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第十四話 噂話に花が咲く

 アンゼリカが昨夜夫と言い争いになった原因の、旦那の上司の奥様方とのお茶会を終えて、ショコラのもとへやってきたのは、日中で一番太陽が高く昇る頃合いだった。

 ショコラの好意で昼食をごちそうになったあと、二人はいつものようにお茶をする。

「あー、お茶が美味しい。本当に、癒されるわ」

 ほっと息をついたアンゼリカの正面のソファーに座るショコラは、労わるような笑顔をアンゼリカに向ける。

「お疲れさまでした。急に、旦那様の上司の奥さま方とお茶会だなんて、気疲れもするわ」

 ショコラの同情を受けて、アンゼリカは大きく頷く。

「そうよ。もっと早く教えておいてくれればいいのに、こっちにだって、心づもりがいるでしょう」

 昨夜突然、ブランの上司であるクラフィティ大尉の奥さまが明日アンゼを午前のお茶会に招待したいと言われているといいだしたのだ。

 ショコラの家に遊びに行くつもりだったアンゼリカは、もちろん夫に反論したが、これも付き合いだからと軽くいなされてしまった。

 妻としては、夫がつつがなく仕事できるように、助力しなければならない。

 しぶしぶ、外面と言う仮面をこれでもかと着けて、何とかかんとか、奥様方のお茶会を無事終えてきた。

 お茶会とはいえ、噂好きの女が集まる会であるから、お茶を楽しむよりもお喋りを楽しむようなものだった。

 たくさんの噂話を耳にしてきたアンゼリカは、そのうちのいくつかを、ショコラに披露することにした。

 ネコ好きのコモモ男爵が、白毛の美ネコに恋をしてこの子と結婚するといいだした話や、お菓子作りが上手いと評判のミント伯爵の奥方が、夫の浮気に腹を立てて、浮気相手そっくりの絵を描いたケーキを作って夫に食べさせた話。十五年前に誘拐されたプラム伯爵令嬢が、このほど見つかって、プラム伯爵家へ戻った話など。話題は尽きない。

「プラム伯爵家のお話でしたら、わたくしも聞いたことがありますわ。プラム伯爵家の子に代々現れるハート形の痣が決めてだったそうね」

「すごいわよね。十五年も捜し続けて、ようやくでしょう。でも、誘拐された彼女は下町でずっと育ってきたというし、いきなりあなたは伯爵令嬢なのよと言われても、すぐには信じられないでしょうね」

「ええ。きっと、戸惑うことも多いと思うわ」

 そう言って、ショコラはビスケットを手に取って口に運んだ。それを見て、アンゼリカもゼリービーンズをクッキーの間に挟んだ、ボヨンと言う名のお菓子を口に運んだ。塩味のきいたクッキーと甘いゼリービーンズの味が口の中で合わさる。軽い塩味と甘い味が合わさって喧嘩しそうな物だが、それぞれの味が引き立てあい、絶妙なハーモニーを奏でるのだ。これは最近コレオイシーで販売されたばかりで売り上げも上々なのだという。

 アンゼリカは、美味しいと、至福の言葉を漏らしたあと、ショコラに答えた。

「ええ。でも、戸惑ってばかりでもないようなのよ。話題の人だから、あちこちのパーティーへ呼ばれるそうなのだけれど、殆ど断ることなく、毎回出席しているそうなの。綺麗な方だそうだから、いつもたくさんの男性に囲まれているのですって。クラフィティ大尉の奥さまは、何度かパーティーでお会いしたそうなんだけれど、男性にばかり媚びを売って、嫌な感じ、っておっしゃっていたわ」

「まあ、そうなの。でも、会ってみないと本当の所は分からなと思うわ」

 ショコラの結論はあっさりとしていた。よくよく考えれば、ショコラも噂の被害にあった一人なのだ。噂話が真実であるとは限らない。むしろ、真実でないことの方が多いのかもしれない。

 安易に言いふらさないようにしようと、アンゼリカは反省した。

 そこでふと、ショコラに関する噂を聞いたのを思い出した。

「ねえ、ショコラ。あなた、占いができるの?」

「占い? アンゼ、何か悩みでもあるの?」

 心配そうな顔をされ、アンゼリカは慌てて首を横に振った。

「いいえ、そうじゃないの。今日聞いたのよ。ショコラ嬢が悩める人々を集めて、夜に秘密のお茶会を開いているって。そのお茶会で、ショコラが占いをしてくれるんですって。それがものすっごく当たるって評判らしいのよ」

 本当にそれほど当たるなら、ぜひとも自分も占ってもらいたい。期待の目でショコラを見ると、彼女は困ったような顔をした。

「いったいどこからそんな噂がでたのかしら。わたくし、占いはからっきしなのよ。我が家は占いを教養として身に着けるのだけれど、それは男子のみで、わたくしは一度も教わったことはないわ」

「そうなの。やっぱり噂ってあてにならないわね」

「ええ、本当ね。でも、もし何か占ってもらいたいことがあったら、言ってね。弟に頼んでみるから」

「ええ、その時はお願い」

 ふふっと二人で笑いあう。

 ショコラとアンゼの楽しいお茶会は、夕刻に差し掛かった頃、ブッシュが迎えにくるまで続いた。


一年以上も放置していたとは。。。

時が立つのは早いものですね。


こっそり、更新しておこうと思います。もう誰も見ていないとは思いますが。。。

最後まで、書ききりたいな~とは思っております。頑張ろう。うん。

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