第二百二十四話 トリオは無敵
家に着くなりみんな腹減ったの大合唱。
俺も腹が減ってるし疲れてたから、昼間に旅の間の飯として作ったフライで夕飯にすることにした。
アジフライにエビフライ、ホタテフライにハマグリフライを皿に盛って出してやった。
もちろん自家製タルタルソースをたっぷりかけた。
『うむ。美味いな。特にこれが美味い』
エビフライを頭から丸ごとバリバリ食いながらフェルがそう言った。
『海のもんとこの白いソースは合うな。全部ウメェ』
ドラちゃんがそう言ってタルタルソースのかかったフライを片っ端からバクバク食っていく。
『これ美味しいね~。これならスイいーっぱい食べられるよー』
スイはフライがすごく気に入ったみたい。
タルタルソースつけると美味いもんなぁ。
よし、俺も食うぞ。
俺にはカキフライのときと同じように、白飯とインスタントだが味噌汁を付けた。
まずはタルタルソースをたっぷりつけたアジフライだ。
サクッ。
おおっ、ふっくらした身の美味いこと。
自家製タルタルソースと抜群に合うね。
すぐに1枚食べ切った。
もう1枚はウスターソースでいってみるか。
魚介のフライには断然タルタルソース派なんだけど、たまにウスターソースでも食いたくなるんだよね。
ウスターソースをさっとかけたアジフライをパクリ。
うむ、こっちも美味い。
『ぬ、その茶色いのは何だ?』
俺がウスターソースをかけて食っていると、目ざとくフェルが見つけてそう声をかけてきた。
「これか? これはな、ウスターソースだよ。これをフライにかけても美味いんだ。俺は断然その白いの、タルタルソースっていうんだけどな、そっちが好きなんだけど、たまにこのウスターソースをかけたのも食いたくなるんだ。フェルも食ってみるか?」
『うむ。食うぞ。ついでにおかわりだ。そのおかわり分にそのウスターソースとやらをかけてくれ』
あ、フェルはもう全部食っちゃってたんだね。
俺はフライのおかわりを皿に盛り、ウスターソースをかけて出してやった。
『むむ、このウスターソースとやらをかけたものも美味いではないか。特にこの魚とこの貝にはこちらの方が合うぞ』
アジフライとハマグリフライにはウスターソースの方が合うと言うフェル。
フライによってタルタルソースかウスターソースかなんて、フェルもなかなか通なこと言うようになったね。
『あ、ずりーぞ。俺もその茶色いのかけたの食いたいっ』
『スイも食べたーい』
ドラちゃんとスイもソース掛けをご所望だ。
ドラちゃんとスイにもおかわりのフライを盛ってウスターソースをかけたものを出してやった。
『おおっ、これもウメェじゃねぇか。白いのもウメェがこっちもウメェな』
ドラちゃんはタルタルソースとウスターソース、甲乙つけがたいようだ。
『これも美味しいけど、スイは白いのの方が好きかなぁー』
スイは俺と同じくタルタルソース派みたいだね。
昼飯抜かしたもんだから、みんなバクバク食っておかわりの応酬だ。
やれ白いのかけろ茶色いのかけろで、みんな好みに合わせて言うもんだから大変だったぜ。
そんなこんなで夕飯も食い終わり、ホッと一息ついた。
俺は冷たいお茶を、みんなにはコーラを出してやった。
みんな腹いっぱいで満足そうだ。
昼間大量に揚げたはずのフライが大分減ったぜ。
旅に出る前にまたフライ作っておかなきゃだ。
ゴクリと茶を一口飲んだ後、話を切り出した。
「そんであの赤竜はどうやって獲ったんだ?」
『最初は我らも普通に狩りをしてたのだぞ。だがな……』
フェルが言うには、最初は森の中で普通に獲物を狩っていたらしい。
その途中に強い気配を感じたのだとか。
それで、フェルはドラちゃんとスイにも伝えてみんなでその気配を追うことにしたそうだ。
『その先で見つけたのがあの赤竜だ。それで狩ることにしたのだ』
見つけたから狩ることにしたってね、お前……。
だけどそのフェルの話にドラちゃんはうんうん頷いている。
『赤竜つうのはよ、ドラゴン種の中でも威張りくさってて俺は前から気に入らなかったんだよ』
しかし、狩ることにしたものの赤竜は大空を飛んでいる。
そこで3人は連携して赤竜を狩ることにしたそう。
『そこで華麗に先陣を切ったのがこの俺よ。何と言っても飛べるのは俺だけだからな』
ドラちゃんが得意げに話し出した。
ドラちゃんの話によると、まずドラちゃんは赤竜の近くまで飛んで行ってちょっかいをかけてフェルとスイたちがいる方に誘導した。
そして、赤竜が低空飛行になったときに……。
『スイの酸で攻撃だぜ。赤竜の翼に向かって酸を飛ばしてもらって、翼に穴を開けてやったのさ! なっ、スイ』
『うんっ、スイね赤いドラゴンさんにビュッビュッてしたんだよ! 前にフェルおじちゃんに教わったように翼のとこにやったの~』
ドラちゃんの説明によると、ドラゴンっていうのは鳥のように翼を使って飛んでいるわけではなく魔力を使って飛んでいるんだそう。
もちろんドラちゃんも同じで魔力で飛んでいるんだとさ。
だけどドラゴンが魔力を使って飛んでいるからといって、翼がまったく役に立ってないってことでもないという。
翼は翼で重要な役割があって、速度の調節をしたり進む方向を調節したりバランスをとったりするのに必要不可欠なものらしい。
『その翼に穴が開いたら、当然バランスを崩してドスンと落下だ』
『うむ。そこですかさず我の雷魔法で仕留めたのだ』
なるほどねぇ。
ドラちゃんが飛んで赤竜を誘導して低空飛行になったところでスイが翼を酸弾で撃ち抜いて赤竜を撃ち落したってことだな。
そして地上に落ちた赤竜にすかさずフェルが雷魔法を放ったってわけか。
フェルとドラちゃんとスイのトリオは無敵すぎるね。
みんなでの一斉攻撃も相当なもんだけど、連携したら大空を飛ぶドラゴンも簡単に狩っちゃうんだもんな。
あー、でもさぁ……。
「あのな、次はドラゴンを見つけても攻撃されなければ放っておけな」
『ぬ、何故だ?』
「攻撃されなきゃ別に放っておいてもいいだろ」
『それはそうだが、ドラゴンの肉は美味いんだぞ』
美味いんだぞってな、お前。
「正直に言うとな、ドラゴンなんて狩ってこられると処理に困るんだよ」
なにせ解体を頼めるのはエルランドさんだけだし。
「考えてもみろよ、ドラゴンの解体を頼めるのってエルランドさんだけなんだぞ。ドラゴンを狩るたびに一々ドランに行かなきゃならないし、素材は高すぎて全部は買取してもらえないし。地竜の素材だって余ってる分がかなりあってアイテムボックスに肥やしになってるんだからな。これを捌くのだって大変なんだぞ」
いつになったら捌ききれるのか見当もつかないよ。
ようやくここベルレアンで血を2瓶買い取ってもらったけどさ。
ここに今度は赤竜の素材も加わるんだぞ。
エルランドさんに解体してもらうとしても、ドランでは地竜の素材とダンジョン産の品を相当買取してもらってるし、赤竜の素材をどれだけ買取してもらえるかわからんしな。
ずっとアイテムボックスで保存するって手もあるけど、既にいくつかそんな状態のやつがあるしねぇ。
「ここはやっぱり無用なドラゴンは狩らないってのが1番だと思うんだよね」
『ぐぬぬ』
「まぁ、そんなちょいちょいドラゴンに遭遇するとは思えないけどさ。とにかく攻撃されない限りは手出し無用で頼むぞ」
『フンッ、仕方ない』
フェルは不満ありありのようだったけど何とか承知してくれた。
「ドラちゃんとスイも頼むからな」
『チッ、しゃーねーな』
『分かったー』
ドラちゃんはちょっと不満げだけど納得してくれた。
スイはドラゴンにはこだわってないんだろうね。
「まぁそうくさくさしなさんなって。どっちにしろこの街の後にはエイヴリングに行くんだし、またたくさんの魔物と戦うことになるだろうよ」
『ぬ、そうだったな。この街の後は、この前とは別の人の街のダンジョンに行くのだったな』
『おお、そうだったな! またダンジョンに行くんだったぜ。楽しみだな』
『ダンジョン、ダンジョン! 楽しみ~』
エイヴリングのダンジョンってどんななんだろうな?
俺も今回は少しがんばってみるつもりだし、今度は入る前にしっかり情報収集しなきゃだね。