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村長の一日 朝から昼



 俺の朝は遅い。


 日が完全に昇ってから起きる。


 軽くラジオ体操っぽい運動をした後、まずは家の見回り。


 なんでも、これは家長の仕事らしく、可能な限り毎日、朝と晩に行う。


 俺が無理な時は、俺の知らない間にできた家中序列の順に行われる。


 その序列順だと、ルー、ティア、フローラ、アン、ハクレンになるらしい。


 アルフレート、ティゼルはまだ幼いので組み込まれていないが、本当にそんな序列は知らない。


 知らないが、これまで知らされなかったのだから知らなくて良いことなのだろう。


 そう思うことにする。


 朝の家の見回りは、家内で働く者への挨拶が中心。


 鬼人族のメイドたちは、すでに活動を始めており、火をおこし、朝食の準備や清掃が始められている。


 クロたちの食事の用意もあるので、かなり大変だろうが文句を言わずに頑張ってくれている。


 ありがとう。


 そして、彼女たちは俺より先に起きて作業を開始するため、俺は早く起き過ぎてはいけない。


 俺は別に気にしないからと言っても、彼女たちは俺より先に起きようとするので俺が諦めた結果だ。


 家長の俺よりも寝ているワケにはいかないという、俺には理解し難いメイド魂があるらしい。


 なので、俺は目が覚めてもベッドから出ない。


 出てはいけないのだ。


 俺の朝が遅いのは彼女たちのためであって、けっして俺がだらけているからではない。



 話を戻して。


 顔を合わせた際に連絡事項があれば交換する。


「昨晩、酒スライムが食料倉庫に侵入。

 調理用のお酒が一樽、やられました」


「酒スライム対策に小分けにしていた分か?」


「はい。

 目論見通りと喜ぶべきか、侵入を許した不甲斐なさを嘆くべきか悩みます」


「侵入を防ぐのは半分諦めている。

 目論見通りと喜ぼう。

 他には?」


「特にありません。

 今日の朝食のメインはダイコンとほうれん草、キャベツのスープに、キラーラビットの肉を炙った物です」


「わかった。

 急ぐよ」


 俺の朝食は家の見回りを終えてからになる。


 見回りは、個室や倉庫を除いた家の中。


 なのでそれほど見回る場所は多くない。


 要所要所で鬼人族メイドたちと挨拶し、報告を受ければすぐに終わる。



 朝食。


 家の朝食は食堂で、三回に分けて行われる。


 一回目が俺とルー、ティア、フローラ、ハクレン。


 アルフレートとティゼルは、食事内容もタイミングも違うので別。


 なんにせよ、俺が食べないと他の者が食べられないので、急いで食べ終わる。


 ルーやティアもアルフレートやティゼルの食事があるので、急ぐ。



 二回目が鬼人族メイドたち。


 一緒に食べてもいいと言ったのだが、食堂の広さと一回に出せる食事量、そしてアルフレートとティゼルの世話を考えて分けられている。


 ルーやティアが食事している間、誰かが見ないといけないからな。



 三回目が一回目、二回目に間に合わなかった者たち、または早朝から家に来た来客用だ。


 主に俺よりも起きるのが遅く、よく一回目の食事に遅れるフローラ、ハクレン。


 それと、グランマリア、クーデル、コローネが中心となる。


 グランマリアたちはここに来た当初はリザードマンたちと一緒に生活していたのだが、生活リズムの違いから今は別の家で暮らしている。


 そしてわかったグランマリアたちの家事能力のなさ。


 掃除洗濯はリザードマンたちが訪れてしているそうだが、食事に関してはタイミング等の問題があるので俺の家で食べるようになっている。


 名目的には、前日の見張りの報告だ。


「特に問題はなかったと?」


「はい。

 夕方ぐらいにキラーラビットが三匹ほど村に近付こうとしましたが、クロさんたちが排除しました」


「わかった。

 しかし、あの兎は減らないな」


「そうですね。

 まあ、美味しいので文句を言うのはアレですが」


「確かに」


 そして減るどころか数が増えているような気もする。




 朝食を終えると、俺は家の外に。


 クロ、ユキ、ザブトンに挨拶をし、社にお参り。


 その後、畑を見回りに行く。


 お供はクロかユキ、もしくはクロの子供達。


 畑は耕す必要があれば耕し、水が少なそうな畑には水を撒く。


 作物の状態の確認をしつつ、害虫駆除。


 害虫に関しては、ザブトンの子供たちが食べてくれたり、クロたちが教えてくれるので大きな被害はまだない。


 見つけた害虫は、【万能農具】のジョウロで排除。


 作物の状態に関しては……これまでのところ、問題は起きていない。


【万能農具】で作った畑だからだろうか。


 新しい村で農業が始まった時、その辺りが心配だな。


 なんとかする魔法とかないかな?


 今度、ルーやティアに相談してみよう。


 ああ、フラウやラスティ、ハクレンに聞くのも良いか。



 なんだかんだで畑も広くなったので、見回るのも大変だ。


 しかし、しっかりと成長している作物を見ると心が安らぐ。



 昼食。


 しっかり食べる。


 これは集まって食べるのではなく、鬼人族メイドたちが用意してくれているのを各自で、自由に食べる形だ。


 場所も決められていない。


 決められていないが、俺は家の食堂か中庭に設置したテーブルで食べるようにしている。



 昼食に関しては、俺は前の世界の記憶があるので普通だったが、こちらの世界では一般的ではなかった。


 ルーやティアにしても、昼食の存在に驚きながらも、すぐに慣れた。


 クロたちは、昼食は食べない。


 と言うかクロたちは食べようと思えばどれだけでも食べられ、食べないでおこうと思うと十日ぐらい食べなくても平気みたいだ。


 十日ぐらいなのは俺の心配の限界で、もっと平気なのかもしれないけど。


 ハイエルフたちは昼食どころか、朝食にも戸惑っていた。


 なんでも、この村に来る前までは一日に一回の食事も怪しかったらしい。


 そのことを知った時、思わず涙が出てしまったのを覚えている。


 いっぱい食べろよ。


 昼食に戸惑わなかったのは、ドワーフぐらいだろうか。


 まあ、彼らの戸惑いはお酒の方に向いていたからかもしれないが。


 時々、村に来るドライム、ビーゼルも最初は戸惑っていたが、今は慣れている。


 一時、ここに居たユーリは、戻って大丈夫だったろうか?


 周囲に迷惑を掛けていなければいいが……


 いや、王姫だっけ?


 立場があるから大丈夫か?


 ともかく、昼食の習慣は村人には受け入れられている。


 そして俺の昼食は村人たちとの相談の場、報告の場となっている。


 俺の昼食をとる場所が決められているのは、その辺りが理由だ。


「村長。

 新しい村で、建設予定の建物は大半が完成しました。

 後は細かい内装ですが、その辺りは新しく来る住人たちに任せようかと思います」


「山羊の雌たちのお腹が膨らんできました。

 子供ができたんだと思います。

 エサを良い物にしたいと思いますが、構いませんでしょうか?」


「村の南西ですが、住居と森の間が近いので、もう少し広げてほしいという意見を聞いています」


「秋の収穫の予想から、このままですと新しい倉庫の建設が必要です。

 それか、早々にマイケル氏に販売するべきかと」


 今回の昼食に一緒に居るのは、ハイエルフ、リザードマン、鬼人族メイド、そして文官娘衆が各一名ずつ。


 俺は各自の話を聞きながら、判断が必要な所を指示していく。


 褒賞メダルを導入したことで、この辺りは少し楽になったと感じられる。


 少し前まではルーやティアもよく一緒に居たのだが、アルフレートやティゼルの世話をしながらだと他の者が遠慮するとのことで、別になっている。


 俺がアルフレートやティゼルにかまけ過ぎるからかもしれない。


 反省。


「村長。

 山羊もそうですが、妊娠したインフェルノウルフたちの気が少し荒くなっています。

 アルフレート様、ティゼル様は近付けないようにしてください」


「わかった、注意するよ。

 まあ、ルーやティアがついているから大丈夫だとは思うけど」


「あー……子育ては、母親がすべきとは思いますが、慣れている鬼人族の方々にお任せするのも手かと」


「ルーやティアに何か問題でも?」


「いえ、そうではありませんが……その、見てて危なっかしいので……」


「そう言ってやるな。

 誰もが一人目は、そういうものだろう。

 俺もアルフレートが生まれた直後は、抱くのすら怖かった」


「失礼しました。

 はっきり言えば、抱いて飛ぶのはどうかと思います」


「……抱いて飛んでいるのか?」


「はい。

 飛んでいます。

 結構な高さを。

 それを見て、落とすのではないかと不安になります」


「わかった。

 注意しておこう」


「よろしくお願いします」


 昼食はなんだかんだで賑やかに行われた。




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― 新着の感想 ―
高い高い(物理)
[一言]  久しぶりに読み返してて、ここでふと思ったは、「トップから底辺まで昼食の概念が薄い世界で学校を作ったら、やっぱり昼食休みの存在は消えてなくなるのかなあ?」でした。基本的にどーでもいい上に、ア…
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