村人集め計画と運動会計画
新しい遊具との要望が出て、立体三目並べの存在を思い出したので作ってみた。
板に棒を三×三の並びで刺し、棒に通るように穴を開けた球を作れば完成。
少しプレイして、真ん中の二段目を取った方が圧倒的に有利なことに気付いたので、立体四目並べを作ってみた。
なかなか奥が深い。
一列並べても、本人が気付かないこともあって白熱する。
ちなみに、並んだ際に宣言できなければ不成立のルールだ。
意外と見落として逆転負けになったりしている。
調子に乗って立体五目並べを作ってみたが、これは失敗。
時間も掛かるし、気楽に遊べなかった。
「褒賞メダルか。
変わったことをするものだ」
ドライムが、ラスティと立体四目並べをしながら会話を楽しんでいる。
ハクレンが村に居ることで、ドライムの来訪回数が減った気がする。
それともラミア便の活躍で、欲しい物が手に入りやすくなったので来る回数が減ったのかな?
それを確かめるかのようにハクレンがそこに混じりに行った。
「ドライムちゃん。
ひょっとして、お姉ちゃんに会いたくないのー?」
「ははは。
姉上、ご冗談を」
「だよねー。
じゃあ、そっちの家に遊びに行ってもいいよね」
「え?
あ、も、もちろんですよ。
ただ、今はちょっと色々とバタバタしているので、良いタイミングの時にこちらから声を掛けさせていただきたいと思う所存です」
「冗談よ。
そんなに慌てないで」
「あ、あははは……」
「ところでラスティちゃん。
種族代表として貰った褒賞メダルの使用用途は、私も言っていいのかな?」
「うん。
私は特に思いつかないけど、何かあるの?」
「人間や魔族を確保できないかなぁって」
「姉上?
生贄はさすがに止めさせていただきますよ」
「こらこらドライムちゃん。
お姉ちゃんがそんな物を求めると思ってるのー。
さすがに怒るよー」
「失礼しました」
「実は村長がねー……」
「人間や魔族を集める?」
種族の代表を集めた会議で提案された。
各種族からそれなりの数の褒賞メダルが提出されての意見だった。
その意図は俺が前々から言っていたことの解決のためだった。
「村に男が少ない」
「俺以外に農作業をする者を育てないと、俺に何かあった時に村が崩壊する」
この二点解決のために出された提案が、人間や魔族を集めることだった。
なるほど。
悪くはないと思うが……
「人数はどれぐらい集める気なんだ?」
「多ければ多いほど良いと思います」
「そうだろうけど、いきなり村の人口が増えて大丈夫か?」
これまでは人数が増えても対応できる柔軟さがあった。
しかし、今はある程度の人数が集まって村を形成してしまっている。
急激な人口増加は、問題が多いだろう。
正直、文官娘衆の十人が来た時、問題が出るだろうと予想していた。
だが、フラウが彼女たちを上手く統率してくれたので問題は出なかった。
ならばこれからも大丈夫かと言えば、そうではないだろう。
どのようなツテで連れてくるかはわからないが、大勢で新しく村に来るとなると確実に問題が発生するだろう。
「そこで提案ですが、別の場所に新しい村を作りましょう」
「どういうことだ?」
「言葉通りです。
別の場所に新しい村を作り、そこに集めた人間や魔族に農業をしてもらうのです」
「……なるほど」
一緒にするから問題であって、ならば最初から分けると。
……
悪くない。
いや、良いアイディアだと思う。
「わかった」
会議での話は提案であって、決定ではない。
最終決定権は村長の俺にある。
もちろん、その決定の責任も俺にあるということだ。
責任から逃れる気は無いが、俺は村長よりも気楽な農業従事者をしたい。
なので一度、多数決による決定を提案したが、多数決で否定された。
賛成したのは俺だけという結果だ。
そのうえ、厳しい環境下では、どうしても強い指導者の意思決定が必要と説得されてしまった。
フラウもその説得する側だったので、代官を理由に決定権を譲るのは駄目っぽい。
だから、俺が決めた。
「新しい村作りと、村人集めを行おう」
あと、提出された褒賞メダルは返した。
直訴するための物じゃないからね。
こういったのは直接言ってくれて構わないから。
新しい村作りと村人集めを決めたが、俺は何もしない。
することが無い。
する必要が今のところない。
新しい村を建設する場所の選定は、ハイエルフとクロたちが行っている。
川の傍で良いんじゃないかと思ったが、川に近過ぎると川が氾濫した時に困るし、森に住む魔物を無駄に刺激しないことも大事だと説得された。
お任せします。
村人集めに関しては、フラウ、ラスティ、ハクレンがドライムとビーゼル、マイケルさんを交えて話し合っている。
呼び寄せるにしても、色々と面倒な手続きが必要だったり、元居る場所の者に話を通したりと色々と面倒があるらしい。
すみません、お任せします。
お任せしますが……関われないのは少し寂しい。
仕方なく、俺は前々から考えている褒賞メダル獲得イベントとしての運動会の方を頑張る。
運動会実行委員会のメンバーは、俺と文官娘衆。
ルー、ティア、鬼人族は子育てで忙しいので、アドバイザーに留めている。
その他のメンバーとしてフローラが居るが、彼女は醤油と味噌の味の改善に従事しているので、無理はさせない。
運動会は大事だが、醤油と味噌も大事だ。
運動会の内容を決めるために色々と調査した。
調査したのだが……種族差を再確認してしまった。
平地を走る速度などは、鬼人族が圧倒的で、ドワーフ族は本気で走っているのか疑うレベルで遅い。
障害物競走になった場合、ハイエルフが機敏で、山エルフ、獣人族も負けていない。
ドワーフは障害物を粉砕して進むので遅くはない。
個人差は当然あるが、その前にある種族差が大きすぎて公平な競技ができないと判断した。
当初は種族でチームを分けるつもりだったが、それは駄目だということだろう。
まあ、種族チームだと、競技によってはクロたちやザブトンたちが参加できないし、ラスティやハクレンが強過ぎる面もある。
身体的には、獣人族が他の種族に比べて若過ぎるという点もある。
再検討。
素直に赤組、白組の二つに分けて競わせるのが一番だろうか。
分け方はどうしよう?
各種族を半分ずつにして、各チームに参加させるべきだろうか。
運動会と呼称される競技会は無いが、似た感じのイベントはあるらしい。
俺の考えていた運動会は、前の世界で経験した普通の運動会だ。
徒競走、障害物競走、玉入れ、玉転がし、棒倒し、騎馬戦などの運動会っぽい競技を行い、合間に応援合戦でもすればいいかと軽く考えていた。
似た感じのイベントを知っているという文官娘衆の話を聞いた感じでは……
武術大会、魔術大会、狩猟大会、超長距離駅伝、模擬戦という単語が俺の中で構築された。
武術大会はその名の通り。
「武器を決めた大会と、武器が自由な大会があります。
武器が自由な大会が人気ですね」
魔術大会は、武術大会に魔法がOKになった感じ。
「地味な魔法が意外と効果的だったりして、勉強になります」
狩猟大会は適当な森を舞台に、狩った獲物の種類やサイズを競うらしいが……
「本気で競うワケではなく、どちらかと言えば社交的な面が強いです。
まあ、たまに空気を読まない方も居ますけど」
超長距離駅伝は、街から遠方の街への荷物を運ぶ競技。
輸送方法は自由で、何をどう使おうがOK。
指定の荷物を真っ先に運んだ者が勝利という競技。
「輸送手段の確立のために、結構な頻度で行われています」
「ただ、妨害が一応は禁止となっているのですが、見張れるワケではないので、なんでもありになっています」
模擬戦は、そのまま模擬戦。
「戦争の練習ですね。
結構な怪我人が出ます」
「死者も珍しくありません」
……
話を聞いて、運動会は一時凍結することにし、別案を考えることにした。
文官娘衆からは俺の提案する競技内容に興味を示してくれたが、種族差が出過ぎるのは困る。
個性と言えば個性だろうが、変な優劣ができてギクシャクされても困る。
俺が運動会をしようと思った目的はレクリエーションだ。
つまり……
俺は前の世界の病室で見ていたアイドル番組を思い出す。
いや、思い出すのはその次の番組。
世界各地で色々な発見をする番組だった。
その中の一つのコーナー。
世界のお祭り。
俺がすべきはそのお祭りであって、学校の運動会ではないと気付いた。