第百八十話 日本の国民食
うーん、広々としたキッチンはいいねぇ。
でも、作るのは庶民派なものだけど。
作るのは、日本の国民食と言っても過言ではないカレーだ。
もちろん俺も大好きだ。
いやぁ、この世界来てから食いたかったんだよねぇ。
カレー味のタンドリーチキンは作ったけど、カレー味ってだけで別物だからね。
カレーは好きだから専門店やら本場インド人の作るカレーやらいろいろ食ったし、確かに店のカレーも美味かった。
だけど、最終的に行き着いたのはやっぱ家のカレーなんだよね。
食いなれた飽きの来ない家庭の味っていうかさ、やっぱ日本人には家カレーが舌に合うんだろうね。
いたって普通のいつものカレーを作っていくぞ。
まずはネットスーパーで材料を調達だ。
ジャガイモと玉ねぎはあるから、ニンジンとこれがなきゃ始まらないカレールーを購入。
カレールーは2種類だ。
ここ数年はカレールーを2種類入れて作るのが俺の定番だ。
その方が何か味が豊かになるような気がするんだよ。
俺のちょっとしたこだわりだな。
使うカレールーは1つは決まっていて、りんごとハチミツが入ったロングセラーのカレールーだ。
これは実家でも使ってたから、なんかこれがいいんだよね。
他のカレールーも使ってみたんだけど、やっぱりこれに戻ってくる。
そしてもう1つはそのときの気分に合わせて新商品なんかを使ったりしてる。
今日は……これにしよう。
G社のプレミアムとついたカレールーだ。
これもコクがあってけっこう好きなんだよね。
フェルたちのことも考えて、2つとも甘口にした。
「あ、これもあるんだ。これ前に作ったけど、簡単だけどめっちゃ美味かったんだよな……」
カレールーの欄を見ていて見つけたのはスパイスで有名なメーカーのドライキーマカレーのルーだ。
前に作ったことがあるんだけど、超簡単で美味かった。
米にも合うし、パンにも合って美味かったんだよね。
これは作り置き用に是非作っておきたいところだ。
ということでドライキーマカレーも作ることにした。
前に作ったときは、これの箱の裏に書いてる基本材料の合いびき肉、玉ねぎ、トマトにニンジンを加えて作ったんだったな。
今回も同じように作るとして、足りないのはドライキーマカレーのルーとトマトだな。
これで大丈夫だな。
カート内のものを精算していった。
よし、作っていくぞ。
まずは肉だ肉。
家カレーの方はオークの薄切りを使う。
キーマカレーの方はブラッディホーンブルの肉とオークの肉の合いびき肉だ。
オークの肉を薄切りにしたら、ミンサーを出してひき肉を作っていく。
両方とも多めに用意した。
そうしたら最初は家カレーを作っていく。
まずはジャガイモとニンジンの皮を剥いて、ジャガイモは小さめの一口大に切って、ニンジンはいちょう切りにして、玉ねぎは半分に切ってから薄切りにしておく。
油をひいた鍋で玉ねぎを炒めていって、玉ねぎが半透明になったらオークの肉(フェルたちがいるから肉は多めだ)を入れてさらに炒めていく。
肉の色が変わってきたらジャガイモとニンジンを入れて軽く炒めたら、水を入れて沸騰するまで煮ていく。
アクをとりつつ、沸騰したら火を弱めてジャガイモとニンジンが柔らかくなるまで煮ていく。
ジャガイモとニンジンが柔らかくなってきたら、いったん火を止めて、2種類のカレールーを入れて溶かしていく。
カレールーが溶け切ったところで、コンロに火をつけて弱火でとろみがつくまで煮込めばできあがりだ。
「う~ん、いい香り。カレーの匂いって何でこんなに食欲をそそるのかね」
今すぐ炊きたての米にカレーをかけて食いたいところだけど、我慢我慢。
ドライキーマカレーを作らないとね。
『なんだか変わった匂いがするな』
『ホントだぜ。今まで嗅いだことない匂いだ』
『あー、これスイこの匂い知ってるー。前にこの匂い嗅いだことあるよー』
カレーの匂いを嗅ぎつけたフェルとドラちゃんとスイがキッチンにやってきた。
やっぱカレーの匂いけっこうするからなぁ。
それにしてもスイ、よく覚えてるな。
前に作ったタンドリーチキンのこと覚えてたんだな。
「今日はカレーって言ってな、俺のいたところではすっごい人気の食い物だったんだぞ」
『ふむ、それで美味いのか?』
「俺は好きだし美味いって言えるけど、フェルたちはとりあえず食ってみてダメそうだったら言ってくれれば肉焼くよ」
前に作ったタンドリーチキンは食ってたけど、今回はもろにカレーだからねぇ。
スパイスの香りでどうかなって思うところではあるんだけど。
『変わった匂いだが、嫌な匂いではないな。分かった食ってみるぞ』
『おう、初めて食うものってワクワクするな』
『スイも食べる~』
ってもうみんな食う気満々なんだけど。
ドライキーマカレーを作ってからと思ったんだけど、しょうがないな。
深めの皿に飯を盛ったらその上にたっぷりカレーをかけてと。
「はい」
フェルとドラちゃんとスイの前に皿を置いた。
『む、少し辛いな……だが、嫌いではないぞ』
フェルはそう言って口の回りを茶色くしながらカレーを食っている。
『おお、確かに辛いが美味いぞ。俺はこれ好きだぜっ』
意外にもドラちゃんはカレーが好みのようだ。
フェルと同じく口の周りを茶色くしながらフガフガ食っている。
『辛いけど、これくらいならスイでも大丈夫だよー。いろんな匂いといろんな味がして美味しい。スイもこれ好きー』
甘口のルーにしてみたものの辛みはあるからどうかと思ったけど、スイも大丈夫みたい。
スパイスをふんだんに使ったカレーは異世界ではどうかと思ったけど、けっこうみんないけるみたいだね。
ということは、俺はこれからもカレーが食えるってことだな。
やったぜ!
よし、みんなが食ってる間にドライキーマカレーを作っちゃうぜ。
玉ねぎ、トマト、ニンジンをそれぞれみじん切りにする。
そうしたらまずは油をひいたフライパンで玉ねぎのみじん切りを透明になるまで炒める。
次にニンジンを入れてさらに炒めていく。
ニンジンが少ししんなりしてきたところに合いびき肉を入れて炒めていく。
ひき肉の色が変わったら、トマトのみじん切りを入れてトマトをつぶしながら炒めていく。
いったん火を止めて、ドライキーマカレーのルーを入れてよく混ぜ合わせる。
混ぜ合わさったら火を付けて、焦げないように注意しながら弱火でトマトの水分がなくなるまで炒めて出来上がりだ。
「お~、こっちのドライキーマカレーも美味そうだ」
『ぬ、新しいのか? そっちもくれ』
『俺もっ』
『スイもー』
ドライキーマカレーを作ってる間にもおかわりよそってあげたんだけどな。
作り置きにしようと思ったんだけど……まぁいいか。
深めの皿に飯を盛ったらその上にたっぷりドライキーマカレーを載せて……あれをトッピングした方が美味いよな。
パパッとネットスーパーで卵を購入。
トッピングは真ん中に卵の黄身だ。
黄身を潰してドライキーマカレーにまぶして出してやった。
「はい」
みんな食い始める。
『おおっ、さっきのより幾分か辛い気がするが卵と絡んで美味いぞ。我はこちらの方が好みだ』
フェルはドライキーマカレーの方が好きか。
トッピングに卵の黄身を載せたのも良かったみたいだね
『うんうん、確かにさっきのより辛いな。でも、卵の黄身が載ってることでそれほど辛すぎるということもない。こっちも美味いなっ。俺はどっちも好きだぜ!』
ドラちゃんはこっちもいけるか。
カレー味好きみたいだね。
『卵が載ってるから食べられるけど、スイにはちょっと辛いかなぁ』
スイにはちょっと辛かったか。
これ中辛だからな。
すりおろしりんごとか入れたらスイも食べやすくなるかも。
次に作るときは試してみてもいいな。
さて俺も食おう。
まずは家カレーだ。
皿に盛った白い飯にスパイシーな香りのカレーをかけてと。
あ、大事なものを忘れてたぜ。
俺はネットスーパーで福神漬けを購入して、カレーに添えた。
完璧だ。
どれ一口。
「おお~、この味この味」
やっぱりカレーは美味いねぇ。
いつもは中辛だけど、甘口もいけるな。
この濃厚でスパイシー味が白米に合わないわけがない。
箸休めの福神漬けを食いながらだと、食が進む進む。
一皿ペロリとたいらげたらば、今度はドライキーマカレーだ。
『おかわりだ。我はこっちの卵の載った方だ』
『スイもおかわり~。スイはとろっとした方ねー』
『ゲプッ、俺はもういいや。ちょっと食い過ぎたぜ』
はいはい。
フェルはドライキーマカレーでスイは家カレーね。
ドラちゃんは家カレーとドライキーマカレーの2皿食ったから腹いっぱいか。
フェルとスイにそれぞれおかわりをよそってやり、俺は自分の分のドライキーマカレーをよそった。
どれどれ……おお、こっちも美味いな。
卵の黄身トッピングはドンピシャだ。
味がまろやかになって美味い。
今日は生卵の黄身だけど、温玉でもいいな。
うんうん、美味い美味い。
「はぁー、食った食った」
その後も、フェルとスイはおかわりして、結局家カレーもドライキーマカレーもすっからかんになってしまった。
「もうちょっと作れば良かったなぁ」
カレーだからどうかと思って少し量を抑えたのが間違いだったね。
ドライキーマカレーをコッペパンにはさんでカレードッグも美味そうと思ってたのに。
あ、その上にとろけるチーズをのせても美味そうだな。
あ~ドライキーマカレーもうちょい多めに作っておくべきだったぜ。
みなさんの予想通りカレーでしたw




