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いつか見た虹の向こう側  作者: 宙埜ハルカ
第二章:婚約編
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#21:最後の役員活動

お待たせしました。

今月でこのお話を終わらせると宣言しておきながら、

なかなか更新しなくてすいません。

どうぞよろしくお願いします。

 バレンタインデーの翌日の2月15日火曜日、5・6限目に1年生の学習発表会と親子レクリエーションが行われる。5限目は13時40分から始まるので、私達役員は準備のためその30分前に集合となった。

 午前中は仕事に出て、午後は休みを貰っていたので、早い目にお弁当を食べると12時半過ぎには職場を後にした。小学校へ着いて、今日の会場の体育館へと向かうと、もう既に何人かの役員が集まって来ていた。


「美緒ちゃん、お疲れ様」

 千裕さんはいつも、こう言って(ねぎら)ってくれる。そんな千裕さんを見て、いよいよ今日は……と思うと、「こ、こんにちは」と挨拶もかんでしまい、動揺している自分を思い知らされる。

 落ち着いて、落ち着いて……心の中で繰り返しながら、とりあえずは役員の仕事を終わらせてからだと、自分自身に言い聞かせた。


「ねぇ、美緒ちゃん、昨日はチョコレートありがとうね。とっても美味しかった。それはそうと、昨日はどうだったの? 彼の反応は? ちゃんと言えた?」

 千裕さんが声を押さえて矢継ぎ早に質問をぶつけて来た。一瞬何の事を言われているか分からず、ポカンとしてしまったが、どうやら昨日のバレンタインデーの事を聞かれているのだと気付き、又焦ってしまった。


「あ、あのね、その事は今日の行事が済んでから、ゆっくり話すから……それに、千裕さんに聞いて欲しい事もあるから、終わってから時間取れるかな?」

 私は、来るべき決戦の時まで緊張をやり過ごすべく、時間の予約を申し出た。一瞬驚いた顔をした千裕さんが、すぐにニコニコ顔になると、又勢い込んで訊いて来る。


「えっ? なに、なに? 良い話? 悪い話? 時間なんてたっぷりあるから、ねっ」

 千裕さんは嬉しそうに、聞いて来た。その顔は、良い話しか思い描いていない顔だ。

 まあ、良い話になるよね……そう思って、私は「良い話、かな?」と答えた。

 もうそれだけで、千裕さんはMAXの笑顔で「いや、もしかして……美緒ちゃん、おめでとう」なんて言い出すから、困ってしまった。

 

「まあ、まあ、千裕さん、気が早いから……後でゆっくりと聞いてね」


「はい、はい、了解。役員の使命を全うしましょう」


 その後、1年生の各クラスの役員が集まった頃、1年1組の担任がやって来て、今日のスケジュールと準備について説明し、役割分担を決めると、クラスごとに受付の用意をした。


「今日で最後だね。なんだか早かったよね」

 受付の用意が終わった後、他のクラスの役員さん達と話をしている時、一人の役員さんがポツリと言うと、皆がそうだねと頷いた。

 本当に……最初はどうなるかと思ったのに、もう役員の仕事も今日で終わりなのだ。私は感慨深く、今までの役員活動での出来事を思い出していた。それは全て彼の思い出に繋がる。


「……。ねっ、美緒ちゃん」

 この一年を振り返っていて、皆の話を聞いていなかった私は、千裕さんに肩をたたかれて声をかけられたけれど、最後の部分しか耳に入らなかった。


「えっ?」


「だから、守谷先生のクラスの役員は楽しかったよね」

 千裕さんはニッコリと笑った。

 また、そんな自慢気に……。


「ま、まあ、そうなか」


「いや~ん。役員の仕事ってそんなに大変じゃ無かったから、今度守谷先生のクラスになったら、絶対に立候補するぅ」

 私達の方を興味津々の眼差しで見ていた、高校生のような目の化粧がバッチリのお母さんがそんな事を言うから、皆が笑った。

 慧は、春になったら違う学校へ変わってしまうけれど、まだ誰も知らない事。

 自分の微妙な立場を考えると、皆が笑っても私だけは苦笑にしかならなかった。


 五限目の始まる時間が近づくと、次々と保護者がやって来た。受付で名簿の自分の子供の欄に丸を付けてもらい、今日の親子レクリエーションの説明が載ったプリントを渡す。レクリエーションの前に学習発表会があるので、決められた保護者用の観覧場所に、座って待ってもらうよう伝えた。

 今日は後半のレクリエーションのために、椅子は並べていない。片付ける時間の節約のためだ。けれど、2月の半ばのこの時期、体育館の床に直に座るのは冷えるので、皆座布団や膝かけを用意していた。


 由香里さんもやって来て、昨日の御礼をお互いに言い合った。彼女の顔を見るとちょっとホッとする。由香里さんは小声で「今日、言うの?」と訊いて来たので私はコクリと頷いた。「そっか、がんばれ」と応援してくれる。彼女の応援はなぜだかとても心強かった。


 5限目の始まりのチャイムが鳴ると、担任に引率された子供達がやって来た。1組から順番に入って来て、保護者の観覧場所と向かい合わせになる場所に、クラスごとに並んで座った。

 チラリと慧の方に視線をやれば、彼は子供達に笑顔で何か言っている。完全に担任モードの彼は、今日もジャージ姿だ。

 彼が体育館へ入って来た途端、周りにいるお母さん達がざわざわし出した。

「守谷先生はやっぱりカッコイイね」

「まだ25歳らしいよ。若いねぇ」

「子供にも保護者にも人気あるし、モテるんだろうね」

「守谷先生なら、彼女ぐらいいるでしょう」

 そんな声を聞いた千裕さんは、フフッと笑うと小さな声で「守谷先生の彼女の話を聞けた私達は役得だったね」なんて言うから、ドギマギして「そうだね」としか返せなかった。

 ああ、あなたの目の前にいる友が、その彼女です……なんて、私は話せるのだろうか。


 最初の挨拶担当の役員が始まりの挨拶をした後、1組の担任が学習発表会について説明した。子供達はそれぞれ自分の得意な事を保護者の前で披露してくれるらしい。

 保護者と向かい合わせに座っている子供たちとの間のスペースに、数人の女の子がピアニカ(鍵盤ハーモニカ)を持って出てきた。用意されていた机の上にピアニカを置いて準備をすると、代表の女の子が演奏する曲名を言って「聞いてください」とペコリと頭を下げ、演奏を始めた。

 皆一生懸命練習したんだろうなと思うと、グッと込み上げるものがある。演奏が終わると込み上げたものを拍手に変え、気持ちを込めて叩いた。

 次は、男の子と女の子数人がマット運動を見せ、その後もサッカーのリフティングをして見せる子、ソプラノ笛の演奏をする子、本の朗読をする子、歌を歌う子と続き、やっと拓都が出て来た。

 拓都だと思っただけで、こちらがドキドキする。

 拓都は今までで一番多いグループの中にいて、翔也君や陸君もその中にいた。みんな手に縄跳びを持っていて、それを披露するようだ。

 隣で千裕さんと由香里さんがビデオカメラを構えた。私も一応デジカメを持って来たけれど、やはりレンズ越しに見るのがもったいなくて、膝の上に置いたままだ。

 最初は普通にみんな一緒に跳び始め、簡単な跳び方を披露した後、自分が見せたい跳び方を、それぞれの跳び方ごとに、前に出て見せてくれた。拓都は二重跳びの時に前に出てきた。

 固唾を呑んで見守る。縄跳びは学校で練習していたので、二重跳びができるようになったのは見ていなかった。

 拓都の表情を見て緊張しているのがわかる。見ているこちらに伝わる程だ。

 あ、縄を引っかけた。

 見ているだけと言うのは余計にハラハラする。

 思っていた以上にスピード感がある跳び方に、驚いた。

 なんとか跳び終えると、息を詰めて見ていた私はハァーと息を吐き出した。拓都もホッとしたのか嬉しそうな笑みをこぼしている。

 その笑顔を見られただけで、今日は来た甲斐があったと思った。

 

「子供たち、縄跳び上手になったね。あんなに跳べるんだねぇ」

 千裕さんが拍手をしながら感慨深く言う。私も頷きながら「ホント、驚いたよ」と、同じく拍手をしながら答えた。


「守谷先生の指導が良いからじゃないの?」

 由香里さんは意味深に笑いながら言うと、千裕さんがすぐさま反応して「守谷先生って縄跳びの難しい跳び方も簡単にできるんだって」と少し的外れな返事をするから、笑ってしまった。


「守谷先生って見た目もカッコイイのに、スポーツもできるなんて、ずるいよね」

 ずるいって何?

 由香里さんったら、今日千裕さんに話すからって、何も今から意味有り気に担任の話題を出さなくても……。

 せっかく、子供達の一生懸命さに感動して忘れていたのに……。


「ずるくないよ。守谷先生なら、何でも出来そうな感じだし……ああ、彼女が羨ましいねぇ」

 千裕さんがいつもの守谷フリーク発言をすると、由香里さんはクスクスと笑いだした。

 私は心の中で溜息を吐くと、千裕さんに気付かれないように、由香里さんを(にら)んだ。


 子供達の発表が終わり、親子レクリエーションが始まった。

 最初はクラスごとに別れて円になって座り、『ハンカチ落とし』だ。『ハンカチ落とし』なんて小学校の頃にしただろうかと思い返すけれど、記憶になかった。でも、自分の所にハンカチを落とされないかとドキドキする気持ちは、なぜか懐かしかった。

 担任である慧は、皆に声をかけたり、鬼をからかったりと、場の雰囲気を盛り上げている。あまり慧の方を見ないようにと思うのに、どうしてもクラス単位だと視界に入って来て、困る。

 

 そして次は、『ジャンケン列車』だった。

 クラスは関係なく、子供も大人も混ざって、どんどんとジャンケンをして行くと、次々に列車が出来て、だんだんと長くなって行く。拓都も慧もがどこにいるのかも探せないまま、列車に取り込まれて、前の人について行くのが精一杯。それでもこういう雰囲気は子供に戻ったみたいで、何となくワクワクして楽しい。私の前後にいる由香里さんも千裕さんも、子供のように笑っている。

 最後に一本の列車になった所で、1組の担任が列車の一番前にいた男の子の手を持ち上げて「今日のジャンケンチャンピオンです」と言うので、皆で盛大に拍手をした。


 最後の『大玉ころがし』は、親子で組んで大玉を転がすのではなく、大人対子供で対決する事になった。大人はハンディをつけるために二人三脚で大玉を転がすのだが、これがとても難しい。

 1組の担任がマイクを持って実況中継しながら皆を(あお)るので、大人も子供も必死になって大玉を転がした。それでも、日ごろの運動不足のせいか、二人三脚が(たた)ったのか、やはり子供達には勝てなかった。


「こんなに必死になったの、久しぶり」

「あー、なんだか悔しい」

「でも楽しかった」

 周りで座り込んで応援していた保護者達が、嬉しそうな声をあげている。子供たちに負けても、しょせん自分たちの子供だから、負けもまた嬉しい。

 最後に1組の担任が、「皆さんよく頑張りました」と親子レクリエーションの終わりを告げた。そして、千裕さんと私は、最後の挨拶をするためにみんなの前に立った。


「今日はお忙しい中、お集まりくださりありがとうございます。子供達の1年間頑張って来た事を、今日の学習発表会と言う形で、より成長した姿を見て頂く事が出来きました。また、親子レクリエーションでは、日ごろの忙しさを忘れて子供達と共に身体を動かす楽しさや爽快さも感じて頂けた事と思います。今日の事をまた家庭でも話し合い、こんな触れ合いの時間を少しでも増やして頂けたらと願っています。今日はありがとうございました」

 挨拶の言葉を言う千裕さんの横で私は立っているだけだけれど、体育館の中を見渡して、これですべて終わったと、妙な達成感を感じていた。


 

 

期待はずれですいません。

千裕さんへの告白まで、たどり着けませんでした。

本当にすいません。

何とか今月中に終われるよう、頑張りますので

見捨てないでくださいね。

アルファーポリス様の「恋愛小説大賞」にもエントリーしています。

そちらの方も、よろしくお願いします。

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