第二百五十話 頼りになるリーダー
更新が遅れてすみません。
なんだかサーバーが不安定ですね。
昨日更新しようと思ったのですができませんでした。
翌朝、朝食は当然アークの面々と一緒にとることにした。
もちろん俺がアイテムボックスに保管していたものでだ。
だって、期待したような目で見てくるんだぜ。
特にフェオドラさんの目力がすごかったよ。
あんな美人に期待の込められた目で見つめられたらご馳走しないわけにはいかないでしょ。
メニューは肉そぼろ丼にした。
あっさりだけどがっつりいけてダンジョンで活動する前の朝飯にはピッタリだろう。
木の器にアイテムボックスにしまっていた炊き立ての米をよそって、米を覆うようにキャベツの千切りを載せたらその上に肉そぼろをたっぷり載せた。
これだけでも美味いけど、ちょっとトッピングが欲しいなと思ってアイテムボックスをあさってみると、ちょうどいいことに卵が残ってたから真ん中に卵黄をトッピング。
フェルたちには黄身を潰してから出してやると、勢いよくバクバク食い始めた。
エルランドさんとアークの面々にも出してやる。
「これはですね、こうして黄身を潰して肉と絡めてからこんな感じで下の米と一緒にすくって食ってください」
見慣れないメニューだろうから食べ方を実演して見せた。
食い物にはうるさいというエルフのエルランドさんとフェオドラさんが、クンクンと匂いをかいだ後に見様見真似で肉そぼろ丼をパクリと一口。
すると……。
2人ともカッと目を見開いたと思ったら、肉そぼろ丼を勢いよくバクバク食っていった。
それを見ていたガウディーノさんとギディオンさんとシーグヴァルドさんが、おそるおそるという感じで肉そぼろ丼に手をつけた。
「生の卵を使うなどどうかと思ったが、これは美味いな……」
ガウディーノさんのその言葉を聴いて、肉そぼろ丼をパクパク食いながらギディオンさんが深く頷いている。
「生の卵なぞ食ったら腹を壊すだけじゃと思っとったが、こんな美味い食い方があるとはな。おそれいったわい」
肉そぼろ丼を頬張りながらシーグヴァルドさんがそう言う。
「あ、これは新鮮な卵だから出来ることですからね。そこら辺の店で売ってる、いつ採取したかわからない卵は生で食べることはおすすめしません。ちゃんと火を通してから食べてくださいね」
これはネットスーパーで買った日本クオリティだからできることだから。
この世界でも卵を売ってるのは見かけたことがあるけど、あれじゃいつのかわからんからね。
あんなの生で食ったら絶対に腹壊すぞ。
『おかわりをくれ』
『俺もだ』
『スイもー』
お前たち食うの早いね。
フェルとドラちゃんとスイにおかわりを出してやる。
俺もさっさと食っちゃおう。
うむ、相変わらず肉そぼろは美味いな。
シャキシャキのキャベツと甘辛い肉そぼろとまろやかな黄身が合わさって飯がいくらでも食えそうだ。
「卵を生で食べたのは初めてですが、おいしいものですね~。味の染みたこの肉と合わせると、まろやかな味わいになって食が進みます」
空になった器を手にしたエルランドさんがそう言った。
エルランドさんのその言葉に無口なフェオドラさんもコクコク頷いている。
そしてすがるように俺を見てきた。
はいはい、おかわりですね。
そんなすがるように見なくてもおかわりくらいあげますってば。
「エルランドさん、フェオドラさん、おかわりいかがですか?」
「お願いします」
「ッ!(コクコクコクコク)」
2人から空の器を受け取って、肉そぼろ丼を追加で作ってやる。
「はい、どうぞ」
エルランドさんもフェオドラさんも嬉しそうにそれを受け取って食い始めた。
「みなさんもおかわりどうですか?」
ちょうど食い終わったところのガウディーノさんとギディオンさんとシーグヴァルドさんに勧めてみた。
「お願いする」
「ああ、俺もだ」
「儂もじゃ」
3人に追加で肉そぼろ丼を作って出してやった。
みんな朝からモリモリ食うね。
さすが冒険者だ。
って俺も冒険者なんだけどな。
特にフェオドラさんは、あのスレンダーな体のどこに入るのか、朝から肉そぼろ丼を3杯も食ってたよ。
まぁ、フェルとスイはその5倍くらい食ってるんだけどね。
フェルとスイに比べたら少食なはずのドラちゃんですら俺たちよりも食ってるし。
フェルとドラちゃんとスイの使う器は俺たち人間用よりもかなりデカいからね。
みんなで朝食を食った後は少し休憩だ。
「そうだ、ここまで良くしてもらって、更にお願いするのは心苦しいんだがいいだろうか?」
ガウディーノさんが話し難そうにそう言った。
「はい、大丈夫ですけど……」
何の話だろうと思っていると、ガウディーノさんが「実は……」と話し出した。
ガウディーノさんたちアークの面々もこのダンジョンの昆虫ゾーンには毒持ちの魔物が出現するのは分かっていたから、毒消しポーションを人数分準備して持ってきていたそうだ。
しかし、今回は特殊個体が多い周期に当たってしまったことで、ここに来るまでに毒消しポーションを3本使ってしまったとのこと。
残り1本だけでは、特殊個体が多い周期の今回の探索には心もとない。
そのことを踏まえてメンバーで話し合った結果、今回はこれで地上に戻ろうと言うことになったそうだ。
「それで、できれば階層主の部屋まで一緒に行かせてもらえるとありがたいのだが」
ガウディーノさんたちはAランク冒険者でもあるから、”アーク”の面々だけでも十分に進めるだろう。
でも、今のこのダンジョンは特殊個体が多い周期だ。
毒消しポーションの在庫のことも考えると、安全に進むには戦力が多いことに越したことはないということなのだろう。
俺も一応はSランクだしエルランドさんも元Sランクだしね。
俺はもちろん「いいですよ」と答えた。
「エルランドさんもいいですか?」
「ムコーダさんがいいなら、もちろんいいですよ。何せムコーダさんたちに任せておけばほぼ戦闘の必要はありませんし」
俺というより、フェルたちなんだけどもね。
アークの面々は「ほぼ戦闘の必要はない」と聞いて不思議そうな顔してたよ。
ま、それは見てのお楽しみってやつだな。
それよりも……。
「地上に戻るという話ですけど、ここから14階に戻らず進んじゃっていいんですか?」
ここから地上に戻るなら、来た道を戻らないといけないんじゃ……。
「それが一般的なんだが、11階以降からは一気に地上に戻る方法があるんだ。みんなとも話し合って今回はこの方法をとることにした」
ガウディーノさんがそう言った。
何やら来た道を戻る方法以外にも地上に戻る方法があるようだ。
「あ、そういえばここのダンジョンにはその方法がありましたね。もったいないから、滅多に使うことはありませんけど」
エルランドさんは知ってるようだ。
「何なんですか? 一気に地上に戻る方法って」
ガウディーノさんとエルランドさんの話によると、ここエイヴリングのダンジョンでは11階以降のボス部屋の奥にある階段の前の踊り場には魔法陣が設置されていて、それを使うと地上に転移できるんだそうだ。
「ただその魔法陣を起動するにはけっこうな量の魔力が必要でな。大きさにもよるが、Bランククラスの魔石だと4つ、Aランククラスの魔石だと2つは必要なんだ」
へー、そんなのがあったんだ。
でも、確かに魔石がそれだけ必要だとなると、手持ちの魔石があって余裕がない限り使えないかもしれないな。
「俺たちは、このダンジョンに潜るにあたって魔石を用意してあったからな。それを使うことにしたんだ」
なるほど、やっぱり事前の準備は大切だよなぁ。
「ガウディーノをこのパーティーのリーダーにしていて良かったわい。この慎重さで儂らは何度も命拾いしてるからのう」
「ああ。今回もそうだ。ここから来た道を戻るとなると、残ってる毒消しポーション1本じゃ正直な話ギリギリだった」
シーグヴァルドさんとギディオンさんがそう言うと、フェオドラさんも神妙な顔して大きく頷いていた。
それを聞いて、ガウディーノさんはちょっと照れたような顔をしていた。
「慎重にし過ぎるということはないからな。それで命が助かるのなら、事前の下準備は入念にした方がいいに決まってる」
ガウディーノさんの言うとおりだよ。
命あっての物種だもんね。




