収穫の秋と山エルフと焼き物
収穫の秋が来た。
まあ、秋以外にも俺の畑は何回か収穫しているのだが、秋はやっぱり収穫の秋だろう。
黙々と働く。
収穫は、ハイエルフ、リザードマン、獣人族を中心に行う。
この時期は収穫作業中心。
果実系は、ザブトンの子供たちが大活躍。
クロたちは収穫では戦力外だが、ハイエルフたちが収穫作業をするので、狩りを頑張ってもらう。
フラウの部下の娘たちは、少し呼び方が面倒だったので改善を考えたが、魔族と言うと幅が広い感じがしたので本人たちとの相談の結果、文官娘衆と呼称することになった。
文官娘衆にも収穫作業はしてもらうが、メインは収穫量の計測。
収穫作業の少し前から、倉庫にある収穫物の量を数えてもらい、在庫管理をしっかりすることにする。
最終責任者はフラウ。
ティアはそろそろ出産なので、無理せずに休憩。
出産経験者のルーに傍に居てもらう。
グランマリアたちはいつも通り警備。
ドワーフたちは、平常通りに酒を造っているが……
「ここからここまでは酒用の倉庫に」
酒の原料確保のためか、収穫作業に参加してくれている。
ラスティ、ハクレンも収穫作業を手伝ってくれるが、残念ながら器用さが足りない。
手伝いレベルだ。
なので、二人には収穫した物を輸送する作業をしてもらう。
収穫量から運べる物はさっさと運んだ方が良いとの判断だ。
ラスティはドライムの巣とシャシャートの街のマイケルさんの所に。
ラミア族を使った輸送はしているが、輸送量や速度はドラゴン便には敵わない。
ハクレンはドースとライメイレンの所。
こっちは季節の挨拶みたいなものを含めてだ。
「お父様とお母様の居る場所、ここからだと真逆なんだけどー」
「じゃあ、片方だけでいいか?」
「それはそれで怖いわね」
「だろ。
頼んだ」
「頑張る」
ハクレンは先にライメイレンの居る南大陸に向かい、一度村に戻って、今度はドースの居る北大陸を目指す。
飛行速度はラスティよりも圧倒的に速いらしく、なんだかんだで二週間ぐらいで輸送が終わった。
ラスティの方は距離が短いので一週間ほどで終わっている。
二人共、お土産があった。
ラスティの方は、シャシャートの街の海産物。
ラスティが街に到着したぐらいで、クジラに似た巨大な海の魔獣が街に接近。
マイケルさんの依頼でラスティがそれを退治し、報酬代わりに得た海産物らしい。
クジラに似た巨大な海の魔獣は、街の人総出で解体している最中。
肉を確保できたら、ラミア便で送られてくる予定だ。
ハクレンの方のお土産は、少し面倒だった。
「ダークエルフ?」
褐色の肌のエルフが二十名。
完全武装の姿で、揃っていた。
「我々の種族は山エルフと呼ばれています」
「そうか。
すまない。
俺の知っている種族と似ていたから、つい」
「いえ。
ひょっとしたら、私たちの種族の別称かもしれませんし……
なんでしたらそのようにお呼びいただいても構いません」
「ははは。
まあ、その辺りはよく考えてから。
それで君たちは、それで全員かな?」
目の前に居る山エルフの二十名は全員、女性だ。
「はい。
全員です」
そうか。
全員か。
彼女たちは元々はとある山中で暮らしていたのだが、食料事情が悪化したらしい。
他の地に移動を余儀なくされ、移動した先の守護獣に挨拶をしたら、それがライメイレンの部下の部下の部下。
なぜかライメイレンにまで話が通り、この村に行くことになったらしい。
数年ぐらい掛けて移動するつもりだったが、ハクレンがタイミングよく来たので乗せてきたとのことだ。
「ライメイレンからはなんと?」
「新天地なら、お薦めの場所があるからそこで頑張ってみるようにと」
多分、彼女たちに拒否権なんてないんだろうなぁ。
俺の方にも無いけど。
「わかった。
ライメイレンの紹介だから村に受け入れる。
村にはハイエルフが居るが、種族的に大丈夫か?
対立したりしないか?」
「はい。
問題ありません」
良い返事だったが、一応、ハイエルフ代表のリアに意見を聞く。
「リアたちは、彼女たちの受け入れをしても大丈夫か?」
「大丈夫です。
山エルフとは耳の形でよく同一視されますが、能力は別種族ぐらい違いますから、上下関係ではなく住み分けができます」
「それは良かった」
一安心。
「村のやり方と生活に慣れてほしいが、無理をさせる気はない。
駄目な部分は言ってくれ」
「承知しました」
とりあえず、山エルフが寝泊りする場所として宿に案内した。
世話役で悩んだが、ハイエルフから二人出してもらうことにした。
村に定住してくれるなら、春になった時に家を建てよう。
ただ、山エルフという名前だからな。
ひょっとして、この村よりもハウリン村の方が住みやすいのかもしれない。
その辺りも考えながら、話し合っていければと思う。
ティアの出産が始まった。
ルーの時と違って長い。
長いが、俺は何もできない。
ハイエルフ、鬼人族たちが頑張ってくれている。
……
何もしていないと色々と考えてしまうので、外で粘土を捏ねる。
焼き物用だ。
粘土はラミア族のダンジョンの一部から採取できたので、頼んで持ってきてもらった。
俺が粘土を捏ねるのは、前々からドワーフから問題にされていた酒を納める容器を作るためだ。
基本、樽でいいのだが、樽だと木製なので中身が揮発してしまう。
ワインや蒸留酒などはそれで味が熟成されるので構わないのだが、一部の酒は樽での保管に向かない。
米から作った酒は特にだ。
それでガラス瓶に納めるのだが、ガラス瓶は貴重だ。
ハウリン村からそれなりの数を得ているが、最近は全て酒の保管用に持っていかれている。
マイケルさんからガラス瓶を購入しようと考えたこともあったが、値段を聞いて諦めた。
だからガラス瓶に代わる容器として、焼き物を思い出した。
目指すは甕。
粘土を紐状にし、その紐で甕の形を作っていくのだが……
なかなか難しい。
まずは手捏ねで茶碗からスタートかな?
納得いく形ができるまで頑張っていたら、いつの間にか子供が産まれていた。
元気な女の子。
ティアも無事だそうだ。
良かった。
さっそく見に行こうと思ったら、泥だらけの身体を注意され、風呂に送り込まれた。