第二百三十四話 次回分込み
ドラちゃんとスイと一緒に宿の風呂に入った後、部屋の隅でいつものお勤めだ。
ちなみにみんなは先にさっさと寝ちゃったよ。
何といっても明日からはダンジョンだからね。
「みなさん、いますか?」
フェルたちが寝ているから自然と小声になる。
『待ってたのじゃ!』
『待ってたわよ~』
『待ってたぜ』
『……ケーキとアイス』
『おう、来たな!』
『待ってたぜーっ』
神様たちの声が聞こえてきた。
「えーとですね、明日からダンジョンに潜るんです。それで、前回ダンジョンに潜ったときのことも踏まえて、今日は次回分も含めてでお願いします」
ダンジョンに潜ったら、1週間以上は間違いなくかかりそうだからね。
それだったら次の分もまとめてってことだ。
『な、なんじゃとっ?! そ、そ、それじゃ今日は金貨2枚分ということかっ?!』
この声はニンリル様か?
「そうなりますね」
『ヤッターッ! なのじゃー!』
他の神様たちからも歓声が上がった。
そんな興奮しないでほしいよ。
次回分も含めただけで増えたわけじゃないんだぞ。
『よしっ、1番最初は妾なのじゃ! すぐに不三家のケーキを見せるのじゃっ! 金貨2枚分のケーキなのじゃー!』
はいはい、興奮して大声出さないの。
一応女神様なんだからさ。
1番手はニンリル様ね。
「金貨2枚だと、ケーキならかなり買えますけど……。そうだ、これいってみますか? かなり大きいですけど」
そう言って俺が見せたのは、長方形の形をしたフルーツがたくさん載った大人数用のケーキだ。
お値段銀貨9枚也。
さすがに大き過ぎかな?
『むおっ、豪華なのじゃ! いいではないかいいではないか! 美味しそうなのじゃ! うむ、妾はこれにするぞっ!』
「え、い、いいんですか? かなり大きいですけど……」
ちょっとしたシャレのつもりで言ったんだけど、ニンリル様は本気でこれ買うつもりだよ。
『うむ、大丈夫なのじゃ。妾はこれがいいのじゃ!』
そ、そういうことなら買いますけど。
俺はそのデカいケーキをカートに入れた。
「あと、どうしますか? こっちはまだ手を付けてなかったと思うんですが……」
そう言って見せたのはギフト用の詰め合わせ菓子のメニューだ。
『む、これはっ! ど、ど、どら焼きではないかーっ!!!』
「どら焼きですね」
『な、何故早く言わないのじゃーっ』
そんなこと言われてもねぇ。
ケーキケーキ言ってたじゃないのアンタ。
「というか、どら焼きでいいんですか? いくつにします?」
『10個は欲しいぞっ』
ハイハイ10個ですね。
「これ以外にもどら焼き、小倉あんと栗が入ったものと芋あんのがあるみたいですけど……」
『なにッ?! それも10個ずつなのじゃッ!』
ハイハイそれも10個ずつと。
「あとはどうします? カステラなんかもありますけど」
『カステラッ! もちろんカステラも欲しいぞっ』
カステラも1本っと。
「あとは……あ、これなんかどうですかね? 少しお酒が入ってるケーキですけど、1個1個包装されてるし、味もいろんなのが入ってますよ」
そう言ってスコッチケーキの詰め合わせを見せた。
『おおっ、たくさん入っていて味もいろいろというのがいいな。うむ、それにするのじゃ』
スコッチケーキ(20個)の詰め合わせっと。
「あと残りの金額だと……これなんてどうです? パイというお菓子でサクッとして美味しいですよ」
『サクッとか。美味そうじゃな。それにするぞ』
最後のパイの詰め合わせをカートに入れた。
「次はキシャール様ですね」
『ええ、私よ~。金貨2枚ね、ウフフフフフフ』
こ、怖いです。
『前にもらった化粧水とクリームがすっごくいいの。あなたの言ってたとおり肌にハリが出て最高よ! だから、追加でその化粧水とクリームが欲しいわね。絶対に切らしたくないのよ』
ストックってやつだね。
姉貴も大量にストックしてたよ。
『あとは同じシリーズで、洗顔フォームっていうのかしら? それもあったらお願いしたいわ。それからパックね。あれをするとお肌がしっとりしていいのよね~』
前に買った化粧水とクリームに同じシリーズの洗顔フォーム、それからパックか。
どれどれ……。
化粧水にクリーム、洗顔フォームをカートに入れてと。
お、同じシリーズのシートパックもあるな。
「パックなんですけど、同じシリーズのシートパックがありますけど、それでいいですか?」
『あら、同じシリーズであるのね。なら、それでお願い』
へいへい。
そうすると、残りは銀貨5枚ほどか。
「残り銀貨5枚ありますけど、ほかはどうします?」
『そうねぇ、何かおすすめってあるかしら?』
俺に美容関係のこと聞かれても困るんだけど……。
あ、そういや姉貴はマッサージクリームとか使ってたな。
どれどれ……お、これなんていいかも。
「マッサージクリームなんてどうですかね。これなら使い方も簡単そうですよ」
説明には拭き取りの必要のないジェル状マッサージクリームって書いてある。
「ジェル状のマッサージクリームで1分間ほど下から上へ優しくマッサージしながら肌になじませるそうです。拭き取りの必要なしって書いてありますね。効果としては、マッサージすることで肌の働きをよくしてみずみずしいハリのある肌に保つそうですよ」
『みずみずしいハリのある肌……うん、それいいわね。それお願い』
美容製品ってやっぱり高いね。
おおよそ一通り揃えただけですぐに金貨2枚だよ。
姉貴、毎月いくら使ってたんだろ?
考えただけでオソロシイ。
「次はアグニ様ですね」
『おうっ。オレはいつものとおりビールだぜ! この間の箱に入ってたビール、あれは美味いな。あれはまた箱で欲しいぞ。あと金色のやつも美味いから、今度は箱で欲しいな。それから黒い丸の描かれたやつ、あれも好みの味だったからあれも箱で欲しいぞ』
この間の箱、ケースで送ったやつっていうとS社のプレミアムなビールだな。
うんうん、これは美味いよな。
他のよりもちょっとだけ高いけど、俺もけっこう好きなビールだ。
金色のっていうと、Yビスビールか。
これはここ最近ずっと送ってたもんな。
それから黒い丸のっていうと、S社の昔からある黒いラベルのビールか。
へぇ、随分ド定番のできたな。
どうせならってプレミアムのとか黒ビールとかにして、前回初めてS社の黒いラベルのビールを送ったんだけど、こういうのアグニ様は好みなのか。
まぁ昔からある定番っていうのは、それだけ多くの人に支持されてるわけだし、ある意味間違いないわな。
よし、S社のプレミアムなビールとYビスビールとS社の黒いラベルのビールを箱買いだ。
「その他はどうしますか?」
『あとは任せるわ。今回はつまみも少し入れてくれ』
残りはお任せで、つまみもね。
そうすると、残りどうすっかな。
今回は今まで送ってないものにしてみるか。
少し発泡酒の類も入れてみるのもいいかもな。
どれにしようか……お、これはまだ送ったことないな。
S社の旨味にこだわった100%麦芽を使ったビールだ。
これの6本パックだな。
それから、発泡酒を送ってみるか。
どれがいいかな…………よし、決めた。
K社の発泡酒人気No.1だっていう発泡酒の6本パックにS社の青い缶が目印の第三のビールの6本パック、K社ののどごしすっきりが売りの第三のビールの6本パック、A社の雑味のないクリアな味が売りの第三のビールの6本パックにした。
残りはつまみってことで、ビールに合う揚げ物を中心に焼き鳥等を選んだぞ。
「次はルカ様ですね」
『……ケーキとアイスがいい。でも、今日は金貨2枚だからご飯も』
はいはい、ケーキとアイスに飯ですね。
「じゃ、まずはケーキですけど、何がいいですかね?」
『ニンリルと同じのは大き過ぎ。私はいろんな味のが食べたい』
なるほど、いろんな味か。
それなら……。
「いろんな味をご希望されるんでしたら、この際、ここのショートケーキ全種類っていうのはどうですか?」
不三家のショートケーキのメニューを見せながらルカ様に聞いてみた。
『これ全部……うん、それでいい』
よし、ショートケーキ全種類〆て25個っと。
「それとアイスってことですけど、これも全種類いっときますか?」
『うん。あと、バニラっていうアイスいっぱい欲しい』
ルカ様はバニラアイスがお好きなようだ。
「あ、そうだ、アイスならこういうのもありますよ」
そういって見せたのはアイスケーキだ。
「アイスケーキって言って、アイスで出来たケーキです」
『それ、ほしいっ!』
無口で静かな印象のルカ様がちょっと興奮してるよ。
よっぽど不三家のアイスが気に入ったみたいだね。
俺はルカ様の所望するカップアイスとアイスケーキをカートに入れた。
「残りはご飯ものでいいですかね?」
『うん』
残りはルカ様が気に入っていたから揚げやら餃子、焼き鳥にカツ丼等々をネットスーパーから選び、俺の作ったクラムチャウダーやら魚介のフライなんかもつけて適当に見繕った。
ふぅ、こんなもんかな。
「最後はヘファイストス様とヴァハグン様ですね」
『おうっ。2人合わせて金貨4枚分の酒じゃーっ』
『金貨4枚分のウイスキーじっくり選んでやるぜ!』
な、なんか2人ともテンション高い。
『まずは当然世界一のウイスキーじゃ』
これを1本ずつは定番だもんね。
『それとこの間の“最高峰”のウイスキーだな。これは美味かったぜー』
『うむ。香りが良い上にまろやかな味わいで美味い酒じゃった。これも儂らに1本ずつで頼むぞ』
ふむふむ、この間のシングルモルトウイスキーの最高峰ってやつを1本ずつね。
「他はどうしますか?」
『のう戦神の、この間の赤い蝋で封がしてあったウイスキー、あれもいいと思うんじゃがどうじゃ?』
『おお、あれも美味かったな』
『じゃが1本ずつじゃなく儂ら2人で1本にして、他は違う酒にしようぞ』
『いいな。今回はあのウォッカって酒も頼みたいしな』
赤い蝋で封がしてあるウイスキーっていうと、確か冬小麦を使ったウイスキーだな。
うーん、ネットスーパーだから品数も限られてるし、さすがにもう目新しいものはないぞ。
「お2人とも、これ見ていただければ分かると思うんですけど、ウイスキーもそろそろ目新しいものがなくなってきてるんですけどどうします?」
俺はネットスーパーのウイスキーのメニューを見せながら、そう聞いてみた。
『うーむ、確かに見覚えのあるもんばかりじゃな。やはり酒屋が欲しいところじゃな』
『ああ。おい、異世界人分かってるよなぁ?』
ヴァハグン様、なんかどっかのヤのつく職業の方のようなんですが……。
でもまぁこの間、良い物をいただいたのは事実だしね。
これがなかったらダンジョンで絶対苦労するだろうし。
「はい。次が酒屋かどうかは分かりませんけど、がんばります」
少なくとも次のテナントが解放されるレベルまではね。
『分かってんならいいんだ、分かってんならな。鍛冶神の、もうこれはこの中で美味かったやつを頼むしかないだろ』
『そうじゃなぁ』
ヘファイストス様が『うーん』と少し考え込んだ。
『儂は黒い色の瓶のがいいと思うんじゃが、戦神のどうじゃ?』
『ああ、あれか。俺もいいと思うぞ』
黒い瓶でヘファイストス様が良いって言ってたのって……このS社の黒い瓶のウイスキーか?
「お2人が言ってるのって、これですか?」
『おお、そうじゃ』
『そうだそうだ』
俺はS社の黒い瓶のウイスキーをカートに入れた。
「他はどうします?」
『鍛冶神の、俺は黒いラベルのなんかいいと思うんだが、どうだ?』
『おお、あれか。あれもなかなか美味かったな。いいと思うぞい』
ヴァハグン様が言ってる黒いラベルのって、これかな?
「黒いラベルのって、これですか?」
『そうそう、それだ』
『うむ。それじゃな』
黒いラベルの有名なアメリカ産ウイスキーだな。
俺は黒いラベルのアメリカ産ウイスキーをカートに入れた。
そんなやり取りを何度かしながら、追加でウイスキーを何本かカートに入れていった。
「最後はこのウォッカをそれぞれ1本ずつでよろしいですか?」
『うむ』
『ああ、いいぜ』
ウォッカを2本カートにいれて終了っと。
ふぅ、あとは段ボールの祭壇にそれぞれ載せていってと……。
「皆様どうぞお受け取り下さい」
そう言うと段ボール祭壇に置いてあったものが消える。
直後にワッと神様たちの歓声が上がり、ドタドタっという足音が聞こえてきた。
ふぅ~、ようやく終わった。
明日からはダンジョンだし、さっさと寝よ。




