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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼女が「勇者」と呼ばれるまで

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三角帽子

「という訳で、俺達の分の防具も作り――」
「作り?」
「ました」
「早かったですね。五分も掛からなかったのではありませんか?」

 ユーミルに作った革装備に比べて、俺達の装備は布装備なので格段に作業が楽だった。
 材料は周辺のモンスター全てが落とす『木綿の布』、それとキャタピラーが落とす『キャタピラーの糸』。
 俺は『上質な司祭服+9』、リィズは職業を魔導士にするとのことで『上質な魔導士の服+10』を作製して装備させた。
 やはりというか、『極上の』という品質の物はあれ以降は出来ていない。
 レザークラフトよりも自信あったのに……どうやら俺が見落としている基準が何かあるらしい。

 ユーミルは暇そうだったので、取引掲示板に他の極上装備がないか確認しに行ってもらった。
 それとリィズ用の武器の調達。
 武器に関してはレベルが追い付くまでは間に合わせという事で、取り敢えずは店売りの『ウッドロッド』を頼んでおいた。
 リィズは残って俺の手伝いだ。

「……ユーミルさん、遅いですね。もう戻ってこなくてもいいですけど」
「さらっと酷いことを言うなよ。ま、でも確かに遅いな。折角だから、もう一つ装備を作るか? リィズ用に」
「私のですか?」
「ここは定番の三角帽子でも。設計図には無いから、これが俺の初のアレンジ防具ってことになるな」

 実はちょっとやってみたかったんだよな。
 一通り装備も充実した事だし、暫くは素材の心配をする必要がなくなった。
 もし作製に失敗したとしても、今ならそれほどのリスクを背負うことにはならない。
 全身の防具を作るのと違って、帽子だけならそこまで難しくなさそうだしな。

「兄さんの……初めて……」
「そうだけど? って、兄さんって呼ぶなよ。周りに誰も居ないからいいものの」
「――是非お願いします。兄さんの初めては、私がいただきますね?」
「そ、そうか。何か言い回しが変な気がするんだが?」
「気のせいです。さあ、邪魔も――ユーミルさんが帰ってくる前に」

 言い直しても、それだともう邪魔者って言ってるのと変わらないと思うが。
 あーっと……材料は『羊毛のフェルト』『キャタピラーの糸』『紫根しこんの粉末』の三つ。
 まずは『羊毛のフェルト』に『紫根の粉末』をふりかける。
 魔女の帽子といえばこの色、黒でしょう。
 魔導士の服も黒だしな、合わせないと。

「粉をふっただけで、どうして生地が綺麗に黒くなるんですか?」
「ゲームだから、としか言えない。ユーミルもそう言ってただろ? そもそも現実とそっくり同じだったら、ゲームの意味が無いじゃないか」
「それはそうですけど……」
「じゃあこう言えばどうだ? 遊べる時間の少ないプレイヤーの為に、利便性を追求したが故の簡略化だ」
「すごく納得しました」
「お前も大概、俺に似て理屈っぽいよな……」

 実際、ガチガチに現実と同じ作業量を要求されたら他の事が出来なくなってしまう。
 楽しくないだろ? そんなの。
 あくまで、生産もTBというゲームの一要素に過ぎないということで。
 それに簡略化された部分が魔法を使っているみたいで、これはこれで気持ちいいしな。

「ほら、ちょっと頭を貸してくれ。これで三角形を作って縫う。で――」

 三角帽子はそれほど難しくない。
 縫う部分も少ないので、さっと形を作り上げて細かい部分に手を入れていく。
 麻布を細く切り、『紅花べにばなの粉末』で赤く染色してリボンを作り、ぐるっと巻く。
 そして何よりも――

「やっぱり先は折れ曲がってないとな! ここは譲れん!」
「そういうもの……なのですか?」
「さすがだ、ハインド。魔法使いと言えば、先端がへにゃっと折れたとんがり帽子。これぞ鉄板! これぞ王道! リィズ、貴様そんな事も分からんとは……」
「!?」 
「おー、ユーミル。遅かったじゃねえの」
「うむ、武器屋が混んでいて手間取った。それはハインドのオリジナルか? プレイヤーで装備している者は見た事がないが」

 リィズの背後から現れたユーミルは、『ウッドロッド』をリィズに向かって放り投げながら俺の前に腰掛けた。
 乱雑な所作にリィズの顔が渋いものになる。
 また喧嘩が始まる前に、俺は少し大きめの声で会話を繋いだ。

「そうなんだよ。割と序盤にありがちな装備だろうに、何故か設計図が無くてな……お前が戻ってくるのが遅いから作ってみた。で、そっちはどうだった?」
「ああ、取引掲示板の方か? やはり、極上という冠詞が付いている防具は無かったぞ。それどころか、上質な+5~10でもかなりの希少品のようだ」
「そうか……まあ、全体の攻略が進めばもっと判断材料も集まってくるだろう。この謎は暫く放置だな」
「ハインドさん、この帽子はもう被っても……?」
「ああ、ちょっと待ってくれ。アレンジ装備は名前を付けてからシステムで性能判定、その後で使用可能になるんだ。ええと……三、角、帽、子……で、判定と」

 メニューのコンソールで名前を入力、判定ボタンを押す。
 アルミラージアーマーと同じ様に光に包まれた後、帽子が落ちる。
 その帽子に触れて性能をチェック。

「……出たよ極上。放置って言ったばっかなのに。あー、混乱してきた!」
「出たのか!? 今回の物は、どれくらいの精度で作ったのだ?」
「そりゃあ、作るのが難しくないといっても極力丁寧にやったさ。というか、手を抜いた物は一個もないんだけだどな……」
「謎が深まったな」
「そうですね。私が見ていた限りでも、ハインドさんの裁縫の精度はほぼ一定でした。ということは、やはり見落としている何らかの要因が結果に関わっていると見て間違いないかと」
「……ふぅ、やめやめ。考えても分からんこともあるさ。それよりも、ゲームを先に進めようぜ? 今日はクラリスさんにクエストの内容を聞きに行かにゃならんし」

 もうすぐ日付が変わってしまうしな。
 俺は完成した『極上の三角帽子+1』をリィズの頭に乗っけてやった。
 扱いは二つ装備枠があるアクセサリーのカテゴリのようだった。
 防御力は+7、更に魔力にも+5のおまけが付いている。
 比較対象が無いので、これが良いものかどうかも分からない。
 が、リィズが嬉しそうに礼を言ってきたので、もう何でもいいか。
 魔女っ娘らしい格好になってて可愛いしな。
 黒いローブに三角帽子……これだよこれ。

 裁縫セットをしまい、立ち上がって大きく伸びをする。
 あー、VR内なのに肩が凝ったような気がする……戦闘が恋しい。

「ところでハインドさん。クラリスさんというのはどちら様ですか?」
「あー、クラリスさんは――って、何でリィズは杖を素振りしてんだ? 戦闘のイメトレ?」
「お気になさらず」

 思いの外、非力なはずのリィズの手元から良い音がしている。
 この分なら敵をきっちりと撲殺できそうだ。
 妙に無表情でちょっと怖いが。

「道具屋のNPCらしいぞ。こいつが最初に村で引っ掛けた女だ」
「……ギルティ」
「人聞きの悪い事を言うな! 転んでた所を助けただけだっての!」
「そうですよね。ハインドさんがご自分から女性を誘う筈がありませんから……きっとその毒婦が……」
「こらこら。彼女にそういう意図はないと思うぞ? どっちかって言うと、人としてどうかっていう品定めをされている感じはしたけどな」
「どういう意味だ、ハインド? NPCがそんな高度な判断を実行可能なのか?」
「まあ会えば分かるさ。俺の予想が外れていなければ、だけど」

 俺は頭に疑問符を浮かべた二人を連れて、村の道具屋へと向かった。
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