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065:収穫の時

12月第3週水曜日、いつもの日課が終わると学園に向かう、もう講義ではなくパーティーの為と言ってもいい。

正門近くに行くと押し問答をしているようだった、至るところで様子を伺っていて生徒は入るに入れないでいた。

「我輩は公正取引を担当する男爵のカッファルである。直ちに学園で秘密裏に栽培している作物を提示し、証拠品として差し出すのだ」後ろの2名が剣に手を置いていた。


「あー、来て早々だけど帰りたくなってきた」

「リュージ、あれ知ってるのか?」

「うーん、何と言うか迷惑な人だった」

「門番さんが困ってるけど・・・私達も入れなくて困ったわね」


そしてこちらを見つけたらしく、カッファルが近づいてきた。

「見つけたぞ、リュージ。冒険者風情がうまく学園に潜り込んだようだが、私は誤魔化されんぞ。お前がどこからか密売している種か何かを不正に持ち込んだのだろう!そしてここで秘密裏に栽培していることは既に明白だ。さあ、白状しろ」レンとザクスに合図して、学園の誰かを呼んできてもらう事にした。


「密売とか身に覚えがありません」

「シラを切るのか。面白い、では私自ら証拠をつきつけてやる。光栄に思え、ついてこい」

並んで学園に入るが自分は問題なく入れるがカッファルは勿論入れない。

「何をする、私は貴族だぞ。お前らは王国から認められているこの私に歯向かう気か?」また押し問答が始まったようだ。


面白そうなので少し見てると、サリアル教授とマイクロがやって来る。

事情を聞かれたので、正直に話すと二人ともため息をついていた。

「あの、カッファルさん」

「なんだ、ここの教師か」

「ええ、魔法科の教授をしておりますサリアルです」

「ふむ、私は公正取引を担当する男爵のカッファルである。この度ここに不正に入手した種を使った新種の・・・」

「なあ、お前はバカか?」マイクロが真剣に問いかける。


「な・・・それは私に対する侮辱か?それとも当家を相手取って喧嘩を売るつもりなのか?」

「なあ、知っているか?学園は治外法権だ『ち・が・い・ほ・う・け・ん』少ない脳みそで理解出来るか?」

「そ、それくらい知っておる。だが、それは自由に何でもやって良いという免罪符ではない」

「当たり前だ、だがお前はそれを脅かしにきているんだ。分かっているか?」

寮の料理長が堂々と正面入り口を「門番さん、おつかれー」っと素通りしていく。


「あ、あいつは何だ」

「いや、彼は関係者だ。それよりあんたはどういうつもりだ?どこの男爵さまか言ってみろよ」

「我輩は公正取引を・・・」

「お前、どこの誰だよ・・・ん?何か見たことあるぞ。騎士団の見習いでついてこれなかった奴じゃなかったか。男爵家の当主様がそんな場所にいるはずないよな」

「我輩は嫡子だ、父上の男爵位は当然私が継ぐことが決まっておる」


再度ため息をつくサリアルとマイクロ、これは大きな問題である。

「なあ、見なかった事にしてやるよ。俺の名前はマイクロだ、この意味わかるよな。さっさと帰ってお父様に謝ってきな」

「我輩をバカにするのか?」剣の柄に手をやると、後ろの二人は少し空気を呼んでオロオロしていた。

「今なら見なかった事にしてやるって言ってるのになぁ。なあ、学園に入ってやられるのと学園の外でやられるのどちらが希望だ?」後ろの二人が止めに入るのを振り切り、カッファルは学園に一歩踏み込んで片手剣を振りかぶる。

そして顔面にワンパンチくらって吹っ飛んだ。

「おーい、どっちでもいいから処理しといてもらえるかー?」マイクロが声を掛けると、騎士が数名やってきて「ご迷惑を掛けました」と言い、引きずりながら去って行った。


三人で温室に行くと水遣りをする、成長促進の魔法はまだ使っていなかったのに驚くほど順調に成長していた。

もう講義を受ける人が少ないので、二人は「教授達と順調に成長出来るように色々やっておくよ」と言ってくれた。

きっと成長記録もつけると思うけど、色々やる事もあったのでお願いする事にした。


学食に到着すると結構な人数が集まっていた。

「いよーリュージ、さっきぶりだな。まもなくベシャメルいけるぞ」料理長がこちらに呼びかけるとお姉さんも準備OKだった。

「リュージ君、遅くなったね。今日から休みをもらってこちらに詰めるようにって言われたんだ」コロニッドも来ていた。

昨日の寸胴を出して三人の料理人と味見をしていく。


「以上でやりたい事、メニューは全部です。いけそうですか?」三人を中心に料理は仕上げる予定だ、人数と材料を確認して分量の調整をする。途中からサリアルとレイクもやってきて、準備も問題ないようだった。


木曜は学食に2点の魔道具の納品があった。

下準備と仕上げが順調に完成していく、そして魔道具の試験運転で作業効率は更に上がった。

午後にはサリアル教授とダイアナの所に行き、ガレリアと合流して温室の確認に行った。


「リュージ君、どうだい?この魔法は感じられているかな?」

「はい、問題ありません。もうすぐ時間ですよね」

しばらく世間話をしていると何も変化が起きなかった、もちろん魔力が減った気もしない。


「これは無事成功ってことでいいかな?」ガレリアが手配した2人の衛兵に話を聞くと、何人かの一般人と数団体の貴族が見に来たようだった。

「ごくろうさま、それで魔力の供給はさせたのかな?」衛兵に尋ねるガレリア。

「いいえ、一切近寄らせませんでした」この場所の開放はダイアナが担当している、住む所を追われた人ややむにやまれぬ事情がある人への施設だった。

「私達が責任もって対応するよ」ダイアナとガレリアに任せれば大丈夫だと思う、パーティーの出席も再度確認した。


金曜日は午前で全ての講義が終わる。休み期間中もグループ活動をする所はあったが、この三日間は完全に休止する事は既に通達されてた。

関係者以外の生徒が全て帰ると一台の馬車がやってくる。

学園長とサリアル教授が出迎えると、王家より王女姉妹とラザーが時同じくしてコロニッドとレイクがやって来る。

特待生5名と学園長をはじめ、教授達は学園の温室前に到着した。


「まだ実がなっていませんね」

「リュージー、仕上げの時間だぞー」

「はーい、ちょっと待ってて」全員が温室の中に入り、作物の青々とした色と成長に驚いていた。

膝をつき地面に魔力を薄く流しつつ、成長促進を広範囲にかけていく。


「収穫のカゴはいっぱい用意してるよ、取りにきてくれー」ローレル教授と基礎薬科顧問がみんなに呼びかける。

「普通は摘果とかいるんだけどな」ザクスが呟くと、レンが頷きながら成長するトマトを眺めていた。

「明日・明後日で食べるものの収穫を先にお願いします。コロニッドさん、大体の分量わかりますよねー?」

みんな既に収穫に夢中だった、すぐに食べるので追熟させる必要もない。


「ねえ、これ食べてもいいんですの?」

「食べきれない程あると思うのでご自由にー」大きな声で答える。

「お嬢様、いけません。毒はないにせよはしたない」ラザーが妹王女を嗜めると姉王女がかぶりつく。

「お姉さま、やっぱりずるいです」

「ごめんね、でもローラはこれから楽しい生活が待っているのですよ」マイクロとヴァイスはさりげなく周囲を警戒していた。


まだこれから成長するトマトも多くあったけど、皆は土日の分と個人で持ち帰る分を大量に収穫していた。

レイクは残りのトマトを畑ごと買い取ると言っていたが、そもそも畑は学園のものだ。

今回は全てが終わったら関係者にもお裾分けをしようという話になり売却はしない事にした。


品種改良グループと基礎薬科グループのみんなも興味があったはずだし、そちらの方でもパーティーをしないといけなくなると思う。今日の騒ぎで温室の様子を見に来ていた人も結構いたようだ。


「サリアルー・リュージー、残りの魔道具出来たぜー」エントが遅れてやってきた。

いよいよパーティーは明日に迫っている、自分が出来る準備は問題なしだ。

自分個人分のトマトは無事収穫出来たし、きちんと収納に締まってある。

まずは明日の準備として、この後仕事がある人を残してそれぞれ帰っていった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


土曜日:学園パーティー出席者名簿

王様・王子様・妹王女・ラザー

学園長・サリアル・マイクロ・ローレル・基礎薬科講師・隊長・協会講師・ダイアナ他(協会関係者)・他講師

ダイアン(サティス家)・特待生5名


日曜日:寮パーティー出席者名簿

王妃様・姉王女・妹王女・ラザー

サリアル・ガレリア・エント・マイクロ

レンの兄・セレアとソラ(サティス家)・ヴァイスの先輩2名

寮母・執事・侍女二名・特待生5名


裏方他:状況により出欠あり

レイク・コロニッド他王国料理場より数名・寮の料理長・学食のお姉さん他・騎士多数(影ながら警戒)


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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