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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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とある山エルフの反逆



 私達は山エルフと呼ばれる種族。

 山岳では我らに敵う者はいない。

 敵うとすれば、同じ山エルフ。

 悔しい事に、私の一族は同じ山エルフの一族と争い、居住地を失い、放浪を余儀なくされた。

 しかし、運が良い事に新たなる居住地がすぐに見つかった。

 しかも、前の場所よりも遥かに良い場所だ。

 これも一族の長であるヤー様が礼節を重んじ、しっかりと挨拶回りをしたお陰だろう。

 流石はヤー様。

 私も礼節を大事にしようと思います。

 そして、尊敬しています。


 しかし、そう、しかしだ!

 今のヤー様には不満がある。

 それは、新天地の主である村長に対する態度。

 まるで初めて恋を知った女子のような態度ではありませんか。

 駄目だ。

 いや、恋愛をするのが駄目というワケではない。

 ヤー様だって良いお年頃。

 いや、少し行き遅れ感のある……げふんげふん。

 ともかく、私が駄目だと言っているのは恋愛の事ではなく、あの男の事!

 あの男は駄目だ!

 すでに無数の女と関係を持っている節操無しだ!

 確かに、そう確かにこの地に村を一人で作り始めた話を聞いた時は、凄いと思った。

 尊敬に値すると。

 有名な吸血鬼や天使族を部下に持ったのも悪く無い。

 だが、駄目だ。

 女癖が悪すぎる!

 存在を否定しようとは思わない。

 この居住地の主である事も認めよう。

 だが、ヤー様の相手となるのは認めない!

 決してだ!


 しかし、私がヤー様に何かを言ったところで聞いて貰えないだろう。

 村長に対しても同じく無駄。

 言って止まるなら、あんな数の相手に手を出したりしない。

 ならば……

 ……

 どうしよう。

 どうすれば、ヤー様と村長がくっつくのを防げるのだろう。

 私は自分の知恵を信じていない。

 困った時、頼るべきはヤー様だった。

 では、そのヤー様に相談できないのだから……

 駄目だ。

 居住地で思いつく知恵者は、全て村長の歯牙にかかっている。

 文官娘衆なる魔族の娘は大丈夫そうだが……彼女達に頼ると痛い目を見そうな気がするので止める。

 こういった直感は大事だ。

 山で色々な事から私を守ってくれた。

 となると、残るはザブトンさんやクロさんだが……

 コミュニケーションが難しい。

 あと、まだちょっと怖い。

 ……

 こうなると独力でなんとかするしかない。

 無い知恵を絞る。

 今こそ活躍する時だ、私の頭脳よ!

 ……

 現状は、ヤー様が村長に対して好意を持っている。(私主観)

 村長からヤー様に対してのアプローチはない。(私が知らないだけかもしれないが)

 ……

 つまり、ヤー様が村長の事を諦めればOK。

 諦めるだろうか?

 年齢的にも限界……げふんげふんっ。

 ヤー様は素敵な女性だ。

 きっと良いお相手が見つかるに違いない。

 なので諦める。

 諦めさせる。

 その方法は……

 村長の悪い所を見せれば、ヤー様から身を引くのではないだろうか?

 うん、そうに違いない。

 なら簡単だ。

 村長の悪い所を探す!



 そう思ったのが五日前。

 欠点だらけのように思った村長は、極めて普通の農夫だ。

 いや、真面目な農夫と言った方が良いかもしれない。

 唯一の悪い点が、夜の生活だが……

 あれも私の感覚で悪なだけで、一夫多妻な家庭は珍しい事ではない。

 むう。

 ヤー様の目は確かという事なのだろうか。

 いやいや、諦めてはいけない。

 私は村長の悪い所を探そうとしているが、それは私が自由に出来る時間でだ。

 つまり、限られた時間でしか村長を見ていない。

 それ以外の時間に悪い所があるのかもしれない。

 明日は思い切って、自分の仕事時間をずらしてみよう。


 今日の村長は、家で何か細かい作業をしている。

 誰かに頼まれたのだろうか?

 木を小さくカットし、ザブトンさんから糸を貰い、倉庫から何やら持ち出している。

 何をしているのだろうか?

 ひょっとして、これが村長の悪い所に繋がるかもしれない。

 よしっ。

 いや、慌てるな。

 私は村長のやっている事を観察する。

 ……

 ワケがわからない。

 時々、私には理解できない事をする村長だとは思っていたが、これほどとは。

 しかし、一体何を……

 ……

 何かを作っている事はわかるが……私の知識で一番近いのは……

「罠?」

 思わず声を出してしまった。

「ははは。
 罠じゃないよ」

 村長にも気付かれた。

 失敗を恥じる。

 が、それを村長に感じさせたりはしない。

「では、何を?」

「あー……ここをこうして……これで完成だ」

「これで完成?」

「ああ」

 村長はそう言って、並べていた小さな木の板を倒す。

 その小さな木の板が並んで居る同じような小さな木の板を倒していき……セットされていたボールが転がりだす。

 転がったボールが当たって、紐に結ばれた何かが動き、さらに別の仕掛けに連鎖していく。

「おおおおおおっ!
 凄い!
 罠の連鎖ですね!」

「ははは。
 罠じゃないけど……
 まあ、そんな感じかな。
 だけど、ここで止まってしまったな」

 村長の説明では、カップの上をボールが行き来するらしいのだが、そこで失敗したようだ。

「ここが上手くいっていれば?」

「こっちの仕掛けが動いて、ここが動いて……こうなる」

「おおおっ!」

 山エルフは、罠で獲物を狩るのが得意だ。

 何が言いたいかと言うと……

 こういったの、めっちゃ好き!


 その日、時間を忘れて村長と遊んだ。

 まだ最後まで到達していないが、満足だ。

 この大作を永年に残したい。

 だが、無情な鬼人族メイドが片付けろと言う。

 芸術を解さない者め。

 いいか、良く見ろ。

 ここがこうなってだな、こっちがこうなって……あ、はい。

 片付けます。

 超怖い顔をされた。

 くっ。

 まさしく鬼だ!

 ……あれ?




 後日。

 無駄と思いつつ、素直に村長に言ってみた。

「ヤー様に手は出さない方向でお願いします」

「もちろんだ!
 その為には君の協力が必要不可欠!
 いいか、できるだけ俺と二人っきりになるような状況は作らないように!
 できるだけヤーの傍に居るんだ!」

「え、あ、はい」

 敵軍に囲まれ、孤立した中で援軍の到来を見た兵士のような顔の村長だった。

「良い雰囲気になったら、ぶち壊す事を許可する!
 頼んだぞ!
 絶対だぞ!
 頼むからな!」

 力強い言葉に偽りは感じ無い。

 私は何か誤解していたのだろうか?

 いやいや、村長も自身がヤー様と釣り合わないと思っているのだろう。

 うん、そうに違いない。

 ともかく、私は村長の許可の元、ヤー様と村長の仲の進展を妨害していく!

 ……

 あれ?

 私、ヤー様から恨まれない?

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