第二百六十八話 テナント2
神様回ではあるんですが、先に新規テナント編を。
みんなが寝静まったあとに、部屋の隅っこで神様たちに呼びかけた。
「お久しぶりです。みなさん、ダンジョンから帰ってきましたよ」
ドタドタドタっと足音が聞こえてきた。
『やっと戻ってきおったか!』
『やっと来たわね~』
『おっ、やっと戻ってきやがったかっ』
『……待ってた』
『おー、来たかーっ! それでレベルはどうなったんじゃっ?!』
『よっしゃ、お前レベルはどうなったっ?!』
おいおい、最後の野太い声の2人、来て早々にその話ですかい?
『そうよ、テナント! レベルはどうなってるの?』
この声はキシャール様か。
キシャール様もテナントにドラッグストアが出るの希望してるから気になってるんだろうな。
「えーと、レベルは上がりましたよ。62になりました。なので、次のテナントが解放になると思います」
そう言うと神様たちの歓声が聞こえた。
『よしッ、よくやったぞい! すぐに酒屋を入れるのじゃ』
『よっしゃ! 酒屋だ酒屋ッ』
『違うわよっ。ドラッグストアよ!』
希望のテナントがあるヘファイストス様とヴァハグン様、キシャール様が勝手にそう言う。
『まったくお主らはうるさいの~。妾は早くケーキが欲しいぞ』
『ホントだぜ。オレも久しぶりのビールを早く楽しみたいってのに』
『……ケーキとアイス』
既に甘味処の不三家が入っているニンリル様とルカ様は大人しいもんだ。
アグニ様も前は酒屋をテナントにーって言ってたけど、今のままでも大好きなビールが手に入ってるからね。
今となっては、テナントの酒屋については興味を失っているようだ。
『テナントの方が大事なのっ。あなたたちはちょっと黙ってなさいっ』
キシャール様がピシャリと言った。
『キシャール、怖いのじゃ』
『ああなったら、しばらく黙ってた方がいいな。余計な事口に出すととばっちり食らうぞ』
『……』
他の女神様も黙らすキシャール様。
こ、怖いです。
しかしですね、選べるテナントは見てみないとわからないですよ。
酒屋とかドラッグストアが入ってるとは限らないんで。
「あのですね、選べるテナントは確認してみないとわからないですからね」
『はっ、そうか。早く確認しろ』
『そうだぞ』
『早く早く~』
「わ、分かりましたよ。それじゃ、ちゃんと見ててくださいね」
神様たちに急かされて、ステータス画面を開いた。
固有スキルのネットスーパー(+1)のところの(+1)に触れる。
【固有スキル「ネットスーパー」のテナントが開放されました。次の中からお選びください。……カンタッキー / ベーカリー鈴木 / リカーショップタナカ】
お、レベル40のテナント解放では3つ選択肢があるのか。
しかも、前に選ばなかった選択肢、確かワクドナルドだったか、は選択肢に入ってないな。
それにしても、この選択肢ツッコミどころ満載なんだけど。
カンタッキーは分かるよ、有名なファストフードチェーン店だしさ。
だけど、ベーカリー鈴木とかリカーショップタナカとかって何さ?
何故に個人商店?
どういう基準でテナントが選ばれているのか分からんね。
ま、考えても分からないだろうけど。
「えーと、見えてますか? カンタッキーっていうのはフライドチキンっていって鶏を油で揚げた料理を出す店で、ベーカリー鈴木っていうのがパン屋ですね。そして、リカーショップタナカっていうのが酒屋です」
そう言うや否や野太い声の歓声が上がった。
『よーしッ、よしよしッ! 酒屋じゃッ、酒屋が来たぞい!』
『よっしゃぁぁぁッ! 念願の酒屋だぜッ!』
喜ぶ野太い声とは対照に不満気な声が……。
『え~何で酒屋なのよー。ドラッグストアがないなんて……あー、もう、がっかりだわぁ』
キシャール様、こればっかりはしょうがないですよ。
今回は我慢してください。
とはいうものの俺個人としてはパン屋がよかったりして。
スーパーの大量生産のパンとパン屋の手作りのパンでは味も違うし。
たまには美味いパンを食いたいと思うんだけど、ここでパン屋でなんて言ったら大変なことになるしな。
ここは、ヘファイストス様とヴァハグン様を立ててリカーショップタナカを選択するしかないよな。
「それじゃ、選ぶのはリカーショップタナカでよろしいですね?」
『もちろんじゃ』
『当然だぜ』
『ドラッグストアがないんじゃ興味ないわ~』
『妾も何でもいいのじゃ。それより早く済ませてほしいぞ。早くケーキを選びたいのじゃ』
『オレはビールさえもらえりゃ文句ないぜー』
『……ケーキとアイス』
はいはい、それじゃリカーショップタナカね。
俺は、リカーショップタナカの文字に触れた。
【 テナントはリカーショップタナカと契約しますか? YES / NO 】
もちろんYESで。
【 リカーショップタナカと契約いたしました。次にテナントが解放されるのはレベル80となります。またのご利用をお待ちしております。】
次にテナントが解放されるのはレベル80かよ。
20のときには40で、40のときには80ってことは、倍ってことか。
ということは、レベル80の次は160か。
うわ、きっつ。
高レベルになればなるほどレベルが上がりにくくなってくるっていう話しだし、だんだん難易度が高くなってくるな。
とはいっても、ダンジョン踏破もしたし新たなテナントのために積極的にレベルアップってのはないかなぁ。
別に今のところ金にも困ってないし、普通に生活していく中でレベルアップをはかっていくくらいだね。
しばらくはダンジョンも行きたくないしさ。
ま、とりあえずこれで今回のテナント契約はこれで終了ってことで。
「リカーショップタナカとの契約が終わりましたよ」
そう言うと、またも野太い声の歓声が。
『よっしゃ、酒じゃ酒じゃ。早く見せてみろ!』
『そうだそうだ。酒だ酒!』
ヘファイストス様とヴァハグン様が興奮してるよ。
でも、ここで酒屋の商品を見せたら時間がかかるのが目に見えてるな。
ここは、先に女神様たちの希望を聞いてからだな。
「先に女神様たちの希望を聞いていいですか? そのあとにゆっくり酒屋の商品を見せますんで。その方がヘファイストス様とヴァハグン様もじっくり選べると思いますよ」
『おお、そうじゃのう。酒の種類も多いだろうし、ここはじっくり選んだ方がいいかのう、戦神の』
『ああ。異世界の酒だ、どんな酒なのかじっくり見たいしな。あとでもいいと思うぞ、鍛冶神の』
ということで、許可ももらえたし、先に女神様たちの分を処理しちゃいますか。