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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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011:初仕事

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1600PVを超えました。
 朝の食事を取ろうと席に着くと、何やら男の子チームと女の子のチームがぴりっとした雰囲気をかもし出していた。
どうやら花壇に何を植えるかで対立していたようだった。
サラとルーシーは仲良しなのでどちらになっても良いと言っていたけど、お兄ちゃんお姉ちゃん組が軽くもめていた所シスターが仲裁に入ったらしい。
そしてマザーが「争いの種になるようでしたらあそこに植物を植えるのを禁じます」と言ったもんだから表面上は大人しくしたようだ。一連の流れをシスターが教えてくれた。

「あの、マザー。何かを育てるというのはそれだけでワクワクするものです。明日の朝、みんなが時間あるようなら解決できるものを用意できると思うので任せて貰えませんか?」
そう言うとマザーは「お任せしてもいいですか」と言ってくれた。
「みんなもそれでいいかな?」の言葉にハーイやハイハーイとにこやかに返事した。

 食事が終わり午前は村を見て回る事にした。
年中の子達が水汲みに行く途中までなら案内できるよと言い、歩きながらこの村の事を色々教えてくれた。

 この村にあるのは領主(代官)の館・食堂兼宿屋兼パン屋・教会兼孤児院・雑貨屋・農地・民家・開墾予定地等など。
前の戦による休息中の兵士は8名で最初は開墾に燃えていたようだが岩盤等に挫折したようだ。
最近の職務としては交代での見回り・鍛錬と村長からの要請による作業に従事していた。
この村の衛兵は2名で兵士の手伝いもあったので山の出入り口の管理をしていた。
水場に到着すると近くにある雑貨屋と開墾予定地の場所を教えてくれた。

 雑貨屋には色々あった。
埃がかぶっているような細工物もあったけど背負子やザルから包丁・まな板・シャツ・ズボン・塩等が売られていた。大体銅貨2枚くらいから銀貨2~3枚くらいの値付けだと思う。塩は少量でもそこそこの値段になっていた。
少し眺めていると奥から腰の曲がったお婆ちゃんがやってきた。
「いらっしゃい、何か買うかね」の問いに「教会でお世話になっているリュージと言います。お金稼げたらいっぱい買うのお願いしますね」と言うと「その時はサービスするから婆が死ぬまでに来なされ」とお年寄りジョークをうけた。
「まだまだ元気そうだからゆっくり稼ぎますねー」と言いつつ手を振りフェードアウトした。

 次に着いたのは開墾予定地だった。
年配の方が杭の外で見学しており、開墾予定地の中では兵士が上半身裸で木剣を振っていた。
「おや、最近騒ぎがあった教会の子かの?」年配の男性が話しかけてきた。
「教会でお世話になっているリュージと言います、宜しくお願いします」
「これはご丁寧に、村長をやっているオーサだ。よろしくの」
働き盛りからお年寄りに入る昔でいうところの60歳くらいだろうか?現代の60歳はまだまだ若いから正確な年齢はわからないけど眼光はまだ鋭い力を宿しているようだった。

「ここって開墾予定地ですよね」
「おお、そうじゃ。ここも開墾できれば悪くないのだがの」
「やっぱり石とか岩盤ですか?」
「お主もここの洗礼を受けたのか、なかなか厚い層があるようだの」
「ここって誰が開墾してもいいのですか?」
「勿論、良いぞ。ここを開墾するならその分給金も出るしの」

 どうやらここは開墾すると畑6面分くらいになるらしい。
大体の区画を口頭で指示を受け、朝に村長さんに作業開始を告げ開墾終了で出来高払いになるらしい。
開墾は一人で出来れば金貨1枚、複数でやったら人数割りになる。
その後3年間は無税で使用料無料となり畑を売却した場合更に金貨1枚となる。
この判定は村長管轄となり代官への報告義務があるらしい。

「そう言えばお主、熊の痕跡を見つけたようじゃの」
「あぁ、山で爪痕は見ました。熊かどうかはわからないです」
「明日には捜索の準備が整うそうじゃの、安全についてはよくお願いしておくので案内を頼むの」
そう言うと村長は両手を取って握手を求めたので素直に応じた。
「では、またの」と言うと村長が歩き出す。
少し兵士の訓練を見た後食堂を目指した。

 食堂兼宿屋の裏口からノックする。
「今日からお世話になりますリュージです宜しくお願いします」
おばちゃんが「はい、よろしく」と言い旦那さんを大将・おばちゃんを女将さんと呼ぶようにと言った。
そして細々としたことを教えてくれた。
まずここに来る人への対応は女将さんがやり料理は大将が担当をする。
自分は野菜の下準備及び混み合う時は皿洗いを担当する。
因みにこの宿屋はどんな人用に経営されているのか不思議だったけど、ここ数年は兵士向けの経営でたまにこっそり王族が来るとか来ないとか。併設されているパン屋は大将の妹夫婦でやっているそうだ。

「そして給金だが・・・」と申し訳なさそうに切り出した。
今この村で仕事に従事している人は【日当:大人銅貨5枚/子供銅貨2枚(働いている子限定)】となっている。
これは衣食住のうち食と住を国が支援しているからという理由である。
勿論、極力自給自足と税でやりくりするのが建前である。
そして代官代理からリュージが14歳と聞いているので給金の指定をしてきたとのこと。
「安く雇うつもりはなかったのだが、代官さまの手前もあるからなぁ」そう大将が申し訳なさそうに言った。
因みに銅貨1枚が日本で言う所の100円相当の価値らしい。
銅貨10枚で銀貨1枚になり、銀貨100枚で金貨1枚・金貨100枚で白金貨1枚になるそうだ。

「急に来て出来る事も少ないと思うので恩返しの気持ちで働きますから大丈夫ですよ」と言うと「無理がないように程々にな」と大将がニッカリ微笑む。お父ちゃんいい男だろうと言うような感じの表情を浮かべたおばちゃん・・・もとい女将さんも笑顔だった。

 それから包丁・まな板・腰で結ぶタイプのエプロンを借り、野菜を剥く切る刻む。
千切り・輪切り・粗ミジン切り・半切り・乱切りなど指示通りに作業を進め、手が空いたら洗い物に入る。
途中、刃が気になった「持ってきた包丁使ってもいいですか?」と聞くと使いやすいのでいいぞと返事があったので出刃包丁に切り替えた。

《New:短剣スキルを取得しました》
《New:調理スキルを取得しました》

 大将と女将さんは素人が来ると思っていたらしく、思いの他戦力になったと言っていた。
11時頃から6時頃までの仕事時間だったが途中2時間のお昼寝休憩時間まで取れた。
因みに普段来ない私兵が来たよと女将さんが気をつけなねと言ってきた。
一部作業を裏口出てすぐの所でやっていたけど、ここでの作業場は誰も来ないし見ている人もいないようだった。
それなので昼寝しているから休んでても散歩してても良いよと女将さんに言われたのでここで少し別の作業をしようと思う。

 ウエストポーチを開け昨日の小さめの石を全部出す。
「魔法は想像力」そう思うと左手に魔力を集めウォータボールと呟く。
片手に発生したウォータボールに一個だけ石を入れてみる。
コントロールされた流速に落ちる事なくグルグル回る。
一個ずつ追加して入れていくと少し変則的に水を流していく。
落とさないように且つグルグル一定方向でなくあっちこっちに流してでも球状を維持する。

 石の数を増やすとその分石と石がぶつかる回数が増える。
全部の石を入れ終わると右手を添えて更にコントロールの精度を高めた。
途中周りを見たが監視している人はいないようだ。
音が出ないかと気にしたけど激しくぶつかる石も流速コントロールでほぼ制御できている。
水に細かい粒が目立つようになり感触が柔らかくなった頃、静かにちょっとずつ水を抜いていく。
音が出ないように石を下ろすと歪だが玉砂利のような形状になった。

 片付けをすると少し休憩し、また食堂の作業となった。
下準備・皿洗いは単純作業だけど程よい疲れを感じた。
「じゃあ、帰りはこのパンを持っていくといいさ」と女将さんがいっぱい持たせてくれた。


 孤児院に戻りお土産のパンはシスターに渡したところ大喜びだった。
食事が終わると自由時間になる、明日の朝食後に花壇を作ろうとみんなに呼びかけた。
女の子チームと興味があったシスターとマザーには何種類か花の種の袋にある見本の花を見せた。
「これは・・・随分精巧な絵ですね・・・」マザーが驚きの声をあげる。
「あ、えーっと。それは置いといてですね・・・どんな花がいいでしょう?」
ガーデンシクラメン・パンジー・プリムラの種の袋をみんなに見やすいように広げる。
本当はどれも初めての土地・時期など心配はあるんだけど少し魔法でショートカットしようと考えている。
女の子チームは好みが似ているらしくパンジーにしようと満場一致で決まった。

 翌日、朝起きるとすぐに花壇の前に必要な道具を出しておく。
玉砂利もどきも一山にしトマトの苗が埋まった魔力鉢・シャベル・ジョウロ・花の種の袋を準備する。
朝食が終わると男の子チームから2名・シスターと女の子チームから3名集まった。
まず花壇の周りを玉砂利で囲む、そして公平になるようにセンターラインを玉砂利で区切る。

「じゃあ、こっちは男の子のほうで作業しよう。これはトマトという赤い実がなる野菜だよ。出来たものはみんなで食べようね」そう言うと10本の苗を3・4・3の布陣で並べる。
苗は寝かせ気味に植えて後で支柱になる棒を探して挿してねとお願いする。
「こっちは女の子のほうで作業しよう。パンジーの種は・・・」そう言い数粒だして両手で包み軽く振る。
種苗増殖の魔法でそこそこの量になったのでシスターと3人の女の子に配り植えてもらった。

 作業が終わるとジョウロに水を入れないとと思いクリエイトウォータを使おうと思うと違和感が。
鑑定をしてみるとエンチャントとして既にクリエイトウォータが付与されていた。
「水の精霊さま、ありがとうございます」と小声で呟き魔力を込めた後サラとルーシーにお願いして水を撒いてもらった。


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