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レベルリセッター ~クリスと迷宮の秘密~ 作者:ブロッコリーライオン

3章 飛躍 十歳冒険者見習い編

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52 集団の正体

 迷宮から“エドガー食堂”へ移動すると、既にお客さんが来店しているみたいだった。
 エドガーさんはお店に入って来た僕を見ると、笑って手招きしてくれた。

 僕はカウンターへと移動し、エドガーさんへ声を掛けた。
「戻りました。もうお客さんがいるんですね」
「ああ、お帰り。昨日が休みだったから、早く来てくれたらしい。探索して腹減っただろ。食べて行くんだろ?」
「はい、お願いします。今日はゴロリーさんやエリザさんは来ていないんですね」
 気配が一切ないから間違いないと思う。

「ああ。父さんはシュナイデルさんと街の見回りに行っているから、そのうち来るだろうし、母さんはレイシアと一緒にミレーヌの面倒を見てくれていると思う」
 あ、今日は見回りの日だったっけ。
 エリザさんはミレーヌちゃんと一緒に過ごしていることも多いから、いつも通りだね。
 ミレーヌちゃんのお昼寝している時は、必ずお店に来ているから、ちょっと遅かったのかも。

「そうなんですね……あ、じゃあ先に裏庭で武器の手入れをしてきます」
「分かった。じゃあ適当に料理は作っておくぞ」
「ありがとう御座います」

 僕は裏庭へ移動して【索敵】を念じてから、切り株に腰かけると剣と鞘、そして槍をシークレットスペースから【排出】して【クリーン】を発動させた。
 こうすることで手入れが研ぎだけで済むことようになるとグランさんが教えてくれたからだ。

【研磨】スキルを念じながら【ウォーター】で、手入れ用として貰った桶に水を張り、刃を濡らして研磨石で研いでいく。
 それが終わったら一度水分を布で綺麗にふき取り、油を差してから、もう一度違う布でしっかりと油をふき取って手入れが終わる。
 手入れに使った布などは【クリーン】を発動して、綺麗な状態へと戻し、シークレットスペースの中へと【収納】して全ての作業が完了した。

 裏庭周辺に人がいないことを確認して、僕はホーちゃんを出して魔力供給を行った後、店内に戻ってエドガーさんの用意してくれた料理を食べ始めた。
 するとそこへ見回りを終えたのか、ゴロリーさんとシュナイデルさんがお店の中へと入ってくるのだった。

 そしていつも通り今日一日の僕の話を聞いてくれていたのだけど、途中から二人の顔色が変わる。
「どうしたんですか?」

「クリス、なるべくその集団には近づくな」
 ゴロリーさんから厳しい口調でそう告げられた。

「どういうことですか?」
「スラム街浄化作戦の後、スラムで暗躍していた者達が綺麗に消えていたんだけど、最近になって冒険者達の中に紛れ込んだ可能性が出てきたのだよ」
 ゴロリーさんの代わりに、シュナイデルさんがそう教えてくれた。
 でもあれからも一年以上も経っているのに、何で今になって気がついたんだろう?


「どうして今になって?」
「夜になると迷宮の前で見張りをしている騎士達は詰所へ移動するだろ?」
「はい」
「どうやらその間に迷宮へ出入りしているらしいとの噂があるんだ」
 まるで少し前までの僕みたいな生活だけど、でもそれなら騒がれないと思う。

 僕はそう思って、二人を見ていると、シュナイデルさんが周りを見てから小さな声で教えてくれる。
「その集団は魔物を倒す者達と、魔石を売って食料などを持ち込む者達とで、二手に分かれている可能性が高いんだよ」
「僕が見て感じた反応は十人ぐらいでした。でもどうしてそんな集団が出来上がるんでしょうか?」
 二階層のワームなら、数人いたら倒せると思う。
 何度も続けていたらレベルも上がるし、数人で戦った方が生活するのは楽だと思うけど……。

「たぶんそれが魔石を売って食料を運ぶ側だろう。その手下になればその日の食事や宿代も賄える仕組みを作っているのかもしれないな」
「でもそれだと、その運ぶ人達の冒険者ランクは上がる気がしますけど?」
 僕だってGランクになってしまっているし、今日の分を合わせたら、Fランクになると思う。

「問題はそこなのさ。もしかするとその集団と手を組んでいる受付がいるのではないか、とね」
「昔クリスも、冒険者と受付に騙されそうになっただろ? その冒険者と受付も含めて調査することになるから、極力そいつらには近づくなよ」
 あの受付の女性とナルサスというCランクの冒険者のことを直ぐに思い出した。
 もうあの二人とは関わりたくなかったので、僕はしっかりと頷く。

「はい。受付はマリアンさんがいる時にしますし、僕の知り合いの冒険者はアイネ達だけだから、それ以外の冒険者達には近づかないようにしますね」
「それでいい。それはそうとあの孤児院に居た子達は冒険者になったのか」
「今日冒険者ギルドで会ってパーティーに誘ってくれましたけど、無理せずに順調そうでしたよ」
「そうか。今度ここへ連れて来るといい」
 ゴロリーさんはさっきまで眉間に皺を寄せていたけど、今ではすっかり笑顔に戻った。

「いいんですか?」
「客なら問題はないさ。もちろん値引きはしてやるぞ」
「父さん、ここはもう俺の店なんだけど?」
 話を進めてしまうゴロリーさんをエドガーさんが止める。

「それで?」
「……クリスや父さんの人を見る目は正しいから、連れてくるといいさ」
 だけど止め切れずに、結局了承してくれた。

「ありがとうゴロリーさん、エドガーさん。きっと四人も嬉しがると思います。今は“イルムの宿”に泊まっていると思うので、今度会ったら連れて来ますね」
「ああ」
 エドガーさんは笑って頷いてくれた。

「それで明日は迷宮の探索はしないんだろ?」
「はい。明日はグランさんのところと、マリエナさんのところへ行く予定です」
 迷宮へはレベルを上げる為に少しだけ入るかもしれないけど、明日は今まで通り……あ、依頼の完了報告も出さないといけないね。

「それなら一度能力鑑定をしておくか。随分と能力鑑定をしていなかったからな」
 確かにエクスチェンジでどのスキルと交換するかの相談はしていたけど、取得したスキルは取りっぱなしになっているスキルもあるし、知っておくのもいいかもしれないな。

「そうですね。でも今回は僕がちゃんと購入しますからね」
「ふむ……それなら今からメルルのところへ寄ってから帰るか」
「えっと、僕一人でも大丈夫ですよ。シュナイデルさんもゴロリーさんと飲みたいでしょうし」
「ぬぅ、そうか? じゃあ気をつけて帰るんだぞ」
 シュナイデルさんとゴロリーさんはいつも飲みながら話しているから、そういうのは大事だと思う。

「はい。じゃあエドガーさんご馳走様でした」
「おう」
 エドガーさんは笑って頷いてくれた。

「シュナイデルさんもまた訓練をつけて下さいね」
「ああ、今度騎士団の合同演習があるから見に来るといい」
 そういえば迷宮の出入り口に居た騎士の人も同じことを言っていたな。

「はい。迷宮の見張りをしていた騎士さんにも誘われたので……あ、そうだ。ジュリスさんが僕の名前を騎士さん達に広めているみたいなんですけど、あれは?」
「ははっ。ジュリスは最後まで、いや今もクリス君が騎士になると信じているみたいだよ……自分の副官に据えたいと言っているぐらいだから」
「僕は冒険者になったのに、まだですか?」
 昨日は冒険者になったことをお祝いしてくれていたのに、何でまだ騎士になると思っているんだろう?

「まぁ今はしっかりと力をつけて、十五歳になったら冒険者を続けるか、騎士になるかを改めて選択するといい」
「シュナイデル、まさかお前もまだ諦めていなかったのか」
「当然ですよ。クリス君のような逸材は、探せば出て来るような存在ではないのですから」
「よし、今日はとことん話して、諦めてもらうぞ」
「私の考えは変わりませんよ」
 シュナイデルさんの言葉に、今の騎士団長はシュナイデルさんだから本当に騎士にされるのではないかと思わずにはいられなかった。
 ……どうやらこれから話は長くなりそうで、二人は楽しそうに食事を始めた。

 僕は苦笑するエドガーさんに見送られて、“魔導具店メルル&万屋カリフ”へ向かった。

 するとお店の外にいるカリフさんを見つけたので、声を掛けることにした。
「こんばんは、カリフさん」
「えっ、あ、クリス君か。いきなり声を掛けられたから驚いたよ。今日はもう迷宮の探検は終わったのかい?」
【隠密】スキルの効果は抜群らしい。

「はい。今日は能力鑑定をする魔導具を買いに来ました」
「あれは高いけど……まぁクリス君なら大丈夫か。いいよ、中へ入って」
「はい」
 お店の中へ入ると左側にメルルさんの作った魔導具が並べてあり、右側にカリフさんが仕入れた武具や小物が置かれていた。


「能力鑑定球は銀板五枚だよ」
「はい」
 僕はシークレットスペースから銀板五枚を【排出】させると、カウンターへ乗せた。

「いつみても便利だよね。もしその能力と同等の鞄なんかがあれば、飛ぶように売れるんだろうね」
「そうですね。本当にそうだと思います。ホーちゃんと一緒にいられるのも、そのおかげですし」
「いつかその能力が詳しく分かったら、メルルに教えてあげてほしい」
「はい」
 僕はこの 能力(シークレットスペース)が人の為に便利に使われるなら、それは凄いことだと思うから能力が分かったら、是非開発してもらいたいと思った。

「じゃあこれが能力鑑定球だよ。使い方は分かるよね?」
「はい」
「あ、そうだ。今朝のことなんだけど、冒険者のお客さんが買い物に来てくれて、迷宮で実力もない冒険者の集団が十階層前後で集まっているって、愚痴っていたよ」
 そうか、僕だけが冒険者じゃないんだよね。
 見習いの冒険者だけが迷宮へ潜る訳ではないのだから、このことは後でゴロリーさんにも話すことにしよう。

「僕も今日その集団を見掛けたので、ゴロリーさん達に報告したんですけど、近づくなって言われました」
「そうだね。それにどこにその集団の仲間がいるかわからないから、話す時はちゃんと相手に気をつけて話すんだよ」
「はい。気をつけます」

 こうして僕はゴロリーさんの家へと向かい、ゴロリーさんが中々帰って来ないので、エリザさんと魔法訓練をして、能力鑑定は明日することになった。

「もっと頑張って、何が起きても対処で出来るぐらい強くなりたいなぁ」
 皆を守れるぐらい強くなりたいと思いながら、僕は眠りに誘われていくのだった。


お読みいただきありがとう御座います。
i261163
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