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エルフに対する認識



 少し時間を巻き戻し。


 リアたちが来た直後に少し驚いた事がある。


「え?

 火を使って、肉とか食べるの?」


「ええ。

 ひょっとして、ここで火を使っては駄目でしたか?」


「いや、そうじゃないけど……

 エルフと言えば、森の中で自然と共に生活をする一族で、火を嫌うと」


「ははは。

 火を使わずに、どうやって生きていくんですか」


「だから、自然と共に……」


「例えば?」


「え?

 えっと……日の出と共に起き、日の入りと共に寝る。

 食べ物は成った木の実。

 森を大事にし、木は傷つけない、鉄製品は身に付けない」


「えーっと……領主様」


「領主様は止めてほしいと何度も言ったと思うが……

 なんだ?」


「自然を舐めないでください。

 そんな生活を森の中でやったら、すぐに死にます。

 一日も持ちませんよ」


「う、うん、そうだね」


 実感の篭るリアの答えに頷いて同意しつつ、俺の中のあったエルフ像は放棄した。




 放棄したつもりだったが……


「採掘に鍛冶仕事?」


「はい。

 それで、採掘に関してはこちらでやりますので、鍛冶場作り……メインは炉を作る方ですね。

 協力をお願いします。

 炉ができれば、鉄で色々な物を用意できますよ」


「それは嬉しいが……鍛冶……」


「何か問題が?」


「いや、その……鍛冶できるんだ?」


「ええ。

 ナイフとかナタとか、特にヤジリは自作しないと手に入らないじゃないですか」


 ……


 ドワーフの出番は無いな。


 うん。


 リアたちの指示に従い、炉作りを始めた。


 勉強になる。


 なんでも、二百年も流浪の旅をしていたので、大抵のことはできるらしい。


 出来なかったのは定住と繁殖。


 定住は安定した食料確保が厳しく、繁殖は定住地がなければ身重になった際に危険だということだ。


 定住地が見つかっても、男性が居ないのだからどうするのだろうと思ったら、どこかから調達するつもりだったらしい。


 詳しくは聞かないでおこう。


 現実、今の俺がその調達された男のポジションらしいし。




 リアたちは収穫に関しても大きな戦力だった。


 特に俺が後回しにしてきた小麦の扱いに長けていた。


「小麦まであるんですか?」


「これですか……なるほど」


 俺は穂が完全に乾いてから収穫したつもりだったが、まだ少し早かったらしい。


 その後、さらに乾した後に脱穀、製粉するらしい。


 聞けば稲と一緒の流れだった。


 リアたちは保管してあった小麦を脱穀し、製粉。


 ついでとばかりに、焚き火でパンを焼いてくれた。


「パン作りには、これが必要なんですよ」


 リーフが、大事そうに持った小さな壷を見せてくれる。


 中は、フルーツを醗酵させたようなものだった。


 前の世界の記憶で……そういやイースト菌が無いと膨らまないとか言ってたな。


 これか。


「定住していないのに、色々と詳しいし、色々と持っているんだな」


「流浪する前はやってましたから」


 なるほど。


「畑作業ができて嬉しいです。

 個人で畑を作っていいですか?」


「構わないけど……育てたい種とか苗があるのか?」


「はい。

 流浪している時に集めた実があるんです」


「そうか。

 なら、他の作物に影響の無い場所で頼む」


「影響が出そうな物は育てませんよ。

 家の裏側で、最初は小さくやっていきます。

 問題があったら、言ってください」


「わかった」


【万能農具】は便利だが、俺の想像だけでは限界があるだろう。


 イザという時のことを考え、自力農業ができるに越したことはない。


 その一歩として頑張ってほしい。




 リアたちが戦力になるのはわかっていたが、水路作りにも協力してくれた。


 ザブトンの子供たちと合わせて、非常に効率が良くなった。


 この調子なら年内は……


 厳しいな。


 なにせ、リアたちの家作りやその他でなんだかんだといい季節になっていた。



 ちなみに、今年もクロたちは出産ラッシュだ。


 誰が誰の子か把握し切れない。


 一応、言えばこれが私の子ですと連れて来てくれる程度に賢いクロたちだが、俺は子犬の見分けがつかない。


 フブキほど目立ってくれれば、ありがたいのだが……基本的に真っ黒。


 個人の特徴が出るのが額の角で、角の形、角の奥の光り方や色で個体識別は可能だが……


 生まれたての子供たちは角が無いから。


 あと、そこで個体識別をすると、生え変わりの季節に困る。


 クロたちは賢いので、名前を間違えるとスネるのである。


 そして、まだ名前を付けてもらえていない者たちは、名前を付けてもらおうと奮起している。


 いや、さすがに限界があるから。


 ともかく、また必要となる食事が増える。


 頑張ろう。



 新畑エリアの南側に、さらに畑エリアを拡張。


 新畑エリアは四面×八面の三十二面になった。


 一面が大体五十メートルなので、新畑エリアの農地は二百メートル×四百メートル。


 面積にして、80000平方メートル。


 確か、1ヘクタールは、10000平方メートルだから……8ヘクタール。


 これが農家として多い面積なのか、小さい面積なのかよくわからない。


 ただ、【万能農具】での育成なので、年間に三回から四回の収穫ができる。


 俺、ルー、ティア、リア、リース、リリ、リーフ、リコット、リゼ、リタ。


 クロたち……百頭以上いる。


 ああ、家族であるクロたちを匹と数えるのもなんなので、時々は頭を使うようにしている。


 しかし、子犬時代を知っているのでなかなか馴染まない。

 つい、匹で呼んでしまう。


 ザブトン。


 その子供、数え切れないほど。


 ……同居人が一気に増えたので、収穫量が足りるのか怪しい。


 また、本当に周囲の森の動物を狩り尽くさないか心配になってくる。


 クロたちがトマト以外にも気に入る作物を見つければ、それを大量に作るのだけどなぁ。



 秋の寒さを感じ始めた頃、実験で植えていた果実系の木に実がなった。


 まだ豊作という量ではないが、それなりの数が収穫できた。


 リンゴ、ナシ、ミカン、オレンジ、カキ、モモ。


 どれが受けるかなと思っていたら、どれも好評だった。


 クロたちなどは、モモを器用に食べて固い種を残していた。


 ミカンは冬で篭っている時に食べたいなと思っていたら、ティアが手を黄色くしながら猛烈に食べていた。


 あの勢いなら冬まで残らないだろう。


 リアたちはリンゴやナシを中心に食べている。


 俺がリンゴを兎の形に切ったり、飾り切りをしたら、食べていいのかどうか判らずに困ってしまっていた。


 ルーはモモが気に入ったのか、クロたちと競うようにして食べている。


 できれば大きいサイズの身体で食べてほしい。


 中学生ぐらいのサイズでそれをされると保護欲が掻き立てられる。


 ちなみに、収穫した果実の一部は、ザブトンとその子供たちに渡している。


 果実系の成果は、ザブトンたちのお陰だ。




 しばらくは実験で植えた木だけだが、再来年には果実エリアの木たちが頑張ってくれる筈。


 好評でなにより。


 ちなみに、俺はカキが好きだ。


 カキはジュクジュクなヤツより、硬いパキッとしたものが好みだ。


 収穫したてのカキは、そんな感じで嬉しかった。






 一文字 50×50メートルぐらいの大きさ。


□□□□□□□□果実果実

□□□□□□□□果実果実

□□□□□□□□果実果実

□□□□□□□□果実果実

□□□□□□□□畑畑畑畑○○○○

━建設中━池池□畑◇◇畑○犬○○

━下水路━池池□畑家◇畑○○○○

□□□□□□□□畑畑畑畑○○○○

□□□□▼▼▼▼△△△△

□□□□▼南西▼△新畑△

□□□□▼▼▼▼△△△△

□□□□▼▼▼▼△△△△

□□□□□□□□△△△△

□□□□□□□□△△△△

□□□□□□□□△△△△

□□□□□□□□△△△△


←五キロぐらい向こうに川。




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― 新着の感想 ―
硬めの柿は良いですよね、柿の木に登って成ってる実をもいでそのまま木の上で食べるのが好きでしたw
[一言] >リンゴ、ナシ、ミカン、オレンジ、カキ、モモ リンゴは、ビーゼルが最初に大樹の村を訪れた際、お土産に渡して好評でした。 ミカンはコタツとセットで、天使族の好物としても、度々登場しています。…
[一言] 鍛治するエルフはむしろトールキンエルフへの回帰だね
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