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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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流通とフローラ



 ドースのお礼の品は、村人と相談したが全て俺の物らしい。

 その後、分け与える形で村人達の手に渡っていく。

 面倒臭いが、この辺りはそうする必要があるとルーやティア、フラウやラスティにまで言われてしまった。


 紙はありがたかったが、村でも作れるようになりたい。

 来年は、紙にしやすい植物を育てよう。

 珍しい木々や植物、作物も貰った事だし、それらも育てたい。

 ルーやティア、フローラが狂気して喜ぶ木もあったしな。


 そんなドースからのお礼の品だが、村に役立ち難い物も含まれていた。

「これはなんだ?」

「“迷宮の輝石”ね。
 ダンジョンの管理用アイテムよ」

 俺の質問にラスティが答える。

「ダンジョンの管理用?」

「ええ。
 私達ドラゴン族がダンジョンを巣にする時、ダンジョンを改造しないと住めないから」

「そりゃ、あのサイズだとな」

 ……

 ドラゴンの姿で生活しているのか?

 まあ、そうか。

 そうだよな。

 人間の姿ばっかり見ているから、人間の姿で生活しているのかと思った。

 ……

 いやいや、人間の姿で生活しているだろ?

 前にフラウやマイケルさんがドライムの巣に泊まった時、ちゃんとした部屋があったと聞いているぞ。

「変身は大人にならないと駄目だから……」

 ラスティの角や尻尾を見て、察する。

 ラスティとヘルゼ以外は、完全に人間の姿だった。

 なるほど。

 この話は止めよう。

 話題を変えて、ダンジョンって何だ?

「ダンジョンは、自然に発生する魔力溜りね。
 魔力が集まるとそれを目当てに魔物が集まり、集まった魔物が暮らしやすいようにダンジョンを作っていくって聞いているわ」

「なるほど」

「さらに大きなダンジョンになると、集まった魔力が勝手にダンジョンを拡張したりするのよ。
“迷宮の輝石”は、そのダンジョンが勝手に拡張する力を利用する為の石って感じ」

「貴重な石なのか?」

「そうね。
 でも、お爺様ならそれなりに持っているわよ」

「だろうな」

 じゃなかったら、お礼の品に含まれないだろう。

 しかし、ダンジョン管理用のアイテムを貰っても困るな。

 特にダンジョンに用事は無いし。

「これって、誰でも使えるのか?」

「ある程度の魔法が使えるなら大丈夫かな」

 俺は魔法が使えない。

 ますます不要の物となってしまった。

「ダンジョンならラミア達だが、あいつらなら使えるか?」

「ラミアは魔法を得意とするから、大丈夫じゃないかな」

「そうか。
 じゃあ、ラミア達に貸してやるとしよう」


 ラミア族。

 村の南側にあるダンジョンを支配者種族。

 現状、五十匹ほどがダンジョンの奥で暮らし、様々な魔物を支配下に置いているらしい。

 そのダンジョンは広く、なんと一部はドライムの巣のある南の山にまで伸びている。

 クロの子供達が攻略するのに一年以上掛かったのも納得の広さだ。

 現在、そのラミア族と交渉して、ドライムの居る場所までの輸送をして貰おうと計画している。

 前に荷物を渡した時、意外と運べたからそこに目を付けたのだ。

 これまで通りにドライムやラスティ、またハクレンに頼んでも良いのだが……

 どうもドラゴンを荷物運びに使うのはよろしくないらしい。

 ビーゼルやマイケルさんは言わないが、なんだかそれを感じさせてくる。

 それに、ドライムやラスティはともかく、ハクレンがドラゴンの姿になりたがらない。

 俺がやった羽の傷が治っていないのかと心配したが、どうも俺の前では人間の姿でいたいらしい。

 可愛いヤツだ。

 おっと脱線した。

“迷宮の輝石”でダンジョンを整理すれば、ダンジョン内でドライムの巣までの直通ルートが出来るかもしれない。

「あ、“迷宮の輝石”を使っても、すぐにダンジョンが変わったりしないわよ」

「そうなのか?」

「うん。
 ゆっくりした変化だから……大きな変化を求めると百年ぐらい掛かるかも」

 ……

 ドラゴンの気長さだな。

 ラミア族には、普通に森を抜けるルートでドライムの巣までの輸送を頼む事になった。

 請け負ったラミア族は、支配下においている魔物を使って運ばせる。

 その方が自分達で運ぶよりも速いらしい。

 現状、村からドライムの巣まで五日~七日ぐらいで運んでくれる。

 日数がブレるのは、天候の所為だ。

 それでも十分、ありがたい。

 ラミア族への報酬は、村の作物。

 協力してくれた魔物にも渡すように言っておく。

 あと、また畑を拡張した方が良いかもしれない。


 ラミア便が出来た事で、マイケルさんとの取引もしやすくなった。

 ドライムの巣からマイケルさんの居るシャシャートの街までは、ドライム達が飛んで半日も掛からないのだが、徒歩だと二十日ぐらい掛かる。

 時間が掛かる最大の要因は、途中にある鉄の森だ。

 死の森ほどでは無いにしても、危険な魔物が多く、そこを抜けてドライムの巣まで辿りつけるのはトップ冒険者だけらしい。

 そのトップ冒険者が徒歩で二十日。

 普通の商人は、到達すら出来ない。

 そんな場所より危険な死の森って、なんなんだろう。

 評判がおかしい気がする。

 それはともかく、時間の掛かる最大要因の鉄の森を、ドライムの部下が運ぶ事で二十日を五日に短縮できた。

 つまり、ラミア便とドライムの部下便で片道十日~十二日ぐらい。

 ドラゴンに飛んで貰って二日掛かる場所なのだから、驚異的な速さだ。

 それらを使う事で、定期的に村にシャシャートの街の海産物が届けられ、シャシャートの町に村の作物が届けられるようになった。

 生活が少し便利になった。



 フローラが、味噌と醤油を完成させた。

「おおおっ」

 多分、一番喜んだのは俺だろう。

 細かく言えばまだ味はイマイチだが、間違いなく味噌と醤油だ。

 俺の喜びを教えるべく、味噌と醤油味の料理を作り捲くった。

 味噌漬け、味噌焼きの肉。

 醤油をつけた肉。

 醤油味の焼きトウモロコシ。

 味噌汁。

 キュウリに味噌。

 さらに味噌味、醤油味の鍋料理。

 村人の総意で、味噌と醤油の安定生産が決まった。

 来年、大豆畑を広げよう。





 私の名はフローラ。

 フローラ=サクトゥ。

 お姉様には敵わないけど、そこそこ名の売れた吸血鬼。

 そこそこなのは、基本的に引き篭もりだから。

 外には滅多に出ないし、出なくてもなんとかなる。

 もちろん、引き篭もって食っちゃ寝をしているワケじゃない。

 退屈は敵よ。

 だから趣味を持ってるの。

 それが薬学。

 薬の研究は楽しいわ。

 世界の神秘を覗いているって気がするから。

 私の作った薬を求めて、遠方からワザワザやってくる人も居るぐらい。

 流石に死者が生き返るような薬は無いけど、普通の病ぐらいならなんとかできると思うわ。

 そんな私が、最近ハマっているのが味噌作りと醤油作り。

 味噌と醤油は似た行程で作られるから、基本一緒と村長が言ってたわ。

 村長は凄いわ。

 私の知らない知識をたくさん持ってるの。

 菌っていう概念も教えて貰ったの。

 これは薬の研究にも使えるわ。

 味噌や醤油の作り方は……簡単に言えば、味噌や醤油の元となる菌、村長は麹って言ってたのをいかに培養するかって事。

 知らなかったけど、感覚的にはチーズ作りも似ているらしいわ。

 ともかく、私は村長から味噌作りと醤油作りを引き継ぎ、頑張ったわ。

 専用の建物まで作って貰ったしね。

 しかし、残念ながら結果が出ない。

 麹の成長に時間が掛かるから、仕込んで結果を見るの同時進行。

 これまで腐らせた大豆や小麦の量は、考えたくないわ。

 でも、その甲斐があってやっと。

 そう、やっと味噌と醤油が完成したの!

 村長は喜んでくれたわ。

 そして、味噌と醤油を使った料理で村の人達も喜んでくれた。

 美味しかった。

 感動するぐらい美味しかったわ。

 苦労が報われるってこういう事ねって思ったの。

 ちょっと涙が出ちゃった。

 でも、そんな私に村長が言ったわ。

「次は味の向上だな」

 ……

 ちょっと何を言ってるかわからなかったわ。

 え?

 味?

 十分、美味しかったと思うけど?

 私は恐る恐る村長に聞いてみたの。

「今の味噌と醤油は、何点ぐらいかな?」

「フローラは頑張っているぞ」

「うん、頑張ったから何点かな?
 率直に聞かせて貰えると嬉しい」

「え?
 えっと……十点中、五点ぐらいかな?」

「正直に」

「……十点中、二点。
 まだまだ味噌と醤油の入り口かなと」

 ……

 軽く引き受けた仕事が、頂上の見えない登山だった時の気持ちが今の気持ちね。

 いいでしょう。

 村長が私に期待してくれているのだから、それに応えてみせます。

 見てて下さい。

 満足する味噌と醤油を作ってみせますよ!

 そして反省。

 鬼人族メイド達に、少し優しくしよう。

 これまで無茶な事を言ってたらごめんね。


 遠い未来、発酵食品の女王と呼ばれる事になるフローラだった。


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