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第百九十六話 オークの集落殲滅作戦①

 俺たちは冒険者ギルドに来ていた。

 というのも依頼を受けるためだ。

 こう言っちゃなんだけど、ギルドからじゃなく自発的に依頼を受けるのはいつぶりやら。

 今日はこの街での最後の日でもあるし、本当は今日は家でゆっくりしようと思ってたんだけど、フェルがつまらんとか言い出してさ……。

 ドラちゃんもスイも外に出たいって言うもんだから、それなら依頼でも受けてみるかって話になったんだ。

 俺も一応冒険者だしね。

 それで掲示板をみているわけだけど……あんまりたいしたもんはないねぇ。

 俺は一応Aランクだから、受けられるのはAランクかSランクの依頼ってことになるんだけど、そもそも掲示板に貼ってある依頼がBランクまでしかないし。

 こりゃ窓口で聞くしかないか。

「すいません。依頼を受けたいんですが」

 そう言ってギルドカードを受付嬢に差し出すと「少しお待ちください」と言って席を立った。

 おう、ヨーランさん呼んじゃうの?

 別に普通に依頼受けに来ただけだから呼ばなくてもいいんだけど。

 少しするとヨーランさんがやって来た。

「おー、ちょうど良かったわい。ちょっと困った問題が起こってしまってのう。なかなか適当な冒険者が集まらず困ってたんじゃ。これはお主に頼んでしまった方が早いかと思いはじめておったところじゃよ」

 ヨーランさんから話を聞いてみると、何でもこの街の北側の村の周辺や街道付近でオークが度々出没するようになり、その件数も多いことからオークの集落ができていることが疑われたそうだ。

 そこでヨーランさんは、冒険者ギルドとして北側の村や街道付近の森の調査依頼を出した。

 その調査の依頼を受けた冒険者パーティーが今朝早く戻って来たのだが、報告によると村と街道に面した森の中にオークの集落が出来ていることが判明した。

 調査した冒険者パーティーの報告では、上位種のオークリーダーとオークジェネラルがいることも確認したとのことだった。

 オークキングがいることは確認できなかったが、集落の大きさから言ってもオークキングが生まれるのも時間の問題だとのこと。

 オークの集落は村と街道に近いこともあり、早急に殲滅する必要があるが、この依頼だとCランク以上が適正となる。

 オークの数から考えると、少なくとも5から6パーティーは必要だとのこと。

 しかし、間の悪いことに今はCランク以上のパーティーがほとんど依頼で出払ってしまっているんだそう。

「ムコーダさんがイビルプラントとキュクロープスの依頼を受けてくれたことで、工房も通常運転になったからのう。それまでは出荷も滞りがちになっていたが、それが再開したことで他の街への護衛依頼が増えたんじゃ」

 あちゃー、そんなことになってたのか。

 それで護衛依頼を受けたCランク以上のパーティーが出払ってるってことなのか。

 俺のせいではないけど、まったく関係ないとは思えないな。

「何とか残っていたCランクパーティー1つだけは確保したんだが、1つだけでは何ともならんからのう……」

 ヨーランさんとしては、護衛依頼に出た冒険者パーティーが戻ってくるのを待つか、俺に頼むかしかないと思っていたそうだ。

 ただ、護衛依頼に出た冒険者を待つとなると何日も待つことになるわけで、その間オークの集落を放置することになりそれを懸念していた。

 その間にオークキングが生まれてしまったら、今度は5から6パーティーでは足りなくなるし、少なくともBランクパーティーが2つは必要になってくる。

 それならば、俺に頼んだ方が早いかと思い始めていたそう。

「ムコーダさん、申し訳ないが受けてくれるかのう?」

「ちょっと待ってくださいね。……フェル、どうだ? 俺としては、肉の確保にもなるしいいと思うんだけど」

『オークの集落か、つまらない相手だが、確かにお主の言うとおり肉の確保ということにはなるだろうな。うむ、いいぞ』

 フェルはOKみたいだね。

『ドラちゃんとスイはどう?』

 ドラちゃんとスイには念話で聞いてみる。

『俺もいいぞ』

『スイもいいよー』

 ドラちゃんもスイもOKだ。

「ヨーランさん、お受けします」

「おお、そうかそうか、ありがたい。そいじゃ、確保していたCランクパーティーと向かってもらうことになるがいいかのう?」

「はい、大丈夫です」

 Cランクパーティーと一緒にオークの集落殲滅の依頼を受けることになるようだね。

 他の冒険者と一緒に依頼を受けるなんて初めてかも。

 まぁ、これも経験かな。

「そいじゃ、紹介するから付いてきてくれるか」

 ヨーランさんに連れられて入ったのは、冒険者ギルドの1階にあった会議室のような部屋だった。

 そこに30前後だろうゴッツイ強面の男性冒険者4人組がイスに座って待っていた。

 うん、逃げていいかな?

 何この男臭い面子は。

 みんな筋肉ムッキムキのゴッツイ強面なんですけども。

「おう、待たせたのう」

「ギルドマスター、そんで依頼の方はどうなるんだ?」

 リーダーとおぼしきスキンヘッドの強面がそう言った。

「うむ、それをこれから説明するぞい」

 そう言って、ヨーランさんが俺の紹介やらゴッツイ強面冒険者やらの紹介をしていった。

「Aランク冒険者と依頼を受けられるとは光栄だぜ。よろしく頼む」

 そう言ってリーダーのアロンツォさんが俺に握手を求めてきた。

「よろしくお願いします」

 他のメンバーともよろしくと言って握手していく。

 強面で男臭い濃い面子だけど、悪い人たちではなさそうだね。

 本当は女性冒険者がいるパーティーが良かったというのが本音だけど、そうも言ってられないしね。

 このゴッツイ強面冒険者4人組はCランク冒険者パーティーの“影の戦士(シャドウウォーリア)”という。

 何でかわからんけど、こっちの人って厨二病的な名前好きだよね。

 今まであんまり突っ込まんかったけどさ。

 なんかこだわりがあるようだから、こういうのはスルーだね。

 リーダーのスキンヘッドの強面がアロンツォさんと言って剣士で大剣使い。

 ウェーブのかかった濃茶の長髪の強面がクレメントさんで、こちらも剣士で片手剣使い。

 金の短髪の強面がマチアスさんで斥候とのことで、短剣を使う。

 赤茶の短髪強面がアーネストさんで魔法使いで、火と風の魔法が出来て少しだが回復魔法もできるそう。

「噂には聞いていたが、本当にフェンリルが従魔なんだな」

 フェルを見てアロンツォさんがそう言った。

 Cランク冒険者だから分かるか。

 それに、最近はフェルのことも浸透してきてるようだしね。

 まぁ、ドランのダンジョン踏破しちゃったからね。

「フェルはもちろん強いですけど、こっちのピクシードラゴンのドラちゃんと、スライムのスイも私の従魔です。みんな強いですよ」

「ピクシードラゴンというのは聞いたことがないな。スライムは、強いのか?」

「スイは特殊個体ですからね、強いですよ。戦いぶりは、オークの集落で見てくださいよ」

 うちはみんな強いからね。

 スイはスライムってことで侮られがちだけど、普通のスライムと一緒にしちゃダメだぜ。

 めっちゃ強いからね。

「それじゃ、早速行きますか。ヨーランさん、そのオークの集落はどの辺にあるんですか?」

「うむ、ここから歩いて1日の森の中じゃ」

 へ?歩いて1日?

「え、歩いて1日って、俺たち明日にはこの街を出て行く予定なんですけど……あ、大丈夫だった。今日中に終わらせること可能です」

 大人数での移動手段となると、俺にはスイという強い味方がいるんだった。

「ん? どういうことじゃ?」

 ヨーランさんと影の戦士(シャドウウォーリア)の面々にスイのことを説明したけど、みんな信じてくれなかった。

 それなら見てもらった方が早いと、街の門にみんなで向かった。

「それじゃ、スイ、この4人乗せられるくらいの大きさ、そうだなこの間くらいの大きさになってくれるか?」

『分かったー』

 そう言うとスイはこの間アントンたちを乗せた時くらいの大きさになった。

 それを見てヨーランさんも影の戦士(シャドウウォーリア)の面々も唖然としていたよ。

「ゴホンッ、す、すごいもんじゃのう」

「こんなスライム初めてみたぜ……」

 ヨーランさんとアロンツォさんの言葉に影の戦士(シャドウウォーリア)の他のメンバーも無言でうんうん頷いている。

「私たちは明日にはこの街を離れる予定なんで、今日中に依頼達成しなきゃならないんです。ささ、皆さん乗ってください」

 影の戦士(シャドウウォーリア)の面々を急かしてスイの上に乗ってもらった。

 俺はいつものようにフェルへと跨る。

「それじゃヨーランさん、行ってきますね」

「頼んだぞい」

 こうして俺たちはオークの集落へと向かった。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 強面の屈強な漢4人が巨大なスライムにしがみつく様を想像すると...。 原哲也作画で脳内再生。
[良い点] >本当は女性冒険者がいるパーティーが良かったというのが本音だけど、 >そうも言ってられないしね マジで本作品はなろうにあって少数の硬派で好感がもてる 冒険者に男はほとんどいないのか?って…
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