挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

198/295

教練成果と今後の展望

 俺たちはそれぞれの得意分野やできることを戦士団に教えた。
 軌道に乗ると同じことの繰り返しになり、やや手が空き気味になって退屈だ。
 取得経験値が各人の頭に表示され、アクションを取るごとにそれがじわじわと溜まっていく。

「ゲームらしく、成果が可視化されているのはいいんだが……」
「はぁ、はぁ……ハインド、何か言いましたか!?」
「気にしないで続けてください」
「むむむむむ……あっ!」

 詠唱が途切れ、ティオ殿下の『ヒールオール』は失敗に終わる。
 それを見て俺はもう一度手本として『ヒールオール』を使用。
 模擬戦でボロボロになった前衛戦士たちのHPが一斉に回復した。

「ひぃぃぃぃ!? もうやめてくれぇ!」
「休ませて……休ませてくれぇ!」
「ま、まだ俺は……俺は戦えるぅ! せめて一撃!」
「足が震えてるじゃねえか! 無理すんな!」

 自分より年若い女に倒されて自信を失う者、実力差に恐怖する者、負けて益々戦意を滾らせるものと個人差が大きい。
 しかし、部隊全体の空気を最も左右するのは――

「も、もう一本! ユーミル殿、お願いいたします!」
「むっ、ミレスやる気だな!? 何度でもかかってこい! 私はまだまだ元気だ!」
「うおおおおおおおおっ!!」
「だ、団長……!」

 それを統括するリーダーの態度だろう。
 団長であるミレスが諦めずに何度もユーミルに向かって行く姿勢を見せているので、他の者も引っ張られてやる気を出している。
 更に、リーダークラスのNPCは部下たちに比べて能力の伸びが良い。
 普段の訓練ではそいつらを中心に訓練するわけだから……ううむ、部隊長をメインにしつつ、遅れを取りそうなメンバーを指導するのが正解か?

「おっ、やっておるようじゃな? 感心感心」
「――げっ!?」

 その時、雅でありながらややねちっこい声が練兵場に響いた。
 侍女を伴って己を扇子で仰ぎながら、女王がそこに現れ……。
 気が付いた兵士たちは一斉に膝をついて礼の形を取った。

「よい、妾に構わず続けよ。それよりも……ティオ」
「は、はい、陛下!」
「王であり姉でもある妾に対して“げっ”とは何じゃ? うん? なんぞ釈明はあるかえ?」
「……い、いいえ……あの……ありません……」

 聖書様、凄い汗っすね……まぁ、これは自業自得。
 しかし女王様、一体何をしに来たのだろうか。
 ユーミルもリィズも微妙に嫌そうな顔でこちらを見ている。

「ハインド」
「はい。女王陛下」
「このように不出来な妹じゃが、鍛えるなら徹底的にな。その辺で野垂れ死ぬような半端な鍛え方は許さぬ」

 ああ、妹が心配で来たのか……なんとなくこの姉妹の関係性が見えるやり取りだ。
 そんな姉の様子に、王妹は酷く恥ずかしそうに顔を赤くして抗議した。

「あ、姉上に言われなくても、私は日々向上心を持って訓練しています!」
「どうであろうな? ただ、今のそちの顔を見る限り……」

 そこでパトラ女王は言葉を切り、俺に流し目を送る。
 こういう動きが基本になっているのがこの女王様の特徴だ。
 この色気にコロッと行ってしまう男性プレイヤーは割と多い。

「この高慢ちきの伸びた鼻はへし折ってくれたようだの? ハインドにうんと感謝するがよいぞ、ティオ」
「くぅぅぅ……!」

 ティオ殿下は益々顔を怒りと羞恥で赤くすると、その場で地団駄を踏んだ。
 パトラ女王はそんな妹を憎からず思っているのか、あまり見ない優しい笑顔を一瞬だけ見せる。
 それから女王陛下は一通り訓練の様子を視察してから去って行った。
 ただし、手本と称して隕石を降らせる魔法『メテオフォール』を景気よくぶっ放してから。

「皆にもこれくらいはできるようになってもらわねば困るな」
「無茶言わないでください……」

 冗談だ、と嘯いた女王は憮然としたリィズの表情を見て呵々と笑った。
 どうやら本当にからかっているだけらしく、他の魔導士たちは女王の力を既に知っているからか引き攣った笑顔を見せていた。
 ちなみに後で聞いたところによると、彼女の魔法の師はあのアルボル翁だそうだ。
 魔導士たちの間で彼は「賢者アルボル」と呼ばれ、かつては戦士団にも所属していたらしい。
 こう聞くと、どうして今の戦士団はこんなに弱いのかと問い質したくなるが。
 女王に反抗する勢力のせいで、予算を絞られていたんだっけか? 確か。
 それにしても、嵐のような一幕だった……。



「結局、戦術指導まで手が回らなかった……」
「それ以前に、全部あの女王に持っていかれた気がするのだが?」
「全くで。何でござるか? あの範囲魔法は。素敵! 抱いて!」
「……お前、撮った女王のスクショどうすんの? 掲示板に貼るの?」
「そもそもトビ君、守りたくなるようなタイプが好きって言ってなかったっけ?」
「分かっていないでござるなぁ、セレーネ殿。それは拙者が一緒にいたいと思うタイプであって、女王様は遠くから眺めて楽しむタイプの――」
「真面目に聞かなくていいですからね、セッちゃん」

 あの後、戦士団の一部のメンバーが音を上げたところで軍事教練は終了した。
 俺たちは町の中を通ってギルドホームへと帰還中だ。
 ちなみに女王のレベルは100で、帝国の皇帝と同じレベルだった。
 この辺の歪みというか、国家元首にあまり必要なさそうな高い戦闘力を持たせているのは実にゲームらしい部分ではあるが。
 リィズが嘆息しつつ、帽子の位置を直して首を横に振った。

「もうやめにしませんか? 女王の話をするのは」
「そ、そうだね。私、装備の要望に関して色々訊いてきたから、空いた時間に作っておくよ」
「お、さすがセレーネさん。俺も手が空いている時は手伝いますんで、是非お願いします」
「私はもうちょっと模擬戦を続けたかったのだがな。動き足りない気分だ!」
「みんなバテバテだったでござるからなぁ。あれ以上は無理でござろう」

 HPは回復できても、スタミナの方はそうもいかないからな。
 ……ん? そうか、スタミナか。

「訓練の前か後に、料理を提供するのって効果あるかね?」
「あ、拙者が指導していた工兵隊はそんなことを言っていたでござるよ。そろそろ腹が減ってきたとかなんとか」
「それはもしかしたらヒントかもな。今度試しに料理を用意してみるか……」
「そんなことよりも、二時間以上かけた訓練で戦士団のレベルが1しか上がらなかったのはどういう訳だ!? このままでは、レベル30すら遠いと思うのだが!」

 ユーミルが腕組みをして不満を露にする。
 今日の成果は『砂漠のフクロウ』の平均レベルが1上がって26に。
 スキルの習得率――これが100%になると習得できる――がそれなりに上がっただけだった。
 しかし、これに関しては少し考えれば妥当ということが分かるはずだ。

「本来なら複数のプレイヤーが代わる代わる教練に来るのが普通なんだぞ? 今日の成果は五人でやったものにしては、出来過ぎなくらいだと思うが」
「スキルポイントの書も一つもらえましたしね。これは長期間じっくり取り組むべきクエストかと」

 条件としては王宮への出入りが許されていることと、軍事の責任者(サーラの場合はミレス)の好感度が一定以上高いことが条件にはなっているそうだが。
 最初に教練を行ったプレイヤー以外でも、もちろん実行することが可能である。
 船頭多くして、とはならず全てスポンジのように吸収するそうなので問題なし。
 ユーミルは腕組みを解くと、俺とリィズの言葉に視線を彷徨わせた。
 恐らく、もっと劇的な効果があるものと思い込んでいたのだろう。

「そう……なのか? てっきり、私たちだけでどうにかできるものとばかり」
「そりゃ無理でござるよ。しかしハインド殿。ハインド殿の言う通り、国の軍事力が後々関わってくるのだとしたら……」
「ああ。サーラにいる他のプレイヤーにも、教練っていうクエストがあることを衆知した方がいいかも」
「それなら拙者が掲示板に書き込みを。女王のスクショを餌にして話を聞いてもらうでござるよ!」
「狡い手を考えますね……」
「そこは策士だと言っていただこうか、リィズ殿!」

 その後も、俺たちは教練の改善点などについて話し合いながらホームに向かって歩いた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ