表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルリセッター ~クリスと迷宮の秘密~  作者: ブロッコリーライオン
3章 飛躍 十歳冒険者見習い編
51/70

51 実感

 どうしよう……このまま追いかけるべきか? それとも自分の為に、まずはこの四階層の【地図作製】と魔物との戦闘に慣れるべきか……。


 お兄達はシュナイデルさん達が(おこな)ったスラム街浄化作戦の後“イルムの宿”から出て行ったことをイルムさんから聞いていた。

 それから見ることもなかったし、噂を聞くこともなかったから、気にすることも忘れていたけど、もしかするとさっきの集団の中にお兄もいたのかな?


 僕はそんなことを考えていたら、冒険者集団の反応を追ってしまっていた。

 すると前方にワームと同じぐらいの大きさをしたブラッディーアントと呼ばれるアリを大きくした魔物がこちらに近寄ってきた。


 どうやらこのブラッディーアントは僕がいることが分かるみたいで、“キシャー”とこちらを威嚇しながら近づいて来た。


 だけど僕はゴロリーさんから、この魔物との戦い方を既に教わっている。

 ブラッディーアントは標的を決めたらまず威嚇の声を上げながら近づき、自分の間合いに入ると飛び掛かってくるのだ。

 聞いていなければ驚くことになっていたかもしれないけど、分かっていればアイネが飛び掛ってくるよりも動きの遅い攻撃を躱すのは容易なことだった。


 攻撃を躱したところで、足の付け根や甲殻の繋ぎ目に向けて剣を振るっていく。

 すると胴の繋ぎ目に剣が入ったところでブラッディーアントは魔石へと変わった。


「この階も囲まれなければ何とかなりそう……だけど、あの集団を追うのはもう難しいかもしれない……」

【索敵】で反応はまだ分かるけど、あの集団は五階層への階段を下りて行っているのか、反応する数が徐々に少なくなっていくのが分かる。


 今の僕が追いかけても、ただ見ていることしか出来ないし、やっぱり四階層をしっかりと回ろう。

 僕は僕の本来の目的の為に行動することにした。


 四階層にも安全エリアがあると分かったけど、昨日エリザさんから“安全エリアは魔物が入ってこないというだけで、冒険者達が入ってくることを忘れてはいけないわよ”と教えてもらったので、休憩は人がいない時だけすることにした。


 それからも僕は歩き続けて、もうすぐで四階層の【地図作製】が完了する間際で、ブラッディーアントがいきなり迷宮から生まれて、五匹の集団となってしまった。

 僕は【索敵】に過信していた部分もあったと反省しながら、戦うことを選択した。


 “敵に囲まれても、一度に飛び掛かってくる訳ではない”そうゴロリーさんからは防御の基本を教わっていた。


 僕はそのゴロリーさんの教え通り、こちらから一番近くのブラッディーアントへ接近した。

 するとブラッディーアントが飛び掛かってきたので、その攻撃をを躱して、すれ違いざまに繋ぎ目を狙って剣を振るった。


 だけどいつも通りに振るったつもりの剣は、少しタイミングが早く繋ぎ目ではないところへ当たってしまった。


 それなのに剣は少しだけ手に感触を残しながらも、ブラッディーアントを切断し魔石へと変えてしまった。

 僕はこの剣の凄さを初めて実感することになった。


 それでもまだ戦闘中だったので、唖然とする間もなく他のブラッディーアントへと斬りかかっていった。

 そして戦闘が終わったところで、グランさんが普通ではない武器をくれたことを改めて実感することになる。


「僕の剣の腕はまだまだなのに、これだと自分の実力だと勘違いしたくなるのも分かる気がするな」

 魔石を全て【回収】したところで、ようやく一息吐いた。


 そして剣を確認して傷一つない剣を見て、ますますグランさんに感謝するのだった。

それから改めて今の戦闘を振り返り、何故最初の攻撃が魔物に狙ったように入らなかったのかを考えることにした。


 反省を終えて探索を再開すると、それから間もなく四階層の【地図作製】が完了し、僕は五階層へ下りる前に、一度大きく深呼吸をした。


 五階層で出て来る魔物は、人と同じような形をした魔物の代表格である子鬼(ゴブリン)だと教わったからだ。

 僕はまだ子鬼を見たことがないけど、人によっては倒すことを躊躇してしまう場合もあるみたいだから、本当に戦えないと思ったら直ぐに逃げよう。

 そう決めてから僕は五階層へ下りた。


 そして再び【索敵】【隠密】【魔力遮断】【気配遮断】を念じると、冒険者の集団はもういなかった。


 お兄は僕より四つ年上だから、もっと先へ進んでいいてもおかしくないか……。

 何故だか分からないけど、僕はホッとして、近くにある魔物らしき反応へと近づいていくことにした。 


 すると直ぐに魔物が視えて来て、その後ろ姿は本当に人型で、僕と同じぐらいの身長だった。

「そう言えば、何で子鬼ごっこって呼ばれているのかな?」


 そんなことを疑問に思いながら、更に近づいていくと、急に子鬼がこちらへと振り返った。


「うわぁ」

 僕は剣と盾を構えて、走って接近すると、一気に子鬼の首へ剣を滑らせるのだった。


「はぁ、はぁ、絶対に倒すのを戸惑う人なんていないよ」

 確かに人の形はしていたけど、あんなに赤い目で不気味に笑う人なんていないよ。

 とても恐ろしい顔をだった。


 ゴロリーさんやグランさんも顔は少し怖いけど、子鬼はとても恐ろしかった。

「たぶん手加減することなんて僕には出来ないだろうな」


 そう呟きながら魔石を拾って、僕は五階層の【地図作製】の為に歩き始めたけど、なんだか少し疲れてしまったので、ホーちゃんへの魔力供給と貰った昼食を少し早めに食べることにした。


【索敵】はずっとしているけど、この階層も人気がないのか、反応は子鬼だけしかなかった。


 直ぐ動けるように壁を背にして、座ったところでホーちゃんを【排出】すると、器用に着地して魔力供給を受け始めた。


 そんなホーちゃんに僕はいつもみたいに話し掛けてみる。

「ねぇ、ホーちゃん。迷宮って何なんだろうね?」

「……」

 するとホーちゃんは首を傾げてから、僕の肩へフワッ飛び移ると、僕の顔へ顔を擦りつけて甘えて来た。


「別に悩んでいる訳じゃないよ。ただ気になっただけだから」

 ホーちゃんはその答えに満足したのか、再び僕の魔力供給を受けるとシークレットスペースへと【収容】されていった。


 いつかホーちゃんとも一緒に迷宮や色々な場所へ行きたいな。

 そう思いながら僕は五階層の【地図作製】をするため、また歩き出した。



 子鬼はグランさんの作ってくれた剣が凄いこともあるけど、ジュリスさんと比べると攻撃も遅いし、囲まれても盾で一度防ぐと隙が出来るから、しっかりと戦える。

 シュナイデルさんとジュリスさんの特訓が、僕の力になってくれていることにようやく実感が持てた瞬間だった。


 皆が教えてくれた技術が、僕の力になってくれているんだなぁ。

 僕は上手く言葉では表現出来ない感情を胸に抱きながら、五階層の【地図作製】を完了させることが出来た。


 レベルも十六となり、スライムと戦っていた時よりもかなり早いレベルアップに、僕は気を引き締め直すことにした。

 レベルアップが早いのはそれだけ相手が強くなっている証拠だって、ゴロリーやエリザさんが言っていたから、ここで自分の実力を過信してはいけないはず。


 子鬼は倒せるし【索敵】があるから不意打ちされることもないけど、僕には仲間が……ホーちゃんしかいないからね。

 【意思疎通】でホーちゃんの声が聞こえた気がして僕はホーちゃんの優しさに触れながら、六階層へと下りることにした。


 六階層に現れたのはフォレストウルフという魔物だった。

 本来は森に生息する魔物らしいのだけど、迷宮にはこういう魔物が現れるのだとか。


 そしてこの六階層が僕一人でこのまま迷宮を進んでもいいか、それとも仲間を増やさなければいけないかを決める階層でもある。


 フォレストウルフの攻撃は飛び掛かってくることと、噛みつきだけらしい。

 それでも今までの魔物よりも動きが早く、強いらしいけど、最も厄介なのは複数で行動している場合なのだと教えてもらった。


 子鬼等とは違って、ちゃんとした連携をしながら襲ってくるらしく、大抵の新人冒険者がここで怪我をしてしまうらしい。

 仲間がいれば対処することは出来ても、一人の場合は囲まれてしまう可能性が高いから、もし僕がここで怪我をしたら、パーティーを組む必要があると言われていた。


【索敵】の反応により、直ぐに魔物が寄ってくるのが分かった。

 獣系の魔物は鼻が利くらしくて、気配や魔力を感じなくても、その嗅覚を活かして敵を発見するらしい。


 僕は【集中】していく。

 フォレストウルフは全部で三体近づいて来ていた。


 そしてフォレストウルフは挨拶代わりに横並びで飛び掛かってきた。


 左右に逃げ場はないので、僕はシークレットスペースから槍を取り出して、直線的に飛び掛かって来たフォレストウルフへ突き刺した。


 そして剣を抜き左の狼を斬ると、後方にいるフォレストウルフが僕の首へ向かって噛みついてくるのが()えた。


 僕は左手の盾で噛みつきを受け流し、そのまま斬ろうとしたけど、それはフォレストウルフに避けられてしまった。


 槍で串刺しにしたフォレストウルフと首を斬ったフォレストウルフは魔石へと変わったけど、僕に油断する余裕なんてなかった。


 フォレストウルフは飛び掛かてくる時は直線的な動きだったけど、いきなり槍が現れたことを警戒してか、むやみやたらに突っ込んでくることはしなかった。


 それでも動き自体は視えるので、噛みつきに盾で弾いたり、受け流したところを少しずつだけど斬っていく。

 すると傷が出来て焦ったのか、最後には直線的な動きで飛び掛かってきたので、盾で弾きながら斬ることが出来た。


「強い、そして連携も凄いけど……ごめんね、それも()えてるんだ」

 倒したフォレストウルフの後方から、新たなフォレストウルフが飛び掛かってきていた。


 僕は反転して盾でしっかり防御した後にフォレストウルフを蹴り飛ばす。


 少しだけ後方へと下がったフォレストウルフは、蹴られたことに怒ったのか、唸りながら大口を開けて飛び掛ってきたので、僕は剣を口へと差し込んだところで、ようやく四匹のフォレストウルフを倒すことが出来た。


 最初は必要ないと思っていた統合スキルの【心眼】だったけど、エクスチェンジで交換していなかったら、もっと苦戦していたと思う。

「それと孤児院の皆が特訓に付き合ってくれてなかったら、使い物にならなかっただろうな……」


 それでももっと感覚を研ぎ澄ませないと、これから先へ行くことは難しくなるかもしれない。

 当分はこの六階層で訓練した方がいいかもしれないと思うのだった。


 こうしてフォレストウルフと戦いながら、六階層の安全エリアを見つけて一度休憩したところで、僕は魔石の数を確認することにした。


 すると昨日と比べると少ないけど、それなりに魔石を集められていたので、今日は帰ることにした。

 そして帰る途中で、あの冒険者の集団もそうだけど、アイネ達が今どこの階層にいるのか聞いていなかったことを思い出して、今度会ったら聞いてみることにした。


 迷宮から出ると昨日よりも少し遅かったのか、既に夕日が沈もうとしていた。

 見張りの騎士さんは松明を取りに行っているのかいなかったので、僕は“エドガー食堂”へ向けて歩き出した。


お読みいただきありがとう御座います。


諸事情により、九月二十日~九月末日までの間、休載させていただきます。

あらかじめご承知いただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i306823
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ