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第二百九十八話 はぁ、疲れた……

「おりゃッ」

 ミスリルの槍がミノタウロスの腹を引き裂いた。

 「グモォォォッ」というミノタウロスの叫び声と共に、引き裂かれた腹の中からドバっと臓物がこぼれ落ちた。

 ミノタウロスが倒れて数秒の後に消えていく。

「うげッ、モロに見ちゃったよ……」

 ドロップされた肉を拾ってアイテムボックスに入れ、次の獲物を探す。

 俺たちは、巨人ゾーン最後の25階のだだっ広いボス部屋に来ていた。

 当然というか、ここに来るまで何の問題もなく進んできたわけだけど、最後のボス部屋ということで俺も少しは戦っておくかと参戦してみた。

「グォォォッ」

 俺を見つけたトロールが威勢よく叫びこちらに向かってくる。

 次の獲物はトロールだ。

 さすがというべきか、フェルとドラちゃんとスイが他の魔物はキッチリ抑えてくれて、俺の方にくるのは1匹だけだ。

 いやホントありがたいねぇ。

 よし、しっかりトロールを倒しますか。

「ファイヤーボールッ」

 トロールには魔法は効きにくいが、目くらましの意味も含めてまずはバレーボール大の火の玉(ファイヤーボール)をぶち当てた。

「グガァッ」

 爆散する火の玉(ファイヤーボール)

 だけど、これくらいじゃトロールは死なない。

 どれだけ頑丈なんだよ。

 眼前に広がる火にトロールが怯んでいるうちに素早く背後に回る。

 そしてトロールの両足、足首の辺りをミスリルの槍でスパっと切り裂いていく。

「ガァァァァッ」

 トロールが叫び声をあげながら膝をついた。

 すかさずトロールの首を……、スパンッ。

 スイ特性の切れ味抜群のミスリルの槍で首チョンパだ。

 後ろから攻撃するなんて卑怯だとかはなしだ。

 俺はヘタレだからな、確実に葬れる方法を取るぜ。

 ドロップ品は皮だった。

 それを拾ってアイテムボックスへ入れたところでフェルの念話が入った。

『デカいのがそっち行くぞ。戦ってみろ』

 え~……。

 てか、ここでデカいのって言ったら…………。

「グガァァァァッ」

「やっぱりスプリガンじゃねぇか!」

 ミノタウロスやトロールよりさらにデカいスプリガンがドスンドスンと足音を立てながら俺の方へ向かってきていた。

『お主には神よりいただいた完全防御のスキルがあるだろう。それほど恐れることはない』

「いやいやいや、さすがにあれは怖いってーっ」

『大丈夫だ。やれ』

 大丈夫じゃねぇよ!

 俺は平和な日本にいた日本人なんだぞ。

 完全防御があったってなぁ、あの巨体で迫られて恐れるなって方が無理なんだって。

 フェルに言い含められているのか、ドラちゃんもスイも助けには来てくれない。

 クッソ~、フェルのやつ後で覚えてろよーっ。

「グォォォォッ」

「クソッ、とりあえず、ファイヤーボールッ!!」

 魔力の半分近くを込めた俺の渾身のファイヤーボールだ。

 1メートル超の火の玉(ファイヤーボール)がビュンと風を切って飛んでいきスプリガンに着弾。

 そしてスプリガンを火だるまにした。

「グッ、ググガァァァァッ」

 火だるまになったスプリガンが暴れている。

 床をゴロゴロ転がって必死に火を消そうとして、そのうち動かなくなった。

「…………()ったか?」

「グゴッ……」

 倒したかと思ったスプリガンがむくりと起き上がった。

「ゲッ」

 スプリガンがすごい形相で俺を睨みつけている。

 そして………。

「グゴォォォォーーーッ」

 怒り狂ったスプリガンが絶叫とも言える雄叫びを上げて、俺に向かって突っ込んできた。

「やっぱりそうなるよねぇーーーっ」

 俺は残りの魔力を使い、バレーボール大のファイヤーボールを3つ作り出して撃ち出した。

 最初の1メートル超の火の玉(ファイヤーボール)を受けてダメージを負っていたのだろうスプリガンが、新たな火の玉(ファイヤーボール)3連を受けて膝をついた。

「グァァッ」

「今だっ! せいッ、せいッ、せいッ、とりゃぁぁッ!」

 ミスリルの槍で心臓の辺りを無我夢中で何度も突いた。

 最後に突き刺した槍を抜くと、事切れたスプリガンが崩れるように倒れていった。

 そして、消えてなくなった後に残ったドロップ品は魔石とオパールだった。

「ふぅ~、何とか倒せたぜ……」

『やればできるではないか』

「何がやればできるではないかだよ、フェルー! いきなりあんな大物けしかけんなよな!」

『フンッ、お主が弱すぎるから少しは強くなるために協力してやったのではないか』

「弱いのは事実だけどな、心の準備ってもんがあるんだよっ」

 ってか、フェルたち基準に考えてほしくないぜ、ったくよー。

『ダンジョンにいて心の準備もなにもないだろう。見合った敵を倒すだけのことよ』

 くーっ、言うことがいちいち正論だから悔しいったらありゃしない。

 そんな時……。

『あるじー、こっちー』

『宝箱があるぜー!』

 スイとドラちゃんの呼び声がした。

 声のする方に振り向くと、部屋の奥の壁際に確かに宝箱があるのが見えた。

 急いでそちらに向かう。

「ほー、キレイな宝箱だなぁ」

 幅が50センチ、高さが30センチくらいある宝箱は全体が白く、銀の縁取りがされて留め金の部分には宝石の装飾も付いていた。

 これは宝箱自体にもけっこうな価値がありそうだな。

 とは言っても、ここのダンジョンの宝箱にすぐ手を出すのは禁物だ。

 留め金を外せばすぐに開く宝箱ではあるが、必ずと言っていいほど罠があるからな。

 とりあえずは鑑定だ。



【 宝 箱 】

   開けると同時に宝箱の前の落とし穴が作動するよう仕掛けられた宝箱。その落とし穴に落ちると、二度と出ては来れない。



 ダメやん……。

 二度と出て来れないって、死ぬって意味だろがー。

 この罠こそ危なかった。

 完全防御持ってても、落とし穴にまで効くのかわからんからな。

 よし、これは壁際ギリギリまで寄って、ミスリルの槍で留め金を……。

「よっと」

 何とか留め金の金具を外して、フタの隙間にミスリルの槍をねじ込んで持ち上げた。

 ガコンッ―――。

 フタを開けた途端に、宝箱の前の床が抜けた。

「ふー、油断も隙もないな。鑑定があって良かった~」

 俺たちは抜けた床に気を付けながら、宝箱の中を覗いた。

「これは……」

 鑑定。



【 マジックバッグ(大) 】

   麻袋(大)が100個入る大きさのマジックバッグ。時間経過なし。



「おおっ、時間経過なしのマジックバッグ(大)だっ」

 宝箱の中にはこれ以外入ってなかったけど、なかなかいいものが出た。

 これは手元に置いておこう。

 フェルたちが狩りに行くときはいつもフェルにマジックバッグ(特大)を持たせているけど、ドラちゃんにこっちを持たせるのもありだしね。

 疲れたけど、最後はマジックバッグ(大)が出て良かったぜ。

「さて、帰ろうか」

『ぬ、もう少しいいのではないか?』

『えー、もう少しいようぜ』

『もー帰るのー?』

「ダーメ、この下はもうフィールドダンジョンだろ。その前までって約束だったんだから帰るぞ」

 そう言うと、みんなブーブー言っていたけど、夕飯に地竜(アースドラゴン)赤竜(レッドドラゴン)のステーキを出すってことで決着がついた。

 それと不三家のケーキも5個ずつってことでな。

「さぁ、地上に戻るぞ」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ふぅ、やっぱり地上はいいな。

 フェルたちのわがままに付き合った今回のダンジョンだけど、ドロップ品のミノタウロスの肉を50確保できたこととマジックバッグ(大)を確保できたのは良かったな。

 疲れてるから本当はこのまま屋敷に帰りたいところだけど、昨日買取を頼んだ分があるから、冒険者ギルドに行かなきゃだよ。

「冒険者ギルドに寄ってから帰るからな」

『腹が減ってる。早く終わらせるのだぞ』

『えー、腹減ってんのにー』

『あるじー、お腹すいたー』

「ごめんごめん、受け取りだけだからそんなに時間かからないと思うからさ。それに帰ったらすぐに飯にするから。な?」

 みんなをなだめすかして冒険者ギルドへと向かった。






珍しくムコーダさんが戦っていますw

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ムコーダさん、戦い方がヘタレ(失礼!)だからわかりづらいけど、高校生勇者たちよりも経験積んでて強いんじゃないかな? フェンリルを従魔にした冒険者が、実はあのリーマン(ムコーダさん)だっ…
そういえば…… 戦い方がヘタレっぽいから気付きづらいけど、意外とムコーダ強いんじゃ? そりゃ〜食いしん坊トリオと比べちゃだめだけど。 単騎でスプリガンを倒せるんだから…… 頑張れ❢ムコーダ❢いつか無双…
[気になる点] 第二百九十八話 はぁ、疲れた…… >スイ「特性」の切れ味抜群のミスリルの槍で首チョンパだ。 >スイ「特製」の切れ味抜群のミスリルの槍で首チョンパだ。 誤字だと思います。
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