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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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生産に関する経過

 トビはマンネリだと評したが、俺たちは空いた期間で新しいことに色々と手を出していた。
 主に生産分野がそれで、一つ目がキノコの栽培所。
 俺は自分で湿度管理やら環境を整えなければいけないと思い込んでいたのだが、農業地区の拡張機能の中にそれは存在していた。
 単純な確認漏れである。
 魔法の巻物を使って環境を整えて、とかあれこれ考えていた無駄な労力が……ま、まぁ栽培失敗の可能性がなくなったので良しとしておこう。
 そんな俺の凡ミスを見て、らしくないとユーミルとトビに散々からかわれたが。
 どうもこの前の大型アップデートと一緒に追加された要素らしい。
 キノコは『谷の町ワリス』で入手済みなので、農業区で資金を投入・新たに設置された栽培小屋に納入していく。
 種菌を移したい木をセットするだけで、後はゲーム側で勝手に処理してくれる。

「おー……涼しくてじめっとしてて、なんだか落ち着きます」
「左様か。じゃあシエスタちゃん、このタンクの水の補充だけ定期的にやってよ」

 シエスタちゃんを伴って小屋に入ると、そんな感想を漏らした。
 まだ完成したばかりで、キノコも原木も設置されていない。
 俺が小屋の中のタンクを叩きながら仕事を頼むと、いつもの眠そうな顔のまま意外と乗り気で話を聞いてくれる。

「それだけでいいんです? 何か、原木を引っ繰り返したり、わらとかビニールで覆ったりしているのを見たことがあるんですけど」
「ああ、それシイタケの原木栽培だね。仮伏せ、本伏せとか天地返しって呼ばれる工程だった気がする。でも、そういうのも必要ないらしいよ。さすがに種類が違うキノコを一緒に栽培はできない仕様らしいけど」
「へえ……それは楽でいいですね。これで私も役割を持っているていを醸し出せると」
「……まぁ、そうだね」

 シエスタちゃんは優先したい品種があったら言ってください、と残して早速のそのそとタンクに水を入れてくれた。
 もちろん、バケツで汲んで……などということはなく、魔法の巻物『ウォーターボール』を使っての省エネモードで。
 そんな訳で、キノコ栽培の担当はシエスタちゃんに決まった。

 次に増やした生産内容は家畜の飼育である。
 こちらにもイベントなどで得た豊富な資金を投入し、敷地を増やして作製。
 相変わらず土の改良、並びに牧草の耐暑性能獲得のための改良は必要だったが全員参加で数日ほどかけて完成。
 家畜は荒野地帯にある『アンテーラの村』という場所から買って連れてきた。
 モンスターに攻撃されないように、ラクダの荷車を使っての長距離移動である。
 今は少々暑そうではあるものの、元々が荒野という過酷な環境で育てられていた家畜たちだ。
 飼育不能というほどのことはないだろう。
 さて、この飼育ゾーンに関してはリコリスちゃんが責任者を名乗り出てくれたのだが……。

「わーっ!? この羊さん追いかけてきますっ! 助けて、助けてユーミル先輩ぃぃぃ!」
「任せろ! 私が相手だ、この羊ど――もふっ!?」
「ユーミル先輩!? ――きゃうん!」

 二人揃って羊の体当たりを喰らい、草の上に転がされる。
 羊用の放牧エリアの柵が設けられ、小屋は暑さよけのために木を多めに植えてある。
 こいつらは毛を刈らせてもらう用で、全年齢ゲームらしく寿命なし、食肉化不能のほんわか仕様だ。

「おーい、遊んでないで早く飼育小屋に入れてくれ。っていうか、牧草入った桶を持って走っちゃ駄目だよ。餌を求めて追いかけてくるから」

 二人を跳ね飛ばしたのは子羊だったので、大したダメージにはなっていない。
 俺は柵の外から中にいる二人に声をかけた。
 草の上を転がった後で、リコリスちゃんが元気に跳ね起きる。

「え!? そうなんですか!?」
「……任せてくださいって言うから、てっきり詳しいのかと思っていたんだけど。その桶を持って誘導するんだよ、本当なら」
「勢いでお引き受しけたので、知りませんでした! 羊さんカワイイです!」
「……」

 最近リコリスちゃんのミニユーミル化がとみに酷い。
 俺はついつい視線をユーミルへと向けた。
 羊を追い回す足を緩め、視線に気が付いたのか進路を変えて駆け寄ってくる。

「何だ? ハインド」
「何でもねーよ。だったら各家畜の性格とか飼育法とかを知ってる限り教えるから、飼育小屋に羊を入れ終わったら俺の方に来てくれ。それから一緒に牛の世話もしよう」
「「はーい!」」

 返事だけは元気で良いんだよな、本当に……。
 他に飼育を始めたのは牛と鶏で、やはりゲーム側の補助があってか育てるのに現実と同じレベルの苦労は伴わない。
 こちらも搾乳用と採卵用で、羊と同じ仕様が採用されている。

 そして最後に追加したのが、弦月さんに基礎を教わって始めた馬の育成施設である
 主な担当はサイネリアちゃんで、実は乗り物が結構好きとのこと。
 最初に野生の馬を数頭捕獲してきたのだが、それがまた大変だった。
 これも他の家畜と同じく荒野のエリアで調達したもので、数か所しか存在しない草原へと出向いて連れてきたものだ。
 トビが蹴られるわユーミルが頭から噛みつかれるわで散々な有り様だった。
 厩舎に入ると、サイネリアちゃんがポニーテールを揺らしながら機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら仔馬をブラッシングしている。

「ふんふんふーん……ふふーん……」
「サイネリアちゃん」
「――ひゃい!? あ、あ、ハインド先輩!」

 ブラシを落として動揺を見せる。
 鼻歌を聞かれて恥ずかしいという気持ちは分かるが……あのまま入口から覗き込んで待っているのも、それはそれでどうかと思ったので。
 事前にあえて足音を大きめにしてみたりもしたが、残念ながら気付いてもらえなかった。
 顔を赤くするサイネリアちゃんの姿に、俺は鼻歌には触れずに話を進めることに。

「ごめん、邪魔したかな? 手が空いたんで手伝いに来たんだけど」
「あ、いえ、大丈夫です! この子のブラッシングが終わったら、ちょっと運動をさせようかと思っていたところなので。ハインド先輩、外に出すのを手伝っていただけますか?」
「うん。了解」

 放牧の準備を始め、一斉に馬を解き放った後に厩舎の掃除を行う。
 二人でそれを終わらせると、牧草地を走り回る馬の様子を二人で見守った。

「しかし、やっぱり名馬までは遠いんだなぁ」

 母馬に寄り添って歩く仔馬を見ながら、俺は呟いた。
 あれはまだ野生から数えて三世代目、等級的には一般馬である。
 成長の早回しがあるので世代を重ねること自体は簡単なのだが、あまりその機能を使い過ぎると能力が伸びないまま成体になってしまう。
 弦月さんが言っていた通り、そう易々とはいかないものだ。

「あまり数を増やしすぎると、管理が難しいですしね」
「そうだなあ。俺らには10頭前後が限界かもね、TBの簡略化を以てしても。アルテミスは100頭近く飼育しているそうだけど、そもそもギルドの規模が違うから」
「じっくりやりましょう。愛情込めて一頭一頭お世話すれば、よりステータスも伸びる……気がします。そうやって次の世代に繋いでいけばきっと……」

 サイネリアちゃんが後半やや照れつつ、そんなことを口にする。
 先程のような丁寧なブラッシング、リラックスしていた馬の顔を思い出すと、あながちないとも言い切れない。
 TBの評価システムは細かくて複雑だからなぁ……評価項目として馬側の感情を汲み取っていたとしても、特におかしいとは思えないのだ。



 そんな感じで、俺たちは手が回るギリギリの範囲まで生産を拡張した。
 TBのシステム上、一定期間の遠出は想定内らしく各施設の時間を止める機能は標準装備だ。
 前から手を付けていた『ポプラの木』もどうにか木材パルプとして使えるレベルになってきたりと、渡り鳥・ヒナ鳥共同の生産活動は順調である。
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