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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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043:糸

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30,000PVを超えました。
大台とても嬉しいです。
「作戦だけど、どうするか?」ヴァイスが聞いてくる。
「サリアル教授の戦闘スタイルってまだ見たことないんだよね、ただ魔力を操る技術はしなやかで細やかと聞いているからまずは様子見で行こう。指示や気がついたことはお互いに声を出してね」「了解、今回は後ろで指示を多めに宜しく」「OK」こちらは待機で相手の出方に合わせていく作戦にする。

 サリアル教授は基礎魔法グループを集めると良く戦闘訓練を見るようにと指示する。
そしてフレアを呼ぶと杖を持ってくるように話した。
「少し待ってください、準備をしますので」動きやすいように所々をベルトなどで締めるとフレアが長めの杖を持ってきた。多分片手で持てるギリギリの長さで細身の杖だった。

 両者とも準備が整う頃にレンとザクスが後ろに団体を引き連れてやってきた。
どうやら囲まれているのが思った以上に長く、ここまで来れば逃げ切れると思ったようだった。
後ろの団体はマイクロや顧問によって「騒がしいのはごめんだ」と引き返すように指示がでる。
その後ろから来た基礎薬科顧問とローレルは軽く会釈すると静かに見学できる位置に立った。

 両者とも開始線に立つとマイクロが中央に歩み寄り「始め」の合図をだした。
自然体に木剣と盾を構えるヴァイス、その斜め後ろに陣取り杖を構える。
「少し大人気ないことをしますが耐えてください」とサリアルが言うと、杖で予告ホームランのポーズをした後杖を眉間に引き寄せ「ガントレット」と呟いた。
手首から肘まで黄色い防具が生まれるとゆっくりヴァイスに近づいてくる。

「まずは足を止めるんだ」ヴァイスが叫ぶと進行方向にブロックをランダムに発生させる。
急ブレーキをかけるサリアルに少し長めの詠唱でマッドバインドと唱えると足元から泥の手が二本発生した。
バックステップをしたサリアルは少し微笑んで「フルポテンシャル」と唱えた。
泥の手は死角にあってこその移動阻害魔法なのですぐ消す、サリアルは一瞬姿が消えたんじゃないかと言うくらいの早さでサイドステップから一直線にヴァイスに接近する。
そしてギリギリ届くか届かないかの距離で杖を肩に向かって刺しに来た。

「普通にその距離は有効打にはならないから防具でさばくか避けるよな」
マイクロは審判なのに解説していた、そしてマイクロを尊敬しているヴァイスの動きは解説の通り慎重に見切ろうとしていた。
「でもな、そこから伸びるんだ」軽く触れるか触れないかの距離になるはずだったのが肩を入れてリーチを伸ばしてくるサリアル、そして奇跡的にかするくらいで済んだヴァイスもさすがだった。
「これって魔法使いの戦い方じゃないな」と驚くヴァイスに「団長だからな」とマイクロが言った。
「そうか、これってレイピアやフルーレの戦い方だな。ヴァイス少し手数増やしてプレッシャーかけよう」意識を変えるように告げるとマイクロが軽くうなずく。

 最近マイクロの指導を受けているヴァイスは技術的にも成長していた、スピードを駆使してヒット&アウェイの作戦を取るサリアルにもヴァイスは丁寧にさばいている。
このまま膠着状態が続くなら自分がいる意味がない、それどころか魔法使い同士の戦いでもなかった・・・何か違和感がある。
「準備運動はこのくらいでいいでしょうか?」少し距離をとるサリアルにいよいよ魔法による戦いが始まると思った。

「サリアル教授の属性は無属性と最近取得した土属性だ、これといったアドバイスはできないけど土属性には気をつけてくれ」とヴァイスに防御に力を入れてもらう。
長い杖を仕舞い短い杖を取り出すと「石よ」と唱えるサリアル。
ビー玉くらいの大きさの小石が発生するとふわりと宙に浮きゆっくりとヴァイスに飛んでいく。
盾を構えるヴァイスは緩い魔法に拍子抜けしていたが、ゆっくり飛んできた小石が急に加速しだした。
肩目掛けて飛んできた小石は盾によって「カン」という音とともに弾け飛ぶ。

「何か違和感があるんだ、ちょっと時間を稼いでくれると嬉しい」「了解」
「石よ」またふわりと浮く小石、今度は腹部目掛けて緩急つけて飛んでくる。
今度も盾でうまくさばくヴァイスにサリアルは石を2個3個と増やしていく。
「防具をうまく使えばダメージはなさそうだ」と盾と皮鎧を使ってうまくさばくヴァイス。

「とりあえずちょっと背中貸して」と背後に回りこんでヴァイスの背中に手を当てる。
さっきサリアルが使った「ガントレット」は多分シールドを土属性にして物質化したものだ。
そして「フルポテンション」は前に授業で習った肉体強化魔法だ、いくら戦闘経験があるといってもあの細い杖で木剣をさばいているのは厳しいはず。そしてフルというくらいだから筋力や敏捷力や持久力など全てのステータが上がっていると思う。
多分、肉体強化系も無属性が基本になっているはずだ。
前に習ったシールドをヴァイスに包み込むイメージで背中に送り、護りたいという気持ちを魔力に込める。

「もし魔法が完成したならそれに相応しい魔法名をつけるのです」
「ご指導ありがとうございます、プロテクション」

《New:スペル プロテクションを覚えました》

 一瞬ヴァイスの体が輝きすぐに収まる、サリアルは小石の量を増やすと勢いよく時差をつけて撃ちだした。
「魔法は時間稼ぎなんで、もうちょっとだけ頼む」「これで終わる訳ないよな」「多分ね」素早く打ち合わせをする。
「そろそろヒントタイムは終わりますよ」と最後の一個が肩目掛けて飛んでくる。
「・・・これって当たる場所が同じだ」そう言うとヴァイスは「どういうことだ」と聞いてくる。
ヴァイスを包む魔力に干渉して、もう一回背中に手を添えると一瞬肩の辺りでキラリと光る糸みたいなものが見えた。
「フレアと訓練していたのはこれですね」とサリアルに聞くと「正解がわかった所で対応できるかしら?」と不敵な笑みをしてくる。

「サンドボール」と少し大きめなモーションで詠唱するサリアルはボウリング玉位に拡大された土属性の塊を発現させた。
魔力糸は他にも4本見つけることが出来た、やってくる魔法はどれかのコースを辿ってくるはずだが魔法が発現している以上すぐに対応しないといけない。
5本の魔力糸のどれかを選んでいる時間はなかった、「ブレイク」ヴァイスを介して5本の魔力糸に土の魔力を注ぎ込む。
一本ずつサリアルの杖に向かうブレイクは杖に辿り着くと霧散したが、サンドボールは中間地点でバシュっという音と共に砂になって落ちた。

 次のサンドボールを唱えだしたサリアルは額に薄っすら汗を浮かべていた。
ヴァイスに更に強いプロテクションの魔力を注ぐと5本の魔力糸はプツンと切れた。
サリアルがマイクロを見て頷くと「それまで」と終了の合図が告げられた。
「勝者、リュージ・ヴァイス」高らかに告げられた勝者のコールに拍手が沸きあがった。

「リュージ君、よく問題の意図を読めました。ヴァイス君、あなたも頑張っているようで安心です」と握手を求めるサリアル。
そしてマイクロを連れ出すと他の教授も連れて少し離れた場所で打ち合わせをしていた。

 今回の問題の意図は何点かあると思う、ひとつめはシールドが完成してないのに冒険に出ようとしたからだ。
これは正直に訓練不足というか日々に流されていたというか、冒険に出たい・休みたいと相反する望みをしたせいだった。
もうひとつはフレアに対する教育だと思う、ダメージが抜け切れていないフレアも目だけは真剣そのものだった。
最後はサリアル教授も体感したのだろう、土の属性は攻撃に向かない又は向きにくいということを。
それを含めた上で実例を見せてこちらに魔法のレクチャーをしてくれたんだと思う。

 レンとザクスが近寄ってきて、こちらとヴァイスに拍手をしてきた。
「多分じゃなく絶対手加減されてたよ」と言うと、ヴァイスが「そういえばマイクロさん何か変なこと言ってなかったか?」と周りを見回す。「いやぁ・・・失言失言」と頭を掻きながらマイクロがやってきた。
「リュージ君、約束通り山岳訓練の件は認めましょう。但し、後1名連れて行くことです」
「俺じゃあ・・・ダメだよな」サリアル教授に睨まれるマイクロ。

 この山岳訓練、知っている人は知っているという感じの何かの謎があると踏んでいる。
ただ、騎士科主導の訓練なので他の科の生徒を騙すような事はしないはずだ。
「困ったなぁ・・・」と騎士科の顧問が悩んで周りを見回す。
「フレアは負傷中なので今回は参加できませんよ」とサリアル教授が言うと「もともと参加しません」と宣言される。
「こうなると一人しかいないわね」とレンがザクスを見るのであった。
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