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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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空からの襲撃者

 雪だるまの行動は物理攻撃がのしかかり、体を分解・結合させての拘束、魔法属性が状態異常『凍結』を伴う『コールドブレス』の主に三つ。
『スノーゴーレム』はひたすらタフで、スキルをケチった結果、倒し切る前に次のウェーブが到来してしまった。
 慌てて高火力スキルを叩き込んで倒し、新たに追加された『スノーベア』の対処に回る。
 ここで鹿が来ていたら、危ないところだった。

「リィズ、ウェーブ終了までの時間はどうだった?」
「やはり中ボスの方が長めですね。ただ、他のウェーブは初期からずっと一定間隔です」
「そうか……ありがとう」
「となると、間隔は変わらずに敵だけがどんどん強くなるのでござるか。これはキツイ」
「とりあえず、今の私たちと同レベル帯までは辿り着きたいな!」

 同レベル帯というと、50付近か。
 今の『スノーベア』で36だから先は長いな。

「まぁ、今のでスノーゴーレムの耐久力も攻撃パターンも、じっくり確認できたからな。このまま油断せずに戦っていこう」
「まだ壁は無傷だからね。ハインド君の言う通り、情報収集しながらなるべく先まで進めるように頑張ろう」

 ちらりと隣の防衛戦を見ると、大きな魔法が敵の群れに向けて何度も放たれていた。
 随分激しい戦い方をしているな……魔導士統一パーティだろうか?
 同じスキルが二発同時に飛んだりしている。

「ハインド、よそ見をするな! 次が来たぞ!」
「――! あ、ああ」

 それにしてもイベント一戦にかかる時間が長い。
 これは集中力を持続するのに苦労しそうだ……。
 深呼吸をして、再度気持ちを入れ直す。



 それからどれくらいの時間が過ぎただろうか?
 目減りしていくアイテム数、時折レッドゾーンに入るHP、増える敵の種類にシエスタちゃんが危惧した通りの混合型の群れ。
 壁の耐久値を少しずつ削られながらも、敵の殲滅に成功し続けレベルがじわじわと上がっていく。

「――っ!」

 ここに至っては、もうユーミルに撃破を集めている余裕などない。
 焙烙玉をWTごとに投げ、苦無を投げ、MPが減っているメンバーにポーションを投げ、時には『エントラスト』でMPを丸ごと譲渡し、HPが減っていたら回復魔法の詠唱に入り、バフが切れたらかけ直す。
 目が回りそうな忙しさだ。
 先程から、誰も言葉を発する余裕がない。

 頼りはここまでに培ったノウハウと未だに崩れていないフォーメーション、前衛二人がステップ系を絡めても崩れなくなってきた連携の三つ。
 初撃がリィズ、続いてユーミルとトビが前へ、俺とセレーネさんは三人が触れなかった敵への攻撃。
 最終的には敵の種類が混ざったこともあり、全てこの順序で攻撃が開始されることに。
 パターンを作って無駄を省きながら攻撃し続けないと、すぐに次のウェーブが始まってしまう。
 リィズの範囲魔法『グラビティ』と、それを補助する俺の『クイック』はフル回転だ。
 息を切らしながら、雪で霞む視界の中で魔物を見落とさないよう目を凝らす。
 しかし、これまで引きも切らずに押し寄せていた魔物の波が急に途絶えた。

「……? どうなっている、ハインド!?」
「分からな――待てよ。今のウェーブの敵レベル、確か……」
「50だったと思います」
「レベル50……現在のプレイヤーのカンストレベルだね」
「ではこれまで通り中ボスが――否、様子がおかしいでござる!」

 敵の数は大型が一体――それは間違いない。
 林の揺れる様子ではっきりと分かる。
 しかしそいつは雪だるまと違い、林の中から勢いよく飛び出した。
 俺たちの頭上を飛び越え、防壁との間に雪を撒き散らしながら着地する。

「――後ろだと!?」
「竜……いや、ワイバーンか!?」

 鮮やかな水色をした体躯に大きなコウモリのような翼、爬虫類のような鱗とヘビの尻尾、分かり易く言うなら竜と近似の姿。
 俺がこいつをワイバーンだと判断できたのは、掲示板に上がっていた竜種と比して細身の体と……上部に表示されたその名前。
 威嚇しつつ激しく動いているが、確かにそれは『アイスワイバーン レベル50』と読めた。

「何だこいつ……全然壁の方を向かないぞ?」
「ユーミル、迂闊に近付くんじゃない!」

 ユーミルが一歩踏み出した直後、『アイスワイバーン』が動く。
 大きく羽ばたいて風圧で目くらましをした後、鳥のような足でユーミルを掴み上げた。

「へ?」

 そしてそのまま羽を動かして大きな体を浮かせていく。
 ユーミルはその足に掴まれたまま、空へと昇った。

「のおおおおおお!?」
「ユーミル!」
「ユーミルさん!?」

 慌ててセレーネさんが矢を放つも、ワイバーンが身を捩るように躱して更に上昇。
 俺たちも魔法や投擲アイテムを使うが……どれも命中せず。
 そのままグングン高度を上げていってしまう。

「――おおおおおおああああああ……」

 いかん、自力で脱出できそうな状態じゃない。
 上空をワイバーンが旋回し、ユーミルの声が近付いては離れていく。

「は、ハインド殿っ!? ユーミル殿が!」
「何とかする! みんなはMP補給と着地を狙う準備を! このゲームのシステム上、飛びっ放しってことはないはずだ!」
「りょ、了解!」

 ここは新スキルの出番だろう。
 幸いWTは明けているし、後は相手の攻撃が単発であることを祈るのみ。
 詠唱を開始し、対象をユーミルに設定。

「ああああああああ! 落ちるぅぅぅぅぅ!」

 高空から叩きつけるように落とされたユーミルに『ホーリーウォール』を飛ばす。
 空中でエフェクトが発生し、全身を光が包み込む。
 地面に落着したユーミルは、ノーダメージかつ衝撃ゼロで尻餅をついた。
 不思議そうな顔で周囲を見回すが、光の帯を残す『支援者の杖』を見て目を見開く。
 気が付くと、その顔が物凄い勢いで鼻先まで近付いていた。無駄に速い!

「ハインドォォォ! ありがとぉぉぉぉ!」
「ちょ――おい、抱きつくな! 恥ずかしい!」
「怖かった! 本当に怖かったぞぉぉぉぉ!」
「いつまで抱きついているのですか! 離れなさい! 離れなさいっ!」
「ユーミルさん、まだ戦闘中だから。ね?」
「ククク、プチ修羅場でござるなぁ。傍から見ている分には愉快愉快」
「トビ、てめえ!」

 ユーミルに使用した『ホーリーウォール』は、一定ダメージまでを防ぐバリアを張るスキルである。
 とはいえ一撃で割れることが多く、使用感としては軽戦士の『空蝉の術』を他人に付与する「投げ空蝉」といった感じか。
 もう一つの特徴としてヒットストップを無効――要は重戦士のスキルのようなスーパーアーマーを付加する効果もあり、バリアにダメージを肩代わりさせつつ一撃を強引に入れることもできる。
 割と効果が大盛りのスキルなので、WTは長め。
 弱点は、短い間隔でダメージが入る連続攻撃には無力なところ。
『アイスワイバーン』の攻撃が単発で助かった。

「――おっ! また来たでござるよ!」
「体が膨らんで……ブレス系か!? 散開、散開っ!」

 集まっていたメンバーが慌てて広がる。
 急降下しながら吐き出したのは、やはり氷結系のブレス。
 前衛二人は当然のように回避に成功したが、後衛三人は……。
 俺は軽く掠めた程度で済んだが、リィズとセレーネさんが捕まった。

「大丈夫か!?」
「わ、私は大丈夫です! ブレスは大抵魔法属性ですから! それよりもセッちゃんが――」
「こ、凍ってる……すぐに治療を!」

『凍結』は状態異常の一種なので、『リカバー』で治療可能だ。
 凍って動けなくなったセレーネさんを治療し、続けて『ヒールオール』の詠唱を開始する。

「――はっ!? ご、ごめんハインド君! ありがとう!」
「そろそろ着地、来ますよ! セレーネさんも狙ってください!」
「分かった!」

 頭上を高速旋回していた『アイスワイバーン』が、風圧を発生させながら俺たちの前に着地する。
 まだ一撃も攻撃を当てていないが……やはり壁の方には行かないか。
 このワイバーンはそういう行動パターンが組んであるのだろう。
 そこで『ヒールオール』が発動し、パーティメンバーのHPを回復させた。
 また飛ばれたら厄介だ……HPが多そうなモンスターではないし、ここで一気に勝負を決める! 

「みんな、WTは明けているな!? 高火力スキルを一斉に叩き込めっ!」
「応! 行くぞぉ!」

 ありったけのスキルが『アイスワイバーン』に浴びせられた。
 こいつを倒せば、一先ずの目標は達成だ。
 ワイバーンの地上での攻撃は爪と尻尾による薙ぎ払いだったが、トビが全て躱し切った。
 こちらからは斬撃と矢と魔法、投擲アイテムが一斉に飛び交う。
 そのまま決着がつくかと思われた直後、『アイスワイバーン』はHPを僅かに残して再び飛び立とうとした。
 更に悪いことに――

「まずいぞ! 次のウェーブの敵が!」

 ユーミルの声に山の方に視線をやると、林の中から大量のモンスターが湧いていた。
 このままワイバーンに飛ばれたら、空と地上の敵、両方の対処に迫られることになる。
 早く何とかしないと……!

「くっ……全員、何でもいいから遠距離攻撃! セレーネさん!」
「任せて!」

 苦無や焙烙玉、そして闇魔法『ダークネスボール』でワイバーンの高度が上がるまでの時間を稼ぐ。
 リィズの『シャドウブレイド』は使用したばかりなので、後はセレーネさんにお願いするしかない。
 アクゥアルを空に向けて構え、鋭く息を吐き……矢が放たれる。
 その矢は放物線を描くことなく真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐに大気を切り裂いて――ワイバーンの体に風穴を開けた。
 スキル『スナイピングアロー』が心臓をピンポイントで穿ち、飛竜が地に墜ちる。

「セッちゃぁぁぁん! 凄いぞ! 格好いい!」
「ゆ、ユーミルさん、前、前! もう次の敵が来てるよ!」

 己の成果を特に誇ることもなく、セレーネさんが矢を再装填しながらユーミルに注意を促す。
 全員スキルのWTが厳しいが……まだ先まで行けるだろうか?
+注意+
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