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フラウレムの笑顔



「お父様?

 急に会いたいとは、何かあったのですか?」


「問題が起きた」


「問題?」


「うむ。

 王姫様が兵を集めている」


「王姫様が兵を?

 どこに攻め入る気なのですか?」


「ここだ」


「ここって……この村ですか?」


「そうだ」


「王姫様って……そこまで馬鹿でしたっけ?」


「お前が居た時はお前が制御役だったからな。

 お前の後釜が、あることないことを吹き込んで王姫様を好きにしている」


「私の後釜?」


「グリッチ伯爵の次女とプギャル伯爵の四女だ」


「判りやすい権力馬鹿コンビじゃないですか!

 どこをどうしたら王姫様の傍に居ることができるんですか!」


「私が西に出向いている間にだ。

 気付けば、こっちが送り込んでいた者の大半が排除され、その二人とお仲間が幅を利かせていた」


「……それで、この村に攻めてくる理由は?」


「王姫様の傍に残っているこちら側の者から、お前の帰還を求める声が上がって、王姫様がそれに同意しているのが気に入らないらしい」


「で、上手く言って私の居るこの村に攻め込むと?

 王姫様は何をお考えなの?」


「この村を潰せば、お前が戻ってくると考えているのだろう。

 二人の方は、お前が代官を務める村を潰した後、不穏な動きがあるとかなんとか広めてお前を排除する予定だ」


「はぁ。

 ……馬鹿ですね」


「ああ。

 この村を潰せる前提なのが、そもそもの間違いだしな」


「正直な話、王都から東に向かって進むのでしたら山越えはどうするのです?

 普通のルートじゃ森まで辿り着けませんよ?

 たとえ、辿り付けたとしてもグランマリアさんたちの警戒網と、クロさんたちの警備を突破してこの村にまで到達できるとは思えませんが?

 転移術でなら可能性はありますが……お父様以上の方を見つけたのですか?」


「そんな話は聞かないが……まあ、そのなんだ。

 王姫様から、移動に協力しろと言われた」


「えーっと……」


「今のところ、魔王様に伝えて押さえてもらっているが、雲行きが怪しい」


「魔王様が王姫様に甘いのは知っていますが、同時にこの村のことも知っているのではないですか?

 この村に攻め込んだら、何があっても止められませんよ」


「この村の脅威を理解していない者が多い。

 知っている魔王様にしても、露骨にこの村が危ないから近付くなと言えないからな」


「確かに、そんなことを言えば統治能力を疑われますからね。

 それで、お父様は私に何をさせたいので?」


「知らぬ者に、この村の脅威を教えてやってほしい」


「具体的には?」


「お前がこの村の戦力を率いて戻り、王姫様の手勢が出発する前に蹴散らしてほしい」


「ラスティさんに王都で暴れろと?」


「さすがにドラゴンは困る。

 天使や吸血鬼もだ。

 蹴散らしてほしいが、殲滅してほしいワケじゃない。

 王都への被害も抑えたい。

 第一、そういった者がお前の指示に従ってくれるのか?」


「そういった者が住む村なんですけどね、ココ。

 あと、ちゃんと対価を払えばやってくれると思いますよ」


「そうなのか」


「ええ。

 ともかく、攻撃力を有しつつ、制御が利くとなるとクロさんやザブトンさんは除外されますし……

 獣人族は若いですから、ハイエルフ、鬼人族、リザードマン、エルダードワーフとなりますけど。

 お父様、質問してよろしいですか?」


「なんだ?」


「この件、村長に伝えてもいいのですよね?」


「極秘にするワケにはいかんだろう。

 事情を説明するつもりだ」


「村長にその事情を説明すると……ハクレンさんの耳にも入ると思いますから、そうなると王都が消えても変じゃないですよ」


「王都が消える?

 ハクレンとは誰だ?」


「門番竜の姉にあたるドラゴンです。

 現在、村に住んでますが……報告書は読んでないのですか?」


「あー……ずっと西に居て、戻ったら王姫様の件だったからな。

 すまん。

 そして、それは困る。

 なんとかできないか?」


「私に言われましても……村長に黙って村から戦力を抽出するワケにはいきませんから」


「むう」


 悩む二人に声を掛ける女性。


「ふふ。

 困ってるみたいね」


「ルーさん」


「話はなんとなく聞かせてもらったわ。

 私に良い案があるのだけど、聞く?」


「お願いします」


「素直ね。

 村以外から戦力を集めるなら、村長に伝える必要はなくなるんじゃないかな」


「村以外と言いますと?」


「ラミアたちよ。

 どんな戦力かは知らないけど、ラミアが十人も居れば蹴散らせるでしょ」


「お父様、どうなんですか?」


「主力はグリッチ伯爵とプギャル伯爵の領地から集められた者たちだ」


「質と数は?」


「領地の守備任務の魔族兵が三百ほど」


「なら三人で十分ね」


「ラミアなら一人でも過剰戦力な気がしますが……」


「安全策よ。

 フラウはそれを率いて里帰りってことで。

 ああ、村長には私から伝えておくわ。

 お土産、よろしく」


「わかりました。

 ラミアとの交渉は……私がやるのですね」


「口止めは忘れないように。

 あと……わかってると思うけど、村に敵対する者に容赦しちゃ駄目よ」


「もちろんです。

 では、さっそく。

 お父様。

 すみませんが南の方にラミアの居るダンジョンがあるので、そこまで送ってもらえますか」


「わかったが……お前、なんだか怖い笑顔をしていないか?」


「そうですか?

 そんなことはないと思いますが……

 ただ、私がこの村で苦労しているのに、王都で馬鹿なことをやっている人たちが……少し羨ましいだけですから」






「その……チグハグな感じの娘たちは?」


 フラウの後ろに十人の、ゴージャスな髪型で綺麗な肌をしているのに、似合わない貫頭衣を着た娘たちが居た。


 種族的にはフラウと同じ魔族らしいが、人間とほぼ変わらない。


「この村に移住希望の娘です。

 死ぬ気で頑張るそうなので、受け入れても構いませんか?」


「構わないが……」


 俺はフラウを傍に呼ぶ。


「なんですか?」


「娘たちの目が死んでるけど、大丈夫か?」


 俺の第一印象は、貫頭衣と合わせて奴隷に落ちた貴族令嬢たちだ。


「大丈夫です。

 全員、私の顔見知りですので、しばらくは私の部下として働いてもらいます。

 ああ、村に対して何かした場合は遠慮なく処分して構いませんから」


「処分って、怖いなぁ。

 まあ、最初は色々と失敗するだろうけど、長い目で見ないと駄目だぞ」


「承知しました」


「それで、そっちの娘は?」


 一人、特別扱いの娘が居た。


 年齢はフラウと同じぐらいか少し下。


 首の辺りまでの長さの真っ白な髪がフワッと広がった令嬢っぽい娘が、高そうな服を着て高そうな椅子に座っていた。


「見学者です。

 こちらは代官である私のお客になりますが……普段の村の様子が見たいそうなので、居ない者として扱ってください」


「居ない者って、さすがにそういうワケにはいかないだろう。

 えーっと……この村の村長ヒラクです。

 ようこそ、大樹の村に」


「ひっ」


 怯えられてしまった。


 なぜだろう。


「ひょっとして、男性嫌い?」


「そんな話は聞いていません。

 ユーリ様。

 ご挨拶を」


「す、すみません。

 ユーリです。

 しばらくお世話になります。

 こちらこそ、よろしくお願いします」


「はい。

 何かありましたら言ってくださいね。

 あと……」


 俺はクロたちやザブトンたちを集めて、彼女たちを紹介する。


 ここでしっかり紹介しておかないと、クロたちは追い掛け回したり、ザブトンたちは糸で縛ったりするからなぁ。


 ……


「あれ?」


 ユーリを含め、新しく来た女性陣が倒れた。


「まあ、仕方が無いかと。

 予想はしていたので先に着替えさせていました。

 ご安心ください」


 フラウの良過ぎる笑顔を見た後、俺は彼女たちを介抱する人を集めに向かった。






「フラウさん、この前は楽しかったですね。

 また、誘ってくださいね」


「今度は北の方にあるダンジョンに攻めに行きませんか?

 巨人が居るらしいですよ」


「こら、ここでその話は無し。

 あと、北の方にダンジョンがあるの?

 場所はわかる?」


 後日、フラウとラミアたちが仲良くしているのを見た。


 良いことだが……


 切っ掛けはなんだろう。




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― 新着の感想 ―
[一言] >大樹の村は行政上魔王国直轄地扱いなのでは? イタリアにおけるサンマリノやバチカンのようなところかと。 死の大地(死の森)をいちおう治めてたのは門番竜のドライムでしたし。
[気になる点] この話は何回読んでもよくわからない。代官がいて、魔王国貴族の領地でないことから、大樹の村は行政上魔王国直轄地扱いなのでは?そこに攻め込むのは魔王国に対する反乱なのでは?
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