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044:兆し

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33,333PVを超えました。

大台とても嬉しいです。

「もし世の不幸を背負うのが主人公なら、おめでとう君こそ主役だ」基礎薬科グループの顧問にまで言われると断るに断れない状況になっているザクス。

「芋蔓式に参加できないメンバーが増えると困るんだよ、今回は借りでいいからさ」ヴァイスが説得しているが既に逃げ切れる状況でもなかった。

「行ってきなさい!その間に寮でお風呂パーティーするから。誰かさんがいると危険だしね」レンが蒸し返してきたのでザクスは諦めたようだった。


 ポーション類は既に基礎薬科グループ宛に発注してあり、月曜日に引き渡すことになっていた。

また、ザクスは寒冷地で育ったので防寒装備は準備する必要がないようだった。

顧問は顧問で話に花が咲き、基礎魔法グループは先ほどの魔法の検証を行っている。

特にフレアが戦闘への応用が利きそうな魔法だと、魔力糸と火属性魔法について熱く語っていた。


 マイクロから「今回の日曜の特訓は休みな、しっかり準備しとけよ」とアドバイスされる。

やるべき報告も全部終わったので各所に挨拶してから早めに帰ることにした。

クロウベーカリーに寄ると時間を合わせて焼きたてのパンを準備してくれたようだった。

前払いしてあったパンを大きめの籠に入れると収納に仕舞って、最近のお店の話を聞いてみると前よりお客さんが戻ってきてくれたようだった。また何かあったらお店を遠慮なく使っていいからと、やる気を漲らせながら語っていた。


 みんなより早めに寮に戻る。

料理長に挨拶すると大人数用の鍋を収納から出して「これいっぱいにスープを作りたいです」と伝える。

「まだちょっと夕飯を作るのに時間があるから先に作業できるぞ」と言ってくれた料理長に自分も手伝いますと話すと台所に大量の野菜を取り出した。

玉葱・人参・ジャガイモ・大根・キャベツ・塩漬けの肉、そしてこの間大量に作ったトマトだ。

ほぼ全部をみじん切りにしてトマトも湯剥きしてから賽の目切りにする。

塩漬けの肉はベーコンみたいに薄く削いで野菜と一緒に炒める。

最後にトマトを投入すると塩梅は料理長に調整してもらい、簡易ミネストローネが完成となった。


「もうちょっと水分を飛ばして煮込むと美味いかもしれないな」の一言にしっかり蓋をして隅っこのほうに保管した。ミネストローネを作り終える頃には夕食の準備に入ったので香りが残ることはなかった。

風呂の準備をしてくるとみんな戻ってきた、早速ザクスとレンを調理場に呼ぶと料理長と一緒にナッツ類と蜂蜜を取り出す。この後アクセントになるものを準備することを料理長に話すと、明日の朝食後にクッキーを作ることになった。


 みんなが談話室で来週の予定を話しいている頃、自室で植物の種一式を出してみる。

頭に浮かべていたのは生姜だったが、種生姜を見つけることができた。

「これやっぱり誰かがこっそり補充しているな」欲しいと思った植物が入っているのはおかしいし、魔法を使って召喚している訳でもない・・・はず。欲しいものが欲しい時にあるのは嬉しいけどね。

早速生姜を魔力鉢で増やしていくとある事を思い出した。


「レンのお兄さんって普段薬とか飲んでいるのかな?」前に聞いた話だと寒さに弱くて、気管支か肺・心臓あたりが調子悪そうな感じだった。昔テレビで見たら『生姜は体を温める』とか言っていたし、生姜湯とかゆっくりお風呂に入る習慣を続ければ基礎代謝とか上がるんじゃないかなと思う。血流を良くして冷え性っぽいものを解消できれば病気に罹りにくくなるって言っていたし、通常の季節はそれほどでもないらしいのでやってみる価値はありそうだと思う。


 食事の時にスープがいつも出てくるので仕上げに入る前に料理長に相談してみる。

塩味ベースの野菜たっぷりスープだったので仕上げに千切りにした生姜を入れてもらった。

すりおろしても細斬りでもみじん切りでもそれぞれ良いアクセントになるし、実際スープに入れたものを味見させてもらったら爽やかさが増していた。

「これを明日のクッキーにも使いましょう」と言うと「面白いものができそうだな」料理長は感心していた。


「ただですね、これすりおろすと良い感じなんですがそういう器具ありますか?」質問すると「どんなもんがあればいいんだ?」と質問で返される。

プラスチックのおろし器はギザギザの丸が何個かあるのが一般的だし、おろし金のほうは銅製のものが一般的かな?目立てがしてあって水分がきれるものがあると良いと説明すると、相談して何個か用意してくれるようだった。


「日々の糧に感謝します。それでは戴きましょう」寮母の言葉で夕食が始まる。

冬場は野菜不足に陥ったり根菜類がメインになったりするなか今回の生姜はかなり好評だった。

特に体を温める効果があることを話すと女性陣が冷えに困っていることを悩んでいたようだった。

調子に乗って血流とかの話をすると「??」な反応が起きたけど、寒さから来る病気対策に良いと話すとレンから生姜についての質問がいっぱいきた。明日の菓子作りの時説明するということで一旦話を止め食事を再開する。


「リュージって引き出しいくつもってるんだ?」ヴァイスが聞いてくる。

「そういえばサリアル教授と戦ったんだって?私も呼んでよぉ」ティーナが見逃したぁと残念がっていた。

今日も談話室では話に花が咲いていた。

「明日は朝練はなしでお願い、朝食後にクッキーを何種類か作って午後にもっていくからね」と確認し、お風呂に入ってから行こうと話し合った。


 翌朝は朝食が終わるとクッキー作りに入る。

グリモアから【菓子百貨】を開くとクッキーの頁を開く、今回はジンジャークッキー・プレーンクッキー・ナッツ入りだった。料理長は材料を準備してくれて追加の素材はこちらで出す、二回目で慣れたのかレンとお手伝いの侍女二人はテキパキとクッキー生地を準備していく。

ザクスにはナッツを半分渡し布で包んでから麺棒でがんがん叩いて細かくしてもらう。

今回料理長には蜂蜜と生姜を使ってもらってジンジャークッキーを担当してもらった。


 こっそり残った材料を使いパイ生地を練りこむ、その間にミネストローネを温めるとチラチラとこちらに視線を向けてくるクッキー班。甘い香りにかき消されているので大丈夫だと思うけど、十分温まったのを確認したらパイ生地を鍋の蓋周りに張りつけ封をしていく。

「それ何作ってるんだ?」とザクスが聞いてきたけど「スープだよ、一応非常食ね」蓋をしちゃったから見せられないと話すと残念そうだった。パイ生地には鍋を通して加熱の簡易エンチャントで火を通しておいた。


 生地が完成すると焼成は料理長と侍女の二人にお願いをした。

料理長も侍女も大量に作っていてお土産用・寮で食べる用・それぞれの個人用として確保している。

ザクスとレンにそろそろ準備をしようかと時間を告げると風呂に入ることにした。


 サティス家の前に到着すると既にローレル教授と基本薬科グループ顧問が待っていた。

5名で門番に来訪を伝えるとすぐに侍女がやってきて「お待ちしておりました」と中に通された。

玄関でダイアンと奥さんセレアとソラが「お待ちしておりました」と深々と頭を下げていた。

「先日は娘を救って頂き、皆様には感謝してもしきれません」奥さんが丁度自領の冬越しの内容を確認に行っていた時に起きた事件だった。


 客間に通されたところでレンが代表してお菓子を渡す。

「それにしても、皆さんから良い香りが。これは先日のラベンダーの香りだね」ダイアンが興味津々に聞いてくる。

ザクスが小瓶を何個か出すと「液状石鹸にこの香水を一滴垂らしたものを試しに使ってみました」と液体の量と香水の割合を説明する。そしてエッセンスのほうは固形の石鹸で使えるかもしれませんねと提案していた。

「固形石鹸は一度工場を見てもらう必要があるな、後で例の学生さんと一緒にこられるかな?」と顧問に確認すると日程をつめるようだ。


「十分確認させてもらった、不躾だけどこの場で報酬について説明させてもらおう」

ダイアンの提案はこのような内容だった。

①新種の植物について:金貨50枚

②香りの抽出技術について:望む機材1式+基礎薬科グループへの資金援助+技術者としての雇用

③娘を説得してもらったお礼:寮への資金援助他+石鹸の贈り物

ラベンダーは買い取り価格で出来れば増やすことを了承して欲しい、そして出来れば育て方の技術指導もお願いしたいと依頼をされた。


「今の状況は理解しています、私の報酬は落ち着いてからで結構です。出来れば貴族や豪商だけではなく多くの人に広めて頂けるようお願いしたいです」とお願いしてみると少し考え込んでいた。

「ダイアン殿、うちも支援しますよ。すぐ回収できることでしょう」ローレル教授が力強く頷く。

「金貨は魅力的ですけど現物支給でもいいですよ、春になったらやりたい事もありますし。具体的には畑と自分がいない時に管理してくれる人がいたら嬉しいですね」

「では、その件は一旦持ち帰らせて貰おう。この事業が成功すれば大きな配当として応える事を約束する」


 ノックが聞こえお茶の差し替えと共に「戴き物ですが」とクッキーが届く。

「特待生が揃う時は大きく世の中が動くと聞くが、まさか自分が恩恵を受けるとは思わなんだ」

ダイアンの呟きに大きく頷く大人達、奥さんが直々にお茶を入れてくれると恐縮しながら喉を潤す。

「クッキーという食べ物ですか、この菓子ひとつとっても素晴らしさが溢れていますね」と微笑んだ。


「それにしてもうまくいくかね?今までの事業が事業だけに資金投入出来るのは今回が最後のタイミングなんだ」ダイアンが考え込むと「学園の評判は上々でしたね、後はプレゼンの仕方次第かと」ローレルが後押しする。

「もし大量に欲しいと注文が来た場合対応できますか?」

「材料はたくさんあるし増産も出来る、生産を絞っている状態だから工場をフル稼働させれば問題ないと思う」

「まだ工場は見られますか?」ザクスが質問するとこれから見学することになった。

基礎薬科グループ顧問は工場見学になる可能性も考えて学生を近くに待機させていたらしい。

レンはこのままセレアと話を続ける予定なので、行けるメンバーで工場に向かうことになった。


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