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キラメキDaughters(ドーターズ)  作者: 千賢光太郎
8話 空飛ぶ赤ちゃんと聖娘愛良ちゃん
31/55

デートの続き:カフェ『シャルロック』にて

語り手は明日谷大和君、変身をする前の一人称は「俺」で、人前だと「僕」に、「キラナデシコ」に化けると「私」に代わります。

ではきらめく世界をお楽しみください。本日もお読みいただき、ありがとうございます。あなたに良きできごとが起こりますよう、心からお祈りします。

挿絵(By みてみん)


「大和君、喫茶店シャルロックに行こう」


俺はナデシコから元に戻り、アスナとココアの歌によって傷が癒えた後、二人は俺の手を握り、カフェ『Charlock(シャルロック)』へ連れて行った。


「大和さん」


ドアを開けて、空いた席に座ろうとすると、双子姉妹のマナテとカナセがお茶を飲んでいた。


「マナカナじゃん、ここで何をしているの」


「何って、二人で買い物をしているんだ。マナテは姉である僕に荷物持ちをさせるんだ。全く」


カナセの隣の椅子に、大きな袋が2つあった。店員に頼み、双子たちとテーブルをくっつけた。


――テーブル同士がキスをしたって、あんた、面白いことを言うね。将来、作家か作詞家になったらどう?


俺を挟むように由良、愛良が座る。向かい側にカナセとマナテが座っている。


「この後、士鶴姫がこちらにいらっしゃいます。時々、私たちに電話をおかけなさるのですよ、姫様」


「え、士鶴姫が来るの。私は大和君とデート中だから、愛良が相手をしてあげてよ」


「私もデートです。士鶴姫様に敬語を使いなさいよ、由良」


「いいの、士鶴姫と私は友達だもん。それに愛良、私たちの方が2つほど年上でしょ。年下にどうして敬語を使わなくちゃならないのさ」


「それはアルムのお姫様だからでしょ」


「いらっしゃいませ、ご注文はいかがなさいますか」


メイド服を身にまとった店員が、はきはきした声で尋ねる。エプロンからほんのりと甘い香りを感じる。


「大和君は何を頼む?」


由良が尋ね、俺はオレンジジュースとチョコレートケーキを指さした。


「じゃあ私はイチゴのケーキにハルトリコーヒー、愛良もだよね」


「うん、お願い」


「愛良、ハルトリコーヒーって何?」


「ハルトリコーヒーはキレイになる成分、ハルトリコの豆からとれた、おいしいコーヒーですよ、お客様」


メイドはにっこり微笑み、勢いよく声をあげ、大きく頭を下げる。


「ありがとうございます、やっぱり僕はオレンジジュースでいいや」


「確認します。オレンジジュースが1つ、ハルトリコーヒーが2つ、イチゴケーキが2つ、チョコレートケーキが1つですね。オーダー入りました」


店員は小走りで厨房に向かった。スカートが変な形で乱れ、みえてしまった。ああ、俺は男だなあ。


「こら、大和君」


由良が俺の頬をつんつんと、人差し指で突っつく。


「一人だけ、どこを見ているか、わかってしまいましたもんね。さすが地球から来た大和様」


愛良がスカートに両手をおいて微笑む。愛良ちゃんがここにいなくて、本当に良かった。いたら話は弾むだろうか?


「これだから大和は、ったく」


カナセがつぶやき、俺と目を合わせると、口を大福のように開け、目をきょろきょろ動かし、マナテに顔を向けた。


「あら、カナセ、もしかしてぇ」


にや~っとマナテは姉を見て微笑んだ。


「な、なんだよ」


「大和さんに恋をしているのね」


「お待たせしました、恋がかなうケーキ、コイセーキです」


隣の席で店員が料理をお客様に差し出した。


「馬鹿言うな、こんな奴、僕は嫌いだ。や、大和」


カナセは指をさす。


「僕のことを嫌ってもいいからな。言っておくけれど、お前のことは人差し指の長さくらいしか、好きじゃないんだからな」


「わかったよ、僕はカナセを好きでもなければ、嫌いでもないよ」


口が「へ」の字になり、俺を見るカナセ。


「なんだい、どっちつかずだな。はっきり嫌いなら嫌いって言えよ。だから須田愛良もお前を見て」


「「「カナセ」」」


じゃあああっと、ホットケーキがこんがりと焼ける音が、厨房から聞こえる。。


「カナセ、後でたっぷりお仕置きね。大和さんに言っていいことと悪いことがあるでしょ」


「あの、キラメキドーターズですよね」


サングラスをかけた金髪のお姉さんが尋ねた。


「そうだよ」


由良が手を振って答える。


「よかった、あなたたちにお願いがあります。地球から赤ん坊がやってきて、どこかに消えてしまいました。私たちと一緒に見つけていただけないでしょうか」


この世界には警察がいないのだろうか。どうして俺たちに探すよう、お姉さんは頼んだのだろう。


「赤ちゃんの名前は」


由良が立ち上がり、お姉さんに顔を近づけた。


桐島理世(きりしまりせ)といいます」


「マナテ、カナセ、お待たせしました」


士鶴姫がお見えになった。どこかの学校を思わせる緑色のブレザーと赤いチェック柄のプリーツスカート、紺色のオーバーニーソックス。脚と靴下の境目がむっちり食い込んでおられる。


「あら、大和さんに愛良さん、由良さんたちもいたのですね」


「姫様、こんちわー」


「姫様、おはようございます」


「士鶴ちゃん」


「ひ、姫様」


愛良は手を振り、由良は頭を下げ、金髪のお姉さんはひれ伏した。


「姫様、赤ちゃんが大和君と同じ地球からやってきて、消えたんだんって。この世界のどこかにいるらしいよ。私たち、今から探しに行くんだ。姫も手伝ってよ」


「こら、由良、敬語を使いなさい」


「いいじゃん、私より年下だし、姫様って職業についているだけだし」


「二人とも、喧嘩をやめてください」


俺の顔に二人のつばがあたる。


――うらやましいだって? じゃあ、あんたが今度、この二人の間に割って入ってよ。


「地球から来た赤ちゃんですね。やがてこの世界にも影響を与えます。探しましょう。でも、先にお昼を食べたいので、サンドイッチとハルトリコーヒーをお願いします」


姫はメイドに頭を下げなさった。


「いました、空を飛んでいます」


頭を上げなさると、窓の向こうに赤ちゃんが空を泳いでいる。モンブランよりも光沢のある髪の毛、目は飴細工のような輝き、カスタードクリーム色のロンパースを着ている。


「まさかすぐに見つかってしまうとは」


俺は空を飛べない。でも


「輝け、私の希望――」


変身した私なら空を飛べる。彼女をつかんだ。丸いまんじゅうのような口で私を見る。


「この子のお母さんは、お父さんは?」


「地球にいます」


私は地表に降りて、元の姿に戻った。


「大和君、今から地球に帰って、この子の親に赤ちゃんを届けてください」


姫様がおっしゃった。由良と愛良は赤ちゃんを抱き、頭をなでなで、べろべろばー、高い、高い、どっこらしょ~よっこいしょ~。


「ね、ねえ、僕たちも触っていい?」


カナセが尋ね、由良がうなずく。彼女は赤ん坊を肩車したら「にたぁ」顔がたるんだ。


「うわあ、可愛いぞ、お前、名前はなんていうんだっけ」


「理世よ、理世」


マナテが背伸びを行い、自分の頬を理世にこすりつけた。


「本当にもっちりして、良いお肌ですわ」


「僕らもやがて、赤ちゃんを産むんだな。ああ、楽しみだ。マナテより早く産んでやるからな」


「その前に結婚する人がいるかしら」


マナテが赤ん坊の頭をなでると、理世は「きゃっきゃ」喜んで、頭を下げた。


「い、いるに決まっているだろ」


「ああ、ごめんなさい」


マナテの後ろにいるお客様がコーヒーをこぼしてしまった。彼女はちらりと見た後、姉に目をやる。


「誰? だれ?」


カナセは理世を肩車からだっこに変え、強く抱きしめている。


「いないのでしょ。私は大和さんと」


「こいつはだめ」


カナセは俺から見ると「女の子の格好をする男」だ。でも、マナテと一緒に育ち、自分は女だと信じきっている。妊娠する、しないの前に「お前は俺と同じ性別なんだよ

」優しく言うべきだろうか。


「カナセたちの世界って、赤ちゃんはどうやって生まれるの?」


言わない代わりに、俺は彼女に尋ねた。


「ぼ、僕は言わないぞ、マナテ」


頬を熟れたイチゴ色に染め、理世に顔を向けるカナセに、くすっと笑うマナテ。


「赤ちゃんは我らが父と母、イヌとネコが交わってできます。大和さんはイヌになりやすく、私やカナセはネコになりやすい。でも時が進めば変わる人もいますけれどね」


カナセも妊娠できるの? さすがに嘘だろ。あんたは「男」が妊娠できるって聞いたら、どう思う?


――あなたが一言、大和に告げた。


「ね、ねえ、区別って何かあるの?」


「12歳の誕生日を迎えると、こことあそこから液体が出ます。白だとイヌに、黒だとネコになります」


胸と子宮に手を添え、にこりと微笑むマナテ。


「う、うあああぁあぁああ」


赤ちゃんが泣きだした。カナセが何かやったのか? 由良と愛良が笑顔でなだめている。


「大和君、今から地球へ飛ばします。この子を母親以外の人に預けないでください。彼女はキラメキの力をもっており、狙おうと企む奴らがいます。空から私たちは大和君に指図をします」


ソフトクリームがぽたぽた零れ落ちるように、体から汗が出る。姫が何かをお唱えなさった。目の前が真っ白に染まり……。


「ここは」


風景がいつもの見慣れた夢が丘公園に変わった。俺は赤ん坊を抱きかかえている。どうしよう。この子の親を、どうやって探せばいいのだろう。今、俺の前に人はいない。カラスや猫、犬やスズメの鳴き声も聞こえない。


――大和君、聞こえますか?


「士鶴ちゃん、聞こえるけれど、どこにいる?」


――大和君の頭からです。後ろに大和君を支えてくれる人がいます。その子なら、赤ちゃんを預けても大丈夫です。


「大和君」


振り向いた。


「あ、あ」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。大和君は「誰」に出会ったのでしょうね。アルムの世界では2割の確率で、性別が「オス」でも出産できるらしいです、頭がおかしくなりますね。夢の世界だから、仕方ないのか。

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