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第二百七話 クラーケン+2

 俺たちはクラーケンが出没している海域に向かって海を進んでいた。

「スイ、ありがとうな。こうやってクラーケンの討伐の依頼をこなせるのもスイのおかげだよ」

『うふふー、スイってすごいー?』

「うん、すごい。ホントにスイがいてくれて助かった」

 スイがいてくれて本当に良かった。

 このまま沖合いまで行く方法が見つからなかったら、クラーケン討伐の依頼失敗ってことになっていたかもしれないしね。

「まったく誰かさんは自信満々だったのに何も考えてないんだもんなぁー」

『ぐぬぬぬ』

『アハハハッ、フェル言われてやんの』

 俺の言葉にフェルは渋い顔をして、ドラちゃんはそれを見て笑っている。

 俺とフェルとドラちゃんは大きくなったスイの上に乗せてもらっていた。

 海を進むスイの乗り心地はすこぶる良い。

 スピードもありグングン進んでいくのに揺れも少ない。

 しかもスイ自体がプニプ二の柔らかい体だから、座り心地も抜群だ。

 スイは強いし、みんなを乗せてこうやって移動もできるし、ホントすごいヤツだよ。

 ただ心配なのは……。

「フェル、スイの周りの結界だけはしっかり頼むぞ」

『分かっておるわ』




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




『海の中だから少し分かりにくいが、少し先からクラーケンの気配がするぞ。……む? これは…………』

 フェルがそう言うと、クラーケンがいるという少し先の海面を険しい目つきで見つめた。

『おいっ、クラーケンだけではないぞっ! この気配は……シーサーペントもいるっ! それともう1つクラーケンとシーサーペントほどではないが、何かいるぞ!』

 エ、エエエーーーッ。

 な、な、何だそれ?

 クラーケンにシーサーペント、そのうえ更に何かいるってのか?

 ザッパァァァァンッ―――。

 大きな飛沫を上げて全長10メートルクラスのクラーケンとシーサーペントが姿を現した。

「え、え、え、何じゃこりゃぁぁぁッ!」

 クラーケンがシーサーペントのヘビのような細長い体に吸盤の付いた足を絡ませて、シーサーペントはクラーケンの頭に鋭い歯を突き立て噛み付いている。

 クラーケンもシーサーペントもデカい。

 まるで怪獣だ。

 その2匹が目の前で戦っていた。

「こ、こりゃ怪獣同士が戦ってる映画みたいだな……」

 こんなのを目の前で見せられたら呆然とするしかない。

『おいっ! 我はクラーケンをやるっ。ドラはシーサーペントをやれっ。スイは海面の下にいるのをやるんだっ』

『おうっ、俺はシーサーペントだなっ。やったるぜ!』

『スイはお水の中にいるデッカイお魚さんを倒せはいいんだねー。スイ、がんばるー!』

 え?

 海面の下って?

 よく見ると、クラーケンとシーサーペントが戦っている脇に大きな魚影が……。

 クラーケンやシーサーペントには劣るけど、かなりデカいぞ。

 な、何だあれ?

 三つ巴の争いになるのかと思えば、海面下のデカい魚はジッと動かない。

 もしかしてこいつ、クラーケンとシーサーペントが戦い終わるのを待ってるのか?

 クラーケンとシーサーペントは力が拮抗(きっこう)してるみたいだから、相討ちもありそうだし、どっちが勝っても手傷負ってるだろう。

 そうなったときにデカい魚が動き出して……。

 漁夫の利を狙ってるってことか?

 だけど、そうはいかないと思うぞ。

 ズッガァァァァン―――。

 フェルの雷魔法だろう稲妻がシーサーペントと戦っていたクラーケンの頭部に落ちた。

 ドッガァァァァン―――。

 今度はドラちゃんの雷魔法だろう稲妻がクラーケンと戦っていたシーサーペントの胴体に落ちる。

 おぅ…………。

 稲妻を食らったクラーケンとシーサーペントはぐったりして動かなくなった。

 フェルとドラちゃんが放つ雷魔法は何度か見てきてるけど、相変わらず凄まじいね。

 なんかこっちまでビリビリっと感電しそうだよ。

 フェルの結界張ってもらってて良かったぜ。 

 力なく海面にプッカーと浮いた息絶えたクラーケンとシーサーペントに徐々に近づく黒い影。

 ザパァァァン―――。

 海面下にいた謎の大きい魚影の主が海面に姿を現した。

 赤黒い色をした超巨大魚だ。

 その赤黒い魚が鋭い牙の生えた口を開けてクラーケンに食らいつこうとしていた。

 漁夫の利がダメなら横取りってか?

 そうは問屋が卸さないぞ。

 スイの体から伸びた太い触手が赤黒い魚に向かっていった。

 ドシュッ―――。

 太い触手が赤黒い魚を串刺しにしていた。

 少しの間抵抗するように尾びれを動かし暴れていたが、すぐに動かなくなった。

『ヤッター! 大きいお魚さん獲れたー!』

 スイが嬉しそうにそう言った。

 なんか、海でもいつもと変わらなかったな。

 沖合いに出てるし、海の魔物だからフェルとドラちゃんとスイでも少々苦戦するかと思ったけど、まったく問題なかったわ。

 とにかく先制攻撃で素早く狩る。

 フェルとドラちゃんとスイ、いつもどおりの平常運転でした。

『うむ、終わったな』

『フハハー、シーサーペント倒したぜー!』

『スイもだよー、見て見て大きいお魚獲ったのー』

 フェルもドラちゃんも魔法一発でクラーケンとシーサーペントを屠ってるし、スイだって太い触手で串刺しだもんなぁ。

 海だろうが陸だろうがどんと来いってことだね。

 それにしても、スイが倒した超巨大魚は何なんだ?

 鑑定してみる。



【 アスピドケロン 】

    Sランクの魔物。食用可。最高級の白身。



 何々、アスピドケロン?

 随分と言い難い名前の魔物だな。

 おお、Sランクの魔物だって。

 こんだけデカいんじゃSランクにもなるか。

 しかも食用可で最高級の白身だって。

 こりゃ身は何としても確保だな。

 ついでにクラーケンとシーサーペントも鑑定してみると、こっちもSランクだった。

 それにどっちも食用可だって。

 マルクスさんは「クラーケンを食ったなんて話は聞いたことがない」とか言ってたけど、間違いなく食えるみたいだね。

 ってか、鑑定すると説明に“食用可”とか出てくるようになったんだけど、これってレベルあがったからかな?

 なんか食えるか食えないかって説明がちょっと微妙ではあるんだけど。

 まぁ、考えたら食えるか食えないかってのは俺たちにとったら重要な情報ではあるからいいのか。

 それにこれで最初の魚介ゲットだぜ。

 しかも大漁(大量)

 クラーケンの討伐がついでにシーサーペントとアスピドケロンも獲れちゃったよ。

 幸先いいね。

 これで依頼もクリアしたし、明日は聞いてた朝市行きたいね。

 俺はクラーケンとシーサーペントとアスピドケロンをアイテムボックスにしまった。

「それじゃ、帰るか」

『うむ』

『おうっ』

『うんっ』

「スイ、帰りもお願いね」

 俺がそう言うと、スイは港に向かって海をグングン進んで行った。






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― 新着の感想 ―
[良い点] スイがオネムになったら詰むやつ。
[気になる点] 漫画版だと魚はゲットしなかったのはなぜなのか
[一言] あっけなくも胸がすく討伐でしたね^^
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