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第72話 携帯ウォッシュトイレ

1つ前にキャラクター表を追加しました。

よかったらご確認下さい。

 倒すべき敵、大蠍ジャイアント・スコーピオンは、グリーン・ホーデンと呼ばれる森に住み着いている。

 ハイエルフ王国、エノールからグリーン・ホーデンまで片道約7日間かかる。


 早朝、エノールから出発、1日目。


「うぅうぅ~~~」


 リースが馬車に酔いグロッキー状態になっていた。


 普段リースは移動があってもクッションが効いた高級な馬車で、整地された道を移動する。こんな土道を長距離移動するのは初めてのことだろう。口元にハンカチを当て、青い顔で体育座りしている。

 ちなみに馬車が揺れる度に、彼女の豊かな胸が体育座りしている足とぶつかって柔らかそうに押しつぶされ、形を変える。実に素晴らしい光景と言えるだろう。


 慣れているスノー&クリスは、エノールで買ったリバーシで遊んでいる。シアは御者台に、オレは後方を警戒していた。


「リース様、大丈夫ですか?」

「え、ええ平気よ、シア、うぅう~」


 シアが心配して御者台から声をかけてくる。

 リースは気丈に返事をするが、明らかに顔色が悪い。

 オレは彼女を心配して助言をする。


「リース様、馬車酔いが苦しいなら、遠くを見つめると症状が良くなるらしいですよ」

「本当ですか? なら勇者様のお言葉を信じて……」


 民間療法に近いが、やらないよりはマシだろう。

 その後、シアが『馬車酔いで亡くなった方はいませんから』と妙な励まし方をしていた。

 とりあえず1日目は、魔物に襲われることもなく予定していた野営地へと辿り着く。




 日が沈む前に野営の準備を始める。

 リースに必要な物資を出して貰う。

 彼女が手をかざし、必要な物資名を告げるとその物が出てくる。


 スノーは食事の準備。

 クリスは馬の世話。

 シアは周辺を囲む結界の設営。

 必然、オレとリースが薪拾いを担当することになる。


「それじゃ一緒に薪拾いに行きましょうか」

「薪拾いですね。任せてください!」


 オレは念のためAK47を肩にかけ、リースに声をかけた。

 彼女はなぜか妙にやる気を出し、腰に下げていた細剣(レイピア)を抜き放つ。


「あ、あのリース様、いったい何をなさるつもりですか?」

「何って薪拾いではありませんか? あっ、大丈夫ですよ。この細剣(レイピア)はただの金属ではなく、あの稀少金属である神鉄(オリハルコン)で作られていますから、絶対に折れたりしないんですよ。それに魔力を非常に良く通すため、この程度の幹なら楽に貫通してへし折ることが出来るんです」


神鉄(オリハルコン)なんてあるのかよ)


 神鉄(オリハルコン)の存在を知って驚くオレに気付かず、リースは喜々として側に立つ成人男性の胴体ぐらいある幹をへし折ろうとする。

 オレは彼女の世間知らずっぷりに頭を抱えそうになった。

 なんというポンコツぶりだろう。


「いえ、生木は水分を含んで湿気っているため薪には使えないんです。だから折らなくても大丈夫ですよ」

「そ、そうだったんですか。すみません、私ったら無知で……」


 リースは自身の世間知らずっぷりを知り、真っ赤な顔で細剣(レイピア)をしまう。

 無駄な自然破壊をしなくて済んでよかった。


「それじゃその辺に落ちている枯れ枝を集めましょうか」

「は、はい。ご迷惑をかけます」


 リースはやや肩を落としながらオレに倣って、落ちている枯れ枝を広い集める。




 そして夕食。

 日が落ち、焚き火の側にテーブル、椅子を並べ布製の屋根を作る。テーブルにはシチューとパン、簡単なおかず、魔術で光るランプが置かれている。

 これら家具等もすべてリースが持ち運んでくれている物だ。


 前回レベルアップのクエストを受けた時、何日も野営をしたがここまで道具類が揃っていたことは無い。

 まるで前世、テレビでたまに観たキャンプのようだった。


 食後の香茶(かおりちゃ)を飲んでいると、正面に座るリースの異変に気が付く。

 彼女は下腹部を押さえて、モジモジと太股を擦り合わせるように動かしている。


「?」


 オレが首を傾げていると、リースはシアにそっと耳打ちした。

 シアが耳打ちを返すと、


「そ、外でするんですか!?」


 スノー&クリスの注目まで集め、リースが顔をさらに朱色に染めて俯いてしまう。

 皆を代表してオレが尋ねる。


「どうかしましたか?」

「い、いえ、その、えっと……」


 リースが言い淀む――ピンと勘が働いた。


「リース様、ちょっと取り出したい物があるのですが」

「は、はい。一体何を取り出せば宜しいですか?」

「背の高い長方形の箱です。ここからちょっと離れた、この辺に置いてください」

「ここですね、分かりました」


 オレはテーブルから立ち上がり、幌馬車側に預けていた長方形の箱を置くよう頼む。

 リースは言われるがまま、異空間に収納していた箱を置く。


「あ、あのこれは一体……」


 取り出したリースも興味を惹かれたのか尋ねてくる。

 オレは待ってましたとばかりに胸を張り答えた。


「これはですね、携帯用ウォッシュトイレです!」


 前世にある携帯用ウォッシュトイレは、金属製の水筒にノズルが付いているようなバージョンだ。しかし、オレが開発した携帯用ウォッシュトイレは、工事現場やイベントなどに置かれている簡易トイレに近い。


 四方を魔術液体金属の板で囲み、予備のウォッシュトイレを設置している。底には汚物を入れるタンクを収納。溜まったら野外に捨てる仕組みだ。暗くても使用出来るよう、天井には魔術で光るランプも設置されている。

 

 やはりトイレは四方が壁に囲まれて、落ち着ける外界とは切り離されていなければならない。そう、トイレとは現代人に残された最後の癒しと言えるのかもしれない。


 リースが重量を気にせず物資を収納出来ると聞いてから、すぐ制作に取り掛かった。

 もうウォッシュトイレ無しの生活などしたくないからだ。


 オレは胸を張りながら、リースに勧める。


「明かりは入ってすぐ、右の壁にスイッチがあります。中に使い方が書かれた板が張られていますので、それに従い操作してください」

「トイレを操作?」


 リースは意味が分からず首を捻る。

 オレは『入れば分かります』とやや強引に彼女を野外用ウォッシュトイレに押し込んだ。


 暫くして野外用ウォッシュトイレ内から――『ひゃぁ!?』『んんッ――』『ハイエルフ王国、エノール第2王女、リース・エノール・メメアがこの程度で負けるなど……ンンッ』と声が聞こえてきた。


 さらに暫く時間が経って、野外用ウォッシュトイレの扉が開く。

 トイレから出ると、腰が抜けたのかその場に座り込んでしまう。


 敏感な彼女にウォッシュトイレは刺激が強すぎたらしい。


「ひ、姫様!」


 シアが慌てて駆け寄り手を貸した。

 リースは頬を赤く染め、瞳を潤ませ呟く。


「わ、私はウォッシュトイレに勝てませんでした。もう、ウォッシュトイレ無しには生きていけません……」


 よし! また1人ウォッシュトイレ信者ゲットだぜ!




ここまで読んでくださってありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!

明日、1月28日、21時更新予定です。


今日、明日とちょっと忙しいので本日は分量的にちょっと少なめです。

代わりに新たに登場したキャラクター表を追加しました。

よかったら見ていってください。


また誤字脱字報告ありがとうございます。

近日中に修正したいと思います。

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