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076:サラとルーシーの魔法訓練2

ポテサラサンドと卵サンドを並べ、器にスープを注ぎサラダを大量に用意すると食事休憩となった。

サラとルーシーは精霊さま達と一緒に食べるようで、少し離れた場所に食事を用意している。

騎士達は一口で昨日のマヨネーズだと気がついて、宿屋でも常時食べたいとリクエストをしてきた。

食事はかなり好評であっという間になくなってしまい、食べ終わった騎士はすぐに元の作業に戻っていった。


「わしらはゆっくり食べるのじゃ」

緑の精霊さまが野菜を投げると、風の精霊さまが手持ちの刀で斬っていく。

どうして野菜スティックが二回の斬激で12本に分割出来るのか問い詰めたいところである。

メニューは同じだけど野菜はスティック状になっていて、マヨネーズをつけて食べていた。

勿論二度付け禁止である。


他にもワインビネガーにゆずを絞って塩で整えたものやケチャップも出していた。

鍋にオリーブオイルを入れて傾け、火の精霊さまに手伝ってもらい小さめに斬ってもらったジャガイモをフレンチフライ風に揚げて薄く塩を振って振舞う。マヨネーズにもケチャップにも合う一品が出来上がった。

残ったマヨネーズを緑の精霊さまにあげるととても喜んでいた。


「マヨネーズがいつでも食べられるようにかぁ」

「「お兄ちゃん、難しいの?」」

「作るのは大将や女将さんでも出来ると思うけどね・・・あ、そうだ。二人はこれを動かせる?」

魔道具のハンドミキサーをルーシーに渡すと問題なく動かせていた、サラも同様に動かせたのでこれで第一関門は突破だった。

「後は酢か・・・、卵と塩はあるし油はなんとかなるだろう。オリーブオイルも少しは置いていけるしね」

「またあれを作るのじゃ?わいんはそのままが美味しいのにのぉ」

「もー、おじいちゃん。これは美味しかったでしょー」緑の精霊さまがボウルに入ったマヨネーズを掲げている。

「お酒はお酒で美味しいのじゃ」

「そうね、そういえば何時になったら出てくるのかしら?」


前に約束したワインを樽で送るという話をすっかり忘れていた。

王都に戻ったら手配しますのでと謝ると、みんなは納得してくれたようだ。

酢を作れるような魔道具を考えようと、一度雑貨屋へサラとルーシーを連れて行くことにした。


「「「こんにちはー」」」

大きく挨拶をすると奥からおばちゃんがやってくる、並べてある商品を見ながら何だか駄菓子屋の商売スタイルだなと考える。

サラとルーシーはあれこれ見ながら内緒話をしていた。一人銀貨一枚まで買って良いよと言うと、とても熱心に品定めをしていた。

並べてある中で目に付いたのが生活雑貨だ、中でも目に留まったのはエールを飲む用の地球で言う大ジョッキタイプだった。

これならワインを変質させる魔法と相性がいいかもしれないなと思い4つくらい確保する。

小さなチェストタイプの箱を数個選ぶと、小桶と外用のイスを風呂場で使う用に一個ずつ購入した。

二人も欲しいものが決まったようだった。


風呂場に戻るとかなり形になっていた。

お湯が出る場所にはいったん木の枠がすぐ下にあり、湯が貯められるようになっていてそこから竹を伝って湯船に流れるようになっていた。それを支えるように高さを変えて柱などを作っている。

今日の夕方にはほぼ使えるようになって、明日領主代行と村長に確認してもらうとゲイツさんが言っていた。

まだ時間があるので引き続きマヨネーズ対策をしたいと思う。


まずは木のジョッキを2個程出すと、手持ちの黄色い宝石で魔力を流しながら埋め込む。

「「お兄ちゃんすごーい」」そう言うサラとルーシーに、少し得意げになりながら「でしょー」と胸を張る。

覗き込む二人の後ろには、5人の精霊さまがその肩の辺りから更に覗き込んでいた。

集中しながら宝石に【熟成/発酵】の効果を付与すると実験することにした。


白ワインを取り出し二つのジョッキに注ぐ、おじいちゃんが「遠慮なく頂くのじゃ」と言うのを慌てて止める。

サラとルーシーにこの魔道具を発動出来るか聞いてみると問題なく発動できていた。

「この後の作業は宿屋でやる事にするよ」と言うと、精霊さま達が一斉にブーイングをしてくる。

この場を収めるべく何かを考える、【熟成/発酵】と言えば後は酒とか味噌・醤油等だけどそもそも麹がなかった。

「パンならイースト菌か・・・」

「イースト菌とはなんじゃ?」

「えーっと、こうパンがふっかふかになる物で美味しく食べやすくなるものです」

「何でも焼けば食えるようになるぞ、我の炎が灰燼と化す」

「「「「「やっちゃダメー」」」」」


この村の特産候補としてラース芋を使えればなと取り出してみる。

そしてさっき購入したチェストタイプの箱を二つ取り出すと、とりあえず黄色い宝石を埋め込んでみた。

「ねえ、僕達も出来る?」

「私出来ると思うんだ、何かやりたーい」サラとルーシーが名乗りを上げた。

多少ずれたとしてもやらないよりかはやった方が良いに決まっている。

ものは試しとサラには【おはよう】の魔法を、ルーシーには【粉々になっちゃえ】の魔法をお願いした。


まずは三人で箱に手を置く、最初に自分が宝石に干渉して魔力を留めるように意識を繋ぐとサラが魔法を唱えた。

かなり尖った魔力が流れてきて、続いてルーシーが魔法を唱えた。

2つの魔力を留めつつ最後に【熟成/発酵】の効果を付与すると、3つの魔力が混ざり合い落ち着くまで集中を続けた。いつもにはない箱が軽く左右にカタカタと飛び跳ねる動きがあったけど、宝石の部分の輝きが落ち着くと箱の上部から軽くボフッっという音が聞こえて止まった。


「これは成功なのかな?」

「初めて見る魔法だからわからないのじゃ」

「何が出来るか分からないけど、試してみたらいいんじゃない?」

緑の精霊さまのアドバイス通り試してみる事にする。


箱にラース芋一本を入れて蓋をする、そして魔力を流し込むとカタカタ・カタカタ・ボフッ・・・結構激しい動きがした。

自動で蓋が開くと中には芋が粉末状になっていた。

緑の精霊さまが頂戴頂戴というので取ってもらい、1摘み手に取ると指で粉の状態を確認し嘗めてみる。

「微妙な甘さはあるけど酵母とかイーストとか食べた事ないからわからないな」

「うーん、この粉から元気だぁって力強さを感じるよ」

「じゃあ完成でいいのかな?サラとルーシーもう一回だけさっきの魔法いい?」

「「うん」」


予備でもう一個作ると酢と粉は仕舞う事にした。

皆の作業も一段落し、精霊さま達には「美味しいものが出来たら振舞います」と告げるとその場は解散になった。

一旦食堂に戻り大将と女将さんとマヨネーズの作り方を教えると、サラとルーシーがたまに手伝いに来る事になった。

魔道具を使わないでも作れると実践してみたけど、隣でルーシーがハンドミキサーをグルグル回してあっという間に作ったのを見たので完成まで半分にも満たない時間で大将が決めたのだった。ハンドミキサーと酢を作る魔道具は食堂のキッチンに保管してもらう。


作業が終わると食事を取り、明日パン窯担当にお願いしたい事があると女将さんに伝言をしてもらった。

もう遅いのでサラとルーシーは泊まっていくらしく、アランは孤児院に戻るようなのでマザーとシスターに伝えてもらった。

部屋に戻るとグリモアで【野菜百選】を開き小麦のページを見てみる。

パンの作り方も書いてあった、ドライイーストの量とか○次発酵とか色々書いてあったので書きとめておいた。


翌朝はかなり早い時間から起こされる、昨日は宴会に参加しなかったのでそこだけは楽だった。

「久しぶりリュージ君、収穫祭近くの料理は凄かったね。ところで今日はどんなものを作りたいんだい?」

「はい、今日は本職の方にこれを見て頂きたくて」昨日の粉を出してみると一嘗めして考え込んでいる。

「若干甘いけど、リュージ君が出すくらいだから単に甘い穀物を混ぜただけのものは望んでないよね」

「わかりますか?」

「正直何をどうすれば良いかは試してみないとね。ただこの粉を混ぜて甘い味にするには相当量必要だから現実的ではないかな」

「はい、そこでお願いなんです。今日の仕込みとは別に一回で作れる最小単位のパン作りを手伝って欲しいんです」

「ああ、材料はあるからそれならお安い御用だよ。勿論手伝ってくれるんだろ?」

「はい、色々と教えてください」


木のボウルに振るった小麦粉を入れる、こちら分も同時進行で進め指示通りの量を準備する。

そこに少量だけ今の粉を入れたいと話すと了承された、そこから捏ねて一塊にする作業までは同じ工程で行う。

ここから窯近くの暖かめの場所でしばらく放置し、発酵が行われるか確認することにした。

パンの作成は9割以上本職に任せている、失敗しないコツは素人が極力手を出さない事だと思う。


「なあ、その次の作業はしないのか?」

「すいません、この待つのも必要な作業なのです」

「そうか?随分時間が経ったと思うけどそろそろ良いんじゃないか?」

二人で覆ってある布巾をどけると生地が1.5倍に膨らんでいた。

「「おおぉぉぉぉ」」

「膨らんでるぞ、これはどうなってるんだ」

「これが発酵ですね」

生地を指で確認し無事発酵が進んでいることがわかった、そこからガス抜きやベンチタイムを経て二次発酵を行い焼成に入る。


騎士達が起きてきて、少し遅れてサラとルーシーがやってくる。

騎士達は少しお酒が残っているのかスープだけで良いと言い、二人はお行儀良く座っていた。

焼きたてのパンは美味しいのが当たり前、いつものパンを篭に乗せ騎士達の前と二人の前に置く。

そして少し遅れて違う篭にふっかふかのパンを乗せて自分が運ぶと、一斉に皆がこちらを見つめてきたのだった。




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