベルが低いメテオゴーレムを相手にしているのだが……。

「ハインド! ハインド!」
「何だ!?」
「腕がしびれてきたんだが!」
「我慢しろ! もうちょいだ!」

 戦法は至って単純。
 敵の大振りな攻撃、降ってくる隕石をかわしながら、敵の胸部へ随時攻撃。
 忙しいが、高レベルのゴーレムになるとビームなどを撃ってくるらしいので、それが無いだけずっとマシな相手だといえる。
 コアとなっている宝石が露出したら、そこへ全火力を叩き込む。
 一定時間で胸部が再生するので、そうしたらまた同じ過程の繰り返し。
 最初はトビが『急所狙い』という即死技を連発していたのだが、メテオゴーレムには即死耐性があるらしく不発。
 結果、こうして地道にコアのHPを削るという戦法に落ち着いた。

「グワーッ!」
「アバーッ!」

 隕石に気を取られた前衛二人が、メテオゴーレムの豪腕の餌食になった。
 やっぱ高レベルでも紙防御だな、軽戦士は!
 しかし、トビが居なかったらとっくに戦線が崩壊していたのは間違いない。
 ここまでの死亡回数は、ユーミル5回に対してトビは今のが初めてである。
 明らかにユーミルよりも多い回数、敵の攻撃を引き受けているので回避盾としての役割は充分に遂行できていると言っていいだろう。
 俺はトビに聖水を、ユーミルに『リヴァイブ』を飛ばして状況を立て直した。

「同時に死なれるとWT的に苦しくなる! 気を付けてくれ!」
「くうっ、油断したでござるっ……!」
「隕石が鬱陶しい! トビと同じくらい隕石が鬱陶しいぞハインド!」
「ひでえ! ひでえよ未祐っち! どさくさに紛れて!」
「早速口調が崩れてますけど……。ハインドさん、残り約100ダメージでコアが露出します」
「よしっ、次で決めるぞ!」
「「「了解!」」」

 『アタックアップ』の補助魔法を前衛二人に掛け直した直後、コアが露出する。
 ユーミルが『捨て身』と『スラッシュ』を使用し、トビが二対の刀の連続攻撃でクリティカルを出しまくる。
 更にリィズが魔法で追撃を掛けるが……あろうことか敵の体力バーが1ドットほど残して止まった。
 まずい、胸部が再生する!

「終われってのっ!」

 俺は後衛の位置から一気に前に躍り出ると、渾身の一撃をアイアンロッドで叩き込んだ。
 どうにか露出したコアに突き立った一撃は、『10』というショボイダメージを表示したものの……確実に敵の残りHPを削り切った。
 メテオゴーレムが体を維持できなくなり、バラバラと崩れていく。

 ユーミルが地面にどっと座り込み、大きく息を吐いた。
 同時にレベルアップの光が体を包む。

「だーっ、疲れた! アイツ、ちょっと硬すぎるのではないか!?」
「おいおい、こんな所で座るなよ。まだ隕石は降ってくるんだぞ」
「おお、そうだった。しかし、こんな調子でイベントに間に合うのか?」
「まあ、落ち着けよ。メニューを開いて今のレベルを見てみ?」

 レベルアップの演出は一回きり。
 ユーミルは勘違いしているようだが、レベルが2以上増えた場合もそれは同じらしいので……。
 俺の予想では、今ので3か4くらいはレベルが上がっていると思うのだが。

「ハインド殿! 拙者のレベルも1上がっているでござるよ!」
「えっ、嘘!?」

 すると、予想外の方向からレベルアップの報告が。
 25から先は1上げるのにも結構大変だと聞いていたのに……。

「上がる直前だったとかじゃ――」
「確かに必要経験値の三分の二は超えてござったが、普通の稼ぎではあと丸一日は掛かると踏んでいたでござるよ。これは中々に凄い」
「マジか、本当にすげえ効率だな……これだと直ぐに運営に修正されるんじゃ――いや、夜の時間限定だし、この隕石ラッシュだし、これはこういう調整なのか。ソロだと難しいし、回復役が居なければそれこそ聖水祭りになっちまうからな」
「ハインド! こっちはレベル25だぞ!」
「私は23です、ハインドさん」
「わぁお……」

 一気に10近く上がっているじゃないか……セレーネさんの情報に感謝だ。

 その後、レベルアップによるパーティ全体の火力の底上げが出来た俺達は三体のメテオゴーレムを倒す事に成功。
 その日の最終的なレベルは俺とユーミルが26、リィズが25、トビが29ということになった。
 砥石と聖水をいくつか使用したので、金策面では赤字ではあるが、かなりおいしい戦果だといえよう。
 このペースなら、イベント最終日までにはレベルのカンストを目指せそうだ。
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