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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連(旧 妖精壱号)
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第二百三十五話 何でここにいるの?!

「それじゃ、行くか」
『うむ』
『よっしゃ、ダンジョンだ!』
『ダンジョン~』
 朝飯を食った後、俺たち一行はダンジョンに向けて宿を出た。
「あ、ダンジョン行く前にちょっと冒険者ギルドに声かけてくから」
 冒険者ギルドもすぐ隣だし、一応ナディヤさんに声をかけてから行くことにする。
 隣の冒険者ギルドに入り窓口いた受付嬢に声をかけると、すぐにナディヤさんを呼びに行ってくれた。
「今日からダンジョンって言ってたからさ、あんたを待ってたところなんだよ」
「待ってたって、何か俺に用ですか?」
「いやね……」
 ナディヤさんがちょっと困ったような顔をして後ろを見た。
 何だ?
「ムコーダさん、来ちゃった」
来ちゃったテヘペロってな感じでナディヤさんの後ろから姿を現したのは、満面の笑みを浮かべた顔見知りの壮年エルフだった。
「…………は? な、な、何であなたがここにいるんですかっ?!」
 満面の笑みを浮かべた壮年エルフは忘れもしないあの人。
 ときにドン引きするほどのドラゴン愛に溢れたエルランドさんだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 エルランドさんと再会し、窓口の前で話すのも何だからということで、俺たちは2階のギルドマスターの部屋に場所を移していた。
「エルランドさん、まったくあなたって人は……」
 エルランドさんから話を聞いて呆れてしまった。
 エルランドさんの話によると、俺たちがドランを出た直後に予定通り王都に向かったそうだ。
 そして、冒険者ギルド王都本部と王様にドランのダンジョンが踏破されたことを報告し、俺が渡したダンジョンの宝箱から出た解毒のネックレスも献上品として渡したとのこと。
 献上品の解毒のネックレスには王様も随分喜んでくれたそうだ。
 これからもよしなにって意味で献上したけど、正解だったね。
 これからもできるときにはこういう献上品を王様に渡して、この国での俺の自由を確保していこう。
 って、それはいいとして、王都での報告も終わり、王都に来るのも久しぶりだからってことでエルランドさんは少しの間王都に留まることにしたんだそう。
 そして数日後、ドランへ帰る前に王都の冒険者ギルドに挨拶に行くと……。
「王都本部のギルドマスターからムコーダさんが赤竜(レッドドラゴン)を討伐したと聞いたんですっ! 赤竜(レッドドラゴン)ですよ、赤竜(レッドドラゴン)っ! しかも、ムコーダさんはエイヴリングに向かうというではありませんか! 王都から早馬に乗って行けば、ムコーダさんがエイヴリングに到着するころには間に合うはず。そう思ったらいてもたってもいられなくて……行き先を変更してエイヴリングに来ちゃいました」
 来ちゃいました、じゃねぇよ。
 ってか、美形エルフとはいえおっさんが「来ちゃいました」とか言ってもかわいくないから。
「まったくいきなり今日の早朝にドランのギルドマスターがやって来たもんだから、何事かと思ったよ」
 ナディヤさんはそう言って苦笑いだ。
 そりゃそうだよね、他の支部のギルドマスターがいきなり来たんじゃ何事かと思うわ。
 しかも何の連絡もなしだったらしいし。
 俺が悪いわけじゃないんだけど、なんかすんません。
 この人のドラゴン愛を見くびっていました。
「そんなことよりも、ムコーダさんっ。赤竜(レッドドラゴン)ですよ、赤竜(レッドドラゴン)! 早く見せてくださいよ!」
 いやいやいや、早く見せてくださいよって、無理無理。
「エルランドさん、あのですね、俺たちこれからダンジョンに行こうとしてたんですけど……」
 フェルもドラちゃんもスイもいよいよダンジョンだってスタンバってるんだぞ。
 さっきから『まだなのか』とか『早く行こうぜ』とか『ダンジョンまだー?』とかみんなから念話が入ってきてるし。
 今更ダンジョンに行くの遅れるなんて言えないぞ。
「何を言っているのですかっ。ダンジョンよりも赤竜(レッドドラゴン)の方が大切なんです!」
 あらら、この人ってば赤竜(レッドドラゴン)の方が大切とか言い切っちゃったよ。
「ちょっとその言葉は聞き捨てならないねぇ」
 ナディヤさんオコですよオコ。
 ”ダンジョンよりも”なんて言われたら、そりゃ面白くないよね。
「ドランのギルドマスターのエルランドさんよ、あんた、”ダンジョンよりも”ってあたしんとこのダンジョンはどうでもいいって言いたいのかい?」
 ワントーン低い声でそう言ったナディヤさん。
 エルランドさんを見る目も鋭い。
 さすがにエルランドさんも自分の失言に気付いたのか「い、いや、そういう意味ではなくて……」とか言ってタジタジだ。
 怒ったナディヤさん大迫力です。
 この人は絶対怒らせないようにしよう。
「そういう意味ではなくてって、あたしにはそういう意味に聞こえたけどねぇ。ドランのダンジョンがムコーダさんに踏破されたおかげで、エルランドさんとこは莫大な利益をあげて潤ってるそうじゃないか。そのムコーダさんが、うちの街に来てくれるっていうんで、あたしは大いに期待してたんだけどねぇ。200年振りにこのエイヴリングのダンジョンが踏破されるんじゃないかってさ」
 ナディヤさんの目力がすごいです。
「い、いえ、あ、あのですね、さ、さっきの発言は、勢いで言ってしまったというか……」
 目を逸らしながら必死にそう言い募るエルランドさん。
 冷や汗タラタラだよ。
「勢いねぇ。あたしには自分のとこは儲かったから、他のとこはどうでもいいって風に聞こえたけどね」
 ま、確かにエルランドさんの言いっぷりはそう取られてもおかしくないかも。
 とは言っても、エルランドさんには世話になったし、これからも世話になる予定だからこの辺で助け舟を出すとしますか。
 いずれにしろ赤竜(レッドドラゴン)のことはエルランドさんに頼むしかないしね。
「ナディヤさん、どっちにしろここで赤竜(レッドドラゴン)をどうこうするつもりはないんで、この後すぐにダンジョンに行きます。うちの従魔たちもやる気十分ですし、踏破も出来そうな気がしますし。エルランドさんも、エイヴリングの後にドランに行って赤竜(レッドドラゴン)をお願いするつもりだったんですから、ここでは我慢してください」
「ふぅ、ムコーダさんの顔を立てて今回はあたしも引くよ。うちとしちゃ赤竜(レッドドラゴン)なんてものよりダンジョン踏破の方がはっきり言って大事だしね。けどね、エルランドさんよ、ギルドマスターって立場もあるんだし、もうちょっと言動には気を使った方がいいね」
 ナディヤさんもそう言って何とか怒りのほこを収めてくれた。
 赤竜(レッドドラゴン)なんてものよりダンジョン踏破の方が大事という言葉はちょっとした意趣返しだろう。
「す、すみません。以後気を付けます」
 借りてきた猫みたいにエルランドさんが縮こまっている。
 ギルドマスターの威厳もなにもあったもんじゃないね。
 この人は今までもそうだったけどさ。
 って、そういやこの人はギルドマスターなんだよね。
 こんなところで油売っててもいいのか?
「ところでエルランドさん、ドランに帰らなくっていいんですか? ウゴールさんに怒られますよ」
 優秀なウゴールさんがいるとはいえ、ギルドマスターが長期不在っていうのはマズいと思うんだけど。
「大丈夫、大丈夫。ウゴール君が万事うまくやってくれてますって。それより私は決めましたよ! 私もムコーダさんと一緒にダンジョンに潜ります!」
 …………は?
 この人、今何て言った?
「そうとなれば早速行きましょう!」
「いやいやいや、行きましょうじゃないですよ、エルランドさんっ。何であなたまで来るんですか? あなたギルドマスターで冒険者引退してるでしょうがっ」
「おや、それはいい話じゃないか」
 ぬお、思わぬところから援護射撃が。
「ナディヤさん、でも、エルランドさんは冒険者じゃないですよ」
「おや、知らないのかい? ダンジョンに入れるのはなにも冒険者だけってわけじゃないんだよ。騎士団なんかも訓練で入るときがあるし、冒険者上がりのやつが小遣い稼ぎに入る場合だってある。申請さえすれば、一応誰でも入れるんだ。もちろんそこは自己責任だから、それなりに実力がある者に限られてくるけどね。だからエルランドさんがダンジョンに潜ってもおかしくはないんだよ」
 げっ、そうなんだ。
 知らなかったぜ。
 一応誰でも入れるとは言っても自己責任ってことで、冒険者以外でダンジョンに挑むのは、やはりそれなりに戦う技術のある騎士団か冒険者上がりの者ばかりらしいけど。
「エルランドさんといやぁ元Sランクの冒険者だ。現Sランクのムコーダさんと元Sランクのエルランドさんのコンビなら、ここのダンジョン踏破の可能性もグッと高まるってもんだよ」
 ナディヤさんのその言葉を聞いて、エルランドさんがうんうん頷いている。
「そうです。さすが元Sランク冒険者の巨人姫だ、分かってらっしゃる。ダンジョンというものは、複数の冒険者でパーティーを組んで挑んでこそ先に進められるものです」
 ナディヤさんも元Sランク冒険者だったんですね。
 しかも巨人姫なんてそのまんまの二つ名をお持ちの。
 ってそれはおいといて、複数の冒険者でパーティーを組んでとか言ってるけど、俺にはフェルとドラちゃんとスイっていう大いに頼れる仲間がいるから普通のソロと違うぞ。
「あのですね、エルランドさんも知ってるように俺にはフェルもドラちゃんもスイもいますから、全然問題ないですから」 
「何を言っているのですか、問題大アリです! ぶっちゃけますと、私もドラちゃんと冒険がしたいんです! ドラちゃんとダンジョンで冒険ですよっ、この機会を逃すわけにはいきません! 私は何があっても付いて行きますからね!」
 うわっ、ついに本音が出た。
 ドラちゃんと冒険がしたいって、いい歳したおっさんが子供みたいなこと言ってるんじゃないよ。
「い、いや、ダンジョンに潜ったらしばらく出てこれないし……。いくらウゴールさんがいるとはいえ、さすがにそれはマズいと思うんですけど」
「ウゴール君がいればドランはまったく問題ないです」
 いや、問題大ありでしょ。
 またウゴールさんに怒られるよ。
 ウゴールさん激おこだよ。
「いや、ほら、何かあったときとか…………えーと例えば、突然高ランクの魔物が現れたときとか」
「まったく問題ないですよ。ウゴール君はああ見えて元Bランクの冒険者ですし、ドランはダンジョンがありますから高ランク冒険者が常駐してますからね」
 衝撃の事実が。
 ウゴールさんって元Bランク冒険者だったんだ。
 全然そうは見えないけど。
 って、エルランドさんは何が何でも付いてくるつもりだな。
 この人、断っても勝手に後を付いてきそうだし……。
「はぁ、分かりました。一緒に行きましょう」
「はいっ」
 エルランドさんニッコニコだよ。
 しかもドラちゃんを熱い眼差しで見てるよ。
「話はまとまったようだね。そんじゃ、登録はここでしとくからね。そのままダンジョンに潜ってもらって構わないよ。2人とも、ドロップ品やらマジックアイテムやらたくさん持ち帰ってくるの期待して待ってるからね」
 なぜかエルランドさんも付いて来ることになってしまった俺たち一行は、ナディヤさんに見送られてダンジョンに向かった。




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