第二百八十八話 ドランの街、再び
今日の話は短めです。
夜が明けて間もない朝靄のかかる早朝。
朝飯を早々に済ませた俺たち一行はエイヴリングの門の前にいた。
「それじゃ、ドランに向けて出発しましょう」
「もうちょっとゆっくりしたい気もしますけど、しょうがないですね。行きましょう」
まったく、まだ言ってるよこの人。
「赤竜の解体もあるんですからね。そのために俺たちはまたドランに行くんですから」
「そうでした! そのお楽しみがあるんでしたね~。ウフフフフ、ドラちゃんとダンジョンに潜れたし、ドランに戻っても赤竜の解体の楽しみがあるし、最高ですね!」
ああ、そう。
悪い人じゃないんだけど、この人と付き合ってると時々どっと疲れるよね。
ウゴールさんの苦労が偲ばれる。
赤竜もさっさと解体してもらって、早々にドランを離れよ。
「ムコーダさんたちとご一緒できて本当に良かったです。王都でムコーダさんたちの話を聞いて、エイヴリングに来た私の判断は間違っていませんでしたよ」
そうしみじみ話すエルランドさん。
まったく誰がこの人に伝えたのかわからんけど余計なことを言ってくれたよ。
このせいでウゴールさんに俺まで怒られなきゃいいけど。
あ、ちなみにだけど、今朝起き抜け一番に自分のステータスを確認してみたんだけど、こんな感じだった。
【 名 前 】 ムコーダ(ツヨシ・ムコウダ)
【 年 齢 】 27
【 種 族 】 一応人
【 職 業 】 巻き込まれた異世界人 冒険者 料理人
【 レベル 】 62
【 体 力 】 405
【 魔 力 】 391
【 攻撃力 】 382
【 防御力 】 379
【 俊敏性 】 324
【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス 火魔法 土魔法
従魔 完全防御 獲得経験値倍化
《契約魔獣》 フェンリル ヒュージスライム ピクシードラゴン
【固有スキル】 ネットスーパー
《テナント》 不三家 リカーショップタナカ
【 加 護 】 風の女神ニンリルの加護(小) 火の女神アグニの加護(小)
土の女神キシャールの加護(小) 創造神デミウルゴスの加護(小)
今までは異世界人だからなのかわからんけども、【種族】がなかったのに出るようになっていた。
デミウルゴス様の加護がついて、この世界に認められたってことなのかな、よくわからん。
しかも、さらによくわからんのが「【種族】 一応人」って、一応人の一応って何さ?
デミウルゴス様の加護は強すぎるって話だから、その影響なんだろうけど一応ってあんまりだよな。
人から外れていくような気がして何とも……。
寿命も1500年くらいになったらしいしさ。
これもフェルたちにあとで伝えないとなぁ。
今更考えてもしょうがないし、なるようになるだろうさ。
とりあえず今はさっさとドランに向かいますか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あ、ドランの街が見えてきましたよ。日暮れ前に着けて良かったです」
「もう着いてしまうんですねぇ」
なんだか名残惜しそうにそう言うエルランドさん。
「さ、早く街に入って冒険者ギルドに行きましょう」
きっとウゴールさんが待ち構えてるよ。
「スイちゃん優秀過ぎますね。ここまで来るのに通常の日程の半分もかかりませんでしたよ。まぁ、スイちゃんだけじゃなくみなさん優秀なんですけども」
うん、そうだね。
みんな優秀で非常に助かってます。
俺がSランク冒険者になれたのもみんなのおかげだし。
そのあとに何不自由なく冒険者として活動できているのもみんながいてこそだからね。
特にスイの成長が目覚ましい。
そのおかげでエルランドさんがいても、こうして早くドランに着けたし。
俺はいつものようにフェルの背に乗せてもらったんだけど、エルランドさんはスイに1人用のカートくらいの大きさになってもらって乗ってもらって進んだんだ。
最初は驚いていたエルランドさんだけど、慣れてきたらすごいはしゃぎっぷりだったよ。
エルランドさんもいるしってことで、いつもの俺たちの旅の進み具合からしたら遅めではあったんだけど、それでも通常の日程よりもかなり早い旅路だったと思う。
「ご飯は美味しいし、スイちゃんの乗り心地は抜群だし、夜もぐっすり眠れるしで最高の旅でした。こんな旅ならまだまだ続けていたいくらいです」
エルランドさんがそう言うと、ドラちゃんの嫌そうな声の念話が間髪入れずに頭に響いてきた。
『こいつとの旅はもう二度とごめんだぞ』
ドラちゃん少しご立腹です。
ドラゴン好きのエルランドさん、ことあるごとにドラちゃんにチョッカイかけてたもんな。
気持ちはわかるんだけど、ドラちゃんが嫌がってるって言っても聞きゃしないし。
その時は「分かりました」って言うんだけど、すぐにね……。
ま、ドラゴンLOVEな人だからドラちゃんのことが気になるのも分かるんだけどさ。
というか、俺たちの所に来たのもぶっちゃけドラちゃん目当てだし。
だけどそれもドラちゃん相手には空回りだったね。
『もうすぐエルランドさんともお別れだから、もう少し我慢してよ』
そうドラちゃんに念話で伝えると『チッ、仕方ないな。今日は久しぶりに亀の肉が食いたい』とのことだ。
はいはい、今日の夕飯はドラちゃんご希望のスッポン鍋にしますよ。
「それじゃ、行きましょうエルランドさん」
「はい」
俺たちは、門に並ぶ長蛇の列を無視してそのまま門前まで進んだ。
門に並んでいた人たちがデカい狼に乗った俺やデカいスライムに乗ったエルランドさんをみてギョッとしていたけど。
よくよく考えたら、スライムに乗るエルフってシュールな絵面だわ。
いきなり進み出てきた俺たちに門番さんも驚いていたけど、エルランドさんの顔を確認すると、そのまますんなりドランの街へ入ることができた。
この辺はさすがギルドマスターだね。
さて、最後の関門。
門を入って目と鼻の先にある冒険者ギルドへ、いざ。
ちょうど区切りがついたので次回は閑話を。